第1章:図書室で入手する本(その1)
光と影の姉妹の歴史
この世と天国の誕生である。神オーがこの世界の空間を作った時、時がない無の時代があった。光と暗闇が別々の存在であった、霧の立ちこめる影の世界である。かすんだ混沌の中、13人目の影の神、シェードヴァリが大手を振って歩いていた。彼らがどこからか来たのか、それとも影自体の子供なのか誰も知る者はいない。
最終的に原始の魂が一つとなり陰と陽の継いである双子の美しい女神となった。二人はとても仲が良く、二人で一人であるものと考えていた。二つの顔をもった女神は、神々しい水晶の球を創り、母なる大地シャウンティアを創るため、その中に命を吹き込んだ。シャウンティアはアビア・トーリルだけに魂を入れると約束したが、最初はこの世界空間の全ての物質に入れた。
この新しい宇宙は銀髪の女神、セルーネの顔によって灯され、黒髪の女神シャールの編まれた髪がかかることにより暗くなったが、まだ熱や炎は存在しなかった。シャウンティアは暖かさを懇願した。そうすれば命を育て、生物を自分の手足と体である惑星で養育することができるからである。一つであるはずの二人の姉妹は、初めて二つの心を持つことになった。シルヴァリー・セルーネと暗闇の姉妹との間でこの先世界に命をもたらすべきか否かの言い争いが起こり、女神達の争いは大衝突に至ったため、病や殺人、死が世界にもたらされることになった。
戦いのある時点においてセルーネが有利となり、永遠の炎の地に時を超え、空間を越えてたどり着き、自分を焼く炎の苦しみに耐えながらセルーネは永遠に燃えさかる炎により、自分の体の一部に火をつけた。その炎は空で燃え、シャウンティアを暖めた。怒り狂ったシャールは怪我をした双子の姉妹に二倍の攻撃を加え、クリスタルの球体にある全ての光と熱を取り去った。セルーネは再び魔法の聖魂の一部を引きちぎり、
球体にある生命を守るため、姉に向かって絶望的に投げつけた。
セルーネはほとんど死にそうになり、彼女からはエネルギーがしたたり落ちていた。彼女を救ったのは、現在ミストラという名で知られる魔法の女神ミストリルであった。ミストリルは光と暗黒の魔法から生まれたが、最初の母セルーネの方が好きであったため、二人の戦いを中断させた。シャールは悔しがり、永遠の復讐を誓った。
双子の女神は何十億年と争い続けたが、トーリルとシャウンティアの厳しい監視の下で生命がなんとか生まれることになった。シャールは常に強い力を維持していたが、孤独であった。一方セルーネは力が弱かったが、自分と同盟を結ぶ娘や息子たち、それから似たような考えを持つ移民の神々からも力を譲り受けることができたので、総合的な力は強くなったり弱くなったりしていた。
時が過ぎ、再び暗闇の混沌が覆うことを望み、光と暗闇を融合させようとしてこの世界を探し歩いていたシェードヴァリはの助けを得て、シャールの力は再び強くなった。しかし、世界を自分の望むままに変えようとしたシャールの陰謀はアズースの出現により阻まれた。アズース、「高き者」は全ての命有る呪文使いの頂点に立つ者であり、ミストラ(ミストリルの生まれ変わり)の夫でもあった。
彼は世界の果てに、当の世界の影の幻を造りだし、そこにある水晶体にシェードヴァリをポケットに入るほどの大きさにして閉じこめる方法を見つけたのである。影の王達は幻を調べるためにそれに惹かれていき、それが罠だと分かったときには、アズースはシェードヴァリをゴンドが創った影の鍵であるシャドースターと共に閉じこめたのであった。「高き者」は限りなく広がる宇宙に向かってシャウンティアの愛の手に生命があふれるようにと叫んだのであった。
ユニコーンランの歴史
バードや賢者がユニコーンランの源流こそが命の源であり、生命のゆりかごであるという話を語り継ぎ続けてきた。自然の種族は全て皮の源流であるシャウンティアの胎内からトーリルに生まれ、ユニコーンランを抜けて外の世界に来るといわれている。シャウンティアの娘が川の源流に住み、新しくこの世に生まれてくる者を先導するという者も、シアラが産婆役をしているという者もいる。
真実がどうあれ、エルフ、コレッド、ハーフリングは皆ユニコーンランが命の聖なる場所であり、格別に清浄な地であると考えていた。結果としてこの三種族は、ユニコーンランまで旅をすることを、決してしてはならぬこととしていた。もし川が汚されたならば、トーリルにもう二度と新しい命は生まれないだろうと考えたからである。
神々の渓谷の歴史
