『煙幕』  Smokescreen

(1972年作品)


 主人公はエドワード・リンカン、人気映画俳優という異色の設定。乗馬のスタントマンから主役の座にのぼりつめた。簡単にいえば、フランシスの主人公のような人物をスクリーンで演じている俳優だ。勇敢で意思強固で物事を調べ出すのが得意。そして、私生活でもそうなのはいうまでもない。そして、どこに行ってもちやほやされる存在。これもあるいはフランシス自身が感じていたことかもしれない。

 余命いくばくもない母親代わりの女性ネリッサ・キャヴィシイから、突然成績不振を続けるようになった南アフリカにいる持ち馬の調査を依頼される。これら十数頭の馬たちは甥のダニロに遺贈されることになっているのだ。
 かくしてリンカンは南アフリカに飛ぶが、インタビュー会場で、見学に訪れた金鉱の中で、そして広大なクルーガー公園で、自分の命を奪おうとする罠が待ち受けていたのだ。
 調教師グレヴィル・アークノルド。ネリッサの義弟で、ロジェッダ金鉱の所有者クエンティン・ヴァン・ヒューレン。ネリッサの甥で陽気な若者ダニロ・キャヴィシイ。自尊心過剰の映画監督エヴァン・ペントロウ。リンカンと気の合うカメラマン、コンラッド。南アの映画配給会社の担当者クリフォド・ウェンキンス。新聞記者ロドリック・ホッジ。これら個性的な人物がリンカンを取り巻く。この中に凶悪な犯罪者が?

 南アフリカの様子を織り交ぜながら、本編は進む。
 南アフリカの競馬。1年を通じて水曜日と土曜日に開催される。
 通貨ランドは、1ランドで1ドル強、2ランドで1ポンド弱(当時)。
 巨大な富を生む金鉱の中の様子。エドワードは、凶悪犯から暗くて暑い地下深くの金鉱の中に取り残され、聡明な知恵で窮地から脱出する。
 自然そのままである広大なクルーガー公園の様子。エドワードは、迷ったらすぐには発見できないようなこの公園の中で、自分の演じた人物(「車の中の男」)のように拘束され、窮地に陥る。知恵のない人間なら気を狂わせながら死を迎えるに違いない状況から、サバイバルの途をさぐるのだ。そして、そんななかで真犯人を確信するのだ。
 余談ながら、感電の応急処置は、人工呼吸しかない。覚えておくべし。
 ところで、ネリッサの馬の成績不振の真相は?