*** Quality Information Service  (for Manager, Staff & Scientist) ***
     梅木 信治/Shinji UMEKI/sumeki@t3.rim.or.jp (http://homepage1.nifty.com/QCC/)

1999/11/22 掲載記事
*** JOIS (科学技術情報データベース)へのアクセス方法と利用法 ***

 11月15日に,「H2ロケット8号機の打ち上げ失敗」 のニュースが流れ,先の「臨界事故」と合わせて, 日本の誇る?大型技術システムは残念ながら,名実ともに地に落ちてしまいました. これは,科学技術庁の事務次官(岡崎俊男氏)が辞任しても問題が解決する訳ではなく, これから抜本的な開発体制の見直しが迫られる事態になってしまったように思います. 現象的には,プロジェクトが大型化したために,繋ぎの技術と, 全体を見通す技術が不十分となり,結果として無責任体制になってしまった 感があります.

もうひとつの大きな原因は,コストダウンの要素が重要課題 になってきている点にあるように思います.最先端の研究者や技術者から見れば, コストダウンの仕事は,あまり興味がなく,新しい他の分野の研究にシフトしていきます. 私の推測では,原子力にしても,宇宙開発にしても,今回問題を起こしたプロジェクトは 採算性を前提にした事業化計画であり,メンバー構成は, それぞれの最先端分野で活躍した研究者は既に現役を引退し,2世代目,3世代目にシフト しているのではないかと思います.

第1世代の研究者は,極端に言えば,情報 ”ゼロ”からスタート するので,失敗も多く,成功する確率も低いのですが,成功した場合は, 失敗事例が身体に染み付いているので,自分が陣頭指揮をしている間は,問題を起こすことは 少ないのではないかと思います.2世代目は,先輩から直接,失敗事例を聞かされるので, トラブルを避けて進みますが,3世代目になると, 頭では分かっていても,反射的に行動できなくなり, 不幸にして悪条件が重なると,大事故になってしまうケースが出てくるように思います. まして大型プロジェクトの場合は,リーダー自身が直接行動をとる訳ではありませんから, リスクの確率は更に大きくなるように思います.

では,「これからどうすれば良いのか?」が 最重要課題になる訳ですが,これについては日本の「偉い方々」が衆知を集めて検討される でしょうから,ここでは,私の個人的な考えを 2つ,提案してみたいと思います. ひとつは「教育の問題」であり,もうひとつは, 研究者や技術者の「情報収集の方法」に関する提案です. 「教育の問題」については,いろいろと述べたい事が多くあるのですが,これはいずれ 触れるとして,今月は,2番目の件について,私論を述べたいと思います. お時間と興味のある方は,最後までお読み下さい.

考えてみれば,今回のようなトラブルは,国家プロジェクトだけでなく, スケールの差こそあれ,企業においても,発生する いろいろな問題にも関連があるように思われます. 研究開発の分野では,研究者や技術者が関連分野の研究論文や特許情報を調べる事がよく ありますが,最近は,自分で探さずに,情報収集スタッフに依頼するケースが多くなって きているように思います.

このことは,スピードを重視する最近の業務展開においては,メリットがあるのですが, 自分で調べる場合に得られる関連情報を見落としてしまう危険性 があります. 一般的に,何か新しいことを試みる場合,自分が考えているストーリー通りになることは 殆どなく,途中で偶然手に入れた情報とか,雑談の 中から,ヒントが掴めて新しい展開が開けることがよくあります. 関連情報の中には,リスク回避に役立つヒントもあり, ないがしろにできません.「昔の人はこんな馬鹿げたことをやってたのか」と言うような 情報が,反面教師になって,参考になることも多いのです. その意味では,情報調査は,多少時間がかかっても,できるだけ自分で行った方が 好結果をもたらすので,あまり人に頼らない方が良い と思います.つまり,本来は自分自身で行うべき事を,忙しいから他の人に頼んで間に 合わせている訳で,この辺りを原点に戻す必要がある のではないかと思います.