神でさえ時には戯れて遊ぶことが必要だといわれている。スパイン・オブ・ザ・ワールドの遙か北には神々の渓谷がある。この世界、もしくはこの時限には不釣り合いな楽園は人間のためではなく神々のための遊び場なのである。
だれでも、この渓谷にたどり着けば神になることはできたが、それは楽園内においてのみのことである。しかし、あまりにも多くの幻想に惑わされた者達が、伝説の渓谷を求めて、スパイン・オブ・ザ・ワールドの渓谷に身を投げて死んでいった。
デッドスリーの歴史
「ナックルボーンズ、スカルボーリング、空の王座」
遙か昔に、死と死者の神ジャーガルとして知られる全ての終わりの王が一人で起こした戦いがあった。ジャーガルは命を持つ者達と権力者達の仲違いを煽動してこれを餌食にし、権力を求めて殺し合いをする者を影の永遠の暗黒の王国に招き入れた。全てが死に、自分の元に来るとジャーガルは他の神々には手も出せぬようにその力の全てを王国の維持につぎ込んだ。
しかし、ジャーガルは自分のしていることに飽きてしまった。挑戦がなければ意味はなく、意味のないものには暗黒が広がるだけという状況では、絶対権力を持っていても何にもならなかったから。
この暗黒時代に、ジャーガルが獲得した権力を渇望するベイン、バール、そしてミアクルの3人の強力な命ある者が現れた。彼らはそのような絶対権力を求めないこと、また死んでまで得ようとはしないことという、偽りの邪悪な契約を結んで、いかなる死も戦いもものともしない強力な魔法を探して、レルム中を旅したが、どんなモンスターと遭遇しようとも、どんな呪文をかけられようとも彼らは無傷であった。そしてついに彼らは7人の失われし神の一人を倒し、神の聖なる魂を飲んだ。
3人はグレイウェイストまで赴き、骨の城を探し出し、スケルトン軍やゾンビー隊、体無き死者の群れ、リッチの列と戦い、最終的に人生をかけた旅で探し求めたものである骨の王座を手に入れた。圧制者ベインは「この悪の王座に座る」と叫び、暗殺者バールは「もし貴様が指一本動かそうものなら殺してやる」と脅し、ネクロマンサーのミアクルは「貴様の魂を永遠に幽閉してやる」と断言した。ジャーガルは疲れた表情で立ち上がり、「王座は譲る、貴様達が王座に慣れるまでわしは執事として仕え案内しよう」といった。驚いた3人に向かい死の王は誰が統治するのかを尋ねた。
3人は戦い始め、全員が疲労して死ぬか永遠に戦い続けるかしかないようになるとジャーガルは間に入り、「王の役割を分けて、ゲームで技を競って決めてはどうか」と提案した。3人は同意したので、ジャーガルは最も強い3人の死者の頭をとり、ボーリングの要領で競争をさせた。グレイウェイストに頭を投げ、最も遠くまで転がすことのできた者を勝ちとするものであったが、ちょうどその時ジャーガルに会いに来た「化け物の王」メイラーは自分もゲームに参加しようと、3つの頭を追いかけ、この邪魔に怒ったベイン達は再び戦い始めた。ジャーガルは仲裁に入り、幸運の女神に身を任せてはと提案した。
3人は合意し、ジャーガルは自分の骸骨化した指の骨を折って3人に渡した。メイラーが戻ったのはナックルボーンのゲームが終わった時であった。勝利したベインは、「俺が永遠に暴虐の王として支配する。俺の気まぐれで憎しみと争いを引き起こそう。そしてこの王国では俺の前に全てがひれ伏すだろう」と宣言した。第2位のミアクルは「私は死者を選ぼう。そして最終的な勝利を得よう。ベイン、貴様も死んで王座は私のものとなるのだ。全ては死ぬ、神でさえも」と宣言した。最下位のバールは、「俺は死を選ぼう。ベイン王が支配する者全ては必ず俺の手を通り、ミアクル王に渡らねばならない。貴様らは俺に敬意を払い従わなければならない。なぜなら俺の心一つで支配下にある者全てを殺し、王国を破壊できるのだから。」と言った。メイラーはいらいらしていたが何も得らず、彼には化け物だけが残されたままだった。ジャーガルは解放されたことに微笑みを浮かべただけだった。
ミストラに選ばれし者の歴史
魔術の女神ミストラが人間に力を授けることになった理由は明かではないが、「タイム・オブ・トラブル」(ミストラ自身もヘルムの手にかかった)を予知していたミストラが、自分の力の継承者(女魔法使い、ミッドナイトとなった)に力を授けることにしたというのがミストラの、他の行動から考えて有力な説である。
すなわち、ミストラは、運命の碑板を盗み、「タイム・オブ・トラブル」の波乱を増大させた神々、今は亡きベイン、ミアクル、そしてバールの策略に対抗するため、不死身といってもよい人間に手を貸すことにしたのだと考えられる。
