話をする上で、他分野との用語のすりあわせが必要なのかな、と、こさえた自習メモ。
門外漢にはいろいろ耳慣れぬ表現のオンパレードではあれど、よく見ればなじみの概念が頻出する本、日本放送出版協会『幸福論 〈共生〉の不可能と不可避について』(2007/03) をベースに。
黒字はウェブや他の書籍から。茶色は雨崎。
幸福論remix:
『0,a,ア行』
『カ行』
『サ行』
『タ行』
『ハ行』
『ナ・マ・ヤ行』
『ラ・ワ行』
■ハ行■
【ハーバーマス】 批判理論家
- →直進力
- 擁護するべき対象を「生活世界」と呼ぶハーバーマス。
- 私たちの「人間である」という自己理解が、道徳全体のバックボーンだ。
- 討議民主主義。トロッキー的「永続革命」の論理
- 討議を縛る初期条件をできる限り解除せよ
- 討議の条件依存性に疑義があれば、再度討議する。
- 後者の討議の条件依存性に疑義があれば、再再度討議する。
- 結論的には、まずい方向性
- いかに多くの討議的主体を討議のテーブルに座らせるか。
- ハーバーマスやローティなどは、合意や連帯というあり方をもち出すが、合意する主体だけが議論に参加できるという意味で、彼らの議論は最初からハードルが高く、排除的ですらある。
- 1970年代初頭、世界の社会学界に波紋を投げかけたハーバーマス・ルーマン論争
- ハーバーマス:現代社会に欠けているのは市民社会の維持に必要な理性的対話(公共圏)だ。
- ルーマン:理性的対話による「合意」や「理解の共有」は社会秩序の本質にあらず。
- ちまたのハーバーマス野郎たちは「真理クン」の典型でしかない。
【バイオポリティクス】生-政治学/生物政治学 biopolitique,
biopolitics
- 〜米本昌平『バイオポリティクス』中公新書2006年
- 日本は感情の参照項たるべき社会的な正統性を持ち合わせていない。
- →欧州 →アメリカ
- その視座に立てるのは誰か
- 「生活の質」の視座:待機患者
- 「生命の尊厳」の視座:ドナー
- どちらの視座も取れない困窮した障害者ら
- ハーバーマスの論理
→言語ゲーム
- 命の価値に差があるかの如き線引きは、いずれ人間概念自体を脅かす。
- 人間概念自体が恣意的なのだから、恣意的な線引き自体は「仕方ない」。
- その恣意的な線引きをいじるとしても、危険をもたらさない程度にゆっくりいじれ。
- 中絶
- 万人が納得できる中絶ロジックはない。
いつ人格が誕生するかという線引きも、人格を定義する意識とは何かの線引きも、恣意的。
- 中絶は、すでに生活する者の生活の質を優先する差別。
- 「クォリティ・オブ・ライフ=生活の質」と「サンクティティ・オブ・ライフ=生命の尊厳」のどちらを重視するのか、どちらがどちらを根拠づけるのか。
- 着床前診断の評価については、どのように議論しても優生学的発想を免れない。
【ハイパー・メリトクラシー】
- メリトクラシー社会:学校教育を経て達成されるような能力を、人々の社会的地位達成において重視。
- ハイパー・メリトクラシー社会:「ポスト近代型能力」を重視。
生まれ持った資質や家庭環境などによって形成される能力だとみなされる。
実際「ハイパー・メリトクラシー社会」ではその手の能力に優れた人が高い社会的地位につく。
- 能力:問題解決能力や意欲
- 能力:対人コミュニケーション能力
- 能力:生きる力
- 能力:感情労働
- 九〇年前後から麻布や慶応の一部学生がハイパー・メリトクラシー化。
一定のコストをかけて東大に入るよりも、機会のコストである「人間力」の自己陶冶(社会的資本、人間関係資産)を重視したほうが、社会的成功につながるとみなす。
- 勉強だけだった人の多くは、ハイパー・メリトクラシーのなかでルサンチマンを蓄積する。
【ハイマート】(帰る場所)
【バウチャー】
- 教育バウチャー:私学補助金政策の考え方 〜ウィキ
学校教育に目的を限定した「クーポン」(私立学校の学費など)を子供や保護者に直接支給する。
クーポンにより、私立学校に通う家庭の学費負担を軽減するとともに、学校教育の選択幅を広げる。
選択で優位に立とうとする学校が繰り広げる競争により、学校教育の質が向上することをねらう。
- →教育設計
- 「学校的共同性」の形成:「所属する空気」の出し方
- ステークホルダー(関与者)が一枚岩にならないように分解せよ。
バラにした上で成功ケースに報酬を与える新「適応力」プログラムをもち込めば、自然に「適応」競争をしてくれる。 →社会統制
