分散分析法によるデータ解析
前回の事例と同様に,各列の平方和を計算します.表4の右端にその値が記入されていますが,一見して2列と3列の値が大きいことがわかります.3列は粒子サイズと熱処理の交互作用の列ですから,4列から7列までを誤差項とみなして分散分析をしてみると,Bの熱処理および粒子サイズと熱処理の交互作用が高度に有意であることがわかります(表5). |
| 表4 割り付けと交互作用,平方和の表 |
| 列番 |
成分 |
割り付け |
交互作用 |
平方和 |
| 1 |
a |
A(粒子サイズ) |
|
512.0 |
| 2 |
b |
B(熱処理) |
|
9112.5 |
| 3 |
ab |
|
A×B C×D |
3528.0 |
| 4 |
c |
C(還元温度) |
|
288.0 |
| 5 |
ac |
|
A×C B×D |
220.5 |
| 6 |
bc |
|
B×C A×D |
2.0 |
| 7 |
abc |
D(還元時間) |
|
84.5 |
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| 表5 分散分析表 |
| 要因 |
自由度 |
平方和 |
平均平方 |
分散比 |
P値 |
| Source |
DF |
Sum of Squares |
Mean Squares |
F Ratio |
Prob >F |
| A(粒子サイズ) |
1 |
512.0000 |
512.0000 |
3.4420 |
0.1372 |
| B(熱処理) |
1 |
9112.5000 |
9112.5000 |
61.2605 |
0.0014 |
| 交互作用 A×B |
1 |
3528.0000 |
3528.0000 |
23.7176 |
0.0082 |
| 誤差(4,5,6,7列) |
4 |
595.0000 |
148.7500 |
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要因効果のグラフ表示
分散分析で有意となった粒子サイズと熱処理条件の交互作用のグラフを描いてみると図1のようになります. |

熱処理条件(℃)
図1 保磁力を左右する粒子サイズと熱処理条件
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得られた実験結果の技術的な検討
実験の結果として現象的には粒子サイズを小さくして,還元する前に熱処理を行うことにより,保磁力は500エルステッドを超えることがわかりました.少し専門的になりますが,これらの実験条件の技術的背景を説明しておきたいと思います.一般に実験する前に関連する技術文献や該当する技術分野の専門知識を参考にして実験計画を立てるのですが,今回の事例では磁気理論と固体化学反応に関する知識が必要です.
具体的には,磁性粉末の粒子サイズが小さくなると保磁力は高くなる傾向にあるのですが,粒子の結晶構造が不完全な場合は逆に保磁力が下がってしまいます.結晶化を高めるためには熱処理が効果的なのですが,出発原料である酸化鉄粉末を還元して磁性を持たせる工程でも400℃前後に加熱されますので,従来の汎用品は熱処理と還元反応は同時に1つの工程で行っていました.今回の実験サンプルのNo.6が従来品の条件に近い組み合わせです.同じような条件で粒子サイズの小さいサンプルを還元すると,保磁力は上がらずに逆に下がってしまいます.
そのようなサンプルをX線分析で結晶化の程度を測定してみると従来品より低いことがわかりました.温度を高くすれば結晶化が進みますから還元温度を上げてみると,今度は反応が進みすぎて安定な磁性粉末になりません.そこであらかじめ高温熱処理を施す方法を考え,実験してみたのが今回の計画なのです.このヒントがきっかけになってその後いろいろな検討を行い,小型VTR用ビデオテープの開発に成功しました.
すでにお気づきの方もおられるかもしれませんが,3列に現れる交互作用は表4で触れたように,A×BのほかにC×D である可能性もあります.そのどちらが有力であるか判断するには,統計的にはそれぞれの成分の主効果を較べてみる方法があります.一般に交互作用がみられる場合には,その組み合わせの要因の主効果も大きいケースが多いのです.今回の場合は,表4からわかるように,主効果が大きいのはBで,CとDは小さいですね.もう1つの判断基準は技術的にその交互作用が説明できるかどうか調べてみることです.すでに述べたように,A×Bは技術的根拠があります.
文章に書いてしまえばコロンブスの卵と同じで,あまり感激がないのですが,実験を行っている当事者にしてみれば,いろいろなモデルを考えてその予測が当たるかどうか実験を繰り返し,不十分ながらもわずかでも可能性が見つかると,それをテコにして新しいモデルを考えてまた実験を繰り返して目標に向かって進むのです.直交表を使えば同時にいくつかのモデルを想定して短期間に目標がクリアできるので,実験効率が高いといえるのです.
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