新システム、ローズ・トゥ・ロード((株)エンターブレイン 以下新ローズ)の解説です。
従来のローズ・トゥ・ロード シリーズについてのざっとした説明と、新システムとの特徴や差異を紹介します。
歴史
一部の雑誌付録や個人戦等SLGを除くと、国産初のRPGと呼ぶにふさわしいのは、1984年に発売された、ローズ・トゥ・ロード(ツクダ 以下旧ローズ)であることはよく知られています。
この旧ローズのリメイクとして、2002年6月24日に発売されたのが、新ローズです。
国産最初のシステムであったことから、ルールの整合性にやや問題があり、又おそらく作者の方針として、ルール上、読者に判断させる部分を多分に持たせていたため、様々なヴァリアントルールを生み出したことでも有名です。
やや先行して発売されたトラベラー(GDW)や、同時期に発売されたダンジョンアンドドラゴンズ(TSR)とともに、国内で遊ばれるTRPGの代表的なルールとなり、この後の国産新作TRPGラッシュの先駆となりました。
この旧ローズは、四王国時代、と呼ばれる年代を扱っていました。
システムの特徴は、種族をチャートとダイスによって選び、PCの特徴はいくつかのパラメーターによって表されます。これは種族によって大きな差があり、また種族による成長の違いも大きく、キャラクター間のバランスというものはあまり考慮されていません。所持金や装備もダイスによって決まります。
これらの部分は以後のローズシリーズに引き継がれていきます。
ここで、特筆しておきたいのは、背景世界の充実です。歴史、宗教、国家、種族、ユルセルーム大陸と周辺諸島の詳細な設定により、時間的にも空間的にも充実した世界が作られ、以後このシリーズを特徴づけて行くことになります。
一方旧ローズのみの特徴として、戦術戦闘用ヘクスマップを持っていることと、魔法カード1枚につき1種の、効果や威力が決められた魔法システムを持っていたことでした。
おまけとして入っていた戦術戦闘用のメタルフィギュアは、当時のプレイヤーのSLGからRPGへの移行を感じさせます。
その後、1989年に第2作であるビヨンド・ローズ・トゥ・ロード(遊演体 以下Bローズ)が発売されます。
Bローズは、特に新たな概念である、マジックイメージ、と感情システムを採用しました。
マジックイメージについては、Bローズ発売の前の1987年にに早川書房から発売され、ゲームブックの名作の誉れ高い、「魔法使いディノン」シリーズで採用されたもので、以降のローズシリーズにおいて大きな役割を担うことになります。
これらは、次作であるファー・ローズ・トゥ・ロード(遊演体 以下Fローズ)に継承されます。
Bローズでは、「大忘却」と言われる、世界規模での記憶、記録の消失以後の「薄暗がりの世界」を取り扱っています。
Bローズ固有の特徴としては、1枚につき一種の、「鳥」「花輪」「山」「○」「△」「白」「緑」などのイメージが書かれたマジックイメージカードを組み合わせて作る、魔法の創造、があげられます。
旧ローズの様な形式や効果、威力が固定した魔法ではなく、要素からそのたび毎に魔法を創造していくシステムで、その性質、程度を決めるのにGMとプレイヤーのアドリブが要求されました。
また、クステ、と言われる星の影響も登場し、以後に受け継がれます。
欠点としては、システムの記述が散漫で(筆者の知る限り最も難解であった、初期のルーンクエスト(AH)に匹敵するわかりにくさです)、初心者がルールを把握するのが困難であり、又独特の魔法ルールはプレイのテンポを阻害することがしばしばありました。物品の価格やデータ、バランスなどがザル勘定な所は前作と変わっていません。さらに魔法を含め高度なアドリブを要求するところから、「うまく使えばとても面白いが、プレイヤーを選ぶ」、システムになってしまった気がします。
ローズシリーズは、さらに1993年にFローズが発売されました。
Bローズの特徴が営業的にどうであったかは知りませんが、筆者は上記の欠点をかなりカバーして、広く遊びやすくしたシステムがFローズであると考えています。
Fローズで取り扱われる時代は、大旗(たいき)戦争、と呼ばれる大戦争前後です。Bローズの薄暗がりの時代の終了をつげる時代とも言えます。
ここで説明上あげておかなければならないものとして、コンピュータRPG(以下CRPG)『忘れ得ぬ炎』、があります。
このゲームは、BローズのCRPG版として、Bローズ発売後すぐに開発がはじめられました。ところが、最初に雑誌広告に登場してから延々と発売延期を続け、TRPG界では「狼」ソフトソフトとしても有名になります。ようやく発売されたのはFローズ発売3年後の1996年でした。この忘れ得ぬ炎が、大旗戦争を取り扱ったゲームであり、すばらしいシナリオと独特の雰囲気を持つ名作です。
