2001-9 QC&C Labo 梅木 信治

*** QCテクニック初級講座 *** 
これなら簡単,誰でも使えるSQC
(第5回)
「管理図を改善活動の指標に使ってみよう!

1.管理図は改善の効果確認にも使える!

 管理図は,基本的には製造工程が安定した状態にあるかどうかを判断するためのグラフですが,実際には製品歩留まりの向上や重要特性の改善をターゲットにした品質改善活動に於ける効果確認の道具(手段)としても使うことができます.

 管理図の原理は,平均値の動きをバラツキを物差しとして変化があったかどうかを統計的に調べることですが,同時に,バラツキの大きさの変化も調べることもできます.見かけは,折れ線グラフに 1本の中心線とその上下に 2本の管理限界線と称する線を記入したグラフですが,平均値を求める際のサンプルサイズ(n)の決め方によって,状況は大きく変化します.
管理限界線の決め方は,平均値±3σ/√n が基本であり,n が小さい時は,範囲(R)からσを計算しますが,実際には統計数値表を参照して求めます.また,統計解析ソフトを使えば,自動的にコンピュータが計算して,グラフ上に線を引いてくれます.

 それから,データの種類によって,色々なタイプの管理図がありますが,最もポピュラーなのは,Xbar - R管理図(エックスバー・アール管理図)と言われていますが,全体の動きを掴むのであれば,n を大きくとった
Xbar -σ管理図(エックスバー・シグマ管理図)の方が優れています.また,計数値と呼ばれている不適合率(不良率)や欠点数などは,それぞれ 管理図とか c管理図を使うのがよいと本には書いてありますが,実際にはほとんど役に立ちません.

図1 歩留まりXbar管理図(n = 50)      
Date of June               
 
 上に示した管理図は,表1(ここをクリック)の歩留まりデータを50ロット単位でとった平均値の Xbar 管理図です.50ロットを1群(グループ)にした理由は,まだ生産初期の段階であるため,個々のロットのバラツキが大きく,5ロットや10ロットでは平均値の変動が大き過ぎて全体の傾向が掴みにくかったからです.グループ分けを変えた場合のグラフは,あとで参考までに示します.なお,表1の一部を下に示しておきます.記憶のよい方なら思い出していただけるかと思いますが,このデータは,2ヶ月前のヒストグラムの説明で使用したものです.

ある電子部品の歩留まりデータ(%)の一部(6月第1週)
(3年前の生産実績から 20ロット/日 サンプリング)
M/D 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平均値 シグマ
6/1 87.7 86.7 83.2 78.0 86.0 84.9 89.1 90.3 82.4 77.0 84.5 4.4
84.1 93.2 83.2 89.4 91.0 87.6 76.8 82.5 86.3 90.0 86.4 4.9
6/2 85.7 67.8 90.0 73.0 89.1 81.3 89.9 90.9 85.6 84.9 83.8 7.8
87.7 79.2 87.1 86.1 89.5 84.4 82.4 88.7 84.6 93.3 86.3 3.9
6/3 90.0 81.3 86.7 89.6 88.7 93.1 85.8 95.7 85.9 83.2 88.0 4.4
90.5 87.5 77.6 89.5 87.2 75.2 86.5 88.3 91.0 85.2 85.8 5.3
6/4 84.8 88.9 88.9 81.8 91.4 81.8 84.6 91.0 92.8 91.0 87.7 4.1
89.1 86.0 90.7 76.0 88.6 86.1 93.9 88.8 81.4 79.2 86.0 5.5
6/5 95.1 86.9 88.9 91.0 82.2 87.4 91.7 90.0 93.6 92.8 90.0 3.8
92.6 87.8 89.7 94.5 89.8 90.2 93.2 88.9 92.2 92.1 91.1 2.1
87.0 4.6


2.効果的な管理図の使い方

 品質管理の参考書には,いろいろな種類の管理図の説明がありますが,p管理図などは実際に使ってみるとほとんど実用になりません.それから一般に工程が安定した状態を維持する目的で使われると書いてありますが,これからの経営は常に
改善や改革が求められる時代ですから,維持管理を目的にした手法では役に立ちません.そこで,管理図の考え方を前向きに活用するための提案をしたいと思います.

