ディック・フランシス作品目録

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いわゆる「競馬シリーズ」 (いずれも早川書房)
   (  )内の数字は原作出版年
1 興奮
  FOR KICKS
 最近イギリスの障害レースでは、思いがけない大穴が10回以上も続いてあった。番狂わせを演じた馬は、そのときの馬体の状況から推して、明らかに興奮剤を与えられていた。ところが、いくら厳重な検査をしても興奮剤を投入した証拠が出てこないのだ。どんなからくりで不正レースが行われているのか?
 事件の解明を急ぐ障害レースの理事オクトーバー伯爵はオーストラリアに飛び、種馬牧場を経営するダニエル・ロークに黒い霧の真相をさぐることを依頼した。(1965)
2 大穴
  ODDS AGAINST
 ラドナー探偵社の調査員シッド・ハレーは、脇腹に喰いこんだ鉛の弾丸のおかげで生き返ることになった。かつて一流の障害騎手だったハレーは2年前に腕を負傷して騎手生命を絶たれた瞬間から、死人も同然だったのだ。だが、いま彼の胸に怒りが燃えあがってきた!
 彼を撃った男は誰に頼まれたのか。その黒幕は一体何をたくらんでいるのか? 傷の癒えたハレーは過去への未練を断ち切り、競馬界にうごめく陰謀に敢然と挑戦していった!!(1965)
3 重賞
  HIGH STAKES
 スコットの胸は、自分の迂闊さを悔やむ苦い想いとこみあげてくる憤りでいっぱいだった。巨額の金を搾取されつづけていたという、調教師ジョディの背信が発覚するに及んで、彼は突然解雇をいい渡した。しかし怒りに狂い復讐鬼と化したジョディは、スコットの持ち馬エナジャイズを他の駄馬とすり替えてしまうという悪辣な手段を講じてきた!
 愛馬の奪還と真相の究明を追うスコットの前にはジョディの仕掛けた巧妙な罠が次第にその全貌を現してきた。(1975)
4 本命
  DEAD CERT
 濃霧の中での障害レース。疾走する馬の蹄が地を蹴り、時折蹄鉄がぶつかりあう鋭い音が響く。遙か前方を走る一頭の鞍上では、鮮やかな服装の騎手ビルが、横たわる最後の障害を跳ぶべく馬の態勢を立て直していた。それらはすべて予想通りのことだった。栗毛のアドミラル号は本命馬にふさわしく、その力強い後肢の筋肉を盛りあげ、緊張し、跳んだ。完璧な跳躍。鳥のごとく宙に浮き、次の瞬間、落ちた。そして騎手は死んだ……。
 ビルの親友アラン・ヨークは、どうしても単なる事故と思えず、独り事件の謎を追い始めた。(1962)
5 度胸
  NERVE
 イギリスでも有数の騎手アート・マシューズが、こともあろうに競馬場のパドックの中央で血しぶきをあげて自殺を遂げた。銃声はパドックに轟き、スタンドの高い壁に反響した……。目を覆う惨状をまえに、観衆のざわめきはやがて沈黙へと化していった。
 アートの死が引き金となったかのように次から次へと自殺し、半狂乱に陥り、みるかげもなくおちぶれて行く騎手たち。彼らをそこまで追いつめた「怪物」の正体とは? あまりに残酷な戦慄すべき競馬界の内幕を描き「ニューヨーク・タイムズ」の書評子を唸らせた衝撃の作品!(1964)
6 飛越
  FLYING FINISH
 競走馬の空輸請負いの馬丁頭に身をやつしたヘンリイ伯爵は、奇妙な事に気づいた。前任の馬丁頭が二人とも行方不明、臨時雇いの馬丁も次々と姿を消し、空輸中の馬が時に異様な興奮を示す。いままた、主任のサイモンがイタリアで忽然と行方を絶った――競走馬の空輸をめぐり何か恐るべき企みが遂行されている! かくて、絶対的に不利な状況のまま、ヘンリイ伯爵は、ひとり、敢然と捜査に乗り出した。が、行く手に待つのは、見えざる敵の非情な銃弾に他ならなかった! 競馬の世界に生きる男の孤独な戦いをサスペンスフルに描く迫真のシリーズ。(1966)
7 血統
  BLOOD SPORT
 不吉な予感がして目が覚めた。反射的に手が枕の下の拳銃を握る。ひそやかな足の滑り、脈打つような呼吸は、聞こえない。敵は近くにいない……3週間の休暇をもらった諜報部員ジーン。しかしボスはたちまち彼を事件に引き戻した。ケンタッキイ州で輸送中の名馬クリサリスが消失した事件を調査してほしいというのだ。……だが、その間にも敵の黒い魔手はひそかに彼をつけ狙っていた! 盗まれた名馬クリサリスの行方を追って、単身アメリカに乗り込むイギリス諜報部員ジーン。捨身の奪回作戦!(1967)
8 罰金
  FORFEIT
 忠告だ。自分の記事を金にするな。絶対に自分の魂を売るな――そう言いざま、競馬記者のバートは7階のオフィスから転落した。同僚のジェイムズにはその言葉の真意が解らなかった。が、その後、バートが買いを薦めた馬が出走を取消したのを知った時、彼の背筋を冷たいものが走った。何かある! 競馬の不正行為にバートが一枚噛んでいたのだろうか? 派手に人気を煽った馬の出走取消は、賭け屋に莫大な利益をもたらす。金につられたバートが、記者の魂を売り渡し、追いつめられて死んだのだとすれば、その背後には……?(1968)
