格闘技ファンがタイへ来たらムエタイ観戦は基本中の基本でしょう。そんなわけで私はトゥクトゥクなるバンコク市内を走る3輪の乗り物にてムエタイが行われているラチャーダムヌーン・ボクシング・スタジアムへと行きました。
バンコクには2つのボクシングスタジアムがある。ひとつは私が今回行ったラチャーダムヌーン・ボクシング・スタジアム。もうひとつはルンピニー・ボクシング・スタジアム。ラチャーダムヌーンは月・水・木・日、ルンピニーは火・金・土開催となっており、バンコクではいずれかのスタジアムで毎日ボクシングが行われていることになる。
18時頃にラチャーダムヌーン・ボクシング・スタジアムの前に着くと、チケット売り場の前にいる係員のオバちゃんがどの席にするんだと聞いてくる。席はリングサイド、2階席、3階席とある。3階席は400バーツ、2階席は660バーツなのだがリングサイドになると一挙に値段が跳ね上がり1500バーツとなる。地元タイの人間にしたら1500バーツなんて、おいそれと出せるわけではなかろう。1500バーツといえば日本円にして約4500円。日本人である私にすればさほど高くはない。なにせ「Dynamite!」なんて15000円、約5000バーツですよ。せっかくなのでリングサイドで観戦することにした。
お金を払うと胸にボクシングの絵が描いてあるかっこわるいシールを張られた。これがパスのような存在になるだろう。
席は自由席。しかし案内係のオバちゃんが空いている席まで連れて行ってくれてくれる。案内された席はジャッジの真後ろ。客席では一番前の席だった。係のオバちゃんは英語で書かれている本日の試合の一覧表をくれる。すでに試合は始まっており、今行われている試合は第一試合だと説明してくれた。試合開始は18時。試合は全部で10試合。メインは7試合目とのことだった。そしてお土産にと小さな小さな小皿をくれた。
オバちゃんがいなくなるなり、今度は小学生くらいの少年がやてくる。飲み物はどうするというのでコーラを注文。いくらだというと40バーツだという。タイの物価にしたら高いほう。リングサイドの客相手だからこんなもんか。しかし、後で売店でコーラ買うと10バーツ。このガキたち、30バーツくすねてんのか?
席に落ち着くと第一試合が終了していた。判定での決着だった。戦っているのは中学生くらいだろうか、まだまだ幼さが残るような少年たちだった。
リングサイドの客は全員が観光客。半分が日本人で半分が西洋系といったところか。2階3階はタイの人たちばかり。2階には西洋系の観光客と思われる人もチラホラ見かけるが。
ムエタイの試合前にはワイ・クルーという踊りをする。そのときに独特の音楽が流れるのだが、これはテープとかで音楽をながすのではなく客席の片隅にいる人たちがライブで演奏しているのだ。
試合の前半は単調な展開が多い。なかには単調なまま試合が終わってしまうこともある。単調というのは裏を返せば慎重に試合を進めており、真剣勝負だということだろう。実際、選手はおろかセコンドも非常に気合が入っている。特にセコンドの人たちはやたら客席を気にする。そう、ムエタイは賭けの対象となっているので、自分の選手がどう賭けられているのかが気になっているのだろう。
そんな中でも白熱した試合はある。なかにはキックが思いっきり入ってKOとなり、KOされた選手は全然動かなくて担架で運ばれていってしまったりする。でもそれはまるでよくあることかのように、手際よくサクサクと運んでいくのだ。
最初はウェイトの軽い階級の試合が行われるが、徐々にウェイトの高い試合が行われていく。メインに近づくにつれて選手たちにも風格が出てくるというか、ワイ・クルーも様になっているのだ。
第7試合メインイベントは契約体重132パウンドの試合、LOOGPATARA VS PICHERTLEK。私は青コーナー近くにいたので、青コーナーのPICHERTLEKを応援。
入場する選手はリングインする前にひざまずき祈りを始める。そしてリングインすると四方のコーナーポストに祈りをささげて、音楽に合わせてワイ・クルーを舞う。さすがにメインの選手。ワイ・クルーもあでやかというか風格を感じる。試合前にセコンドから水のようなものをかけられて試合開始。
メインというだけあって、賭けをしている観客たちも気合が入っている。もちろんセコンド陣も気合いっぱい。特にセコンドのうちの一人でホイス・グレイシーに似たような人は選手に檄を飛ばしたかと思えばどこかに行ってしまいまた戻っては選手に大声で何かを言っている。試合よりもこのセコンドを見ているほうが面白い感じがする。
試合は5ラウンド。今日のカード全てが5ラウンド制だけど。1、2ラウンドは様子見の状態で、3ラウンドから仕掛け始める。キックやパンチが決まるたびにセコンドから「オーィ」なる掛け声が出る。その掛け声が試合を盛り上げている。
試合は判定となり青コーナーのPICHERTLEKが勝利した。よろこぶセコンド。ほっとした表情のPICHERTLEK。喜びと落胆の観客たち。これがムエタイなんでしょう。
その後ムエタイの試合が2試合あり、最後の試合はムエタイではなく普通のボクシングの試合だった。試合の一覧表を見ると青コーナーの選手はRINGTARO YAMAKUJIとなっている。もしやこれは日本人でYAMAKUJIというのは山口のことなんじゃないかと思った。出てきた選手は日本人みたいな人だったので、おそらく山口さんなのだろう。もう22時近かったので夕飯も食わなければならないのでスタジアムを出た。
ムエタイというのは独自の格闘技だ。KOよりも判定の試合が評価されるなど、日本人には観戦していてつまらないと思うところも正直ある。でも試合だけではなく、セコンド、観客、売り子などをひっくるめたスタジアム全体から独自の雰囲気を感じる。それが面白かった。