この説によると、ミストラは「タイム・オブ・トラブル」より1300年以上も前の「燃え上がる炎の時代」(DR0年)の頃には、アズースに対して人間に力を分け与えねばならないと伝えていたのであった。力を与えられた人間が後に、「ミストラに選ばれし者」と呼ばれた者たちであり、ミストラから与えられた力はその者達の体の中で眠っており、その者が望む時のみ、力を呼び起こすことができるのであった。
ミストラは強力なヒーリングの力をその者達に先天的に与えた。彼らは普通の人間よりも、遙かに寿命が長かった。ミストラは人間がその力を用いることで更に強大な力を得るだろうと考えたが、一方その力だけでは神々に太刀打ちできないだろうと予測もしていた。
魔術の女神は、ふさわしいと思われる人間を選び始めた。最初に選ばれたのは若きメイジ、エルミンスターと有望なウィザード、ケルベン・アルンスンであり、両者とも力を与えられるのにふさわしく、それを使いこなす力があった。失敗に終わったそれまでの試みにより、ミストラの力を自らが滅びることなくその体に受け入れることができる者はほんのわずかしかいないことが分かっていたため、エルミンスターとケルベン以外の者ではたとえ十分な耐久力を備えていたとしても、ミストラの導きなしに生きていくことはできなかっただろうと思われた。ミストラは、どうしても「タイム・オブ・トラブル」を乗り越えなくてはならなかったので、自らをその者たちを育てるためのゆりかごとし、選ばれし者がこの世に世を受けた頃より自分の力に順応できるように育てた。
ミストラによる選択の際に最も慎重に考慮されたのはその父親達であった。ネヴァーウィンター付近に住む貴族、かつてのハーパーズ、ドマル・シルバーハンドがその一人であり、ミストラはドマルが心を惹かれていた魔法使い、エルー・シュンダールの体に憑依した。エルーはミストラがその前に姿を現し、その計画をうち明けると喜んで自分の体を提供し、ミストラに説得されて(エルーは始めはあまり乗り気ではなかったが)ドマルを誘惑し、ドマルは喜んでそれに応じた。
ドマルとミストラ(エルー)は「イヤー・オブ・ドリフティング・スター」(DR760年)に結婚し、7人姉妹の長女になるアナストラ・サイルーンは続く年の冬に生まれた。サイルーンの6人の妹は、1年おきに、エンデュー・アラストリエル、アンバラ・ドーブ、エシーナ・アストルマ(通称「ストーム」と呼ばれることを好む)、アナマニュ・ラエラル、アラッスラ・シェンラントラ(シンブルという名で知られる)、エルシー・キルーという順で生まれた。リールムシアン伝説の中では子供達は7人姉妹として知られている。
ドマルは何年もの間妻に乗り移ったミストラに気づかずにいた(おそらく、ミストラが秘密がばれるとドマルを失うことを恐れ、注意していたためであろう)。彼は男の子を望んでいたため、6人目の女の子が生まれた際には、気が触れんばかりに絶望したし、自分の妻が日に日に衰弱するのをなすすべもなく見守ることしかできなかった。エルーは女神と共に存在することにより、萎びた貝のようになってしまい、ミストラの助けなくしては生きていくことができなくなっていたのだ。
7人目の子供がエルーのおなかにいたとき、ドマルはプリーストに相談をし、司祭は大きな魔力が彼の妻に取り付いているということを教えた。ドマルは自分と妻の苦しみを長引かせないために妻の首をはねて殺害しようとした。彼がそれを実行したとたん、ミストラはその姿を現し、自分の計画を明かしたが、その結果はミストラが恐れていた通りのこととなった。ドマルは自分たちがミストラに利用されていたことにショックをうけ、妻の亡骸に背を向け、その土地と子供を捨てて北の地に消えていった。ミストラはしかたのないことと思って、ドマルに残された30年を見守り、ドマルは死の間際にミストラを呼び、ミストラはドマルを召使いとして自分に使えさせるという約束をした。
ドマル・シルバーは今日ではウォッチャーという名で知られ、人間にその姿を見られることなく世界を旅して選ばれし者の候補者を捜し出し、ミストラと選ばれし者に迫る危機を明らかにする任についている。
シャドーデイルの歴史
ツイステッドタワー最後のドロウマーシャル、アズマエールの失脚
シャドーデイルのドロウ支配は、900DR(デイルレコニング)前半、人間達とダークエルフ達の争いが始まるまで続いた。その人間達はデイズズメンであり、千年前にドラゴンリーチを越え、ミス・ドラナーのエルフ達と和平を結んでエルフの森境に住み着いた者達であった。
