「 國務省の要請に基いて、海軍は英聯邦とアメリカの結束を日本に示威し且つ母國の英本國より忘れられ、また事實上、放棄されたように感じていた、わが地球の反對側の友邦を慰める目的から、ニュージランド、濠洲、フィジ、タヒチ諸島を訪間するため巡洋艦四隻及び一水雷戰隊を派遣した。【註十九】」
 (「米海軍作戦史」 98頁)

「【註十九】 眞珠灣攻撃査問記録第二十六巻第二六七頁、三四〇頁に依る。これらのアメリカ軍艦は大型巡洋艦『シカゴ』『ポートランド』『ブルックリン』『サヴァンナ』の四隻及び第三水雷戰隊でジョン・H・ニュートン海軍少将の指揮下にあった。一九四二年末、薯者が『ブルックリン』に乗組んでいた時、その士官及び水兵達は彼等が受げた、殊にオークランド(ニュージランド最大の港)に於ける素晴らしい歓迎について未だ語り合つている位であつた。
 (「米海軍作戦史」 101頁)

 作者とモリソンが参照している資料が全く同じ(眞珠灣攻撃査問記録第二十六巻第三四〇頁、PHPT26−340)で、参加艦船、指揮官も同じですから、作者が挙げている最初の事例は、ハワイからオーストラリア、ニュージーランドへの巡航であることがわかります。

 ハワイは太平洋の中部にあり、オーストラリア、ニュージーランドは太平洋の南部にありますから、「太平洋の中部及び南部を航行した」というのは嘘ではありません。

 しかし、作者も書いているように、赤道以北の太平洋中部にある南洋群島は「委任統治領」であって「日本の領土」ではありませんから、太平洋の中部を航行しても「日本の領土に隣接」することはありません。
 従って、ハワイからオーストラリア、ニュージーランドへの巡航は、「遠距離航行能力を有する重巡洋艦一個戦隊を東洋、フィリピンまたはシンガポールヘ派遣する」こととは何の関係もありませんし、「日本の領海内または領海付近に米艦を故意に配備する」こととも関係ないことは明らかです。

 恐らく、作者もその程度のことは分かっているのでしょう。いくらなんでも、ハワイからオーストラリア、ニュージーランドへの巡航を「日本の領土に隣接する」とは描けないからこそ、目的地を隠して「日本の領土に隣接する太平洋の中部及び南部を航行した」などと曖昧な書き方をしているのでしょう。

 前述のように、オーストラリア、ニュージーランドは太平洋の南部にありますから、オーストラリアの新聞が、自国を訪問したアメリカ艦隊の話を報道をすれば、「オーストラリアの新聞がアメリカ軍艦が南太平洋海域にいることを報じた」ということになりますが、これはどう見ても読者を誤解させる目的で書かれているとしか思えません。
 また、友好国への訪問を秘密扱いするというのも解せません。大体、本当に秘密任務であれば、艦隊が大歓迎を受ける筈もありません。



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