『連闘』  Bolt

(1986年作品)


 『侵入』を読まずに読んではいけません。だって、キット・フィールディングの"連闘"なんだから。

 キットとカシリア王女との交流は、王女夫妻(夫ローラン・ド・ブレスク)の姪ダニエルとを交えて、いちだんと深まった。しかし、なぜかダニエルの心は最近キットから離れているようで、キットも浮かない日々を送っていた。その王女夫妻のイートン・スクェアの邸に寝泊まりしているのが、王女の甥リツィ。本作でリツィは、ダニエルをめぐりキットを悩まし、逆に事件解決のパートナーとしてキットをサポートする役だ。
 王女の夫ローランの会社の共同経営者ナンテール(3代目)が拳銃製造の認可を受けるために、仏政府は信用の厚いローランの承認を必要とした。しかし、ローランはそんな不見識なことができようはずがない。固く拒否すると、ナンテールはあらゆる脅迫手段に訴えて、契約書へのサインを迫る。キットは、ナンテールの脅迫を押し返すために機敏な判断で対処し、王女を助けるが、ナンテールの異常な脅迫は、王女、ダニエル、リツィにも危害の手を伸ばし、そしてキットをも排除しようとする。しかも、王女の所有馬が無痛畜殺機("Bolt"。例の安楽死のために使う銃)によって、王女の馬を預かるウィケムの厩舎で殺される。それもグランド・ナショナルの有力馬だった。
 ローランは言う。「君とリツィ。いろいろな面で全く違うのに、全く似ている。彼は君のことを<頭がよくて鬼のようにタフな男>と言った、そして、君と彼が、ナンテールを永久に諦めさせる方法を考え出す時間を与えてほしい、と言った。……」

 王女を敬愛するお抱え運転手ドースン、ボディガードで相手が拳銃を使う前に蹴落とすという特技をもつサミイもいい味だ。そして、未だに遺恨の残るメイナード・アラデックはジョッキー・クラブの理事として健在だ。

 フランシス作品では、シッド・ハレーにつづく二度目の登場となったキット・フィールディング。しかもこちらは連作だ。障害競馬のチャンピオン・ジョッキー。危険と隣り合わせの騎手生活の様子は、レース・シーンの描写とともに今回も読ませる。