ドロウは攻撃を受け、地上から森の奥に追いやられた。ドロウのリーダーはツイステッドタワー最後の司令官でもあったアズマエールであり、彼は最後の強力なリーダーであった。アズマエールはドロウ保有地からの撤退を監督し、人間の反乱により城が包囲された1年間を耐えた。これはアンダーダークから直接タワーに運び込まれる資源と奴隷により保持していたものであったが、ある人間の奴隷(デイルの歴史は何人か可能性のある者を示している)がタワーの井戸に毒を入れたために、城は落とされた。
アアズマエールの遺体は死人達の仲に見つからず、彼の民と再会するために森の奥に逃れたのだと信じる者もいる。もし、アズマエールが生きながらえたなら、シャドーデイルを失った経緯を彼の女家長に報告せねばならないことから、人間とドロウ両方から隠れたと考える方が自然であろう。この事件は400年前に起こったため、アズマエールがいまだに生きている可能性は十分にある。
シャドーデイルの歴史
シャドーデイルの初代王アシャバ
ツイステッドタワーかを奪い、ドロウの要素を払拭してデイルズマンは完全にデイル・オブ・シャドーデイルを設立した。その初代王は最後の攻撃に功のあったアシャバというウォーターウィザードであり、高齢であったにもかかわらず、それから40年間平和に統治した。
アシャバは自らの死が近いことを悟り、自身を水と化して川と同化したという話があり、それ以来、川も浅瀬もツイステッドタワーもすべて彼の名を有している。アシャバはその死の前に信用できる士官をシャドーデイルの新しい王とし、アシャバが着けていたペンダントはデイルランドの王の象徴となり、後続の王達もそれを手にすることとなった。
シャドーデイルの歴史
ヨアダスとタリスト大虐殺
過去百年はシャドーデイルの繁栄と衰退を表す歴史の時代であった。シャドーデイルの住民は皆移民でありそこを己の故郷とみなした。
百年前、デイルはヨアダスという、いかなる神の力も信じない不可知論者の王によって統治され、彼はその信念を暴力を持って強制したため、この時代はウォッチャーズノールでのタリスト大虐殺が象徴する、過酷な宗教弾圧の時代となった。
ヨアダスは何者かが呼び出した地獄の獣によって殺されたが、その獣はその後もデイルで暴れ回り、呪文使いであるオームリーとサイルーンに殺された。オームリーは熱狂的支持を得て王に選ばれた。
シャドーデイルの歴史
オームリーの平和統治
シャドーデイルの歴史上、一番長かった平和な時代は、オームリー王と妻サイルーン(シャドーデイルの魔女として、より有名である)が
王座に就いていた時期であった。二人は40年間にわたりシャドーデイルを統治し、隣接国家等やエルフとの和平を進めた。
しかし、ブラックネットワーク(ゼントゥリム)はムーンシーからソードコーストにかけての貿易路の独占方法を探し(彼らは今に至っても以前として探し続けている)、シャドーデイルを属国家とすべく攻撃と破壊工作の的とした。ゼントゥリムの組織によりオームリーが暗殺され、平和であったオームリー王統治の時代が終わった。
シャドーデイルの歴史
偽りの王ヨーダン
オームリー王の暗殺後、暗殺者は戦士ヨーダンによって捕らえられ、殺された。ヨーダンはシャドーデイル統治権の象徴であるアシャバのペンダントを手にし、新王として名乗りをあげて人々の賛同を得た。人々はヨーダンもまたゼントゥリムの組織の人間であること、全てが計画されたものであることを知らなかったからである。
ヨーダンはツイステッドタワーを離れ、シャドーデイルの東にあるクラッグ城に落ち着き、ヨーダンの議会はブラックネットワーク(ゼントゥリム)の組織の者により占められた。人々がついに反乱を起こしたとき、ゼントゥリムはヨーダン王政を守るための援軍を送った。
サイルーンは策略に気づき、シャドーデイルを正しい道に導くべく力を尽くしていたが、戦いを好まない性格であったため、ヨーダンの支配の間にはその手を下すことはしなかった。
シャドーデイルの歴史
ケルベンのヨーダン殺し
ヨーダンによるシャドーデイル統治は、ケルベン・アルンスン別名ブラックスタッフとの出会いにより終わった。表向きには、ケルベンの招待を受けてウォーターディープに赴いたヨーダン王がそこで病の床につき、そしてなくなったとされているのだが、実は、ヨーダンがシャドーデイルを出発するメイジ、ケルベンを待ち伏せし、逆に殺されたというのが真相である。