しかしながら、煩雑な雑魚キャラとの戦闘、多発するバグ、さらにシステムがNEC98シリーズ専用(時代は既にWINDOWS95に移っていた)であったことから、これもまた、一部のユーザーにのみ評価される形で消えていきました。このゲームがせめてFローズと同時期にちゃんとした形で出ていればと悔やまれてなりません。WINDOWSに移植して欲しいゲームNo.1でもあります。
Fローズに話題を戻します。
Fローズにおいては、門倉直人氏以外に、かねてからサプリメント制作などに参加されていた藤波智之(システム)、司史生(ワールド)の両氏他のスタッフの共同制作の色合いが強くなったようです。
その結果、プレイアビリティの大幅な向上と、継続的なサプリメントの発売などが可能になり、国産RPGとしては最高級の充実したシステムが完成します。
ワールドに関してはそのサプリメントを通じて圧倒的な充実を示し、その内容については類を見ない出来映えです。
感情システムは、「喜び」「怒り」「やるせなさ」など10種の感情を扱い、「激情」「無情」の要素が加えられました(後者については筆者はあまり好きではありませんが)。
魔法はマジックイメージの組み合わせながら、効果、威力を固定し、この面では旧ローズ回帰を果たします。
PCの主なパラメーターは、「能力値」4種、「魅力値」4種に整理され、さらに「地縁」「霊縁」「幸運/不運」などが付け加えられました。サプリメントにより、武術、魔術などの設定も充実します。
最後のサプリメントとなった「大旗戦争」は、筆者のみるかぎり、国産TRPGサプリメントの最高作と言っていいでしょう。
しかしながら、PC間のバランスの悪さと、強制される感情変動を嫌うプレイヤーも多く、当時の新作ラッシュの中で選択肢の一つとして留まりました。
基本ルールと最重要サプリメントである「剣と魔法」の双方が発売後数年で絶版となり、以後徐々にTRPGの中での勢いを失っていきました。
現在においては、発売元であった遊演体も、Fローズシリーズに対する扱いは極めて冷たく、鬼子扱いされている様子です。同社のホームページではローズシリーズに対する言及はほとんど全くなく、同社の沿革のページにおいても、Bローズやフィフスエレメント(ローズシリーズには関係のないコンピュータRPG)の発売が取り上げられているにも関わらず、Fローズや忘れ得ぬ炎についての記述は全くありません。
それでもなおかつ、筆者はこのローズシリーズこそが国内最高のTRPGシステムであると信じていますが…。
概略
なにより大きいのは、これまでボックスゲームであり、ゲームショップを通じてしか入手できなかったローズシステムに対し、新ローズは書籍であり(ISBN4-7577-0918-8 C0076 \4000E)、書店で入手することができます。現在の再販制度を考えると、入手しやすさと引き替えに、流通期間の短さにつながるおそれもあります。皆さん、1冊と言わず、3冊くらいは買いましょう。できれば少しずつ期間を空けて買うのがお勧めです。
システムデザインは門倉直人氏一人に戻っています。
発売は、遊演体からエンターブレインへと移りました。
表紙デザインは、旧ローズ、Bローズの箱絵を担当されたファンタジーイラストの大御所、加藤直之氏が手がけています。
筆者としては嬉しい限りです(大旗戦争、忘れ得ぬ炎を手がけた山田章博氏も素晴らしいイラストレーターではありますが)。
本文のイラストは複数のイラストレーターが担当していますが、Fローズに比べても質が高く、いい感じに仕上がっていると思います。
カードのイラストもいい感じ。筆者のお気に入りは『聖光』です。
魔法カードは48枚。1枚のカードに1種の魔法が記述されている、旧ローズと同様のものです。
すでに、一部の誤植リストがエンターブレインのホームページに掲載されています。
取り扱う時代
地図を見ればわかりますが、セリル湖とシリネラ湖がつながっていません。つまり大忘却前の時代を扱っています。しかしながら、次のページでエスティファ湖の名前が出ています。これは、大忘却開始時にセリル湖とシリネラ湖がつながってできた湖です。さらに、93ページの年表には、1940年の四王国時代の始まりまでしか載っていません。今までのローズシリーズではほとんど触れられていなかった、紀元前の”古の時代”の記述も増えているので、対象としているのは旧ローズと同じ年代とそれ以前がメインで、せいぜい薄暗がりの時代初期のローズ世界までと考えるのが良さそうです。
