(1965年作品)
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日本での出版第1作目である。初期作品群では最も評判の高い作品である。したがって、フランシス作品のすべてを訳している菊池光(Mitsu)氏が日本で出版化するにあたり、第1作目に選んだのであろうと思う。
主人公ダニエル・ローク。27歳。オーストラリアの若き牧場経営主。弁護士だった父と母を事故で失い、一人手で3人の弟妹(17,16,13歳)を学校へ入れ養っている。 既に30年以上も前に書かれた作品であり、ロークの忍び込んだ厩舎のような厩務員の扱いは今ではないだろうが、英国に根づいている競馬というものが随所に感じられ、まさにフランシスにしか描けないような飼葉の香りに満ちた作品である。
ロークは、スパイと悟られないよう、牧場主から馬丁になりすまし、強い自尊心に邪魔されながら、ある時はいかにも不正を働きそうな者にみせかけ、ある時は臆病者にみせかけ、事件の核心へと迫る。 オクトーバー卿の二人の娘、正反対の性格、奔放な妹と純真な姉。ロークを父が送ったスパイだとは気づかず、それぞれのその性格から、ロークをめぐって作品を彩る。
そして、どんな不正行為だったのか。これはまさに思いもかけないような真相だ。ロークはこの事実を解き明かし、事件は解決したかにみえたが。……最後にきて……???
夜が深まった。時間がすぎて行った。月が上って明るく輝いていた。太古以来の荒れた高地が波うっているのを見つめていると、あまり独創的でない思いがうかんできた。地球がいかに美しく、そこに住む猿人類がいかに邪悪であることよ。金銭欲、破壊癖、残忍性、権力欲のとりこになったホモ・サピエンスども。サピエンというのは知恵がある、思慮がある、賢明な、という意味のはずだ。なんというお笑いだ。このように美しい地球なら、もっと優しい、正気な人類を作り出すべきだ。 (作中より)
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