ケルベンはシャドーデイル統治権の象徴であるアシャバのペンダントを入手して、デイル諸国を治めるのふさわしい人材を送ると約束し、ウォーターディープに戻った。ヨーダンが5年間統治したクラッグ城は見捨てられ、ゼンティルキープ兵が配備されていた。ヨーダンは後継者として、メルバウン人のライランという者を選んでいたが、ペンダントを有しない者は王としては認められなかった。
シャドーデイルの歴史
国民の喝采による王の受認
ケルベンによる、ヨーダン王の死より後、シャドーデイルでは王の選出の際には人々の大きな支持をまず必要とすることになった。通常、王位に就いていた者が選んだ後継者は大衆の支持を十分得られることとなっていた。
このシステムには欠点もあったが、おおむね、誇り高く、独立心のあるシャドーデイルの民の性質をよく反映するものとして受け入れられていた。人々は、エルミンスター師の言葉「良い官僚や悪い血縁関係を生み出す、遺伝に左右された運」を避ける道を選んでいた。
シャドーデイルの統治権を象徴するのは、元来魔術師の持ち物であったアシャバのペンダントであり、これはシャドーデイルを治めるにふさわしい人物かどうかをはかるためのものであった。
シャドーデイルの歴史
王無き時代
ケルベンがアシャバのペンダントを手にしていたとき、暗殺されたオームリーの妻であったサイルーンがシャドーデイルの実質的な統治者であり、この期間は「王無き時代」として知られている。
サイルーンと、メインズバンドと呼ばれた彼女の仲間には、ゼンティルの群を追い出すことと、近くの怪物達を海で食い止めることという使命があった。古来統治者の座であったツイステッドタワーには、ヨーダン以降にも誰も住むことはなく、サイルーンもメインズバンドも統治者の役目を引き受けることはなかった。そして、メインズバンドは他の地へと冒険を求めて去っていった。
シャドーデイルの歴史
ドウスト・サルウッドのシャドーデイル王位継承
ヨーダン王政崩壊後、ケルベン・ブラックスタッフはデイル諸国の統治者にふさわしい候補者グループをみつけた。それはミス・ドラナーの騎士であり、騎士の名前はエルフの領土に対する騎士の興味と、エルフの民とのつながりを表している。ケルベンは騎士にシャドーデイル統治権の象徴であるアシャバのペンダントを渡し、その代わりに彼に従わせた。
騎士のリーダーであるレンジャー、フローリー・ファルコンハンドは統治権を放棄し、ダウスト・サルウッドが王となった。ダウストはツイステッドタワーに済み、大組織であるブラックネットワークを追い出し、民主的な優れた統治者として5年間国を治めた。ミス・ドラナーの騎士はヨーダンが後継者として選定した(この事実はゼントゥリムの存在によりあまり意味がないものであった。)ライラン・ナンテール・ザ・プリテンダーからシャドーデイルを保護した。
シャドーデイルの歴史
エルミンスター、シャドーデイルへ移住
ミス・ドラナーのダウスト・サルウッドがシャドーデイルの王座を引き継いだ頃、エルミンスターはシャドーデイルに移り住んだと言われている。彼はオールドスカルの裾野にある低い塔に住み正式に隠居生活に入ることを宣言した。シャドーデイルの人々は、強力なメイジであるエルミンスターをもうあてにできないと考えたが、たいていの場合エルミンスターは助力を与えることを惜しまなかった。
シャドーデイルの歴史
ダウストの選びし後継者、モーングリム・アムキャストラ
ダウスト・サルウッドは5年の統治を行ったが、「千年もの時に感じられた」と語っていたように、単調な政治の日々に飽きて、王座を譲り渡し、再びミス・ドラナーの騎士と共に冒険に戻った。シャドーデイル統治権の象徴であるアシャバのペンダントは、若い騎士の一人、ウォーターダビアンの貴族、モーングリム・アムキャストラに引き継がれた。
ケルベンはモーングリムを別の目的でウォーターディープから派遣していたが、ダウストはモーングリムの一本気な性格とこの国を守ろうとする気概を評価し、その決断が正しかったことは歴史が照明している。
シャドーデイルの歴史
シャールとモーングリム、出会い、そして結婚
シャドーデイル南方の強国コアミアはケルベン「ブラックスタッフ」アルンスンがシャドーデイルの二人の王、ダウスト・サルウッド、モーングリム・アムキャストラを選んだ心情を理解し、モーングリムの元に官吏を派遣してシャドーデイルとパープルドラゴン王座の友好関係を保証した。
官吏の名はシャール・ロワンマントルという名で、バンガーダハストに派遣された(その後の隠蔽工作のため正確な事実関係はアキラかでない)が、モーングリムと結婚し二人は追うと后になった。
