オリエンテーリングワールドカップ2000inJapan

 地図とコンパスを駆使して、未知の森を駆け抜けるナヴィゲーションスポーツ、オリエンテーリングのワールドカップが2000年の4月、静岡で開催される。北欧生まれのこのスポーツは、瞬時の読図と冷静な判断、マラソンレースなみのスピード、その両者のバランスが要求される。ウィルダネスでの高いナヴィゲーション能力を持つトップ選手は、King of the Forestの名にふさわしいアスリートである。
舞台は、日本の象徴富士山の麓。富士山が何千年もかけて作り上げた難度の高いフィールドに、世界のトップナヴィゲーターたちが挑戦する。

時  :1999年4月14日−16日
     14日:モデルイベント、開会式、レセプション (富士少年自然の家)
     15日:クラシック競技、併設大会
     16日:リレー競技、併設大会、世界チャンピオンにチャレンジ、閉会式
場所:静岡県富士市(県立富士山こどもの国周辺)
主催:国際オリエンテーリング連盟・(社)日本オリエンテーリング協会
主管:静岡県オリエンテーリング協会

ワールドカップについて

 オリエンテーリングには世界1を決める大会が二つある。一つはワールドカップ、もう一つは世界選手権である。世界選手権は奇数年の夏に行われ、一レースで世界チャンピオンを決定する。前回は99年にスコットランドで開催された。日本も、2005年の開催に向けて立候補の意志を表明しているが、その正式決定は2000年の7月となっている。
 ワールドカップは偶数年に開催される。毎回8から10のレースが行われる。各レースの優勝者に50点、2位に47点、以下45位までに得点が与えられ、よい方から5つのレースの合計ポイントを得点として、年間成績を競う。過去2回はすべてのレースがヨーロッパで行われており、今回の日本でのレースは6年ぶりのヨーロッパ外でのレースとなる。またアジアでは88年に香港で開催されて以来10年ぶり、2回目の開催となる。

ワールドカップ2000の日程

  4月15日 日本(クラシック競技)
    16日 日本(リレー)
    22日 オーストラリア(ショート競技)
    24日 オーストラリア(クラシック競技)
 7月 1日 ウクライナ(クラシック予選)
     3日 ウクライナ(クラシック決勝)
     4日 ウクライナ(ショート)
 7月18、19、21日 フィンランド(3日間競技)
    20日 フィンランド(ウルトラ・ショート)
10月11日 ポルトガル(ショート)
    12日 ポルトガル(クラシック)
    14日 ポルトガル(リレー)
(注:クラシック競技は優勝タイムが75分(女子60分)程度のレース、ショート競技は優勝タイムが25分、リレーは3人による国別対抗リレーである)

ワールドカップ2000inJapan

 25ケ国、男子80名、女子60名、役員40名の参加が見込まれている。また、ワールドカップに並行して15・16日の二日間にわたって観客のための競技が開催され、のべ2000人の参加が見込まれている。
 競技は富士市のこどもの国を会場に行われる。こどもの国の周囲をまわる男子約12km、女子8kmのコースでクラシック競技が、男子6km(×3人)、女子4km(×3人)のリレー競技が競われる。
富士山麓の自然の中に出現したイタリアの山岳都市を思わせるこどもの国中心エリアを舞台に、チームと観客がともにエキサイトできる競技が提供される。

今回のWCの話題

1 .トップを争う選手たち

 現在世界ランキングの上位選手の多くは北欧人である。この大会にも、多くの北欧の選手が参加することが見込まれる。1980年以来20年間、世界のトップランナーとして活躍してきたスウェーデンのヨルゲン・モルテンソンの後継者と目されるヨハン・イバーソン、ヨルゲンより1歳年少であるホーカン・エリクソンは世界選手権でも数々のメダルを獲得しているが、来季も走ることを宣言しており、参加が期待される。98年のワールドカップでは最終戦で劇的な逆転勝ちを収めたデンマークのクリス・テケルセン、惜しくも総合優勝を逃したが99年の世界選手権では見事にチャンピオンに輝いたノルウェーのビョルナー・バルシュタットなどが男子の有力選手である。
99年は若手が台頭した年でもある。ノルウェーのヨルゲン・ロストラップは、21歳の史上最年少で世界チャンピオンとなった(ショート種目)。また2位はフィンランドの新鋭ユハ・ペルトラ(24歳)であった。ともに、来季も活躍が期待される。
北欧以外にも有力選手は多い。アラン・ベルジェは99年世界選手権では、スイスに25年ぶりの個人戦銀メダルをもたらしている。またチェコのルドルフ・ロペックやウクライナのユリ・オメルチェンコ(95年ショートチャンピオン)などもスピードを武器に上位をねらっている。