いわゆる情報検索の方法も,コンピュータの発達により,年々進歩して,最近では,誰でも 簡単に,自分で調べることができるようになってきました.インターネットのホームページ 情報を活用すれば,相当の情報が無料で手に入る世の中になってきましたが, 最先端の研究論文は,まだ無料と言う訳には行きません. そこで,有料データベースですが,いろいろな科学技術分野で利用できる 「JOIS」について,その活用法を分かりやすくまとめて みましたので,お読み下さい.ご自分で何か研究されている方は,直接利用されるとよいと 思いますし,監督管理業務をなさっておられる方は,研究者や技術者にこの方法を紹介して, 活用してもらうよう指導されると効果が上がると思います.では始めます.

*** JOIS (科学技術情報データベース)へのアクセス方法と利用法 ***
(JOIS は JICST Online Information System の略で,ジョイスと呼びます.)
一般に,R&Dと呼ばれる研究開発や,製品の改良などを行う場合,特許情報と共に 学術研究文献を調査し,参考にすることがよくあります.日本では通称「JICST」と 呼ばれる科学技術情報センターが, 国内はもちろん, 海外の主要な学術雑誌を収集し, 大学や企業の研究者,技術者に対して情報提供サービスを行っています. 現在は「JOIS」と呼ばれるオンラインデータベースに,原論文のアブストラクトが収録 されており,キーワード検索で,必要な情報を入手 することができます. 大企業などでは,情報収集専門のスタッフがいて, 研究者や技術者はその人達に依頼すれば,サービスしてもらえますが, ベンチャー企業や,中小企業の技術者はどうしているのでしょうか?  企業の規模は異なっても, R&Dの本質 は同じ ですから,自分自身で調べないと,遅れを取って しまいます.最近は,インターネットが普及してきましたから,個人でも簡単に これらの情報を入手できるようになりました. ここでは「JOIS」へのアクセス方法とその利用法について述べてみたいと思います.

なお,3年ほど前に行われた特殊法人の整理,統合化の際,「JST」と称する 「科学技術振興事業団」が作られ,「JICST」はその中に吸収されて,名称が 「科学技術情報事業本部」となり,格下げされました. しかしながら,従来 の呼称である「JICST」は,そのまま残り,現在に至っています. 「JICST」の由来は Japan Information Center for Science and Technology であり,政府の役人が官公庁の合理化にかこつけて,紛らわしい改悪を行った 典型的な事例です. また,運営方法にも,如何にも日本の役人がやりそうな 不合理なシステムがいまだに残っていますが,これについては後で触れます.

A法(20年前に スタートした時の方法で,今でも使われています.)
(1) JICST に申し込み,登録をして「利用者番号」と「パスワード」を交付
   してもらいます.何故か,個人での登録はいろいろな制限を受けます.
(2)「JICSTネット」と称する専用回線の電話番号にアクセスして,「JOIS」
   のホストコンピューターに繋ぎ,今となっては,なつかしい「コマンド
   方式」で,決められた手順で必要な情報を調べます.
(3)いまだに接続スピードは,9600 BPI で,時代錯誤もいいところです.
   しかも,接続時間料金は,100円/分です.(ほかに情報出力料 120円/件)
(4)情報の出力はプリントアウトが原則で,ダウンロードする場合は別料金が
   必要です.(少し考えれば,ただでダウンロードできますが・・・)

B法(インターネット経由で,JOIS にアクセスする方法
(1)「JICST」のホームページにアクセスします. ( www.jst.go.jp/JICST/ )
(2)「Enjoy JOIS」をクリックして,JOIS の Webサーバーに入ります.
(3)検索画面は比較的良く出来ていて,分かりやすい.しかし,ブラウザーの
   ツールバーにある「戻る」,「進む」,「中止」などは使えません.
(4)料金は, ファイル接続料金 600円/回+情報出力料金 120円/件です.
(5)A法に較べれば,はるかにスマートになっていますが,やはり事前の
   登録が必要です.