9 査問
  ENQUIRY
 騎手のケリイと調教師のクランフィールドは裁決委員会に呼ばれ、査問会にかけられることを言い渡された。ケリイの乗った本命馬が2着となり、予想外の不人気馬が優勝をさらったことで、レースに八百長の疑いを持たされたのだ。しかし自分たちの潔白は明白だ。良識ある査問会は必ず無実を証明してくれるだろう。
 が、結果は彼らの懸命の弁明も空しく免許の無期停止だった。なぜこんなことが起こり得るのか? これは自分たちを陥れようとする罠なのか? 霧に覆われた斯界の最高権威、査問会の謎にいどむ騎手ケリイの絶望的な戦いを描く。(1969)
10 混戦
  RAT RACE
 英国の人気随一のチャンピオン・ジョッキーをはじめとする4人の乗客を乗せたチェロキイ機は、巨大な積乱雲の間を縫うように飛んで行った。夏の乱気流に機体はかなり動揺していたが、それとは別の恐怖がパイロットのマット・ショアを襲った。彼の特別鋭敏な安全本能が針の先ほどの異常を告げている。予定外の着陸を決行し、何事もなかったように見えたのだが……振り返ったマットの瞳の中で機体は火を噴き燃えあがった。早くも炸裂する大胆な犯罪! その背後のひそむのは? 騎手とパイロットの体験を投入し、フランシスが描く白熱のスリラー。(1970)
11 骨折
  BONECRACK
 黒づくめの誘拐者は薄いゴムのマスクをしていた……。ニールは信じ難い想いだった。確かにロウリイ・ロッジは毎年ダービーの優勝馬を出しているニューマーケット有数の厩舎だ。しかし、ここまで育て上げたのは父の手腕で、彼自身は競馬には素人のセールスマンにすぎない。しかもその父は交通事故で入院中なのになぜニールが……その疑惑は、一味の首領の前に連れ出された時重苦しい不安に変わった。ダービーの本命馬に一味の指定する騎手を乗せろというのだ! ダービーを控え、本格的仕上げ調整に入った厩舎を襲う妄執の影!(1971)
12 煙幕
  SMOKESCREEN
 スタントマンから人気俳優の地位を築いたリンカンにとって、ネリッサはまさに母親代わりの女性だった。その彼女も不治の病に冒され、余命少ないことを自覚していた。そして、南アフリカに所有している十数頭の競走馬を、成長した甥に遺産として贈りたい、とリンカンに伝えた。ところが、それらの競走馬の成績が最近になって信じがたいほどの不振を続け、財産としての価値が失われつつあるという。しかも、原因はまったく謎に包まれていた。かくてリンカンは南アフリカに飛ぶが、想像を絶する苦難と罠が待ち受けているとは予想だにしなかった!(1972)
13 暴走
  SLAY-RIDE
  酷寒のフィヨルドに浮かぶ一艘のボートをめがけて、大型快速艇が襲いかかった。ボートはまっぷたつにされ、デイヴィッドは海に放り出されたが、必死の思いで岸にたどり着き、九死に一生を得た。
 英国ジョッキイ・クラブ調査員デイヴィッドがはるばるノルウェーにやってきたのは、招待騎手ボブの起こした売上金横領事件を取り調べるためだった。この事件には解せない事実が多すぎる。背後に恐るべき陰謀が隠されているのでは……調査の進展とともに、疑惑はますます強まっていった。美しくも過酷な冬の北欧を舞台に繰り広げられる強烈なサスペンス!(1973)
14 転倒
  KNOCK DOWN
 サラブレッド仲介業者ジョウナが襲われたのは、競走馬を競り落として直後だった。奇妙なことは次々と起こった。アル中の兄には匿名でウイスキーが与えられるし、輸送直前の3歳馬が何者かによって解き放たれた。そのうえ放火事件まで……この世界には暴利を貪るあくどい連中が平然と徘徊している。組織化をもくろむ彼らにとって、信用あるジョウナは目の上の瘤だったのだ。奇妙ないやがらせも彼らの仕業に違いない。いまこそ自分が闘わなければ、業界は腐りきってしまう! 敢然と立ち上がったジョウナの前に現れた、陰で組織を操る人物とは?(1974)
15 追込
  IN THE FLAME
 従兄は茫然と立ちつくしていた。見なれた部屋からは家具や美術品がごっそり盗まれ、床の上では彼の若い妻が血だらけになって死んでいたのだ。画家トッドは従兄が襲われた突然の凶事に言葉もなかった。一方、放火にあい財産を焼かれたという知り合いの未亡人の話が、トッドを驚かせた。一見無関係と思える強奪と放火事件には共通項があったのだ。それは、ともにオーストラリアから買ってきたマニングスの馬の絵画――従兄の悲しみと怒りをわがものとしたトッドは、事件の謎を追うべく、ただひとりオーストラリアへと飛んだ!(1976)
16 障害
  RISK
