Y 称号使用基準
『古事記』を読み進めていくと、命・王・御子・太子・王子など、多くの称号があることに気づかされます。その中で最もメジャーなものは、「命」ミコトと「王」ミコでしょう。この称号の使い分け基準については、『古事記』本文に特に記されてはいませんが、やはりコトバである以上、何らかの法則性がある!というのが自然でしょうということで、「命」と「王」の使用基準について少し考察しておきたいと思います。
「命」は上巻(神の時代)から用いられている称号で、その使い始めは創世の夫婦神,伊耶那岐命イザナキノミコト・伊耶那美命イザナミノミコトです。それまでは、全て天之御中主神アメノミナカヌシノカミのように「神」が用いられていました。「命」が神・大神・大御神に言い換えられている箇所,「神」と「命」がダブルでくっついている箇所がありますから、恐らく「命」は本来神に用いられていた称号なのでしょう。
一方、「王」号が登場するのは、ずーっと後になってからで、中巻(神と人の時代)に登場する第9代開化天皇の皇子,日子坐王ヒコイマスノミコで初めて用いられます。余りに突然なので、何で急にまた…といった感じです。これについて、江戸時代の国学者で『古事記』注釈書,いわゆる『古事記伝』を記した本居宣長は、このようなコトを言っています。