『密輸』  Driving Force     密輸 密輸

(1992年作品)


 フレディ・クロフト(35歳)。元障害競馬のトップ・ジョッキー。3年前に(負傷に耐えられなくなって)引退し、今は馬匹運送業「クロフト・レイスウェイズ社」のオーナー。アクの強い運転手たちを上手く切り回し、これまた個性の強い顧客(馬主、調教師など)を上手くつなぎ止め、評判は上々、事業はいたって順調。
 が、ある日、運転手が禁じていたヒッチハイカーを乗せ、途中でその者が急死した。運転手は慌ててフレディのもとに戻った。そのときから、フレディの周りに不穏な空気がたちこめる。馬運車数台の底に謎の容器がくっついているのを修理士ジョガーが発見する。密輸? この容器で何が運ばれているのか? 事務所のコンピューターがウィルス「ミケランジェロ」でやられる。破壊狂? フレディの車や居間もめちゃくちゃに。そして、ジョガーの死。その手は遂にフレディの身にも襲いかかる。いったいフレディの事業をだしにして、誰がどんな不正行為を? ジョッキークラブの保安部長ヴェナブルズもフレディをサポートするため、女性調査員ニーナ・ヤングを運転手として派遣する。

 沈着冷静に物事を処理していくフレディ。ある事件をきっかけに警察不信。唯一の欠点は、閉所恐怖症。独身だが子供が一人、だがその子はフレディが父親だとは知らないし、知らせない。
 そして、ジョッキーに未練をのこす(フランシスの分身か)。
 「馬に乗って時速30マイル以上の速度で障害を跳びながらレースすることは、少なくとも私にとって、ほかのいかなる方法でも得られず、想像すらできないほどの精神的効用をもたらす。人にはそれぞれ信仰の対象があるのだろうと思う。私の場合は大きな馬と大きな障害だ。」

 フレディの人間観の一端。
 「彼は彼なりに調和のとれた人間で、彼に欠けている、と他人が思うようなことがあっても、そんなことは彼には必要なかった。誰であれ、自分が考えている条件を人に押し付けるべきではない。」

 本書を初めて読んだ当時は、まだ私もパソコンなど使っていなかったのを思い出す。本書を改めて読んで、慌ててDATAのバックアップをとった。

 本書は運輸業が舞台だが、それを通じて欧州共同体から欧州連合へと進行する欧州の動きの一端が垣間見えて興味深い。