 とにかく、半ば目覚めていた。明かりが全くない。目は開いているはずだが、真の闇に包まれていた。力のあるエンジンの音、軋む音……3月17日木曜日までははっきり覚えていた。だが、なんのために? ここは、一体どこなのだ? 余暇をアマチュアの騎手として過ごす公認会計士ブリトンにとって、3月17日は晴れやかな一日だった。他馬にアクシデントがあったにせよ、出場した一大障害レースで優勝を飾ったのだ。ところが、レース直後、彼は理由もわからず何者かに誘拐された。ブリトンは不安と焦燥のなか、ついに脱出を決意したが……!(1977)
17 試走
  TRIAL RUN
 「おれは死ぬ……アリョシャだ……モスクワ……」モスクワ・オリンピック優勝を目指す英国王子の義弟と同性愛のうわさがあった騎手が、謎の言葉を遺して急死した。死因は心臓麻痺だが……アリョシャとは? スキャンダルを怖れた英国王室は独自の調査に乗り出した。視力を悪くして騎乗停止となっていた元騎手ランドル・ドルーは依頼を受けてモスクワへ飛ぶ。しかし、そこで彼を待ちかまえていたのは、死の危険と、予想外の事態の展開だった! オリンピックを目前に控えたモスクワを舞台に繰り広げられるサスペンス巨編。(1978)
18 利腕
  WHIP HAND
 厩舎に仕掛けられた陰謀か、それとも単なる不運なのか? 絶対ともいえる本命馬が次々とレースで惨敗を喫し、そのレース生命を断たれていく。馬体は万全、薬物などの痕跡もなく、不正の行われた形跡は全くないのだが……片手の敏腕調査員シッド・ハレーは昔なじみの厩舎から調査を依頼された。大規模な不正行為や巧妙な詐欺事件の調査を抱えながら行動を開始するハレーだが、その行く手には彼を恐怖のどん底に叩き込む、恐るべき脅迫が待ち受けていた! 『大穴』のシッド・ハレー再登場。80年英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー、81年アメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞の両賞に輝く、シリーズ中屈指の傑作。(1979)
19 反射
  REFLEX
 競馬写真家のジョージが交通事故で世を去った。騎手にとって屈辱的なシーンばかりを撮り続けた彼の死を悼む者は、少ない……そのジョージの家に2日連続で正体不明の男たちが押し入り、室内を物色していく。果たして彼らの目的は? ひょんなことからジョージの隠し持っていた一見失敗作に見える大量のフィルムを手にした騎手のノアは、自らの趣味である写真の知識を駆使し、そこに隠された秘密の解明を試みる。試行錯誤に果てに複雑なパズルを突破したノアの眼前に浮かび上がったのは、競馬界を揺るがす衝撃の画像だった! 白熱の傑作サスペンス(1980)
20 配当
  TWICE SHY
 中学校の物理の教師で射撃の名手でもあるジョナサンは、ある日、友人のコンピュータ・プログラマー、ピーターからひそかに3本のテープを渡された。競馬のハンディキャップ決定のプログラムらしいのだが、数日後、ピーターはクルーザーの上で事故死し、ジョナサンも何者かに命を狙われた。ピーターはあのテープに何を入れていたのか? コンピュータに詳しい同僚に頼んで調べてみたところ、そこに組み込まれていたのは、3回に1回は当たるという驚くべき確率の勝馬予想システムだった! テープをめぐる血みどろの争奪戦を新機軸の構成で描く意欲作。(1981)
21 名門
  BANKER
 ロンドンの商業銀行エカタリン社に、名馬を種馬として購入したいという生産牧場から、巨額の融資の申し込みがあった。社内では危険視する声もあがったが、馬の名を聞いた青年重役ティムは心を動かされた。その名馬とは、半年前アスコット競馬場で、疾駆する勇姿を目の当たりにしたサンドキャスルだった。ティムは融資を承諾した。しかし、サンドキャスルの産駒に次々と奇形が生まれたのだった! これは何者かの陰謀なのか。としたら何のために、またどうやって? 名馬の血統に賭ける生産牧場と名門銀行家の苦闘を巧みなストーリー展開で描く。(1982)
22 奪回
  THE DANGER
 ヨーロッパ最高の女性騎手がイタリアで誘拐され、巨額の身代金が要求された。誘拐対策企業の派遣スタッフであるアンドルーは、父親の要請を受けて即座に現地に飛んだ。狡知長けた犯人の策略に交渉は難航した。6週間後、ようやく身代金受渡しが終了し、人質は無事救出された。だが数週間後、今度はイギリスでダービー優勝馬の馬主の息子がさらわれたのだ。ヨーロッパをまたにかけ、競馬関係者を標的に起こった二つの誘拐。アンドルーは同一犯人の影を感じた……誘拐対策のエキスパートと冷徹な誘拐犯の白熱の頭脳戦を卓抜な着想で描く力作!(1983)
23 証拠
  PROOF
 サンテミリオン、マコン……私は一本一本、慎重に香りを嗅ぎ、味見をしては吐き出した。どれも同じワインだ。――酒屋を営むビーチは、あるレストランで偽ラベルで売られている酒を発見した。しかも、それは氷山の一角で、偽酒は大量に出回っていたのだ。さらに件のレストランのウェイターが惨殺される及び、事件は複雑な様相をみせはじめた。……利き酒の能力と知識を買われ、警察の捜査に協力するうち、ビーチは巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく! 酒の世界を舞台に、謙虚な勇気と該博な知識を武器に闘う男の孤独な姿を描く傑作サスペンス。(1984)
