『本命』  Dead Cert

(1962年作品)


 ディック・フランシスの小説第一作である。

 物語は、フランシスにとって馴染みの深い障害競馬を背景に展開される。
 競馬といっても日本とはだいぶ違う。英国では障害競馬が平地競馬同様に盛んである。そして、アマチュア騎手の存在。フランシスも当初はアマチュアだったが、勝鞍が多すぎてプロにさせられた。アマチュアは、自分で馬を持つことができ、調教に乗り、レースにも乗る。馬券も買う。馬券といえば、ブックメーカーの存在も日本にはない。それに、レースとレースの合間に、乗り馬のいない騎手がスタンドで他の人間と自由に交流・観戦できるのは、日本に全くない光景だ。これらすべてが本書の背景として登場する。

 主人公アラン・ヨーク(24歳)。南ローデシアの父親の会社ベイリー・ヨーク貿易会社のロンドン支店長。アマチュア障害騎手。英国滞在は、友人のアマチュア障害騎手ビル・デイビッドソン少佐の家に起居している。

 そのビルが、物語の冒頭、レース中の落馬事故で死亡する。ビルの乗り馬は、優秀な障害馬アドミラル。アランはレースでビルの直後にいて、この落馬の不自然さに疑問を持ち、レース後、ビルが落馬した障害に行ってみる。そこで、針金を発見する。誰が?
 アランは、犯人を捜し始める。幾度の脅迫、身の危険に見舞われるにもかかわらず、屈することなく、犯人を暴き出すため行動し、着実に犯人へと迫る。

 アランの父の証言:「息子がシャーロック・ホームズの再来というのをご存じなかったのかな? これがイギリスにきた後、詐欺や不正行為の調査をするのに探偵を雇わねばならなかったんですよ。うちの首席書記が言ってますよ、ミスタ・アランは確実に悪人をかぎだす本能を具えている」

 ビルの持ち馬だったアドミラルは、ビルの死後、その妻シーラからアランに贈られる。素晴らしく能力を備えた障害馬。ビルの遺児3人の中で最も賢いヘンリイ。そして、アランの恋人ケイト。それぞれが小説を彩り、キーとなる。






 本命