- 安倍内閣の教育バウチャー制度は、私学潰し。
結果的に公立高校をもう一度強化して、私学に行こうとするインセンティブを挫いてしまう。
塾にとっても死活問題。
【はしご 梯子】
- 一部の者が不可能性の地平(泥沼を超えた先)に上ってこられるよう、ひっそり梯子をかけておく程度で。
- 教育の梯子:
- 欧米の場合はもともとバラバラに存在した学校を、後から梯子でつないで大学にたどり着くようにした。
梯子を取り外せば、もとの形に戻りうる。
- それに対して、日本は最初から何もないところに、建物も梯子も人称的にゼロから作った。
もともと人称的なものを、非人称的に「見えなくする」ことは可能なのか。
- 2ちゃんねる的な梯子外し:ただひたすら裏目読みを意味もなく繰り返す
- 「機能の言葉」の輻輳 : 梯子外しにつぐ梯子外し
【パターナリズム】
- 用語解説・リンク集
『パターナリズムって何ですか?』
- →教育設計 →自己決定
- 今日的なパターナリズム:自明性が崩壊した状況でも、意志をたしかに前に進める人間を育てる
- 身内をあれこれ説教する「狭いパターナリズム」
- 広汎な対象に「広いパターナリズム」を押しつけるな、とする言説は、すなわち「広いパターナリズム」にほかならない。
- 現在では、学校教育をめぐって「広いパターナリズム」と「狭いパターナリズム」のあいだに大きな断絶があり、これまでのようにはいかない。
- 親や教師が「役割だからそうしている」という状態では、パターナルな機能は発揮できない。
「役割」からではなく「内発性」に由来する言葉だと感じさせる条件は何。
【バックボーン】
- 凝集性を支える「統合シンボル」
- 公的なコミットメントを支える何か
- 二重の感情聖別装置
- 「何がまともな感情かを決めるメカニズム」
- 「まともだとされる種類の感情の働きを現に可能にするメカニズム」
- 三段のバックグラウンドがない限り資本制は回らない。
- 一段目に資本制と民主制という契約ゲームがある。
- 2段目にそれを支える一定範囲に収まる感情ゲームがある。
- 三段目に感情ゲームを一定範囲に収める感情"聖別"装置がある。
【バックボーン(アメリカの場合)】
- 宗教性をバックボーンにした「結社の原理」宗教的結社。
- アメリカは「神」がないと民主制が機能しない。
- アメリカでは、歴史のかわりに、移民を組み込むダイナミックなシステムが「感情の社会的な正統性」を与える。
アメリカンドリームが形成する許容可能な不平等。
ヨーロッパよりかなり厳しい条件。
【バックボーン(ヨーロッパの場合)】
- 地域性をバックボーンにした「〈生活世界〉の原理」。
地域的〈生活世界〉。
- ヨーロッパは「階級」に頼って民主制が成り立っている。
- どんな感情がまともかを決める物差し「感情の社会的な正統性」は歴史が与える。
平民には平民の平等があればよく、貴族には貴族の平等があればよい。
【バックボーン(日本の場合)】
- 日本はもともと共同性が乗り換え自在。
血縁主義の不在が大きい?
- 統合シンボルに依存する疑似共同性。
汎システム化が進むと共同体としての機能を果たせなくなる脆弱さを持つ。
- 廃藩置県の際、「県」を人びとに定着させるのに最も有効だったのが学校の学区。
ヨーロッパではありえない現象。 →生活世界の空洞化
【パットナムの社会「関係」資本】 ロバート・D・パットナム
【ハビトゥス】
- →資格授与 →ブルデュー独特の用語
- 「自分の所属している共同体への所属意識(共同性)や連帯を自覚させる」ということを、日本の教育のなかでどう実現するか。
- エリート:立身出世ではなく、創造性発揮をもって自己実現とみなす者。
大衆:仕事で認められることではなく、賢明な消費生活を送ることが自己実現だとみなす者。
- ドイツのギムナジウム選別:小学校高学年で決定的選択をし、以降は、若干のリエントリー機会があれども、基本的には、異なるハビトゥスが要求される人生航路を歩む。
- 親から受け継いだハビトゥス的ハンディキャップ(生まれの悪さ)は、学校生活のなかでリセット可能である(と思わせる)
でないとイニシャル・エンドウメンツ(初期手持量)が全てを決めるという社会イメージになってしまう
- 階層的上昇機会があると「見える」。でも実際に上昇を果たすのは若干名。それで良い。
【パフォーマティビティ】
【パプリック・ディスカッション】 パブリック・スピーキング
- 日本的な現象:新しい世代ほど、その世代で能力のある者がパプリック・ディスカッションの場所に出てこなくなった。