24 侵入
  BREAK IN
 レースを終えたばかりのチャンピオン騎手キット・フィールディングを妹のホリイがつかまえ、新聞の赤枠で囲った記事を見せた。「財界の大物メイナード・アラデック家の息子で調教師のボビイ・アラデックは破産寸前……」
 ホリイは周囲の反対を押し切って、先祖代々敵対しているアラデック家の息子と結婚した。ところが、この何者かの指嗾による中傷記事のため、二人の厩舎は本当に危地に立たされた。キットは、妹夫婦の唯一の味方として背後関係を調べ始めた。が、時をおかず、第二の記事が出、今度は結婚に反対で資金援助を断っている父親メイナードにまで、内情に通じた攻撃が加えられていた。ニュース・ソースはわからない。この憎悪にみちた記事を陰で操っている黒幕は誰なのか? キットは奔走するが、やがて彼の身にもさまざまな形で魔手が及び始めた。
 徒手空拳のチャンピオン騎手が、マスコミ界を相手どって、いかに闘うか?(1985)
25 連闘
  BOLT
 障害騎手キット・フィールディングが前作に続いて登場(連闘!)。
 キットは、レースで勝ちながら心の晴れぬ日を送っていた。馬主のカシリア王女の親類である婚約者ダニエルが、他の男に心を移しそうになっているのだ。その男は王女の甥リツィ王子。身分、財産共にキットとは雲泥の差。しかも容貌、人柄もすぐれた紳士だ。
 また、キットを恨む理事アラデックはレースのたびにキットをつけ回し、破滅させるチャンスを狙っていた。
 そんな時、馬主のカシリア王女の夫が会社の共同経営者ナンテールから脅迫を受けるという事件が起きた。ナンテールは兵器製造に進出したがっていたが、それにはパートナーの同意が必要だった。しかし、名誉を重んじる王女の夫は拒絶し、利益追求のためには手段を選ばないナンテールはあからさまな脅迫に出たのだ。王女から助力の依頼を受けて、キットは身を挺してナンテールと闘う決意をするが……共にレースを勝ち抜いてきた王女の愛馬が殺され、ダニエルやリツイの身辺にも危険が及び始めた!(1986)
26 黄金
  HOT MONEY
 1988年フランシス来日の年に日本語版出版。
 富豪マルカム・ペンブロゥクの5番目の妻モイラが殺された。犯人があがらぬまま1か月が過ぎたある日、アマチュア騎手イアン・ペンブロゥクは父からの依頼を受けて驚いた。イアンはモイラを嫌っていて、そのために父と息子は反目し合い、長い間絶交状態だったからだ。
 何者かに命を狙われている、身辺を守ってほしい、というのがマルカムの頼みだった。モイラ殺しを含め、犯人は巨額の遺産を狙う一族の中にいるのではないかと彼は危惧していた。前妻たち、それぞれの子供たちとその配偶者たち。その中で、仲違いしていても、マルカムはイアンを信頼していた。わだかまりを残しながらも、イアンは護衛を引き受ける。突然競馬に興味を示し、有望な競走馬を買いはじめた父に付き添って、犯人探しが始まった。ニューマーケットの馬の競り市、サンダウン・パーク競馬場、凱旋門賞、サンタアニタのブリーダーズ・カップ、……その間何者かの魔手は、マルカムの、そしてイアンの息の根を止めようと、確実に迫っていた!(1987)
27 横断
  THE EDGE
 モントリオールからヴァンクーヴァまで、ロッキイ山脈を越えて驀進するカナダ大陸横断鉄道。各地の競馬場でレースをしながら、車内ではミステイ劇を楽しむという趣向の特別列車が、競馬振興のためにカナダ・ジョッキイ・クラブの支援で企画された。ところが、乗客の中に危険な男が一人いた。英国人の馬主ジュリアス・アポロ・フィルマー。恐喝によって名馬を脅し取ったり、さまざまの不正を働いている国際競馬社会の敵である。今度は何を企んでいるのか? かねてからフィルマーを内偵中の英国ジョッキイ・クラブは、保安部員トー・ケルジイをカナダに送った。ケルジイは身分を隠し、ミステリ劇の覆面俳優として、ウェイターに化けて特別列車に乗り込んだ。
 馬、馬主、厩務員、競馬ファン、そしてひそかな陰謀を満載して、大陸横断列車はスタートした! 行手には、ロッキイの大自然と大いなる危険が待ち構えている。(1988)
28 直線
  STRAIGHT
 足首を負傷して休養中の騎手デリックは兄グレヴィルが事故で重傷を負ったという連絡を病院から受けた。駆けつけた甲斐もなくグレヴィルは息を引き取るが、病院を出た途端、デリックは何者かに襲われて兄の遺品の入った袋を奪われた。グレヴィルは準宝石の輸入会社を経営していた。翌朝オフィスへ兄の死を知らせに赴いたデリックは、オフィスが荒らされていることを知る。そして、ダイヤを扱うことがなかった兄が、多額の借金をして大量のダイヤを買いつけていたことも判明した。だが、どこを探してもそのダイヤは見当たらなかった。