女子もやはり北欧が上位に君臨している。ビョルナーのパートナーであるハンネ・スタッフ、スウェーデンのグニラ・スヴォード、カタリナ・アルベリ、また99年世界選手権では姉妹で1,3位を獲得したフィンランドのキルス・ボストラムとヨアンナ・アシュクロフが最有力候補である。
北欧以外では、初めてのショート競技チャンピオンであるオーストリアのルシー・ベームやスイスのブローニ・ケーニッヒやザブリナ・マイスターも上位をねらえる選手である。
今期の世界選手権は振るわなかったが、その直後のパークワールドツアーではオスロ大会で優勝したデンマークのドルテ・ダールにも注目したい。彼女は昨年長女を出産した後のカムバックであり、来季はさらに調子を整えてWCに臨んでくることだろう。

2.出場が予想される日本選手たち

鹿島田浩二(=写真左:東京大学出身、東京OLC)
中学校時代から怪物と称され、中2の夏の5日間大会ではすでに中学生・高校生を含むクラスで5日間完全優勝の実力を見せてつけていた。前回日本で開催されたアジア環太平洋選手権(1992年静岡)でも海外の選手と対等にわたりあった。村越の跡を継ぐエースと目される彼が、村越が運営にまわる今大会で、どこまで開催国の意地を見せてくれるかは注目される。

松澤俊行(=写真中央:東北大学出身、京葉OLC)
5000mを15分前半で走る俊足ランナーで、フルマラソンも2時間32分のタイムを持つ。走力を生かしつつ、ここ数年は技術的にも安定した力をつけ、トップの座につきつつある。夏の世界選手権(クラシック)では日本選手最高順位を残している。静岡県出身者(榛原高校)としても、このレースでの活躍が期待される。

藤城公久(=写真右:筑波大学大学院)
99年の世界選手権では、初出場ながら、あと一歩で予選通過という成績を残した。今期も、西日本選手権で優勝など、好調である。現在もっとも伸びを感じさせる選手だけに、来季の更なる飛躍が予想される。

 以上の3名はすでに代表を決めている.この他に、95年から99年まで3回連続世界選手権代表であった加賀屋博文(筑波大学出身、渋谷で走る会)、高校時代はクロカン選手で、現在もスピードには自信を持つ山本英勝(東京大学出身、渋谷で走る会)、99年世界選手権ではチーム最年少であった山口大助(千葉大大学院)などが選手として選考されることが予想される。
日本選手の選考は、今シーズンの成績、4月2日に行われる選考レースによって決定される。

落合志保子(=写真左:静岡大学出身、OLCルーパー)
同じオリエンテーリングを愛好するよきパートナーに恵まれ、99年の世界選手権では好成績を残している。地元静岡大学出身で、大学からオリエンテーリングを始めただけに、静岡でのレースには人一倍思い入れがある。日本の新たなエースとしての貫禄も身につけつつある。今期も好調で、東日本選手権優勝、西日本選手権2位。

金並由香(=写真右:早稲田大学出身)
豊富な練習量と身体的な素質で、今や日本を代表する選手の一人であり、タフなコースになった場合には、外国選手と対等にわたりあえる可能性もある。余暇にはアウトドアライフを謳歌するシングル。学校教員。

三好暢子(=写真中央右:武蔵大学出身、上尾OLC)
パートナーである冨田吉郎氏のバックアップ、豊富な練習量で日本を代表する選手の一人となった。99年の世界選手権にも代表選手として参加。技術的にも精神的にもレベルアップした。

田島利佳(=写真中央左:武蔵野女子短期大学出身、みちの会)
小学校の時に家族とオリエンテーリングを始め、15年以上のキャリアを持つ。日本代表としても95年、99年と世界選手権に参加。
90年のジュニア世界選手権、95年99年の世界選手権に参加。

高野由紀(学習院短期大学出身、東京OLC)
80年代の日本のエース。39歳二児の母となった今も、トップレベルでの競技を続けている。気合を入れて準備したレースでの実力は10月のパークO世界ツアーでも実証済み。

木植早生(つくばROC)
1年半前の交通事故の後遺症で、一線を遠ざかっていたが、今秋になって復活。西日本選手権ではいきなり優勝という力を見せ付けた。世界の舞台でも、長い間日本チームをひっぱってきたエース。

3.「世界一」を目指す運営スタッフ

 トップ選手の精密なナヴィゲーション技術に応える地図作成には2年以上の歳月とのべ150日以上のマンパワーが投入されている。世界的にも難度の高い富士山麓のテレインは、調査者にとってもチャレンジである。羽鳥和重は、ナショナルチームメンバーでありながら、競技者としての出場と愛娘との団らんの時間を犠牲にしてこの大会地図調査に2年間を捧げている。中村弘太郎、田中徹など、日本のトップマッパーがこの大会のために心血を注いだ。
 39歳の現在も日本のエースとして君臨している村越は、地元での開催にコントローラ(日本オリエンテーリング協会を代表する技術的アドバイザー)を務める。3年前のイスラエルでのIOF総会の朝ジョギングをしていた時のWC担当者との会話から、今回のWC招致がスタートした。運営者としての「世界一」を目指してフルコミット。
 約80人にのぼる準備スタッフはすべて地元オリエンティアのボランティア。特に20年以上の伝統を持つ静岡大学のOLクラブ出身者が運営の中核をになう。もっとも重要なコースを受け持つのは県内韮山で教員をしている和久田好秀(クラシック)、焼津で病院勤務の平井均(リレー)の2人。クラシックのコースに関しては、すでにIOFのコントローラから、「常に集中力を要求するよいコース」と折り紙がついている。リレーに関しても(難度は高いが)フェアなコース」と評されている。

