成長した生物の細胞は、普通は特定の役割しかできないように機能が限定されており、分裂増殖しても胃の細胞は胃の細胞、皮膚の細胞は皮膚の細胞にしかならない。皮膚の細胞からは皮膚のクローンしか作れない。
俗に万能細胞と呼ばれる幹細胞(かんさいぼう)は、分裂増殖によって、別の機能を持つ細胞になることができる特殊な細胞。
例えば、受精卵は最初はたった一個の細胞だけれど、分裂増殖していくと、身体の各部分向けに機能が分かれたさまざまな種類の細胞になっていく。
幹細胞から、いろいろな身体の部分や臓器を作り出せるようになれば、臓器移植を中心とした医療の可能性が大幅に広がる。これら幹細胞がどのような条件のもとで、どんな特定の機能を持つ細胞になっていくのか、研究が急速に進んでいる。
幹細胞の種類で代表的なものはES細胞と
骨髄幹細胞。
ほか、臍帯血(さいたいけつ:赤ちゃんお誕生の時のヘソの緒から採る血)に含まれる幹細胞をはじめとして、胎盤、血液、毛根、筋肉、脳、皮膚など、身体のあちこちに幹細胞が分布していることがわかってきています。
さらに、2007年からは、大人の細胞の遺伝子を組み替えた「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」が話題をかっさらっています。
■ES細胞■
ヒトの胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう/ES細胞 いーえすさいぼう)は”最も万能性が高そう”なので使い勝手が良さそうなのですが、取り出すときに授精した胚(初期の赤ちゃん)を殺したり傷つけたりしてしまうことから、倫理問題で頭を抱える国が少なくないのです。
※ 胚性幹細胞(ES細胞)による再生医療を 「水子(みずこ)」をばらばらにして臓器をこしらえるのだ と表現したら、これどう思います?
■成人性幹細胞(成体幹細胞)■
大人の体(骨髄など)から採れる成人性幹細胞(成体幹細胞)は、現状ではES細胞ほどの変身可能性(機能分化の自由度)は、持ってはいません。でも成人性幹細胞なら「自分の細胞で自分の身体を再生できる」わけで、受精卵殺しのような倫理問題がない、本人の細胞を使えば拒絶反応もない、など、治療現場での使い勝手は良さそうです。
なお、現状では幹細胞研究は、まだまだ実用にはほど遠い試行錯誤中。
2008/01
山中教授のiPS細胞作成が画期的なのはなぜ - 教えて!goo
2008/01 NHK解説委員室ブログ 時論公論 「“万能細胞”展望と課題」
iPS細胞研究の意味 オールジャパン体制の意味
■!注意!■
近年、「あなたの体を治してあげます」と謳って、実証されていない怪しい幹細胞療法で大金をぼったくる悪質な業者が、世界的に問題になっています。わずかな希望を求めてすべてを賭けて海外に渡航し、手術を受けた結果すべてを失う、という被害も発生。賭けをする前には、十分各方面との情報確認を行って下さい。
2009/05 幹細胞ツアー:中国などのヤバイ幹細胞治療を受けに行く人々
2007/11 NHKスペシャル「眠れる再生力を呼びさませ 脳梗塞・心筋梗塞治療への挑戦」
ここで紹介された「札幌医科大学」の治療は、患者本人の骨髄から採取した成人性幹細胞を人工的に体外で培養し、それを患部に直接ではなく、静脈点滴で体内に戻す手法。
注入された幹細胞は、全身をめぐるうちに一部が脳内のダメージ箇所にたどりつく。すると、「いろいろな種類の細胞に変身できる」ことで有名な幹細胞ではあるけれども、この場合は「神経細胞成長因子」と呼ばれる「神経細胞元気に育てよ物質」を出して脳損傷の回復をうながしてくれるらしい。
◆2007/11 『科学メモ:脳梗塞の幹細胞治療@札幌』
※ 成人性幹細胞:生まれる前の赤ちゃんからとる「胚性幹細胞」と対比する関係で、大人の身体からとれる幹細胞は「成人性幹細胞」と呼ばれる。
「幹細胞」というスゴイ細胞が存在することを世界中に知らしめるきっかけのひとつとなったのが、2004〜2006年に世界の研究者たちのドギモを抜いた、黄禹錫(ファン・ウソック)教授の「すごい幹細胞を人工的に作ったぞという画期的な論文がウソだった!」事件。
「世界一の科学者だ!」と
黄禹錫教授 をあがめまくってしまっていた韓国政府と韓国国民には、これはもう悪夢でしかなかったし、世界の科学関係者にとっても、その後「捏造対策(ウソ論文をどうやって区別するのか)」で、きりきりまいになるなど、とんでもないショック療法になってくれたわけで。
当時の騒ぎを報道した記事をたくさん読んでみたい人はこちらへ


関連新刊:
『再生医療 Vol.8No.2(2009.5) 特集・幹細胞を支える環境』 日本再生医療学会雑誌 メディカルレビュー社
『細胞工学 Vol.28No.3(2009) 特集「iPS細胞が与えた衝撃」』 丹羽 仁史監修 秀潤社 (2009/02)
『再生医療 Vol.8No.1(2009.2) 特集「循環器領域における再生医療の現状と展望」』 日本再生医療学会雑誌 メディカルレビュー社
『再生治療で歯並びを治す』 吉野敏明 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン (2009/1/18)
『幹細胞内分泌学』 L.B.レスター編 西村書店 (2008/11)
『再生医療 Vol.7No.3(2008.8) 特集「iPS細胞研究の最前線」』 日本再生医療学会雑誌 メディカルレビュー社
『iPS細胞 再生医療への道を切り開く 人工多能性幹細胞』 (ニュートンムック Newton別冊) ニュートンプレス (2008/08)
『iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』 平凡社新書 八代 嘉美著 平凡社 (2008/7/15)
『iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?』 田中 幹人編著 日本実業出版社 (2008/5/22)
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2009/04 PhysOrg Families flying toddlers to China for stem-cell treatments
カリフォルニアから幼児を連れて、臍帯血幹細胞治療を受けに中国にわたる小児麻痺のご家族2組
2009/05 幹細胞ツアー:中国などのヤバイ幹細胞治療を受けに行く人々
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