『横断』  The Edge

(1988年作品)


 主人公トー・ケルジー、29歳、英国ジョッキークラブの保安部員。ただし、大金持ち。「毎日服装と外見を変え、人とは知り合いにならず、孤独感を抱くことはよくあるが、同時に大変興味深い」仕事をしている。変装の名人。連絡仲介者ミセズ・ボードレア曰く「見えない男」。
 舞台はカナダ。オタワからヴァンクーヴァまでの「壮大なる大陸横断ミステリ競馬列車」。カナダ競馬の壮大なるイベントで、馬、馬主、競馬ファンを乗せて、1週間で大陸を横断しつつ、トロント(ウッドバイン競馬場)、ウィニペッグ(アシニボイア・ダウンズ競馬場)、ヴァンクーヴァ(エクシビション・パーク競馬場)でレースを行うというもの。車中ではミステリイ劇が上演される。カナダの知る人ぞ知る名士マーサー・ロリモア一家も私有車を連結して参加する。
 問題は、英国競馬界の問題人物ジュリアス・アポロ・フィルマーが、馬主に混じって乗り込むことがわかったことだ。フィルマーには数々の悪事の噂が絶えず、フィルマーの秘密を知る人間は何人か謎の死を遂げてもいる。しかし、証拠をつかめず、彼はのうのうと競馬界を闊歩しているのだ。今回の列車に乗り込むため、フィルマーはある競走馬の半分の権利を買った。何かを企んでいるに違いない。英国、そしてカナダの保安部は、それを探るため、トー・ケルジーを派遣したのだ。
 見えない男トーは、トミイという名の馬主専用食堂車のウェイターとなって乗り込んだ。フィルマーの悪事を暴き、防止するために。
 走行中、何者かによってロリモア家の車両が切り離されたり、案の定、列車の旅はトラブルつづきだ。何かによって恐慌を来した厩務員。そして、列車の通信機の故障、車軸の故障、後続列車に知らせるため、雪の線路を発煙筒を持ってトミイが走る。その間、フィルマーはダファディル・クエンティンら馬主との接近をはかっている。そして、マーサー・ロリモアにも接近。
 トミイ(トー)は、フィルマーの側で「見えない男」として悪事を探り出すのだ。