中高生オリエンティアの現状に関して

(この文章は昨年4月に村越真氏発行のO-Forum6号に掲載されたものをそのまま転載したものです)

3月の最終週に第12回インターハイが行われ、団体戦(3人リレー)は混戦の中、最終走者の逆転で麻布高校が2年ぶり7回目の優勝。個人戦は男女共に本命視されていた川上崇史(麻布高校2)渡辺信枝(新宿高校2)が連覇。

 インターハイは今年で12回目になる。選手権と銘打ってはいるものの、普通の大会と何らかわりない。変わることといえば、中高生の数が少しばかり多いことと彼らのためにカップ・盾・メダルなどが用意されていることだろう。現在、中高生が70人以上の規模で集まるのはこの大会だけになってしまった。

70人と聞いて多くの人は「多い」と感じるのだろうか、それとも「少ない」と感じるのだろうか。おそらく「中高生オリエンティアはこんなにいたのか」というのが正直なところだろう。確かに普段の大会で見かける数よりはずっと多いだろう (理由は後述)が、少なくとも我々運営者の側からすると「少ない」と感じているのが現状だ。

 「少ない」というより「昔に比べて目にみえて減ってしまった」というのが本音である。現在積極的に活動している学校は桐朋・麻布を中心とした中高一貫校と県立浦和だけで、他にもクラブの存在する学校(オリエンテーリング経験者がクラブの顧問をなさっている学校)があるものの、活動しているのはやる気のある数名という状況である。かつては強豪だった保谷・国分寺・川和・早実といった学校クラブもここ数年の間につぶれてしまった。他には家族オリエンティアが少しだけいる。

中高生オリエンティアの数が減ってしまった原因はいくつか考えられる。まず、メンバーが入れ替わるサイクルが非常に早いことがあげられる。高校の場合、大学受験があり、3年生は全く活動できないので2年も経てばメンバーが入れ替わってしまう。
このため、1年でも勧誘活動に失敗すると有力校でも簡単につぶれてしまう危機にさらされている。活動はクラブ内の雰囲気に左右されるので、人数が少ないと途端に活動規模が縮小してしまう傾向にある。この傾向は大学クラブにも当てはまると思うが、高校の場合特に顕著である。また、少人数になった場合、クラブを維持していくノウハウに欠けるためか簡単につぶれてしまう。また、勧誘がうまくいっても、ノウハウを1年という短い期間で習得しなければならなく、しかも大学と違ってアドバイスをくれるような上級生はいないので、クラブ運営が非常に大変である。

 他には、オリエンテーリングに魅力を感じること無く 去ってしまう人間が多いことがあげられる。大学のサークルでもそうだが、高校の場合は活動期間が短いので特に顕著である。せっかく勧誘がうまくいったとしても、すぐには上手くなれないのでやめてしまうということが多い。もっと多くの活動機会や可能性を中高生に示せればオリエンテーリングを続ける可能性は今より格段に挙がるのではないだろうか。彼らの活動は月に一度程度のオリエンテーリングと平日の部活動、夏に行われる合宿が中心で、秋のシーズンでも毎週のように大会に参加する人は
ほとんどいない。

 関東,関西にそれぞれ高校生オリエンテーリング連盟があり、 加盟校が持ち回りで練習会などを開催してはいるのがほとんど唯一のオリエンテーリングの機会である。これらの連盟組織は、学連ほどきちんとした組織ではない。 私も中学1年の時からオリエンテーリングをやっているが、山に入った回数を比べれば中高6年間より大学の2年間の方が圧倒的に多い。そんな状況なので、2年間でオリエンテーリングに興味を持つ人間はやっている人間に対して少ないし、上達する人はもっと少ない。

 上達する機会もかぎられている。中高生の山に入る回数が大学以上の人に比べ 圧倒的に少ないことは言うまでもないが、オリエンテーリングをきちんと理解し、 教えている人間がほとんどいないことが 理由としてあげられる。高校生に教えている人間は大学で続けているOB・OGだが、 彼らは大してうまくないし、教えるのは合宿などの限られた機会だけである。たいていは上級生が下級生に教える形でレベルアップを図っている。大学のクラブのように強力なOB会はなく、良いお手本が身近に無いので当然速くならない。