 グレヴィルは遺言で、会社、持ち馬を含めた全ての資産をデリックに託していた。会社を救うためにダイヤの行方を追い始めたデリックは、生前それほど親密な間柄とはいえなかった兄の意外な側面を次々と発見していく。優れた騎手である弟を自慢にしていたこと、そして秘密の愛人がいたこと……。兄ともっと語り合っておかなかったことを悔やみながら、デリックは不自由な体と不慣れなビジネス畑というハンディをかかえて奔走する。しかし、今度はデリック自身に生命の危険が迫っていた!(1989)
29 標的
  LONGSHOT
 ジョン・ケンドルが調教師トレメインの伝記執筆を引き受けたのは、空腹だったからだった。サヴァイヴァルの専門家であるケンドルは、念願の作家としてスタートを切ったばかりだったが、経済的にはどん底の状態にあった。やむなく畑違いの仕事の取材のため、彼はトレメインの厩舎がある丘陵地帯へ赴いた。
 競馬の世界とトレメインの人柄は、予想外に彼を魅了した。ところが、まわりの人々とも親しくなった矢先、行方不明だった厩務員アンジェラの他殺体が森の中で発見された。容疑は厩舎関係者に向けられ、部外者であるケンドルは地元警察から協力を要請される。警察がまず疑ったのは、アンジェラの遺体のそばで私物が見つかった、トレメインの隣人ハリイだった。窮地に立たされたハリイのもとに、何者かから彼の無実を証明するという謎の呼び出しが来る。ケンドルとハリイは指定されたボートハウスへ行くが、そこには恐ろしい陰謀が張り巡らされていた。
 森と原野の丘陵地帯で起きた殺人事件に挑むケンドルの推理と、やがてサヴァイヴァルの技倆をつくして立ち向かわなければならなくなる非常の罠とは?(1990)
30 帰還
  COMEBACK
 東京に赴任していた英国外交官ピーター・ダーウィンは、本国へ転勤となり、帰国休暇の途中マイアミに立ち寄った。そこでクラブ歌手のヴィッキイと知り合った彼は、なりゆきで娘の結婚式のために英国へ行く彼女とその夫を送って行くことになる。ヴィッキイの娘ベリンダの住むチェルトナム競馬場近くの町は、偶然にも、騎手を父にもつダーウィンが幼年時代を過ごした場所だった。ベリンダは勤めている動物病院の獣医にはケンと婚約していたが、ケンの周囲には暗雲がたちこめていた。優秀な獣医である彼が手術した馬がなぜか次々と原因不明の死をとげ、病院に悪い噂がたち始めていたのだ。さらにダーウィンらが到着して早々、病院は放火され、焼け跡から身元不明の死体まで発見された。ケンの窮地を救おうとダーウィンは調査を始めるが、やがて幼年時代のこの町での思い出が徐々に蘇り、その記憶の中に事件の謎を解く重要な手がかりが隠されていることに気づく。従来の魅力に医学サスペンスの面白さも加えた、堂々のシリーズ第30作。(1991)
31 密輸
  DRIVING FORCE
 「ヒッチハイカーを絶対に乗せてはいけない」と、競走馬輸送会社を経営するフレディは運転手たちに言い聞かせてきた。ところがある日、馬運車の一台がヒッチハイカーを乗せ、フレディのもとに帰ってきたとき、そのヒッチハイカーは車の中で死んでいた……。これが、フレディを襲う一連の事件の発端だった。死亡事件のあった夜、何者かが当の馬運車にしのびこみ、何かを探していた。そして翌日、社の修理工のジョガーが、馬運車の車体の下に携帯用金庫が取り付けられているのを発見する。社の車が密輸に利用されているのではないか、とフレディは考えた。馬運車は転戦する馬たちを乗せて、ヨーロッパ大陸へも頻繁に行っている。麻薬か、それとも……。だが金庫を見つけたことが周囲にしれた後、ジョガーは殺され、死の直前に彼は謎のメッセージをフレディの留守番電話に残されていた。意表をつく緻密なプロット、鮮やかな人物描写が冴え渡る。(1992)
32 決着
  DECIDER
 その株主総会に私はなぜ出席してしまったのだろう? 生前の母の忠告を無視して、ストラットン・パーク競馬場の将来にかかわるその総会に出席したことによって、私は自分ばかりか子供たちの命まで危険にさらすことになった。
 建築士リー・モリスは、母から受け継いだ競馬場の株が重要な意味を持っていることを知った。ストラットン男爵が亡くなり、老朽化した競馬場を売却するか再建するかをめぐって、株主であるストラットン一族の間で意見が対立しているというのだ。母はストラットン家に嫁いだが夫の暴力が原因で離婚し、再婚した相手との間に生まれたモリスは、これまで一族とはできるだけ関わり合いにならないように生きてきた。総会の日、モリスは険悪な仲の一族をまとめようとする男爵の妹に助力を頼まれて、承諾する。ところが、ほどなくして競馬場が何者かによって爆破された!(1993)
33 告解
  WILD HORSES