C法(ゲートウェイ接続で,「JOIS」にアクセスする方法)
(1)いくつかルートがありますが,NIFTY-Serve 経由の方法を説明します.
(2)NIFTY-Serve の会員であれば,NIFTY-Serve にアクセスし,「GO JOIS」
   で,JOIS のサーバーに入れます.操作方法はコマンド方式で料金は高く,
   接続基本料金 100円 + 105円/分 + 情報出力料 120円/件 です.

D法(インターネット経由のゲートウェイで「JOIS」にアクセス)
(1)@nifty のホームページに,NIFTY:JOIS のコーナーがあり,次の URLを
   クリックすれば 「Enjoy JOIS」に入れます. ( www.nifty.ne.jp/WJOI/ )
   なお,WJOI の OI は,ゼロ,1 でなくて,オー,アイ です.
(2)「JOIS」にアクセスするには, @nifty の ID と パスワードが必要です.
(3)基本的には,B法と同じですが,一部の機能が制限されています.
   例えば原文献の複写申し込みは,オンラインでは出来ません.
(4)料金は,B法と同じですが,@nifty の使用料に追加されます.

 注)@nifty とは,1999/11/1 に NIFTY-Serve と InfoWeb が合併してできた
   プロバイダーです.

以上述べたように幾つかの方法がありますが, @nifty の会員であれば, D法が使えます. ご自分のプロバイダーからもゲートウェイで利用可能かどうかについては, プロバイダーのホームページにアクセスしてご自分で調べて見て下さい.
なお,原文献のコピーを必要とする場合は,A法,B法の場合は,オンラインで 申し込めますが,ゲートウェイでアクセスするC法,D法では,出来ません.
その場合は, JICSTの複写センター(0120-004-381) に電話して,複写申込み用紙を送ってもらい,アブストラクトに付いている記事番号を 所定欄に記入して,FAXで申し込めば,2,3日後に入手できます. 費用は1件,約千円です.

最後に重要な事を忘れるところでした. 利用できるのは, ウィークデイだけ で,しかも深夜は使えません.インターネットが利用できるようになって, いろいろ便利になりましたが,官公庁のお考えは,よく理解できません. 英文ファイルもあり,海外からの利用も可能なのですが,欧米などでは,昼間は 利用できない訳で,逆の立場で考えると,奇妙な話です. ただし,データベースそのものは,今回は説明しませんでしたが,ほかにも数多 くのファイルがあり,非常にレベルが高く,利用価値が大きいと思います. なお,皮肉なことですが,「JOIS」に含まれている,原子力情報ファイル[NUCLEN] は,無料で使用できます.
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(追伸)
 個人で「JOIS」を利用するのは,多分まだ少数派だと思いますが,とても便利で, 本当に,「お勧め」です. 「臨界事故」や「H2ロケット事故」にかこつけて, このような紹介をしてしまいましたが,本当はこれらの事故と関係なく,「R&D」 を志す研究者や技術者に使っていただきたいのです.たまたま,私が品質コンサルティング をしている企業で,このようなニーズがあったので,まとめたものを,転載させて いただきました.
蛇足になりますが,私は「JOIS」ができる前から,「科学技術文献速報」をよく使わせて いただいており,最初の「JOIS」(カタカナ表示しかできなかった)から,利用させて いただきました.当時は(20年以上前)まだパソコンもなく,国会議事堂の近くにあった 科学技術情報センターへ出かけて行き,端末機を使わせてもらった記憶があります.

最後にもうひとつ,タイトルやアブストラクトの英文表示の件ですが,固定フォントを 使っているため,とても読みにくい問題があります.私は,一度テキスト形式で取りこみ, 再度 HTML形式に戻す際,P(プロポーショナル)フォントを指定して読みやすくしています.

 今月は,「JOIS」の説明をしましたが,研究論文と並んで,重要な情報の一つに 「特許情報」 があります.こちらの方は,今年(1999)の4月から, 特許庁(JPO)( http://www.jpo-miti.go.jp )がホームページを使って, 無料開放を始めましたので,とても便利になりました. 「特許電子図書館」 のコーナーです.一度試してみて下さい.ただし,無料ということもあって, 日中は相当混んでいます.夜間か,土,日なら大丈夫のようです.