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仙界偽伝・弐


あらすじ (Momo)

蓬莱島脱出編 (羅夢さま)
聞仲side   飛虎side

封神台口説き

メゾン崑崙編


※このお話はワンダースワン用封神演義のゲーム「仙界伝弐」の飛虎聞的名シーンを羅夢さまが小説化してくださったものです。

<仙界伝のそれまでのあらすじ>

ストーリーの完全なネタバレです。ご覧になりたくない方はここで引き返しましょう。











神界創設後のお話。黄飛虎の息子、天祥は仙界で修行した後、周へ戻り将軍として妖怪退治の日を送っている。
しばらく平和だった人界だが、またしても妖怪が出没し始めたのだ。
周の近辺を騒がせた妖怪を退治した後、「仙界伝壱」に登場したゲームオリジナルキャラ「竜綺(ろき)」が天祥に一緒に妖怪を封じるために古代遺跡にある霊穴を壊して欲しいと言ってくる。
古代遺跡は始まりの人が作ったといわれ、謎の文字で埋め尽くされていた。天祥はその非凡な力で霊穴を破壊する。
ところが、この竜綺は胡喜媚が変化したものだった。王貴人、そして大地と融合したはずの妲己が再び現れる。
そして霊穴の破壊により崩壊する神界…
神に封じられていた魂魄たちは封神台へ飛ばされた。神界創設により封神フィールドは解除されており、魂魄たちは自由に人界へいけるようになる。封じられていた妖怪仙人たちは仙人界に守られた人界のありように反発し、次々に反撃の狼煙を上げる。
混乱の中、飛虎は何者かに捕らわれる(情けないぞ)
再び魂魄たちを呼び戻し、封神台を再起動しなければならない。天祥は大地に張り巡らされた竜脈を蘇らせるため、霊穴を操作することになる。崑崙山2から仙人たちも応援にかけつけ敵と戦いつつも完成に近づいてきた。そのとき突如妲己の蓬莱島が崑崙山に攻撃をしかけてくる。
妲己の側にはなぜか黄飛虎が付き従っていた。混乱する天祥。
蓬莱島へ潜入すると、四聖たちが待ち構えている。彼らは聞仲を楯に取られ、天祥と戦うことを強制されたのだ。
蓬莱島の奥には呂岳と馬元も戦闘をしかけてきた。そこに現れる聞仲、張奎と高蘭英も一緒だ。掴まっていたはずの聞仲の出現にとまどう四聖たちと天祥。
聞仲は四聖の前で捕らわれていた自分は偽者だと言い切る。
その証拠にと、高らかに黒麒麟を呼ぶ。彼の忠実な霊獣は即座に姿を現した。
そして天祥は尋ねる。
「聞太師、父さんを助けにきてくれたのですか?」
「そうだ」
聞仲はきっぱりと言い切る。
妲己は次々と防衛線を突破された蓬莱島を見捨て、爆破しようとする。
その奥では飛虎が捕らわれたままだった。
張奎らは動力室へ爆破を止めるべく向かい、天祥は聞仲とともに飛虎が捕らわれている牢を目指す。
飛虎の牢獄には与えられた打撃をそのまま跳ね返す特殊なバリアーが張られていた。天祥は牢を壊そうとして弾き返される。
壊すには自分もともにダメージをこうむることを覚悟しなければならないのだ。
そして──




聞仲side



崩れ行く蓬莱島のなか、
私は、天祥を背後にかばい、禁鞭に手をかけた。
「聞仲、よせ!」
飛虎よ、私の身を案じてくれるのか。 
不覚にも、口元に笑みが浮かぶ。
私もわかりやすい人間になったものだ・・・。
だが、おまえにもわかっておろう?
このままでは、3人共崩壊に巻き込まれてしまう。
「一度は失ったおまえを、もう一度( ピー! )得られたのだ。たとえ消え果ようとも後悔はない。下がれ!」
チャンスは一度。自信はある。
だが、こちらも無傷というわけにはいかないだろう。
2人の脱出の足手まといにはなりたくない。
ならば・・・、
渾身の力を込めて、禁鞭を振るった。
「わが身も砕けよ!!」

ゆっくりと崩れ落ちる身体が、がっしりした腕に抱きとめられた。
いつものことながら、あのバカでかさで、どうやってこのように素早く動けるのやら感心させられる。
事態は、最悪から2番目というところらしい。
飛虎はここにいて、私は・・・どうやら生きている。
「私にかまうな。早く逃げろ!」
叫んだつもりだが、
喉を鉄の味の粘液が塞ぎ、声にならない。
「ばかやろう!しゃべるんじゃねえ!」
腕が膝の下に回され、身体が浮いた。
「聞仲、しっかりつかまってろよ!」
つかまる必要などないほど、しっかり支えられ
完全なお荷物状態だ。
だが、この安堵感はなんだろう。
このような身体になって、初めて人に身を委ねる喜びを知るとは・・・。
とはいえ、疾走する巨体の腕の乗り心地は、リムジンというわけにはいかない。
飛虎が一歩踏み出すたびに、身体中が悲鳴をあげる。
意地で呻き声をかみ殺しながら、私は思った。
今後千年は、肉体的な痛みなんか思い出したくない!