2000年代以降のユルセルーム世界を用いて、今までのシナリオとの整合性を取りたい場合に注意すべきは、Bローズ、Fローズの年代に応じて魔法の体系が発達していること、ハヴァエルのとばりの北上と南下による南西諸島の取り扱い、武術の進化、国境の変遷と社会体制の変化などでしょう。
また、妖精(木妖、風妖、地妖、水妖、火妖)と妖精王の登場は大戦以後であることへの注意も必要です。
PC
第1章は『ルールシステム』で、まずキャラクターの作成から始まります。PC用の種族は減っています。何より大きな点は、髭小人が無くなったことでしょう。モラムス皇民になることは困難です。
人間や妖精では、ロストロイヤルやハイエルフと言った、懐かしい単語が並びます。妖精王は姿を消しました。
鬼、龍人族はGMの認可が必要で、半鬼や、半馬人、人魚、川小人、幽魔などのイロモノ?族のPCも姿を消しました。
さらに種族毎の『魔数』が復活しています。これはBローズまで見られたもので、判定において魔数が出た場合、振り足しができるというものです。
さらに種族によって作成時から固有の魔法と特技を持つようになりました。
魔法に関しては、レベルアップ時にも成長の可能性があります。
能力値は、「身体」「反応」「心魂」「魅力」の4つにまとめられました。また、これもBローズまで見られた、『成長限界』が復活しています。
プレイ前の印象ですが、知力がしばしば「感覚」で計られたFローズよりも、むしろ使いやすいのではないかと思います。
逆に、知識判定は特技に負うところが大きくなりそうですが、それ以外の場合のために、D100判定が用意されています。
身体が0になると死亡(いわゆるHP)、反応が0になると麻痺(副次的なHP)、心魂が0になると気絶(いわゆるMP)、というのも、極端なPCに走りがちだったFローズよりも良さそうですが、数値管理の手間は増えそう。
回復も、Fローズより困難になっています。これも好感がもてます。
魅力が一つの能力になってしまったのは多少寂しい気がします。
クステ、については、ほぼ踏襲しています。運、不運の状況がいくつかずつ設定されており、Fローズと違って、それらすべての状況が運、不運に適応されます。
PCは、経験値を得て成長します。
具体的には、0→10レベルまでのレベルアップと、リアルロール(以下RR)のリロールの回数増加、特技の関わるRRのリロールの回数増加、能力値の上昇、さらに特筆すべきは、『称号の獲得』です。
この称号は、名前のみのものではなく、コミュニケーションの上昇や特技の増加、魔法使用の際の特典などが付随するため、シナリオ中での推奨行動ともなり、楽しそうです。
あと、経験表が姿を消しました。これはFローズのキャラクターメイクと成長で最も楽しかったものなので、残念です。
判定
能力値によるRRは、2D6となりました。目標値を設定して、「以上」で成功となります。
対抗RRも同様です。
さらに、RRには魔数による振り足しと、1ゾロの自動失敗、6ゾロの自動成功が加わりました。ちょっとソードワールド(富士見/グループSNE)を思わせる判定方法です。
能力値以外による判定はD100によります。
コミュニケーションについては、別に『遭遇コミュニケーション表』が用意されています。
戦闘に関しては、「遠隔、魔法、道具」→「通常」→「白兵」、の順で一巡し、それぞれ反応順に行動します。
3つのうちのどれかの行動を取ったPCは、その一巡においては回避や戦場離脱以外の行動を取ることができません。
シナリオ、ワールドガイド
第2章は『シナリオ』。掲載されているシナリオは『ミレアの黒塔』(!)『アイーノの悲劇』の2本です。
前者はBローズに、後者はホビージャパン社のTACTICS誌に掲載されたもので、従来のファンには馴染みのあるものでしょう。
今後、どんな形態でもいいので(直販限定同人誌は悲しいけど…)、新たなシナリオを継続的に発表してほしいとおもいます。
第3章は『ワールドガイド』で、年表、宗教、地域、クリーチャーマニュアルと続きます。
年表には、上古、中古、新古の説明が増えています。宗教では例によって神々のルーンが記されていて、今回はちゃんとガルパニも出ています(^^;。
クリーチャーで目を引くのは、Bローズ以来姿を消していた、主としてケルト系の妖精、パンシーやブラウニー、ブラック=アニスやレッドキャップなどが復活しています。また、幽魔として、グドルやウィルバーレ、ヒキノス=キノス、などが載っていますが、挿絵は博物誌のものと同じで、あのふてぶてしく脂ぎったおっさんグドルです。もちろん頭には蝶ネクタイが付いています。Bローズの頃のスリムなグドルの方が格好いいような気もしますが、まぁ、これはこれで…。
残念ながら、精霊たちは姿を消しました。
