インド一人旅
1日目
(10月11日)
昨年のマレー鉄道一人旅で、すっかり海外一人旅の虜になってしまった。旅から帰ってきても、しばらくはその余韻が頭から離れることはできず、また旅にでたいという衝動にかられる日々が続いた。
次に一人旅に出る際にはインドに行こう!インドという国に特に思い入れがあるわけではないが、インドはバックパッカーの聖地的な扱いをされているようで、インドを訪れなければ旅人として半人前であるといったイメージすらあるようだ。よし!それではタイ、マレーシア、シンガポールと行った経験を元にして、ここはひとつインドに行ってやろうじゃないか!
そう思った私は1年ほどの間にインドに関する本を買いあさっては読んだ。有名な蔵前仁一の「ゴーゴー・インド」をはじめとして「河童が覗いたインド」「インド怪人紀行」「インドでわしも考えた」「インドは今日も雨だった」「行ってはいけないインド」「リクシャーマンの伝説」「ホテル・ガンジス・ビュー」「ガンジス河でバタフライ」といった本から「インドまで行ってきた」「インドな日々」といった漫画まで様々な書物を読んだ。書物ばかりではなく、インターネットでインドを旅行してきた人たちの旅行記も読みまくった。そうするうちに、だんだんインドには行きたくなくなってしまったのだ。インド人は旅行者をすぐだます、飯は美味くない、ホテルは汚い等々。せっかくの休暇を怒り爆発の旅で費やすのはちょっとなあという気がする。もっと穏やかな国を旅行して気持ちをリフレッシュするするほうが仕事を行う上でもいいんじゃないのかな、なんて思ったりもした。
しかし結果として、私はインドへ旅行をする決心をした。それはなんてことない理由で、周りの人々に「次はインドへ行ってきます」と公言していた手前上、引っ込みもつかなくなってしまったからだ。「インドに行こうと思ってるんですよ」と私が話すと、たいていの人は「何かあったんですか?」とか「修行でもするんですか?」と言ってきたりする。なかには「悩みがあったら相談にのりますよ」なんてことを言ってくれる人もいたりするのだ。そのような回答が返ってくるほどにインドへ行くというのはインパクトのあることのようで、その後会うたびに「いつインドに行くんですか?」なんて言われるようになってしまた。ここで「いやあ、実はインドやめてハワイに変更しました」なんて言えない雰囲気になってしまったのだ。
まあ、なんとかなるさ!本当に本の通りにインド人はだましてくるのか、そんなにインドは汚いのか、この目で確かめてきてやろうじゃないか!そんなこんなでインドへの旅を決心したのであった。
しかしインドへの道のりは険しかった。まずはチケットの手配。これを某大手格安旅行会社に頼んだのだが、担当がチンタラしたヤツで全然スムーズに行かない。鉄道のチケットも事前に日本で予約しておこうと思ったのだが、言うことが二転三転してよくわからん状況になってきた。ホテルも違うホテルを予約したりと、インドに行く前から怒りのボルテージが上がってくる始末だった。そんなこんなで一通りの準備が終わったのが出発の1週間前くらいだった。やれやれ・・・インドに行く前から疲れるぜ。
チケットもそろって出発前日、さあ仕事を早めに終えて準備に勤しもうと思ったら上司に飲みに誘われ、帰宅したのは深夜だった。ほろ酔い気分のまま旅の準備をする。こんなので大丈夫だろうか。
そして出発当日。6時に起床して所沢駅から上野駅へと行き、8時9分発の京成スカイライナーで一路成田空港へ。
JRの成田エキスプレスよりも個人的には京成スカイライナーのほうが好きだ。乗り心地も良い感じがするし。
今回はエア・インディアでのフライトになるので、第2ターミナルで下車。第2ターミナルは4年前にコンチネンタル航空でニューヨークに行って以来となる。ここ2回ばかりはノースウェスト航空利用だったので第1ターミナルだった。
改札での身分チェックもスムーズに済ませ、早速3階の出発ロビーへ。ロビーは大混雑。3連休なので海外旅行へ行く人も多いのだろうか。
団体カウンターでチケットを受け取り、エア・インディアのチェックインカウンターへ。席はもちろん通路側を希望しました。個人的には通路側がベストだと思うんだけどね。トイレにも行きやすいし。