 「……彼を殺したことを告白します」意識が混濁した瀕死の老人ヴァレンタインは、枕元にいた新進の映画監督トマス・ライアンを神父と間違えて、そう囁いた。かつて装蹄師だったヴァレンタインが、作業の過ちで騎手の致命的な事故でも招いたのだろうと、トマスはあまり気に留めなかった。
 トマスは、26年前の競馬界の謎の事件を題材にした新作を撮影中だった。ニューマーケットの調教師の妻が、厩舎で変死したのだ。夫が殺したのではないかと疑われたが、他殺とも自殺ともはっきりしないままに、年月が流れていた。ハリウッドのスターを主演に据えたこの映画で、トマスは監督としての真価を問われていたが、事件の真相の描き方をめぐって脚本家との対立が激化し、さらに何者かからロケを中止せよという脅迫状が舞い込む。トマスは不屈の意志で撮影を続けるが、出演者が刃物で襲われ、さらに彼自身にも魔の手が……。(1994)
34 敵手
  COME TO GRIEF
 落馬事故によって片腕となった元チャンピオン・ジョッキイ、シッド・ハレー。現在は競馬界専門の調査員となっていたが、放牧中の馬の脚を切断するという残忍な犯罪が連続して発生。かわいがっていたポニイを襲われた白血病の少女から、犯人を捜してほしいと依頼される。だが、容疑者として浮かび上がったのは、ハレー自身が犯人だとは信じたくない人物だった。エリス・クイント――騎手時代のよきライヴァルで、私生活でもハレーの親友だった男。引退後は、テレビ・タレントとして国民的な人気を博し、誰からも愛される好男子だった。
 もちろんクイントは犯行を否定し、世間も彼が犯人とは信じなかった。かえって、恵まれているクイントを妬むあまり間違った告発をしたと、ハレーはマスコミからごうごうたる非難を浴びる。ところが、この執拗なマスコミの攻撃には、じつは裏があることが明らかになってくる。
 『大穴』『利腕』につづき、不屈のヒーロー、シッド・ハレーが3度目の登場を飾る、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞作。(1995)
35 不屈
  TO THE HILT
 貴族の血を受け継いでいながら、ひとりスコットランドの山中で孤独な暮らしを続ける青年画家、アリグザンダー・キンロック。ある日、彼は自分の山小屋で待ちかまえていた4人の暴漢に襲われ、あやうく命を落としかける。闇雲に「あれはどこにある?」と脅されたあげく、わけのわからぬままに崖の上から突き落とされたのだ。
 事件が起きたのは、アリグザンダーが母の屋敷へ行こうとしていた矢先だった。ビールの醸造会社を経営している義理の父が、心臓発作に倒れたとの知らせを受けたのだ。全身の怪我をおして屋敷に赴いた彼は、義理の父の会社が倒産寸前であることを知る。経理部長が莫大な資産を横領して姿を消したらしい。しかも、会社が主催する障害レースの賞品である純金のカップも行方がわからない。
 会社の危機を救うべく奔走をはじめたアリグザンダーは、自分を襲った暴漢は横領事件に関係があるのではとの疑念を抱くが……
 前作『敵手』で3度目のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞、同時に巨匠賞の栄冠を勝ち得たフランシスが、渾身の力をこめて放つ、記念すべきシリーズ第35作。(1996)
36 騎乗
  10 LB. PENALTY
 17歳のアマチュア騎手ベネディクトは、ある日、厩舎の所有者から突然の解雇を言い渡される。理由はあまりに理不尽だった。ベネディクトが麻薬を常用しているというのだ。まったく身に覚えのない非難に怒りを感じながらも、騎手としての才能の欠如を露骨に指摘された彼は、失意のうちに厩舎を去る。
 そんなベネディクトを待っていたのは、父親のジョージだった。経済界で財を築いた父は、政界に打って出ることを決意、下院議員の補欠選挙に出馬することになったのだという。ベネディクトの解雇も、息子に選挙活動の手伝いをさせようとした父が、裏で糸を引いていたのだ。
 激しい怒りを覚えつつも、やがて父親に説得されたベネディクトは、プロの騎手になるという自分の夢をあきらめ、父の夢を実現させるべく、選挙活動に協力することに同意する。しかし、選挙区へ赴いた二人を待っていたのは、父ジョージを狙う何者かの銃弾だった……。
 巨匠ディック・フランシスがシリーズで初めて十代の少年を主人公に据え、生きることの厳しさと真の男の勇気を描く第36作。(1997)
37 出走
  FIELDS of 13
 1962年の『本命』で作家デビューし、1997年の『騎乗』まで、ディック・フランシスは36冊の傑作長篇を世に送り出してきた。いまや彼はミステリ界の最高峰に君臨し、全世界の読者が彼の作品に親しんでいる。いっぽうその間、いくつもの雑誌やアンソロジーに、彼の短篇作品が掲載しれてきた。長篇に劣らぬ短篇作品の素晴らしさは、これまた読者を引きつけてやまない。