シャールの忠誠心は今や夫と、二人が一緒に統治するシャドーデイルに向けられることになったが、これはコアミアの思惑とはおそらくずれていたことである。
シャドーデイルの歴史
モーングリムによる統治
モーングリムによる統治は、彼の望みに反して平穏なものではなく、シャドーデイルは初めて戦争に突入することになった。それは、「イヤー・オブ・ザ・プリンス(DR1357年)」ライラン・ザ・プリテンダーが仕掛けたもので、ライランは以前にゼントゥリムの手先であったヨーダン王がそうしたように王座を奪うべく攻撃を重ねた。
この戦争は大きな出来事ではあったが、他の大戦争、後に「タイム・オブ・トラブル」と呼ばれる時期に勃発したゼンティルキープ軍とデイル諸国の大戦の陰に隠れてしまい、「シャドーデイルの戦い」と年号を付けずに言われた場合には、2つ目の戦争を意味するようになっている。
モーングリムは戦争のみならず、様々は小競り合いや災難などにも対処しなければならなかった。モーングリムとシャールにはスコッティという子がいたが、シャドーデイルの慣習に従うならスコッティが王位継承者とは考えられず、それにふさわしい人物(戦士や魔法使い)が
国を治めることになっていた。が、多くの者はモーングリムが息子の成人まではペンダントを持ち続け、その後に退位して息子を王位に付け、シャドーデイル初の世襲が行われることになると考えていた。
ドロウの歴史、転落
この決定的な事件が起こるまでは誰もイリシーリもしくは「南のエルフ」のことを詳しく知らなかった。ただ、イリシーリの肌の色が濃いことから、「ダークエルフ」としても知られていただけであった。
彼らは南の地にある密林と熱帯雨林とに住み、誇り高く、好戦的で、高度な文化を持っていた。(他のエルフの賢者は彼らを「退廃的」であると語るが。)イリシーリは他のエルフ族を含む、隣接の地域全てを攻撃した。彼らの残忍な侵略と略奪は戦好きの貴族達と、残忍な神ゴウナドールとロルスを崇拝するプリーストとの命令によるものであり、一方侵略を受けたエルフ、人間、ドワーフその他の者達も彼らに対抗するための同盟を形成した。
そして、ダークエルフは巨大な魔法戦争に敗れることとなり、以前に発見した地下の迷路に逃げ込んだ。この事件は「転落」として知られ、地上で暮らす種族としてのドロウが終わったことを明確にするものとなったものである。
ドロウの歴史、暗黒戦争
地上の敵から逃げ、「転落」した後にも、ドロウの好戦的な性質に変化はなく、彼らはアンダーダークの土地において立て続けに戦争を起こしたのであった。彼らは手始めにドワーフのマジカルアイテムを盗み出し、それを当のドワーフに向けて使用した。この時以来、今日まで根強く残る敵対関係が作られたのであった。
その後、ドロウ達の間では新しい世界の支配権をめぐり、貴族同士やプリースト同士などが内戦を行い始め、これらの戦いはすさまじい魔法の爆発により終焉を迎えるに至った。爆発によって、彼らが奪い取ったドワーフ最大の洞窟である偉大なベイリンデンの天井は完全に崩れ落ち、多くのドロウは下敷きとなってドワーフの都市に閉じこめられた。今では空に向かって開かれた洞窟が「巨大な裂け目」として知られるようになっている。
生き残ったドロウ達は略奪できるだけの人間、奴隷、そして装備を集めて、アンダーダークで他に定住できる場所を求めて逃げたのであった。この「四散」は多くのライバルを生んだが、現在ほとんどのドロウは独裁的な街に住んでいる。
北の歴史、ファースト・フラワーリング
千年もの間、ゴールドエルフはイレファーン(現在のウォーターディープ)とイアーラン(シャイニングリバー沿い)との間に住み、ネズリルやイスカクといった興りつつある国家の人間達と貿易を行いながら、自分たちの美しい森の街からゴブリンを撃退していた。
同時期に、ドワーフ一族は同盟をまとめたドワーフの名をとったデルゾーンという国家を作った。デルゾーンは地下国家として始まったが、その統治はアイス山脈からネセール山脈にまで及んだ。デルゾーンの西側の国境にはシルバームーンパスが位置し、東岸には狭き海があった。オーク達がスパイン・オブ・ザ・ワールドから来た際にも、エルフ達の大殺戮に出会って逃げてしまった。しかし、今日では、デルゾーンはオークと同じような種族の母国であり砦となってしまっている。
北の歴史、王冠戦争
人間によるシャイニングシーからソードコーストまでの大移動の際、人々は海の旅人となって波間を突き進み、ムーンシャイ諸島、ミンターン、ルアシム、そして北方の島々にまで行き着いた。