チェックインを済ませた時点で10時頃だったので、朝食を食べるべく4階にある「そじ坊」へ。これで当分は和食を食べられなくなる。そして目覚まし時計や虫除けスプレーなどを必要なグッズを購入する。
11時になったので出国審査へ。特に何事もなくスムーズに通貨。そしてYAHOO! Cafeで30分ほどインターネットに興じる。無料だし、暇つぶしにはもってこいだ。
出発30分前に出発ゲートへ。私が乗るエア・インディアはシャトルに乗って別の建物へ行き、そこの一番奥にあるゲートだった。ゲートの手前では手荷物チェック。ノースウェストやコンチネンタルではこのようなチェックはなかった。エア・インディアはテロ対策のため手荷物チェックは徹底しているようだ。すでに搭乗は始まっており、すぐに機内に入ることができた。
機内はなんか薄汚い感じがした。すでにインドを実感させるような機内だ。私の席は一番後ろの列。通路を挟んだところは機内食を準備する場所だったりする。
出発前にスチュワーデスがオレンジジュースを配りに来た。その配り方の雑なことといったら、とても接客業のやる仕事振りではなかった。放り投げる感じでジュース配ってたもんね。これがエア・インディアなのか、それともこのスチュワーデスが特別なのか。
飛行機は12時出発。ほぼ定刻通りに動き始めた。機内では非常時の案内などが放送されているがヒンズー語なのでわからない。その後に英語と日本語での説明はあった。しかしスチュワーデスの説明は全て英語だった。
そして飛行機は出発!約1年ぶりとなるユーラシア大陸への旅。これからどんなことが待ち受けているのだろうか?期待と不安が交錯する。
飛行機は水平飛行の体制に入りドリンクサービスとなる。ビールを注文。ビールを飲み終えた頃に機内食。
チキンとマトンどっちがいいとか聞かれチキンと答えるが、席の関係で私が最後のほうとなりすでにチキンがないようだった。そこでベジタリアン用の機内食にあまったチキンをのせて出された。機内食は案の定カレーだった。米も日本のではなく細長いパサパサしたもの。味はさほど美味しいってものでもなかった。
機内の映画は日本語訳もないので、暇つぶしに本を読む。今回、旅のおともの本は蔵前仁一や 素樹文生、そして大槻ケンヂの本。大槻ケンヂの本は暇つぶしにもってこいだ。隣は2人組の学生のようで、何やら熱心にインドの勉強をしている。そこまで一生懸命に勉強しなくたってこれからどうせインドに行くんだからと思ったが、まあそれは個人の勝手だしね。
トイレに行く途中、窓から外を見ると緑の山々が見える。すでにユーラシア大陸上空を飛んでいるのだろうか。
本を読んではウトウトしてというのを繰り返している。機内に一人でいるのは暇だ。隣の学生たちのように暇つぶしにこれから行くインドの勉強でもしておくべきか。しばらくすると再び機内食サービス。サンドイッチとケーキが出てきた。
このサンドイッチがチーズとパイナップルが一緒にサンドされていた。まず日本ではお目にかかれない組み合わせ。チーズとパイナップルって合うのか不思議だったが、食べてみるとこれが意外と美味かった。
そして飛行機は着陸態勢に入った。この飛行機の最終目的地はインドのムンバイなのだが、途中タイのバンコクとデリーを経由することになっている。まずは最初の経由地であるバンコクのドムアンに飛行機は到着した。日本時間で約19時、タイの現地時間では17時。7時間でバンコクに着いた。
バンコクで一通りの客が降りた時点で機内清掃が始まる。機内食の積み込みなども行っていた。インドまで行く客は邪魔者扱い。タイ人の清掃部隊はガンガン掃除をしていく。その掃除が終わったところでバンコクからインドへ向かう人々が搭乗してきた。1時間くらいバンコクに滞在し、飛行機はインドに向けて出発した。
またしてもオレンジジュースが配られ、そしてドリンクサービスと機内食が。
今度はチキンかマトンかなんて聞かれもしなかった。前のほうの席の客には聞いていたようなので、後ろの席の私は有無も言わさずに残ったほうのものをあてがわれたのであろう。中身はまたしてもカレー。今度はパリパリのおせんべいのようなナンがついてきた。味はまあ美味くともなく不味くともなくという感じ。一緒に出てきたフルーツが一番美味しかった。
飯を食ってトイレに行くついでに外を見てみるとちょうど夕暮れだった。