- 有能な若人は、無能な人びとのために無駄なエネルギーを使うことはしない。
自分の能力はあくまで自分が楽しく生きるために使う。
- 原新人類はパブリック・トークに真剣にコミットした後に「なーんちゃって」とズレることができた(諧謔)
- 後期新人類以降だと、先行世代が踏み荒らしたのでズレる余地はもはやなく、パブリック・トークに「どうせイタく見られるけど」と言い訳(韜晦)
- パブリック・トークが「イタいと見られうる」という意識だけでも重大なハンディ。
【パラドクス 脱パラドクス化】(パラドクスの時間化)
- 「適応力」上昇プログラムを設計したデザイナーが去る。
帰責しようにも設計者は退職ずみ。
行政官僚制では枢要なポストは二年ごとに変わるのが常態。
- ルーマンの脱パラドクス化(パラドクスの時間化):
失敗の帰責問題は論理的にはあっても、現実には「失敗した設計につぐ新たな設計」という形で「設計につぐ設計の必要」に読み替えられる
- 人間のモータリティ(寿命)も機能を果たす。
【パンクチュエイトされたもの】(断裂的なもの)
- 引き立たせる
- 入学試験を利用して、パンクチュエイトされた社会的上昇を可能にする
【びがく 美学としてのゲームプレイ】
- →貴族的ゲーム
- 数多ある他のゲームの存在を知りつつ、美学としてゲームをする人びともいる。
彼らは素朴(盲信的)にでなく、再帰的に遂行する。
反省的な意味や無意味を自覚しつつ、敢えてやる。
- 自分は「美学としてのゲームプレイ」の一つの形を「調停」、プレイヤーを「調停者」と呼んでいた。
【ひげき 悲劇の共有】
- →契約ゲーム
- 敗戦後には敗戦という「悲劇の共有」があったゆえに、復興に当たって清濁あわせ呑む気概があった。 →戦犯 →憲法
- それが悲劇であるという共通認識を形成している状態
【ひどうか 非同化主義】
【ひのまる 日の丸・君が代】
- 彼らにとって「戦後的なもの」の肯定は自明の前提。
GHQ占領下で日本が「戦前的なもの」と手を切ったことも自明の前提。
- 新しい世代にとっては、日の丸・君が代・天皇はあくまで『戦後的なもの』。
『戦前的なもの』を指すものではない。
【ひはん 批判理論家】
【ファシズム】
- →9.11
- パターナルな動員。
- どんな祭りも、「祭るわれわれ」をめぐる「境界線の恣意性」を覆い隠すしかないゆえに、ファシスト的。
- 啓蒙の名であれ教化の名であれ、動員行為をなす者は「境界線の恣意性」「線引き問題」のもとに、ファシスト的にふるまっていることになる
- ソーシャル・デザインと動員ファシズムは截然と区別できない
【ファビュレーション】
【ふあん 不安】
- →匿名
- 過剰流動性が人びとの感情的安全を脅かす
- 「不安のポピュリズム」の最大の原因:
過剰流動性の高さによって、「帰る場所」さえもが裏読みの対象になり、疑心暗鬼しまくりに。
- 不安を鎮められるのはオレだけだという「断固・決然」で煽る小泉自民党
- 都市浮動票をあてこんだ「不安のポピュリズム」
- 政治過程に広告代理店が介入する
- →ゾーニング
- 不安のマーケティング:不安で感情的に動員する
【フィージビリティ・スタディ】(FS)
- 「事業可能性の検証」 企業化可能性調査
- 相互連関分析能力がFSには不可欠なのに、現状しょぼしょぼ。
見通せてない、調査できてない。 →ゾーニング
- 人命に関わる失敗:
酒酔い運転の罰則強化で轢き逃げ事件による死者が続出。
この程度の相互連関分析ができない警察官僚が法案形成したうえ、誰もチェックできないとはどうしたことか。
【フィールグッド・プログラム】
【フィールグッド化】
- →権益追求 →ネオ・トックヴィル主義
- うまく生きるための自己記述:
〈システム〉はマニュアルにもとづく遂行能力、すなわち「うまく生きること」だけを要求する。
- 自分についての自己記述が、〈生活世界〉における関係性ではなく、メディアによって提供される事態
- 「AC」「ひきこもり」「ニート」「オタク」
- 〈生活世界〉によっては支えられなくなった個人を、社会性(〈システム〉)とじかに接触させるための支えとして、〈システム〉が社会性とマッチした適応的な自己記述「無害な脱社会的存在」を与える
- システムによる 囲い込み、無害化
- アノマリーな存在にレッテルを与え、そのレッテルに沿った範囲で無害な存在になるように、仕立て飼い慣らす。
→ マイノリティとして語るな。