1.これからは,Xbar-R管理図よりXbar-σ管理図を積極的に使おう.
2.歩留まりや不適合率(不良率)も Xbar管理図を使った方がよい.
3.管理図をうまく使えば,効果確認の有意差検定をする必要はない.

一番目の問題は,平均値を求める際のグループ分けの問題ですが,なぜかnが5前後のXbar-R管理図が適当であると言われている点に疑問を感じ,nを大きくした場合との比較を行ったところ,
後者の方が役に立つ情報量が多いことに気が付いた結果の提案です.図1で紹介した管理図は,n=50ですが,このような例はあまり見たことがないでしょう.管理図はアクションをとるための道具ですが,アクションをとるための判断は管理図だけではありません.よく言われているように,感と経験に基づいてアクションをとることは現実に行われています.
 
 その際,効果があったかどうかが大切なのであって,それを簡単に確認する一つの方法が管理図であるとも言えるのです.通常のバラツキを上回る変化があれば,適切なグループ分けをした管理図なら,確実にその変化をグラフ上で示してくれます.適切なグループ分けは過去のデータを対象に,いくつか試してみれば分かります.バラツキが大きい時は,nを大きくしないと変化が掴めません.そうするとアクションのタイミングが遅くなり,手遅れになる心配が出てきます.そのような場合は,ロットサイズを小さくすることで対応します.一般に
いろいろ問題があるうちは,小さなロットサイズで管理した方がクイックアクションがとれます.

 二番目の問題は,従来の考え方を否定することにもなりますが,不適合率(不良率)はp管理図を使うように参考書に書いてあるのは,書いた人が実際に使ったことがないからだと思います.Xbar管理図で十分使えます.事実,図1もそのケースです.ただし,不適合率が1%とか2%のように低い場合は,データの分布が歪んでくるので正規分布に近づけるために対数変換などの
変数変換が必要になりますが,この件はあらためて触れます.

 三番目の件は,比較したいグループに群分けして管理図を描いてみればすぐ分かる問題で,参考書に書いてあるいわゆる有意差検定などは必要ありません.

3.グループ分けを変えたときの管理図を比較してみよう!

 表1のデータを使ってnをそれぞれ 5,10,20,50,100にした時のXbar管理図を描いてみると次のようになります.実際には,バラツキの管理図も合わせて使用しますが,グループ分けに技術的な意味がない場合は,Xbar管理図だけでもいいでしょう.今回の事例では,n=20で1日単位,n=100で1週単位ですから,何か即効的なアクションをとった場合の効果を見たいのであれば,nが10か20の管理図が適当でしょう.マクロ的に状況把握するのであれば,nが100 つまり週単位で十分です.この月はいろいろアクションをとった効果が週単位の管理図で明白に確認できます.有意差検定は必要ないでしょう.つまり,
nの大きさは,ケース・バイ・ケースで決めればよいのであって,固定化するのは意味がないのです.このあたりが管理図の運用上のノウハウでもあり,難解な部分でもあると言えます.

n=5

n=10

n=50


n=20
n=100
           


4.実際には何をどうやって調べるのか?

 初期生産の段階では,
ケアレスミス,原材料関係の納入品質バラツキ設備関連の不安定性,製造条件の修正などが重なって,歩留まりが大きく変動します.現場の作業記録やスタッフの細かい観察,設計者の判断などを会議の中で検討し,アクションをとっていくことが多いと思いますが,その結果がどう出るかを管理図でチェックするのが,効果的な方法と言えるでしょう.それから,上のようにnの大きさを変えてどうなるかを調べるには管理限界線の計算だけでも大変なので,これらをスピーディに処理するには今までにも紹介した統計解析ソフトのひとつである「JMP」が最適だと思います.JMPなら,上の管理図もnの指定値を変えるだけで,瞬間的に表示されますから,見るだけなら1分もかかりません. これからのスピード時代に相応しいソフトだと思います.今回は管理図の説明だけですが,実際の解析はヒストグラム散布図回帰分析などを同じデータファイルを使って総合的に行います.ケアレスミスなどは,作業者ごとに層別したり,原材料関係であれば,納入ロットごとに層別したりしてバラツキの原因を調べます.時間をかけて沢山のデータをとるより,ヒントを掴んだらまずアクションをとり,効果を早く確認する進め方のほうがベターです.