LEVEL 2「スサノオの娘、須勢理毘売との結婚」

兄弟達に命を狙われる大穴牟遅神オオアナムジノカミは、大屋毘古神オオヤビコノカミの勧めに従い、葦原中国アシハラノナカツクニを脱出して根之堅州国ネノカタスクニへ行くことにした。大屋毘古神の言によれば、根之堅州国の主,建速須佐之男命タケハヤスサノオノミコトがきっと助けてくれるという。

大穴牟遅神が根之堅州国に着いた時、凛々しい顔をしたひとりの媛と出会った。大穴牟遅神とその媛はお互い一目見たとたんビビッと運命を感じ、しばらく見詰め合っていた。そして、特別な言葉を必要とするわけではなく、パチパチ目配せをしただけで、そのまま二神は結婚してしまった。その媛は
須勢理毘売スセリビメという名で、須佐之男命の娘だった。

早速須勢理毘売は自分の家に大穴牟遅神を連れていき、須佐之男命に紹介した。

須勢理毘売:「父上、大変麗しい神がいらっしゃいました。」
須差之男命:「何!? よし、俺が見てやるっ。」

須佐之男命は家の奥から飛び出してきて、大穴牟遅神をひたと見据えた。

須差之男命:「ほぅ…須勢理よ,これは葦原色許男命アシハラノシコオノミコト
        
という神だ。」

須勢理毘売
スセリビメ

須佐之男命の娘。母親は未詳。動詞「スセル」には勢いのままに進むという意味があり、『古事記の暗号』(藤村由加著/新潮社)によれば風神であるという。須勢理毘売を風神として考えると、次章「スサノオの試練」で火責めの際、なぜ須勢理毘売が大穴牟遅神を助けることが出来なかったかということが理解出来る。須勢理毘売は大穴牟遅神と出会ってすぐに結婚しているが、この時代,普通は親の承諾を得てからである。この行動力は須勢理ならでは!

葦原色許男命
アシハラノシコオノミコト

大穴牟遅神の別名。『日本書紀』では「葦原醜男」というとんでもない表記になっているが、須勢理毘売曰く「いと麗しき神」らしいので、「醜い」と捉えるのは却下したい。「シコ」を頑強な男の意として捉え、「葦原中国を統治する力を秘めた強くたくましい男神」ということで…。

 

LEVEL 「スサノオの試練」

[STEP1…蛇責め]

須佐之男命
:「まぁ、上がれよ。」

須佐之男命はニヤッと笑うと大穴牟遅神を家の中へ呼び入れ、
蛇の部屋に寝かせた。すると、妻の須勢理毘売が、蛇の比礼ヒレを夫に授けて、「蛇が喰おうと襲ってきたら、この比礼を三度振って打ち払いなさい。」と言った。そこで、その通りにしてみると、蛇は自然と鎮まった。そうして、大穴牟遅神はそのままぐっすりと眠り、平気な顔で蛇の部屋から出て来たのだった…。

[STEP2…百足・蜂責め]

大穴牟遅神が再び訪れた夜、須佐之男命は
百足と蜂の部屋に寝かせた。すると、また須勢理毘売がやって来て、百足と蜂の比礼を授け、先日と同じように教えていった。そこで、大穴牟遅神はまたまたぐっすりと眠り、何食わぬ顔で百足と蜂の部屋から起きて来たのだった…。

[STEP3…火責め]

次に須佐之男命は、
鳴鏑ナリカブラを広い野原の中へ射込んで、その矢を大穴牟遅神に取りに行かせた。
大穴牟遅神が野原の中へ入ると、須佐之男命は素早く野原の周囲に火を放った。火に囲まれた大穴牟遅神が、逃げ道が分からず困っていたところ、どこからともなく鼠がやって来て
「内はほらほら、外はすぶすぶ。」と呟いて去っていった。そこで、大穴牟遅神が鼠の居た場所を踏んでみたところ、足場が崩れ、穴にスポッと落ちた。そのまま大穴牟遅神が穴の中に籠もっていると、火はその上を燃えて通り過ぎていった。ほとぼりが冷めた頃、先程の鼠が須佐之男命が放った矢を口にくわえて現れ、ひょいと大穴牟遅神に差し出した。その矢の羽は、その鼠の子達が食べてしまって無くなっていた。

さて、大穴牟遅神の妻,須勢理毘売は、大穴牟遅神が焼け死んでしまったと思い、葬式の用具を抱えて泣き伏していた。それを見て、須佐之男命は焼け野原に入っていった。


須佐之男命
:「ふん、死んでしまいやがった。」

そこへ、大穴牟遅神が爽やかな顔で現れた。

大穴牟遅神:「須佐之男大神よ、
       御命令通り,あなた様の矢をお持ちしましたよ。」
須佐之男命:「ふっ,葦原色許男よ、そうでなくてはな。
       まぁ、ゆるりと家で休むがよい。」


