(1995年作品)
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『大穴』『利腕』に続きシッド・ハレーが三度目の登場。 同一主人公のシリーズというのは数あれど、シッド・ハレーのように初登場以来30年、その間、3冊にしか登場していないというのも珍しいのではないだろうか。10年に1冊のペースである。 場面は前作から3年ほど経過した設定になっている。したがって、シッドは34歳だ。シッドの探偵としての名声はますます競馬界に轟く。調査の依頼も引く手あまただ。 今回は、放牧中の馬の脚が何者かによって切断される一連の事件。シッドが調査によって暴き出した犯人は、何とかつて騎手として腕を競い、今も親友であるエリス・クイントだった。エリスはいまやTVキャスターとして国中の人気者であり、シッドの告発はエリスの成功を妬んでしたことだという非難を轟々と受ける羽目になった。だが、実際は……。この逆境の中で、シッドは自己を曲げず真実を追及する。 今回も、元義父チャールズ・ロランドとの親交は健在で、シッドの唯一の救いという感である。ところが、前2作でシッドを助けて奮闘したチコ・バーンズはシッドの助手を退いている。チコが探偵稼業をやめるのは、確かに前作でほのめかされている。シッドは未だチコの助力を望んでいるという記述が何度か出てくるが、結婚して妻から強く止められているのだ。今は、柔道を教え、シッドはチコから片腕の格闘術を習っている。 人気タレントのスキャンダルが、人の生死まで分かつ事件になる。シッド、そしてエリスの葛藤の描写が秀逸である。 また、シッドの人間性を垣間見るエピソードとして、白血病の少女との交流、保護観察中の少年の更正なども興味深く読める。時代を反映する小道具として、携帯電話、インターネットも登場。携帯電話のデジタルとアナログの違いなど、理工系の知識のない私にとっては、これほどやさしく解説してくれた本もない。蛇足ながら……。 |