2002-12 QC&C Labo 梅木 信治

*** QCテクニック初級講座 *** 
これなら簡単,誰でも使えるSQC”(第15回)

抜取検査のJIS規格(1999年大改訂)の紹介(その1)
---抜取検査の基本的な考え方 ---

  商品やサービスの品質保証はいろいろな形で行われるが,最終的には検査が重要な役割を果たすことが多い.量産品の場合は抜取検査が適用されることが多いが,その基本的な考え方を理解している人はあまり多くない.日本では独自に抜取検査法が開発され,JIS規格として制定されていたが,ISO9000シリーズが品質マネジメントの国際規格として制定された後,抜取検査の分野でもISO規格が世界の標準として幅を利かすようになった.日本でもそれに合わせて1999年にJIS規格を大幅に改訂した.その中心になるのは JIS Z 9015 であり,AQL的な考え方が基本になっている.

抜取検査の基本的な考え方
 
 具体的な抜取検査の説明は次回詳しく行うとして,ここでは考え方の基本を具体
例で説明する.ある製品が1000個あり,これらから100個抜取って推定不適合品率が1%以下であればロット合格とする場合を考えてみよう.

 モデルはロットサイズ(母集団)1000個,それらの中に不適合品が10(1%)あると考える.先ず100個サンプリングした時にすべて適合品である確率を求めてみよう.これを f(0) とすれば,次の式から求められる.

 f(0) =
10C0×(1000-10)C(100-0)/1000C100 (1)


  いきなりこのような式を持ち出されても数学の得意な方はともかく,多くの方が戸惑われるのではないかと思う.高校の数学で確率・統計を学んだ方は思い出していただけると思うが,NCn の記号は組合せの数を示す数学的表示でありN個の中からn個を取り出す場合の組み合わせの数を意味している.たとえば 3個から 2個を取り出す場合は 3C2 と記すが,1, 2, 3 番号を付けて考えてみると1-2, 1-3, 2-3 の 3通りあることがすぐ分かる.
  (1)式の意味は10個の不適合品を1個も含まない組み合わせの数 10C0  1000個から不適合品 10個を除いた適合品 990個から 100個を選ぶ組み合わせの数 990C100 を掛け合わせた値を1000個から100個を選ぶ組み合わせの数である 1000C100 で割った値を示しており,この値が100個ともすべて適合品である確率ということになる.同様にして不適合品が1個含まれる確率,2個含まれる確率,3個含まれる確率という具合に計算していく.

 これは統計学的には超幾何分布と呼ばれるもので,実際の計算はマイクロソフトの表計算ソフトであるエクセルに含まれている Excel関数のひとつである hypgeomdist(r,n,R,N) などで簡単に計算することができる.上の例で説明すれば,r はサンプル中に含まれる不適合品の個数,n はサンプルの大きさ(100)R は母集団の中に含まれる不適合品の個数(10)N は母集団の大きさ(1000)に相当する.なお,超幾何分布関数は次の組み合わせの計算式と同じである.即ち,

 
hypgeomdist(r,n,R,N) RCr ×N-RCn-r/NCn

これらを実際に計算した結果を図1に示す.
これから分かることは, 100個すべてが適合品(不適合品0)である確率は 34.71個不適合品が混入する確率は 38.92個混入する確率は 19.53個の場合は 5.7,・・・ということになる.

これらの事実を別の表現で例えれば,不適合品混入率がのロットを 100ロット抜取検査を行うと,35ロットは不適合品が039ロットは不適合品が 1 20ロットは不適合品が2見つかることになる.つまり,不適合品が0, 1, 2見つかる累積ロット 94ロット(94%)になるから,一応ここまでをロット合格にしてはどうかと考える.この時,残りの 6ロット(6%)は不合格となってしまうがこれを生産者危険と呼ぶ.

次に購入者側(消費者)のリスクについて考えてみよう.今まで説明してきた事例で,抜取検査の結果,不適合品が01の場合は直感的に合格にしてもよいと判断する方が多いと思うが,不適合品が2出ても合格にしてしまうのはおかしいと疑問に思われる方も多いのではなかろうか.購入者の立場で,できるだけリスクを回避しようと考えれば当然の発想であるが,01個の時だけ合格にすると決めれば,継続して購入したロットの平均不適合品率は直感的には 0.5強になり,約束の1より厳しすぎることになってしまう.

 従って統計的には不適合品が2個の場合でも合格にして良いのだが,それも5回に1回程度で,続けて不適合品が2個も出るようだとおかしいということになる.このあたりを合理的に計算し,いろいろな場合を想定して抜取検査基準を定めることになる.一般に生産者危険は5消費者危険は10程度が適当であると言われているが,その根拠と双方の条件を満たす具体的な組み合わせなどについては次回詳しく説明する.


図1 抜取検査における不適合品混入率の計算事例

ロットサイズ(
N):1000個,不適合品数(R):10個,
サンプリング数(
n):100個の場合,不適合品数( r = 0, 1, 2, 3 ・・)が検出される確率を超幾何分布関数から求める.
Microsoft Excel にある超幾何分布関数 hypgeomdist(r,n,R,N) を使用