2001-8 QC&C Labo 梅木 信治


*** QCテクニック初級講座 *** 
これなら簡単,誰でも使えるSQC
(第4回)
「工程能力指数 (Cpk) について」


1.工程能力指数(Cpk)とは何か?

 工程能力とは,定められた規格限度内で,製品を生産できる能力のことで,
その評価を行う指標が工程能力指数です.一般に Cp の記号で表示されますが,
これは Process Capability の頭文字を組み合わせたものです.Cp の値は
以下の式で計算します.なお,σ とあるのは,シグマと読み,標準偏差のことです.

(1)上限規格のみの場合:Cpu = (上限規格値 - 平均値)/3σ
(2)下限規格のみの場合:Cpl = (下限規格値 - 平均値)/3σ
(3)両側規格の場合:Cpu と Cpl の小さい方の値

 いずれの場合も Cpk の記号で表示されることが多いようです.Cp で表示される
のは両側規格の場合に平均値が規格の中央にある時で,あまり実用的ではありません.
具体的に説明すると,Cpk = 1.0 ということは,平均値から3シグマ離れたところが
規格の限界であり,片側規格の場合は 0.14%ほど規格外の製品が存在するという意味
であります(第2回目で説明した正規分布曲線のグラフを見れば分かります).

 規格値の決め方は購入者側がある程度安全を見込んで多少の規格外れでも実害が
生じないように配慮するケースが多いので,不良率が0%でなくてもいいのですが,
単品で使用する場合はともかくとして,テレビやパソコンなどの部品として購入する
場合には,それぞれの部品の不良率が重なって影響してくるので,一般に
ppm オーダー(百万分の1)の保証が必要になってきます.これは Cpk の値で 1.5 以上
に相当するので,シグマで表現すれば,規格値から平均値が 4.5σ 程度内側にある
ような分布を持つ工程でないと安心できないことになります.


2.Cpk の計算事例

 図1 カセットテープ感度のヒストグラム=100) と Cpk

   感度の規格:±2dB

データ数: 100
平均値:    0.03dB
標準偏差: 0.431dB

Cpk :   1.52
      (
5ppm)


 あまり抽象的なデータで説明しても興味が湧かないと思いますので,リアルな
データで説明しましょう.表1はオーディオカセットテープの感度のデータですが,
出荷ロット(100,000巻)ごとに 10個のサンプルを測定したデータです.10ロットの
データを示しましたが,感度(333Hz)の規格は±2.0 dB です.

   表1 カセットテープの感度(333Hz出力)のデータ
LotNo 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Mean Sigma

A201 -0.1 0.9 0.2 0.0 0.1 0.1 -0.7 0.9 0.6 -0.2 0.18 0.50
A202 -0.2 -0.8 0.6 0.1 -0.5 0.1 0.4 -0.7 0.5 -0.1 -0.06 0.49
A203 -0.3 -0.3 -0.3 0.2 -0.3 0.7 0.2 -0.3 0.6 -1.1 -0.09 0.53
A204 0.7 -0.6 -0.1 -0.3 -0.4 0.1 1.0 -0.2 0.7 -0.6 0.03 0.58
A205 -0.1 -0.1 0.5 0.1 0.0 0.6 0.1 0.3 0.2 0.3 0.19 0.24
A206 0.2 0.3 -0.2 0.5 0.0 0.8 -0.5 0.0 -0.1 0.4 0.14 0.38
A207 -0.5 0.1 -0.4 -0.5 0.8 0.0 -0.2 -0.2 0.5 0.8 0.04 0.50
A208 0.0 0.0 0.4 -0.4 0.4 -0.9 -0.1 0.3 -0.5 -0.2 -0.10 0.42
A209 -0.4 0.1 -0.2 0.0 0.3 0.0 0.2 0.3 0.4 0.3 0.10 0.25
A210 0.1 -0.1 0.5 0.2 -0.1 -0.6 0.2 -0.6 0.0 -0.8 -0.12 0.42

Mean(平均値)                   0.03 0.431

 今ではカセットテープは日用雑貨品のひとつであり,1巻100円で気軽に買える
時代になりました.生産技術的には20年前に確立した製品であり,生産拠点の多く
は海外にシフトしていますが,品質は安定しており,不良品が出ることはほとんど
ありません.

年間の出荷量は国内だけでも約2億巻もありますが,最近はミニディスク(MD)に
主役の座を譲りつつあります.したがってロットサイズも10万巻以上と非常に
大きいのですが,それらのロットからそれぞれ10巻サンプリングして測定したと
考えて下さい.

 100個のデータをヒストグラムにしたものが 図1です.Cpk の計算をしてみると,
1.5 くらいになります.規格に対する推定不良率は 5ppm 程度ですから,実用上は全く
問題ないと言えます.逆に考えると,規格幅の半分の範囲に実測データが入っていない
と,1.5 の Cpk は得られないことになります.なお,下記の式で,Su は上限規格値,
Mean は平均値,Sigma は標準偏差のことです.

  Cpk = (Su- Mean)/(3*Sigma) = (2.0- 0.03)/(3*0.431) = 1.52

 工場で Cpk を算出する場合,サンプル数はどの位が適当かについて考えてみましょう.
上の表には 10個ずつの平均値と推定標準偏差を示してありますが,これらの値を見ると,
シグマは 0.24から 0.58まで幅があることに気が付くでしょう.このまま 10個単位で
Cpk を計算すると,1.2 から 2.8 あたりまで,ばらついてしまい,真の値がどの位なの
か判断がつかなくなってしまいます.つまりサンプル数が少ないと Cpk(工程能力指数)
の信頼性が損なわれてしまうので,現実的には 100個位のデータで計算するのが適切だと
思います.

Cpk の値はどの位必要か?

 品質管理の本を読むと,一般に Cpk が 1.33 以上であれば,工程能力としては十分
であると書いてありますが,これは一応の目安であって,用途によっては,もっと大きく
ないと具合が悪い場合があります.不良率に換算すると,Cpk が 1.33 は 60ppm 程度で
あり,規格値を外れると実害が出る恐れのある場合には,これでは不十分ということに
なります.

テレビやパソコンに使用される部品などは,完成品の保証レベルを確保するには,
個々の部品は 5ppm程度の不良率を保証する必要があります.これは Cpk の値で
1.5 前後ですから,シグマの値で表現すれば,Xbar±4.5σ に相当します.
(これは最初にも述べましたが・・・)

 カセットテープの事例で説明した Cpk がほぼこれに相当しますが,先に述べた
ように,カセットテープは成熟しきった製品ですから当然としても,技術的に最先端を
走る半導体やその関連部品になると,Cpk は1以下であり,品質保証のためには,
選別が必要になります.

製造工程が安定して工程能力が高くなった頃には,商品寿命が尽きてしまい,また
新製品からやり直しです.実際にはこの繰り返しで,Cpk が 1.5 以上になって安定生産
が可能になる工程などはハイテク産業では存在しないのが現実です.このように,理想と
現実には大きなギャップがあるのがほとんどで,これを埋めるためのノウハウが本当は
必要なのです.