いかなものであれ、レッテルを受け入れてしまったら、もう単なるマイノリティとしてでしか扱ってもらえず、アノマリーではなくなってしまう。
- 先進国社会のフィールグッド・ステイト化は避けることができない。
と同時に、社会内の一部の者が「フィールグッド・ステイト化の進行はやがて批判精神の消滅を導く」ことに必ず気づいてしまう。→密教
- 人びとが自他をエリート/民衆の二分法で分類しようとする動きが広がっていくという、さらなるフィールグッド・ステイト化
【ふうぞく 風俗】
- ゾーニングの行き過ぎ例:地域世論に対応した店舗風俗の撲滅
- 店舗風俗が減った分は、ネットを使う派遣風俗にごっそりシフト。
- 性労働者が暴力の危険にさらされやすい
- 性感染症のリスクも高まる
【ふたん 負担免除装置】
- 理性的啓蒙の如く「全ての」負担免除装置を「万人に」知らせるという目標設定は、過剰情報のカオスをもたらすのを許容することと同義。 →知る/知らせない
- 社会システムが現に回っているのは、恣意的な決定過程が常にすでに「ほどほどに明示される」に留まるからであり、それを可能にする負担免除の装置があるがゆえ。
【ふみぬく 踏み抜く】
相対的価値観に陥り、底が抜けた状態になること。
信じていた自明性が崩壊すること。
「全て恣意的だから何でもあり」
- 相対性を踏み抜き、どこにも真理たる真理はないと見抜き、立場としてのよるべをなくした状態。
- 「真理の言葉」に埋没できない。
歩けない。どの視座にも安住できない。
元の「特定の視座への耽溺」に戻ることが望めない。
- 自分は「視座の輻輳を理解した状態になること」を「踏み抜き」と表現していた。
■
- 宮台のタームでは「底が抜けた」。
- 「踏み抜き」は個人(脱社会化系?)、「底が抜けた」は社会側(共有規範)?
【プライバタイゼーション】(パブリックからプライベートヘの転換)
【プラットフォーム】
- 共有できる価値規範、台。
- プラットフォームが危うくなる、瓦解するさまは「底が抜けた状態になる」
- →権利の行使
- 合議主義=非暴力主義のプラットフォームをスポイルしようとする勢力に、断固暴力的な暴動で立ち向かうことこそコミットのあかし。
- ソーシャル・デザイナーたるエリートは、日本人がプラットフォームを維持し志向するよう、情報操作を駆使して人びとの感情をコントロールすべし。
- ゲームのプラットフォームが一枚岩なのもまずい。
ゲームのフィールドを二重にせよ。
【ブルデュー】
【プロクシミティ】
【へいぼんか 平凡化】
- →適応 →教育のなかの社会化
- いつまでも「学校の言うことを聞くのは当然」と思い込んだままな状況に生徒たちが置かれること。→自明性
- 「教育」が人びとに浸透するにつれて、「学校の言う通りに物事を理解する」ことしかできなくなることを憂慮するための言葉。
【ベタ】
- ネタ(作為)に対する ベタ(自然)
- 世代差
- 1980年代前半まで「ネタ」だったサブカルが、1990年代には「ベタ」化。
- たとえば『エヴァンゲリオン』を「引用の嵐だ」というふうに読む年長世代の読みかたと、碇シンジくんの自意識をめぐる物語として読む年少世代の読みかたの落差。
- アダルトチルドレンも、碇シンジも、ひきこもりも、年少世代のマジネタだったのが、二年経たずにコミュニケーション・ツール(アイデンティティ表明のための道具)になった。
- 民度が低い
【ポイエーシス】
- →テクネー:自然界に隠れているものを能動的にあばく方法
- ポイエーシス:自然界から湧きあがる力を受動的に受け止めていく道
【ぼうあつ 防遏】
- 「防圧」に書き換え可
- 侵入や拡大などを、防ぎとめること。防止。
【ホモソーシャリティ】 (homo-sociality)
- 同質集団性。
- 体育会的なものを肯定されると、憤激するオタクたち。
- ホモソーシャリティはある種のハイマートを与えてきた。
【ポリティシャン】
【ボルツ】 ノルベルト・ボルツ
- 特定の価値を信じるということは、変化を欲しないということであり、思考停止することと同じ
- 価値があるところに不安があり、不安を解消するために価値がもち出される
幸福論remix:
『0,a,ア行』
『カ行』
『サ行』
『タ行』
『ハ行』
『ナ・マ・ヤ行』
『ラ・ワ行』
『幸福論 〈共生〉の不可能と不可避について』
宮台 真司, 鈴木 弘輝, 堀内 進之介 (著)
日本放送出版協会 (2007/03)
『波状言論S改 社会学・メタゲーム・自由』
東浩紀,北田暁大,宮台真司,大澤真幸,鈴木謙介
青土社 (2005/11)