オリエンテーリングについて:二つの顔を持つスポーツ

 オリエンテーリングは19世紀の終わりごろ、北欧で生まれた。元々は軍隊の斥侯訓練に競技の原形があるといわれているが、現在は野外活動として、あるいは競技スポーツとして多くの人々に愛好されている。
 広大な森や原野を地図とコンパスを頼りに指定されたポイント(コントロール)を回り、ゴールまでの所要時間を競う。不整地を速く走るための体力と、適切な進路を決めるための読図や判断力が要求される、ユニークなスポーツである。
北欧で特に盛んで、スウェーデンでは、「国技」とまで言われており、2万5千人以上の競技者が参加する大会も開催されている。

From the world champions to disabled:
  オリエンテーリングを楽しむのは一部のトップ選手だけではない。一般の愛好者はもとより、子どもから年配の方まで、そして障害者のためのオリエンテーリングも近年では盛んになりつつある。 オリエンテーリングのユニークな点は、すべての参加者が同一のフィールドで競う点にある。もちろん技量や体力に応じた多くのコースが用意されている。誰もが自分のレベルにあった競争にチャレンジできる。世界チャンピオンから子ども、高齢者、障害者まで誰もが同じフィールドで楽しめ、生涯つきあえるスポーツ、それがオリエンテーリングである。今回も、ショートコースでのワールドチャンピオンに挑戦などのイベントが企画されている。見る・するが融合したスポーツ。

Running and Navigation:
 競技スポーツとしてのオリエンテーリングは、15kmのコースを90分で走りきるハードなスポーツだ。世界のトップクラスはフルマラソンを2時間15分程度で走る走力を持っている。デンマークの選手カルステン・ヨルゲンセンは、クロスカントリーの分野でヨーロッパ選手権を制するなどの活躍をしている。日本でもトップ選手は、フルマラソンを2時間35分程度で走る。その選手が、勝てない。オリエンテーリングは、身体的な能力と地図を瞬時に判断する知力のバランスが要求されるスポーツなのだ。

From parks to wilderness:
オリエンテーリングの舞台は自然の山野だけではない。現在では、都市内の公園をトップスピードで走るパークOが開催されている。いずれも、他のスポーツのような競技場は必要ない。その場にある最低限のインフラで競技は開催される。公園から無人の荒野まで、オリエンテーリングは地球上のあらゆる場所を舞台に走る。

Participation and Organization:
オリエンテーリングの楽しみは競技会参加だけではない。地図はオリエンティアによる手作り。その精度は、地形図をはるかに上回る。また大会ごとに設定されるコースも、半年以上の時間がかけられ、念入りに準備される。精度の高い地図を作成し、スムースに競技会を行うことも、オリエンティアにとっては、大きなチャレンジである。

日本のオリエンテーリング

 日本にオリエンテーリングが導入されたのは1966年である。当時は国民の体力づくりのためのトリム運動の一環として紹介され、徒歩ラリーなどの名前で呼ばれていたこともある。1970年代前半には、グループで歩いて行うオリエンテーリングは多くの愛好者を集めた。そして、現在でも多くの学校や職場の遠足・レクリエーションとして実施されている。また、全国各地600ケ所には、いつでも利用できる常設コース(パーマネントコース)が設置されている。
 競技としてのオリエンテーリングは、70年代の後半から次第に盛んになった。日本オリエンテーリング協会が主催する東西日本大会、全日本大会は74年度より始まり、今年で25回を数える。また、学生愛好者が多いのもオリエンテーリングの特徴で、毎年3月に行われる学生選手権(インカレ)は学生ならではの盛り上がりを見せる。世界選手権・ワールドカップなどの国際大会にも、76年以来毎回選手団を派遣している。

オリエンテーリングに関する情報についてはWWWの、
http://gew3.genv.nagoya-u.ac.jp/orienteering/index.html(日本語)
http://fourier.dur.ac.uk:8000/~dma0rcj/o.html(英語)
http://www.orienteering.org/(英語)国際IOF連盟の公式ホームページ
http://www.orienteering.com/~wc2000jp/WC2000(日本)の公式ホームページ
などが参考になる。
(静岡県オリエンテーリング協会 991130改訂)


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