チャート
第4章は『チャート』で、キャラクター誕生表、クリティカルヒット表、成長表、汎用モンスターデータ表、アドベンチャー用品売買表、魔法カード一覧が収められています。
まずキャラクター誕生表ですが、一見して思うのは、妖精族の「身体」の成長限界がかなり低く(人間の半分位)、これによって従来の妖精族の圧倒的な有利さが相当減っているように思われます。
例によって丘小人は「ハズレ」っぽく、心魂の成長限界が低いので成長に期待がもてない様なのですが、新ローズでは特技として「隠れる」「投げる」などがあるので、うまく使えばそれなりに楽しそう。他にも、宴会、愛嬌、冗談などの特技があるので普段の生活に潤いを…もらたすといいなあ…。しかし特技のガラクタ、ってどんなだろう。
PC間のバランスは、以前のローズシリーズに比べるととれている気がします。
クリティカルヒット表は結構過激です。相手の能力値が永久に半減(相手の感覚機能のひとつが半永久的に損なわれる、など)が、2割の確率で起こります。PC側が使う分にはいいですが、敵が使うと考えるとこれは結構怖い…。匙加減が微妙です。
成長表は、ソードワールドライクの、レベルと必要な経験値の対応表。大体「(2^レベル)×100」辺りの近似式でレベルアップしていきます。0レベルから10レベルまでですが、さらにレベルアップが必要なら倍々していけば可能かと。
汎用モンスターデータ表は便利そうです。とりあえず、雑魚はこの辺で選ぶのがいいのかも。
アドベンチャー用品売買表、従来のローズシリーズと比べるといい感じですが、価格の決定がやっぱりザルっぽいです。訂正も多そうなので、メーカーの誤植リストのデータを書き直しておいた方がいいでしょう。これについては、筆者版のエラッタにも思うところを書いておきましたので、良かったら見てください。例によって動物は安いです。
魔法カード一覧は、GMが魔法の効果を確認したいときに一覧できて便利そうです。カードを無くしたときにもありがたいかも。イラストレーターがカードの種類毎に違っていることがわかります。でもどれもいい線いってます。Fローズのムラのある絵とは大きな違いが…。
コミュニケーションガイド
今回新たに設けられ、実は最も力の入っている部分がこの第5章『コミュニケーションガイド』かもしれません。ここでは、最初にGMの役割から説明し、さらにチャートとして、セッション中にNPCと遭遇したときの相手の反応を示してあるのですが、これがなんというか、結構イッちゃってて楽しいです(^^;。
例えば、RRで1ゾロが出たとき、「相手はあなたを100%、生理的嫌悪と同時に、敵以外の何ものでもないと感じている」ので、97%戦闘になりますが、「とにかくあまりの宿命的出会いで我を忘れた錯乱状態のため、この出会いを喜び合う。」なんてのが入ってたりします。
なかでも、「相手が恋に落ちる可能性」というのが結構あって、その場合、「あなたが相手にとって異種族の同性」であっても、そこそこの確率で惚れられたりします。他にも「旅の仲間」になってくれる可能性なんかもそれなりにあって、遭遇RRは楽しそう。「感情」システムが無くなった分の「遊び」が発揮されている部分でしょう。
使用に関してはGMの裁量次第のようなので、強制的に感情を上下させられるFローズよりも、受け入れやすいと思います。
さらに、シナリオの作り方の説明が入って、第5章が終わり、後にデザイナーズノート、索引が入ります。
索引は、サプリメント『博物誌』を除いてシリーズを通じて初めてのものです。RPGのルールの煩雑さを考えるととても有用なので、大いに評価できると思います。
まとめ
ながながと書いてきましたが、総じて『ルールはまとまりよくなっている』『商業製品としての質は上がっている』『ルールで無理のあった部分がうまく整理されている』というのが、今の時点での感想です。
旧ローズが出てから18年、特にFローズの多人数による共同作業を経て、ルール、ワールドともに完成度が高まっているのを感じられます。
Fローズ、Bローズともに、まだその役割を終えたわけではないでしょうが、四王国時代のユルセルーム世界を旅するには、このルールが最もふさわしいと思われます。
1冊の本にローズ世界をまとめるのは大変だったと思いますが、こうやって新しい版が出たことは、ユーザーとしては非常に嬉しい限りです。
さらに、魅力的なユルセルーム世界を紹介するサプリメントやシナリオ集の発売を願ってやみません。
このゲームが多くの人に楽しまれ続けることを心から祈りつつ…。
(2002年7月4日、なぜか奥付では初版発行日になっている日の前日に…さらに筆者のあんまりめでたくない…回目の誕生日に、記す(^^;)