[STEP4…百足つかみ取り]


須佐之男命は大穴牟遅神を家の中へ連れて行き、多くの田が入るぐらい広い部屋へ招き入れた。そして、ごろりと横になると、大穴牟遅神にこう言った。

須佐之男命:「のぅ、葦原色許男。
       済まぬが、俺の頭の虱を取ってくれぬか。」
大穴牟遅神:「はい、大神。よろこんで。」

大穴牟遅神が須佐之男命の頭を見ると、何と百足が沢山いるではないか。すると、須勢理毘売がやって来て、椋の木の実と赤土とを夫に与えた。そこで大穴牟遅神が、その木の実を噛み砕き、赤土を口に含み、吐き出したところ、須佐之男命は百足を噛み砕いて吐き出しているものと思い、心の中で“ふふっ,いとしいやつ…”とほくそ笑むと、そのまま眠ってしまった。
大穴牟遅神は須佐之男命が寝入ったのを確かめると、須佐之男命の長い髪を手にとって、その部屋の柱ごとに結び付けた。そして、五百人がかりでようやく動かせるぐらいの巨大な岩で部屋の入口を塞いだ。

[CLEAR  LATER EPISODE]

大穴牟遅神
:「さっ,須勢理毘売、一緒に逃げよう。」

大穴牟遅神は須勢理毘売を背負い、須佐之男命秘蔵の
生太刀・生弓矢・天の沼琴ヌコトを抱えて、急いで駆け出した。その時、天の沼琴が木に触れて響き渡り、大地が揺れ動いた。それで須佐之男命が驚いて目を覚ました。須佐之男命がガバッと起き上がった時、髪が柱に結び付けられていたので、反動で部屋を引き倒してしまった。須佐之男命が髪をほどいている間に、大穴牟遅神は遠くへ逃げてしまった。

やっとのことで髪をほどいた須佐之男命は、二神を追いかけて黄泉ひら坂まで辿り着いた。目を凝らすと、遥か遠くに大穴牟遅神と須勢理毘売の姿が見えた。

須佐之男命:「葦原色許男命よ、その生太刀・生弓矢でお前の腹違いの兄弟達
       を坂の裾に追い伏せよ。川の瀬に追い払え。
       そして自身は
大国主神となり、また宇都志国玉神ウツシクニタマノカミ
       となって、我が娘須勢理毘売を正妻とし、宇迦の山のふもとで、
       大きな磐の上に宮柱を太く立て、高天原に
千木を高くそびえさ
       せて住むがよい。よいかっ、葦原中国の支配者となるのだぞ!,
       この野郎!!」

それで、大穴牟遅神は生太刀・生弓矢でもって、大勢の兄弟神達を坂の裾に追い伏せ、川の瀬に追い払い、初めて国を造ったのだった。大勢の兄弟がいるというのに、大穴牟遅神に全て国がゆだねられたのは、こういったわけなのだ。

さて、あの八上比売は、約束通り大穴牟遅神と結婚した。そこで大穴牟遅神は、宮殿に八上比売を連れてきたのだが、正妻の須勢理毘売を畏れて、八上比売は自分の生んだ子を木の叉にさし挟んで稲羽に帰ってしまった。それで、その子は木俣神キマタノカミと呼ばれたという。木俣神のまたの名は御井神ミイノカミである。

蛇の比礼
  
ヒレ

蛇を追い払う領巾。十種の神宝トクサノカンダカラの中に「蛇比礼オロチノヒレ」がある。

鳴鏑
ナリカブラ

鏑の穴に風が入って音が鳴る矢。

内はほらほら。外はすぶすぶ。

“ほらほら”は「洞」、“すぶすぶ”は「すぼまったところ」で、「内側が空洞になっていて、外側がすぼまったところだよ。」ということで、穴の位置を教えている。

生太刀・生弓矢
イクタチ・イクユミヤ

「生」は生き生きとした力。これらのアイテムを手に入れたことによって大穴牟遅神は須佐之男命の神力を継承した。

黄泉ひら坂
ヨモツひらサカ

この部分の「黄泉ひら坂」は黄泉国=根之堅州国説の根拠の一つとなっているところだが、根之堅州国は死者の国として描かれておらず、「イザナキ・イザナミの黄泉件」の描写とも明らかに違っているので、難しいところだが製作者的には違う世界と考えたい。てなわけで、根之堅州国と葦原中国の境界線ということでお茶をにごしておく。

大国主神オオクニヌシノカミ

スサノオが大穴牟遅神を葦原中国の主として認めた呼称。

宇都志国玉神ウツシクニタマノカミ

宇都志国ウツシクニ=現国=葦原中国。国玉クニタマ=国魂。ということで、宇都志望国+国玉+神=葦原中国を支配する魂の神。

千木チギ

神社によく見られる,屋根の両端で木が交叉し、棟より高く突き出た部分。

それで、…造ったのだった。

国造り大国主の第一歩!

 

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