 そしてここに、競馬シリーズ37番目にしてはじめての短篇集が誕生した。初の短篇作品である「強襲」、長篇も含めてグランド・ナショナルをあつかった唯一の作品である「敗者ばかりの日」、めずらしくも婦人誌むけに書かれた「春の憂鬱」などの傑作に、本書のために書き下ろされた五篇の作品を加えた全十三篇の輝きが、ディック・フランシスの魅力のすべてを照らし出す。(1998)
38 烈風
  SECOND WIND
 気象予報士のペリイは、同僚とともに、カリブ海でハリケーンの“目”を横断する飛行に挑む。期待通り“目”の中の風景は、筆舌に尽くしがたい感動を呼んだ。だがその帰途、強風に揉まれた機は海上へ不時着し、ペリイは嵐の海へと投げ出される……。
 死を覚悟したペリイだったが、なんとか無人島へと泳ぎついた。そこは偶然にも、“目”に挑む直前に彼らが立ち寄った島だった。人の住まないその島では、なぜか牛の群れが飼われている。放棄された建物で金庫を見つけたペリイは、その中で奇妙な品物を目にした……。
 やがて、救いの手が伸びる。だが、どこからともなく島へとやってきた飛行機に乗ったその人々は、奇妙な服に身を包み、銃を手にしていた……。
 九死に一生を得てイギリスへ戻ったペリイだったが、事件はまだその姿を半分も見せてはいなかった。一連の出来事の裏には意外な黒幕が――思わぬ事態に直面したペリイは、自らの手で真相を解明すべく、陰謀の渦中へと飛びこんでゆく! 衰えを知らぬ巨匠の健筆が躍る。(1999)
39 勝利
  SHATTERED
 馬が脚をもつれさせたのは、レースの最後の障害だった。7馬身の差をつけて先頭を走っていた馬が集中力を失い、障害にぶつかって騎手の上で宙返りを打ったのだ。半トンもの馬体は仰向けになって、下敷きになった男の胸郭を押しつぶした……。
 友人の騎手マーティンがレース中の事故で死亡し、ガラス工芸家ローガンの人生は一変した。マーティンは死の直前、一本のビデオテープをローガンに託そうとしていた。そのテープには莫大な価値があると言い残して……。
 やがて、正体不明の連中がローガンを襲撃する。狙いは問題のビデオテープ。だがそのテープは彼の手に渡ってまもなく、何者かに盗み出されていたのだ。自らの身を護るため、ローガンはテープの秘密を追う決意を固める……。
 ビデオテープに秘められた莫大な価値とは? そしてテープはいまどこに? (2000)
40 再起
  UNDER ORDERS
 障害レースの最高峰、チェルトナム・ゴールド・カップが行なわれる当日、元騎手の調査員シッド・ハレーは競馬場を訪れ、建設会社を経営する上院議員ジョニイ・エンストーン卿から仕事を依頼された。持ち馬が八百長に利用されている疑いがあるので、調べてほしいというのだ。彼は調教師のビル・バートンと騎手のヒュー・ウォーカーが怪しいという。ハレーは依頼を引き受けるが、その直後、競馬場の片隅でウォーカーの射殺死体が発見された。この日、ウォーカーとバートンが罵り合っているのを多くの人が目撃していた。そしてウォーカーは前夜、ハレーの留守番電話にメッセージを残していた。レースで八百長をするよう何者かに脅されていたらしく、「言うことをきかなければ殺す」と言われたという。やがてハレーは思わぬ経緯でウォーカーの父親から息子を殺した犯人を突き止めてほしいとの依頼を受ける。さらに知人から、ギャンブル法改正によって発生する不正についての調査も任される。こうしてハレーは三つの依頼を抱えることになった。そんな折、警察はバートンをウォーカー殺害容疑と八百長の疑いで逮捕する。彼は証拠不充分で釈放されるが、やがて事件が起きた。そのバートンが自宅で拳銃自殺をしたというのだ。どうしても彼が自殺したとは思えないハレーは、調査を進めていく。だが、卑劣な犯人は、ハレーの最大の弱点である恋人のマリーナに照準を定め、魔手を伸ばしてきた! 『大穴』『利腕』『敵手』に続き、不屈の男シッド・ハレー四たび登場! 巨匠が六年の沈黙を破って放つ待望の競馬シリーズ最新作。 (2006)
41 祝宴
  DEAD HEAT
 マックス・モアトンは史上最年少でミシュランのひとつ星を獲得した若きシェフ。ニューマーケット競馬場の近くにみずからがオーナーのレストラン〈ヘイ・ネット〉を構えている。平日なら1週間以上、週末は1カ月前には予約が必要な人気店だ。ロンドン進出のオファーもあり、前途は洋々だ。しかし、彼が料理を担当した伝統の2000ギニーレースの前夜祭で食中毒が発生すると、将来には暗雲が立ちこめる。店の常連だった競馬界の有力者が次々と激しい腹痛と嘔吐に襲われ、〈ヘイ・ネット〉の厨房は食料基準局によって閉鎖されてしまう。マックス自身も毒に冒され、ベッドの上でのたうち回るはめに。彼と店のスタッフはつねに清潔を心がけ、食材の選定にも心を配ってきたはずだが……。必死に築き上げた評判も、このままでは地に落ちる。しかもレース当日、マックスは競馬場の貴賓席で催されるスポンサー企業のパーティをまかされていた。弱った体でなんとか料理をこなしたが、パーティ会場で爆弾テロが発生し、多くの死傷者が! 前日の食中毒と爆弾事件になにか繋がりがあると直感したマックスは、汚名返上のため調査を開始する。(2007)
