『度胸』  Nerve

(1976年作品)


 冒頭からチャンピオン障害騎手の自殺である。しかもパドックの真ん中で。検量後でよかったと、冗談をいう騎手連中(騎乗手当は検量が済むとレースがあろうがなかろうがもらえる)。が、これを端緒として暗雲が騎手全体に拡がっていく。何かがおかしい。

 主人公ロバート・フィン(23歳)。音楽一族に生まれながら、「その才に恵まれず」一人異端に生きる(これも伏線)。障害競馬騎手として2シーズン目の若手。「度胸」抜群で、勝ち目がなく気性の激しい馬はフィンに、といわれる。

 モーリス・ケンプロアのTV競馬番組に、まだ目のでない騎手として出演。
 「レースに出場する機会さえ与えてもらえれば、私は、絹服を着ていようと……パジャマを着ようと、観衆がいようといまいと、ぜんぜん気にはしません。収入がふえようとふえまいと、落馬して骨を折ろうと、減量のために断食が必要であろうと、そんなことは問題ではない。私の念頭にあることはただ一つ、レースです……競う……そして、できれば勝ちたい」

 ところが、持ち前の騎乗技術でチャンスを生かし、リーディング調教師ジェイムズ・アックスミンスターの控えの専属騎手に。しかも、トップ専属騎手の負傷で、駿馬テンプレイトで重賞をも制し、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍を続ける。
 ところが、あるときをきっかけに、騎手への「暗雲」がフィンを襲う。騎手生命をも左右するいわれなき「噂」。邪悪な陰謀か。どん底に落ち込むフィン。
 自殺をも考えそうな状況で、不屈の精神を呼び戻し、不死鳥のように立ち上がるフィン。問題の核心を掴み、解決へと行動を開始するフィン。四面楚歌のなか、一人、自分の名誉回復と、そして騎手全員の名誉回復のために。

 心の支えは、フィン一族の一員・いとこの声楽家ジョアンナ。
 「ロッブ、あなたは鉄でできているの?」
 「鉄のやすりくずさ」