第1話『サル者は追え!』(1/3ページ)
ひ〜っ!画像が少ない!しかも特撮はチョビット!

Act.1


「おれは、柳生博じゃねぇ!」
サイモン・コウヘイはデスクをたたいた。
ここのところの彼の仕事と言えば、迷子の子猫の捜索、カラスの巣の撤去、
野生化したタイワンリスの捕獲と、動物づくしであった。

……スパイの業界も、例にもれず不景気なのである。
年に一度、来るか来ないかのオフィシャルミッションを、ただ指をくわえて
待っているだけでは到底、喰いつなぐことはできない。
全盛期、即ち、丹波哲郎がショーン・コネリーと私有の地下鉄に乗っていた
頃のエージェントは、一つのミッションを請け負えば、葉山一式海岸に別荘
が建つと言われたほどだった。
しかし、今やスパイの報酬は完全歩合制の120日手形、経費は全て持ち出し
の上、エージェント間での自由競争が認められ、保険のおばちゃんの方が
稼ぎがいいと言われる時代だ。
上等のスーツを着て女を侍らすエージェントなど、もはや過去の遺物。
今や東京は、浮気調査に盗聴器の撤去、合鍵づくりに風俗嬢のスカウトと
なりふり構わないリストラエージェント達で溢れているのだ。

そんな彼らが心待ちにしていた秘密の暗号メール。
半年ぶりのイギリス情報部からのオフィシャルミッションが、
『麻布界隈を逃げるニホンザルを捕獲せよ』である。

サイモンは、穴があくほどにタバコを灰皿に押し付けた。
「あからさまな嫌がらせしやがって!上等じゃねぇか!
そんなに辞めてほしいんなら辞めてやるよ!」

「……よかったじゃねえか。」
ビリヤードのキューを磨きながら、ソファに座るガモウ・ジョウジが
こともなげに言った。
「これで元がとれるってもんよ。タイワンリス捕獲用に開発した新兵器の
さ。」
ガモウはキューの一方の端を口元にくわえ、頬を膨らました。
ガスの抜ける鈍い音がして、フロアの端の観葉植物の葉がハラリと落ちた。
キューから発射された吹き矢が、葉を射抜いたのだ。
このキューは、ターボチャージャーを内蔵した吹き矢となっていたのだ。

「なんでキューなんだよ!リスが油断すんのか!?
あの人間は、ビリヤードやってるから安心だってか!?」
サイモンがデスクを叩いて立ち上がった。
ガモウは肩をすくめる。
「……知らねえのか?スパイの武器は昔っから、なんかにカムフラージュ
するもんだぜ。」
「うるせぇ!おかげでいくらかかったと思ってんだ!
それにお前、その吹き矢で何匹仕留めた?
8匹だぞ!たったの!
俺は、ディスカウントで買ったネズミ捕りで、101匹捕ったんだぞ!
101匹!!」

「ガキのケンカはやめなさいっ!!」
一括したのは、隣室で事務をとっていたシマズ・ヨウコである。
「出たわ。天現寺の交差点よ!」
シマズが指差した先、14インチのテレビの画面には、都心を逃げるサルを
生中継するワイドショーのレポーターが映し出されていた。
「ボーナスが逃げるわ!はやく!」
シマズは、作業用のつなぎをサイモンに投げつけた。
「おまんま食べたかったら、行きなさい!」
仁王立ちで出口のドアをビシッと指差したシマズに、サイモンはたじたじと
背広を脱ぎはじめた。
探偵社の経理を取り仕切り、苦しい台所を切り盛りするシマズに、サイモン
は頭が上がらない。
「捕ってくるまで、帰ってきちゃダメよ。」
その静かな台詞に、サイモンは、冷戦時代の特殊任務以来のプレッシャーを
感じていた。

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