比べてみると

| 突然、残酷な写真をお見せして申し訳ありませんが、上の2枚の写真を見比べてください。 これら2枚の写真は両方とも、街頭における公開処刑を撮影したと思われます。 右の写真は動画から切り出した関係で、画像が小さく不鮮明なため、処刑されている人間やそれを支えている(又は、押さえている)人間は、はっきりしませんが、処刑をしている人間は、比較的はっきりしています。 どちらの写真でも、処刑人は、黒い上着を着ており、その上から幅広のベルトを締めています。履いているズボンも黒くて、全体的にだぶついていますが、足首の部分は絞られています。手にしている刀は直刀のようです。 しかし、何よりも顕著な共通点は、ベルトで締めあげた黒い上着の下から、白い下着のようなものの一部がはみ出ている点です。こういうだらしなさがたまたま一致する可能性は相当低いでしょうから、これら2枚の写真は同じ場面を、いくらか時間をおいて撮ったもののようにみえます。 しかし、この2枚の写真についている説明を信じるなら、それはあり得ないのです。 左の写真は、2000年6月に出版された毎日新聞社のシリーズ20世紀の記憶「ロストゼネレーション ユリシーズと関東大震災」の168頁の「4・12クーデター」に掲載されているもので、1921年の上海における、国民党による共産党員の公開処刑を撮影したものです。 右の写真は、CNNが、1996年9月23日に報道したもので、1937年、上海における、中国兵による日本兵の公開処刑を撮影したものです。 (CNNの記事のサイトは http://cnn.com/WORLD/9609/23/rare.photos/index.html) (写真の元画像は http://www.cnn.com/WORLD/9609/23/rare.photos/china.photos.mov) ちなみに、このCNNの写真は、下の小林よしのりの「戦争論」168頁の絵の元になったものです。
従って、CNNの報道の方に信憑性があるように思えます。しかしこれはそう簡単には言い切れないのです。 下の写真を見てください。
キャプションには、撮影時期、場所は書かれていませんが、本文の記述から、1921年の蒋介石による上海でのクーデターに関連した写真であることはまちがいないでしょう。 そうなると、この写真は、「ロストゼネレーション」の写真と同じものであることは明かです。 「中国近百年歴史図集」について、中央公論新社に確認したところ、1976年に香港で出版された本であるとのことでしたので、この写真は、CNNの報道の20年も前から世間に流布されていたことになります。 結局のところ、この非常によく似た2枚の写真は、それなりに信憑性のある全く異なる説明が付けられているわけです。 さて、この2枚の写真については以下の4つの可能性が考えられます。 1 毎日新聞社や中央公論新社の情報が正しく、CNNの情報は間違い。2枚の写真は、どちらも1921年に撮られたもの。 2 CNNの情報が正しく、毎日新聞社や中央公論新社の情報は間違い。2枚の写真は、どちらも1937年に撮られたもの。 3 毎日新聞社や中央公論新社の情報も、CNNの情報もどちらも正しい。2枚の写真は、それぞれ、1921年と1937年に別々に撮られたもの。 4 毎日新聞社や中央公論新社の情報も、CNNの情報もどちらも間違い。2枚の写真は、1921年でも1937年でもない全く別の時期に撮られたもの。 4が正しい可能性はまず無いでしょうし、3が正しい可能性もあまりないでしょう。 しかし、1と2のどちらが正しいかは、現時点では、情報が不足しているため確定出来ません。 結論を出すには、その時代の出版物等を調べて、類似した写真が出ていないかを探す必要があります。 歴史を学ぶとか、事実を調べるとかいう行為は、そういう地道な作業を行うことです。 決して、まともな史料を調べることもなく書きとばされた「こうすれば太平洋戦争に勝てた」のような本や「戦争論」のような漫画を読むことではありません。 そんなことで、歴史を学んだ気になるのは大きな間違いです。きちっとした史料に基づいた本を読むのでなければ時間の無駄でしかありません。 |