飛行機から見る夕暮れは綺麗ではあったが、なんとなく物悲しげでもあり、これからの旅の不安をかきたてるようなものだった。インドなんていう手ごわい国で約1週間も生活できるのだろうか。とんでもない事態に巻き込まれたりしないだろうか・・・
そして飛行機はインドのデリーに着くため着陸態勢に入った。ほぼ定刻通りのインド時間19時40分、デリーのインディラガンジー空港に飛行機は到着した。バンコクから約3時間、日本からは約11時間という所要時間。
飛行機の窓から見たインディラガンジー空港は暗いなという印象だった。昨年、バンコクに着いた際にはここまで暗い印象は受けなかった。
飛行機を降りてゲートのところで搭乗チケットを渡す。チケットを回収することはガイドブックで知っていたのでスムーズに通過。そして入国審査前にトイレへと行く。
大きいほうに入ってみるとインド式の便所が待っていた。一応トイレットペーパーはあったが、同時に尻洗いようのカップもあった。これからの1週間はこのカップのお世話になるのだろう。
入国審査は15分ほど並んだが、審査自体は何も聞かれずに終わった。そして荷物を受け取りに行くが、まだ荷物が来ていなかったので近くにある両替所でトラベラーズチケット200ドル分をルピーに両替する。
インドを旅する上での最初の難関はこの両替であるとガイドブックやインドに関する本では書かれていた。実際の金額よりも少ない金額を渡すとかトラブルが頻発するらしい。気を引き締めて「Thomas Cook」なる両替所に行く。200ドル分のトラベラーズチケットを渡すとインド人はコンピュータをいじり始めた。そしてルピーを数え、無造作にレシートと一緒に差し出した。すぐさま渡された金額がレシートの金額と一致しているかを確認。きちんとありました。まずは一安心。
荷物を受け取り税関へ。申請書に記入漏れがあるようで記入するように言われたが、どこが記入漏れなのかわからなかった。よくよく申請書を読むと荷物の数を記入する欄が空欄になっていた。急いで記入して税関を抜ける。
税関を抜け到着ロビーへ行くとそこにはいんちきタクシーの客引きなどがわんさかいるという話だ。私は日本でホテルまでの送迎を頼んでいたので、わんさかいる人のなかから迎えの人を探し出さなければならない。ちゃんと迎えを探し出せるだろうか。さあ、いざ到着ロビーへ行こう!悪徳インド人よ、かかってこい!と思ったら、到着ロビーにはたいして人がいなかった。柵の外に20人ほどが静かに名前を掲げた紙を持っているだけだ。これには正直拍子抜けした。まだバンコクに着いたときのほうが人がたくさんいたよ。
到着の旅行者を静かに待つインド人の中から、私の名前が書かれた紙を持っている人は簡単に発見できた。挨拶をして車に乗せてもらう。建物を出るがさほど暑くはない。夜だからか。それよりも独特の匂いがする。スモッグの匂いかな。車に乗ると「Welcome to INDIA」とレイを首にかけてもらった。車には運転手と迎えに来ていた案内係と私の3人だけ。車の中は無言状態が続く。ちょっと怖い。
車はデリー市街へと向かう。とにかく外は暗い。道路の街灯がオレンジ色なのが、その暗さをさらに引き立てている。そして道の舗装状態が悪い。車がゆれるったりゃありゃしない。
30分くらい走ったところで私が今晩宿泊するThe Parkに到着した。チェックイン手続きは全て案内係りがやってくれた。そして列車のチケットやアーグラーのホテルチケットも受け取る。案内係には少しチップを渡した。最初はいらないという素振りを見せたが、あっさりと受け取った。
部屋へ行きボーイにチップを渡して、ようやくホッと一安心。部屋はなかなか綺麗だった。それもそのはずで、日本円にして1万5千円近くもしたホテルだからね。日本でも1万5千円するホテルに泊まったことなんてないですよ。
ベットに転がってしばらくボーッとする。本当にインドに来てしまったんだなあ、とあらためて思った。かの三島由紀夫が言うにはインドは選ばれたものしか行けないらしい。インドに行きたくてもインドに選ばれた者でなくてはインドには行けないというのだ。私はインドに行けた。私はインドに選ばれた人間なのだろう。その選ばれた私にこれからの1週間、インドはどのようなことをしでかしてくれるのだろうか。
なーんてことも考えつつ、テレビではWWEのプロレスなんぞやっていたのでずっと見ていました。