『罰金』  Forfeit

(1968年作品)


 主人公ジェイムズ・タイローン。サンデイ・ブレイズ紙の競馬担当記者。妻エリザベスは、小児麻痺を患い、体の90%が麻痺し、人工呼吸器がなければ生きられない状態であるが、ジェイムズは病院で彼女が退屈な日々を送るのを嫌い、日中は自宅に家政婦を雇って面倒を見ている。

 ここまで書くと、おわかりのとおり、この状況設定、フランシスの経験そのものである。
 ディック・フランシスは、騎手引退後、競馬記者をしていた(サンデイ・イクスプレス紙)。そして、妻メリイ・フランシスは、夫がまだ騎手をしていた頃だったと思うが、小児麻痺に罹り、実際人工呼吸器に入れられていた。この作品のエリザベスほど重症ではなく、幸い回復することができたが。その後も、夫人の身体が弱いため(喘息)、フランシス夫妻は、夫人の健康を考え、米国フロリダから、グランド・ケイマン島へと転居しているのである。

 さて、この作品に話を戻そう。昼食時に一緒だった他紙の競馬記者バート・チェコフは昼から泥酔しており、ジェイムズと別れた直後、自分の7階のオフィスから転落死した。別れ際、バートはジェイムズに、「自分の記事を金にするな」「自分の魂を売るな」と<忠告>していた。その後、同僚のデリイ・クラークが雑談の中で、バートが記事で推奨した馬がレース前によく出走取消していることを指摘したとき、ジェイムズはそこに不正行為を嗅ぎつけ、調査を始める。この事実は、サンデイ・ブレイズ紙にとっては大特ダネであり、大々的に記事にする。しかし、不正行為者はそれであきらめるどころか、暴力も辞さずジェイムズを排除しようと企てる。そして、ジェイムズの妻の存在は不正行為者にとって恰好の脅迫の材料となるのだ。
 馬を出走取消にならないように守る。自分の身を危険にさらすほどの価値はない。しかし、「誰かがやらねば」、いつまでも不正行為はなくならないのだ。





罰金