エルフは戦いで破壊された土地を巡って、人間やオークと終わりのない戦いを繰り返していた。フェアフォークを襲った最悪の惨禍ははおそらく「暗闇の惨事」と呼ばれる殺しの魔術であろう。殺しの魔術は暗闇と、燃えさかる雲へとその姿を変えるものであり、その雲はミエイリタール王国を覆い尽くし、数ヶ月後王国は消滅した。生存するエルフがいないどころか、そこには木一本すらなく広大な荒れ地があるだけであった。これがハイムーアである。
エルフにとって全てが闇に覆われているというわけではなかった。退却を強いられたものの、バーバリアンやオーク群が力を蓄えていたときに、エルフはエルフの宮廷やエベレスカ(今でも砦が残っている)の間で勢力を伸ばしていた。彼らは、力を増したジャイアントが率いるオーク、襲撃してくる人間、さまざまな獣などから身を守るために、ドワーフや好意的な人間、また他のエルフ達と協力することもあった。エルフ達は、倒れた王国、シルヴァリームーン、ミス・ドラナーの街で輝かしい成果を収めた。
一方、東方の穏やかで美しい狭い海の浜辺では、人間の小さな漁村が街になり、やがて統一されてネズリル国家を形成するようになっていた。賢者達の考えでは、漁村から統一国家に至ったのはひとえに強力な人間のウィザードによるものだとされている。その魔法使いは、伝説にネザーのスクロールとして伝わる偉大な魔力の本を発見し、「デイ・オブ・サンダー」を生き延びた唯一の人間だと言われている。
名もなきウィザードとウィザードに導かれた人間達によって、ネズリルは権力を持ち栄華を極めた。ネズリルは北の地における初めての人間による国家であり、また最も勢力が強い国でもあった。ウィザードによる本の発見が、人間による魔術師の幕開けだというものもいる。なぜなら、それいぜんには人間界にはシャーマンと呪い師いしか存在しなかったからだ。3000年にわたりネズリルは北の地を支配したが、その伝説のウィザードさえ自分たちの宿命を変えることはできなかった。
北の歴史、近代史
1367年欠けゆく夏の季節に、膨大な数のオークが、スパイン・オブ・ザ・ワールドからやってきた。それは、交易の地である北の地に入り込むためであり、グレネイール王に率いられたオーク達は月の森と寒さの森の間を南に向かって進み、メニアローズ砦にまで押し寄せた。
メニアローズ砦のオークの支配者はオボールド王で、王は、当面の敵である北の地の人間と、ヘルゲートキープの怪物達との戦いのために、スパイン・オブ・ザ・ワールドから来たオークと力を合わせるべきであることをは知っていた。しかし王は彼らの目論見を恐れていた。砦のシャーマン達が、オーク軍は謀反を起こし、砦を落とし、王を追放すると予言したからである。
グレネイール王が15万もの兵をメニアローズ砦の前に広がる平地に駐屯させたのは暗い日のことであった。オボールド王は、自分の民に対して、侵略してきたオーク軍は追い出され、平地に住むハゲワシの餌になるであろうと伝えた。オボールド王は、グルームシュを証人として、「エルフの祭りのように」裏切り者であるスパイン・オブ・ザ・ワールドからのオーク軍を全滅させると誓ったのであった。
4ヶ月に渡り、砦のオークも含め4万ものオークがその地に倒れる戦いが続き、高くそびえる要塞の壁に攻撃に継ぐ攻撃が繰り返された。侵略軍のダメージははるかに大きかったが、それにも拘わらず砦の中の状態は悪化し、侵略軍に破れる結果となった。
戦いは、ウクターの月の第一週にその頂点を迎え、粉雪が再び倒れたオークを包むと、グレネイール王は残存する全ての兵を砦に向かわせ、彼らは門を破壊し、剣の荒らしを見舞った。砦が萌え始めた時、二人の王は砦の中で対面した。生き残ったオークは、二人の王の超人的な戦いを未だに語り続けている。最後にはオボールド王がグレネイール王に長剣の一撃を食らわせたのであったが、グレネイール王が
息を引き取る際にはオボールド王の方も致命的な傷を負っていた。オーク達は再び戦いを始めたが、オボールド王がどうなったかを知る者はいない。
煙と雪の中より突然征服者達は現れた。ワルクラウン族のドワーフ軍がシルヴァリームーンからやってきたのだった。彼らは破壊された門から入り込み、疲れ果てたオーク達を一掃して荒れ地へと追いやってしまった。現在、エメルス・ワークラウン王がメニアローズ砦を統治しているが、ドワーフは砦を昔の名であるフェルバールと呼ぶ。北の地の大半がいまだに街を砦と呼び、オークの再攻撃に耐え得るかどうかを