 レベルアップのために年に2回(夏と冬)スコードの援助で合宿が開かれているが、わずかな資金面の援助だけで、現在は高校OL界の現状を知っている数名(スコードとは関係の無い国沢さんを中心としたトータスメンバー他、高校OL界のOB)によって運営されている。高校生側にやる気がない(と思われている)と言う理由から現在この合宿は中止が検討されている。中高生のレベルアップは基礎から教える必要があるため 非常に時間がかかる。そのためスコードから見るとお金をかけた割にはレベルアップをしていないのが現状だろう。だが、中高生にとっては貴重な体験となっているし、この合宿がなくなれば高校OL界から速くなる人間はこれから先絶対にでないと思われる。

 速くなりたいのであればもっと大会に出れば良いのではないか、 と思うかもしれない。だが、彼らにとって毎週のように大会に参加することは非常に難しいことである。中高生が大会に来ない理由は様々だが、一番の理由は情報が少なすぎることである。僕が高校のときの情報源といえばO-JAPANに挟まっている要綱だけだった。現在はO-JAPANが休刊状態のためほとんど大会情報が入ってこない。毎週大会に出ていれば大会会場で要綱を手に入れることが出来るのだろうが、 あまり大会に出ていないのでそう簡単には行かない。要綱が手に入らないので大会に参加できなくなり、 ますます要綱が手に入らないという悪循環に陥ってしまっている。大学に入るとメールやホームページを活用して大会情報は簡単に手に入れられるようになるが、パソコンを使えない人やあまりオリエンテーリングに興味を持っていない初心者なども高校生と同じような状況に陥っているのではないだろうか。

 二番目の理由は大会開催地が遠いことにある。東京に住んでいる中高生の感覚では、東京・埼玉・神奈川・千葉で大会が行なわれれば気軽に参加、それ以上遠いと遠征である。車という移動手段が無いため、交通の不便なところ、乗り換えの数が多いところ、本数の少ない路線バスに乗らなければならない時は非常に辛く、どうしても参加がためらわれてしまう。

 他にも金銭や時間の面の問題があげられる。高校生の場合、大学生と違い土曜日も含めて毎日のように授業がある。さらに塾などがあるので時間がない。加えて、アルバイトなどもしていないのでお金が無い。高い大会参加費もネックである。

 最近の大会は2000円以上する(高校生以下だと安くしてくれることが多いので助かっている)が、使用する地図代やその他諸経費を考えると高いと言える。今年のインターハイの場合、既成マップでの開催だったが、宿泊料6700円の宿に2泊して参加費15000円 (大会参加費だけ見れば2日間で1500円)併設大会も1500円(当日は2000円)で十分やっていけた。(今年はバスを1台借りたためわずかに赤字。)

 毎週オリエンテーリングをしているような人間から見れば 納得の行く金額かもしれないが、あまり大会に参加しない初心者や中高生から見ると、週末のちょっとしたレジャーの参加費にしては高すぎる。これでは初心者がオリエンテーリングから遠ざかってしまう。

 最後に付け加えるならば、表彰式は絶対にやってほしい。確かに即座に成績を確定させて表彰を行うのは人数の多い大会では大変だが、初心者や中高生にとって表彰され、景品がもらえればうれしいし、やる気が出るはずだ。ちなみに今回のインターハイでは表彰式を14時30分から行なった(トップスタートは11時でラストスタートは12時少し過ぎだった)が、一般参加者はほとんど残ってくれなかった。自分が表彰に関係無いとすぐに帰ってしまう大会参加時のマナーの悪さは中高生や初心者のために改善してほしい。

 現在の中高生のレベルは、トップで公認大会の20Aクラスで10位以内、大学大会の21Aクラスで20位以内に入れる程度であり、経験が少ない割に高い実力があるように思う。本人のやる気さえあれば高校のうちにJWOCに出場することはできるだろうし、実際に大学に進学してすぐにJWOCに行く(行こうとする)人間が多い。競技環境さえ整えられれば彼らの実力はもっと上がり、 今よりも多くの人間が高校OL界から大学のサークルや地域クラブに加入するだろう。

 現状では高校で活動している人の80%がやめていってしまっているので もったいなさすぎる。環境が整うかどうかは、甘えているようではあるが、周りでサポートして下さる皆さんにかかっているので中高生のことを少しばかり考慮していただければ幸いである。

 最後になりましたが、昨年度中高生のために便宜を図って下さった多摩OLクラブの方々、毎年中学高校生選手権大会を開いて下さっている埼玉県協会の方々、インターハイ関係でお世話になった静岡県協会や静岡大学をはじめとする各大学クラブの方々、このような報告の場を与えて下さった村越さんには大変感謝いたします。

 長々と書かせていただき有り難うございました。読者の皆様、今年度も中高生のために御協力よろしくお願い致します。

第12回インターハイ実行委員会実行委員長 前田直毅


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