梅木 信治/Shinji UMEKI/sumeki@t3.rim.or.jp
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雪印乳業の対策はこれで十分か?(2000-8-7)

7月のトピックス「雪印製品食中毒品質管理 をご覧になっていない方は合わせてお読み下さい.
 雪印乳業中毒事件から1ヶ月あまり経過して,再発防止策がとられ,厚生省の承認も得られて,生産が再開されたことは,皆さんも良くご存知のことと思います.この間,基本的な衛生管理体制の見直し,HACCPに関する再検討,返品牛乳の再使用禁止,管理および監査体制の強化などのアクションが,新聞やテレビなどで報じられましたが,詳しい経過については,雪印乳業株式会社のホームページ(http://www.snowbrand.co.jp/)に客観的に掲載されています.
事件発生後に,
これだけの自主的な展開ができる実力を会社として持っていながら,どうしてあのような事故を起こしてしまったのか不思議な気もしますが,東海村のJCOの事故の際も,後処理は殆どJCOサイドで自主的に実施した経過と共通点があるように思われます.つまり,企業として技術的な実力がなかったために発生した問題ではなく,実力が有機的に機能しなかったためのトラブルであったと考えた方がよいと思われます.

 ただ,対策に関しては,
日本人的な発想が強く出ているように感じますので,当分の間は心配ないと思われますが,時間と共に関心が薄れてくると気になる面もあり,もうひとつ,歯止めが必要な感じがします.当事者は自己責任から,フンドシを締め直して,二度と問題は起こさないようにと,精神的にも,技術的にも必要以上に対策を講じたと考えられ,大変だったと思いますが,厚生省や第三者の専門家からの指摘事項やアドバイスは十分と言えるのでしょうか?

 発想の原点が同じであれば,あまり意味がないことになると思いますが,このあたりの情報に関しては具体的なニュースがないように思います.前回のトピックスでも触れましたが,いわゆる
管理特性に関する具体的な検討がいまひとつ足りないような気がしてならないのですが,皆さんはどうお考えですか?
 たとえば,HACCPのCCPと実際の管理特性については,どのような見直しがなされたのか,この点が最も重要な部分だと思われるのですが,ホームページの報告にも記載が見られません.先ほど日本人的な発想と表現したのは,「正しい作業をしていれば問題は起きない.」 という考え方を原点にしている点を指しているのですが,これを
「正しいつもりで作業をしていても,問題が起きることもある.」 とした方がベターだと考えたいのです. 私としては,抽象的な議論をするつもりはありませんので,身近な例で管理特性の重要性を説明してみたいと思いますから,以下の話をご一読下さい.



管理特性 とは?

  仕事に限らず,日常生活でも「管理」と言う言葉がいろいろな場面で使われるが,基本的には「良好な状態を保つ」とか「決められた状況を維持する」といった意味であるように思う.それにいろいろな言葉がついて,品質管理とか安全管理,生産管理,原価管理,労務管理,人事管理,健康管理,と言う具合に事例はいくらでも出てくる.それでは「どうやって管理するのか?」について考えてみると,一つの方法は仕事の場合であれば,作業標準やマニュアルを忠実に守っているかどうかについて,チェックする方法がある.でも,この方法は,作業者の善意とか熟練度が前提になるので,信頼性が高いとは言えない.もう一つは,結果や出来栄えを見て,判断する方法もあるが,これだと場合によっては,後の祭りになってしまい,管理とは言えなくなる.

 そこで,
悪さの兆候が表れたら,すぐにアクションがとれるように工夫することを考えた.高血圧の人は,定期的に血圧を計るし,糖尿病の人は血糖値を計り,それらの値によって適切なアクションをとる.工場では,通常の場合,少なくとも工程ごとに重要な中間特性を定めてその値を常時監視し,いつもと異なる値や傾向が出たら,アクションをとるのが普通である.一般には,これらの中間特性のことを管理特性と呼ぶ.HACCPの場合は,これらの中から特に重要なものを選び,CCP(重要管理点)の管理特性に指定する.

 注意深い人は,血圧が高くなくても日常生活の中で健康に注意し,食べ物や適度な運動,十分な睡眠などに配慮する.工場の場合も,管理特性が異常値を示さなくても,普段から
社員全員がお互いに注意し合って仕事をする体質であれば,完全なマニュアルを作るよりはるかに安定した製品が作れるのだが,現実は必ずしもそうではないので,やはり管理特性が必要になる.ただしこれだけでは十分とは言えない.)









       


Happy life !!!


 



 それから,当事者からは指摘しにくいことではありますが,厚生省のお墨付きがあれば安全だと言う考え方はあまり当てにならないし,(もしそうなら,こんな事故は起こらない.)第三者の専門家が技術的な専門家とか,HACCPの専門家だけであれば,これも考えてみれば,身内みたいなもので,同じ穴のムジナだから相談しないよりはマシだとは思うけれど,発想が同じで本当の意味のコメントは出てこないように思いますが,如何でしょうか.それにしても今回の事件では,品質管理学会のホームページを見ても,ノー・コメントだし,第三者の専門家として検討を依頼された話も聞かないのは不思議な話ですね.