42 審判
  SILKS
 弁護士のジェフリイ・メイスンは、法律事務所に勤務しつつ、休日はレースに出場するアマチュア騎手。ある日、トップ・ジョッキーのバーロウが干草用のピッチフォークで串刺しにされるというショッキングな殺人事件が起き、ライバル騎手のミッチェルが逮捕された。あくまでも濡れ衣を主張するミッチェルだったが、被害者と犬猿の仲であったことは周知の事実で、凶器が本人のものであったこと、被害者の携帯電話に彼の名前で脅迫メールが送られていたことなど不利な状況証拠も揃っていた。騎手仲間であるメイスンは弁護を依頼されるが、その直後から「弁護を引き受けてわざと負けろ」という奇妙な脅迫の電話やメールが届き始める。恐怖と職業倫理の間で揺れ動くメイスン。時同じくして、彼は事務所の前で待ち伏せしていた男にバットで手ひどく殴りつけられる。暴漢はかつての依頼人トレントという男で、有罪になったことを逆恨みしての凶行だった。トレントの報復とバーロウの殺人事件には何らかの関連が? 真実を白日の下に晒すため、そして自身の誇りを取り戻すため、満身創痍のメイスンは法廷に立つ!〜競馬シリーズの興奮にリーガル・サスペンスの醍醐味を盛り込んだ巨匠フランシスの意欲作。(2008)
43 拮抗
  EVEN MONEY
 亡き祖父から受け継ぎ、競馬専門のブックメーカー業を営むネッド・ダルボット。女王陛下が観戦する英国最大の競馬レース“ロイヤル・アスコット”の初日、馬券を売っている彼の前に、父親のピーターと名乗る男が現れた。
両親は自動車事故で死んだと祖父母から聞かされていたネッドは、にわかに信用することはできなかった。男は36年前にネッドの母が死んだあと、当時1歳のネッドを残してオーストラリアに渡ったという。その驚くべき話が終わった直後、二人の前に暴漢が出現した。「金はどこだ」とすごむ男に抵抗したピーターは、刺殺されてしまう。
警察のDNA鑑定の結果、ピーターが父親であることが確定するが、同時にネッドは警察から思わぬことを告げられる。ピーターが36年前に妻を殺した容疑者だというのだ。彼はその真偽と父が帰国した目的を探るが、やがて暴漢が父の持ち物を探していることを知る。さらに、別の男が父の持ち物を狙って彼の家に侵入する事件も起きた。父はいったい何をしていたのか? 競馬場内が通信不能になる事件が続発する中、病気の妻をいたわりながら謎を追うネッドに、ならなる苦難が!
知られざるブックメーカー業界の内幕と、錯綜する謎を描く、競馬シリーズ最新作。(2009)

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その他の著作
『女王陛下の騎手』

The Sport of Queens

(自伝・晶文社/早川文庫)

 「障害競馬騎手は誰でも二つの夢を抱いている。一つは、チャンピオン・ジョッキーになること。もう一つはグランドナショナルに優勝すること。これは、私が幸運に恵まれて第一の夢を果たし、第二の夢の実現を目前にして、無念きわまりない負け方をした物語である。」(ディック・フランシス)
 学校嫌いで馬を愛した子供時代、パイロットにこだわった従軍時代、騎手になってからの栄光、思いがけない悲劇、引退後の作家としての道のり、そして創作の秘密。小説に負けない面白さと、抑制のきいたユーモラスな語り口で読者を魅了する第一級の自伝。1995年までの最新の近況を付した増補決定版(早川文庫版)。(1957,74,95)
『敗者ばかりの日』

(短編集・早川文庫)

 グランドナショナル開催日に馬券売場で見つかった紙幣は、5年前銀行強盗に盗まれたものだった。犯人がただ一頭の馬にしか賭けていないのを知り、警察は主催者に八百長レースを要求した。賭けた馬が勝てば、犯人は必ず払戻しに現れ逮捕にいたるはずだからだ。だが、こんな大レースで八百長などということが許されるものか。……犯人、警察、騎手と馬それぞれに意外な結末をサスペンスフルに描くフランシスの表題作をはじめ、デイモン・ラニアン、エラリイ・クイーンなどによる、多彩な競馬ミステリーをまとめたアンソロジー。表題作は『出走』に掲載された。(1986)
『ディック・フランシス読本』

(早川書房編/早川書房)

 二つの短編=『ブラインド・チャンス(Blind Chance)』(1979)『キングダム・ヒル競馬場の略奪(The Rape of Kingdom Hill)』(1975)を所収。いずれも『出走』に収録。フランシスの年譜、インタビュー、写真、来日記念講演、著名人のエッセイ、作品解説(あらすじ、主人公、舞台、背景、原題の意味)などを収めてある。競馬シリーズが30作に達したことを記念して出版された。(1992)

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