見届けようとしている。ワークラウン王は、砦を守るためにドワーフ全員を集結させようと、金や銀の鉱脈があるという情報をドワーフ社会に流した。
北の歴史、エルフの出ネズリル記
この時代は、人間やオークによる略奪のせいで、エルフは栄えることができず、彼らが北の地を離れ、エヴァーミートに行く決心をした時には、街にはエルフの跡形はほとんどなく、わずかにオールドロードやハイフォレストにあるアイランに破壊された港がある程度のことになっていた。
長い間住んでいた地を離れたのはエルフだけではなく、ネズリルの人間国家もその歴史が終わろうとしていた。ネズリルの地は砂漠化に直面していた。砂漠はナローシーを飲み込んで、かつての海を乾いた塵と吹き荒れる砂とで満たした。伝説は、ネズリルの偉大なウィザード達が自分たちの土地を失うであろうということに気づき、ネズリルの地と民を捨てて、魔術の秘密を携えて世界の隅々に散っていったとしている。実際には人々はとてもゆっくりと移動したのであり、3千年前に始まった移住が、1500年前にやっと終わったのであった。真実がどうであれ、ネズリルの地にはもうウィザードはいない。
北の地ではかつて勢力を誇っていたドワーフのデルゾーン要塞も困難な時を迎えていた。オークの襲撃を受けていたのである。オークは北の地においては何時の時代にも敵とみなされていたが、オークの数世帯が住む生息地で、10世代に渡り人口が増えると、それだけの人数をはその生息地にいられなくなることから、オークはどんどんと住処を増やしていった。そして、スパイン・オブ・ザ・ワールドの洞窟や、グレイピークスにある廃坑、アイス山脈のドワーフが使っていたあなぐら、ネザー山の地下聖堂、ハイムーン山脈の中心部などから
あふれだしてくる時がきた。
そんなにも多数のオークが出現したことはかつてなく、デルゾーン要塞はこの猛攻撃の前に自ら崩れ落ちてしまった。前述のようにウィザードがいなくなったネズリルはその姿を歴史から消してしまった。アイランだけが攻撃に立ち向かうことができた。トゥルラングの民や他の国々のおかげで、エルフは彼らが旅立つ最後の数日間、かろうじて敗北を免れたが、その後もまだ数世紀の間戦いは続いたのであった。
東では、アイランがアスカルホーン要塞を建て、ネズリルからの避難民がハイフォレストにカルセの町を作ると、彼らは要塞を引き渡した。逃げたネズリル人は、ロルクとラウドウォーターを作った。他の者達は、山や丘、北の荒野やハイフォレストの西をさまよい、ウスガルドの祖先や
シルヴァリームーン、エヴァールンド、サンダバールの始祖となった。
北の歴史、1368年バナーの年
この冬、ドワーフは再建されたフェルバールの町に移住したが、その頃、ゼントゥリムを後ろ盾にもつ冒険家達がグレートワームの洞窟に侵入し、グレートワーム族のシャーマンリーダーであるエルレム・ザ・ワイズを殺害した。一族の戦士達がその邪悪な冒険者達を急襲したとき、瞬間移動の魔法が発動し、冒険者達のうち3人を盗まれたエルレムの宝もろとも安全な場所へと転送した。
一族の現在のシャーマン、セムリンによればエルレムは「肉体が滅びた今、私の魂がグレートワームを守る」と約束したと言うが、心強いこの言葉も空しく、一族は大雪、食糧不足、士気の低下などによりいつもより厳しい冬に悩まされた。
バーバリアンの野営地を訪れた者達の中で信用できる者は、セムリンとグウェンシェン・「アイアンハンド」・タリスターズがエルレムの鱗でできた鎧のようなものを着ていると伝えた。このかつてのシャーマンの鱗を鎧として使うということは、夢のお告げを通して聖職者に伝えられる
ものだとされている。鎧はしなやかな皮の鎧にしか見えないが打撃を逸らすことができ、フルプレートメイルほどの防御力を有するようであった。
ネスメの報告によると、エヴァームーア内のトロールによる襲撃が激増し、色々な情報筋からは、何者かがトロールをムーアから出て行かせようとしているものと確信できる。冒険者達が無限に沼から逃げ出してくるトロールに対抗すべく努力しても、トロールのムーアからの追放が何を意味するのかその年には分からずじまいであった。
その年で一番のおどろきは、シャーマンでありチーフでもあるタンタ・ハガラ率いるブルーベア族が怪物に支配されていたヘルゲートキープ砦を行進したことであった。町を政治的に支配するために多少の苦労があったと、色々な文献は伝えているが、タンタ・ハガラは町の新しい指導者となったのであった。
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