気がつくと、私はほの暗い部屋の寝台に横たわっていた。
浮上する意識の後を追うように、記憶が甦る。
確か・・・、飛虎が医者を呼んでいたな。
とすれば、ここは崑崙山2の医務室というところか。
あれだけのダメージを受けたというのに、痛みは嘘のように消えている。
それどころか、不思議なほど安らいだ気分だ。
どうやら、この部屋自体が癒しの空間であるらしい。
試しに腕を上げてみると、スムーズに動いた。
これなら、と腕に巻かれた包帯をほどいてみる。
傷口は、ほとんど塞がりかけていたが、触れてみると、妙にねばねばしていた。
頭の中で、かすかに警鐘が鳴る。
傷を治療した医者が何者かはわからないが、一度は、彼らの本拠地を徹底的に破壊した私だ。
どのようなことをされても、おかしくはない。
この、冬の寒い朝の布団(遠い記憶だ・・・)にも似た、居心地のよさも、裏を返せば、私をここに縛りつけるための罠かもしれない。
いや、おそらくこれは彼らの好意であろう。
いずれにしても、このような邪推をしてしまう私には、ここにいる資格はないな。
「封神台に戻ろう。」
半身を起こした瞬間、私はとんでもないことに気がついた。

服がない・・・。

おそらく、甲冑も服も衝撃でボロボロになってしまったのだろう。
幸か不幸か、ほとんど全身包帯に覆われているため、一糸纏わぬという状態ではないが、このまま外へ出るのは、プライドが許さぬ。
300余年の生涯のなかで、どんな危機にも対応する力を身に付けてきたつもりだが、このようなことは初めてだ。
どうする、金ゴウ最強道士!
落ち着け。
何か手はあるはずだ。
意識を集中して、部屋の中に何か身に付けられるものがないかを探ってみる。
あった!
私のマントが壁にかけられているのを見つけたのだ。
あちこちが裂け、血と埃で汚れてはいたが、この際贅沢は言っていられない。
手早く身に付けて、廊下に出た。
そうだ。
天祥と・・・あの男には、一言挨拶していかねば。

(息子省略)

部屋に入るわずかな気配で、飛虎は目覚めたらしい。
「聞仲!もうケガはいいのか?」
寝台から身を起こして、私の方へ歩み寄る。
「飛虎、私は封神台へ帰ろうと思う。」
「何をバカなこと言ってるんだ!いくらおまえが頑丈でも、あんな酷い傷がこんなすぐに治るわけがねえ!」
「私は、おまえに気遣ってもらわねばならないほど弱くはない。だが、かって私自身が深く傷つけた者たちと共にいられるほど強くはないのだ。」
「でも・・・」
言葉を止めた後、沈黙が続いた。
「そうか・・・」
大きな暖かい手が、肩に触れる。
「行くんだな。」
「ああ。」
おまえのやさしいまなざしが、今はつらい。
このまま、離れられなくなってしまいそうで・・・。
だめだ。戻らなくては。
「飛虎、ひとつ頼みがあるのだが」
「なんだ?」
「実は、その・・・何か着るものを貸してもらえないだろうか。」
「あ〜!?」
飛虎の目が、大きく見開かれ、次の瞬間すっと細まった。
「おめえ、もしかしてそのマントの下・・・何も着てねえのか?」
肩に置かれた手に、力が入る。
しまった!!
やつの顔に、「据え膳食わぬは・・・」という文字がはっきりと浮かんで見えた。
私は、寝た虎を起こしてしまったらしい。
「い、いや、包帯は巻いているが・・・。」
顔に浮かぶのが「腰元の帯をほどくご無体な殿様」の図に変わる
全くこいつのわかりやすさに比べたら、私など足元にも及ばない。
「何を考えている?私はケガ人だぞ!」
「ケガ人ならケガ人らしく、俺のベッドで休んでいけ。」
もはや、肩口をしっかりと押さえられ、逃げることもできない。
「やめろ!天祥も近くにいるのだぞ!」
「な〜に、あいつは昔から寝つきがいいから、心配いらねえ」
「よせ!!私とて・・・痛いのはヤなのだ!!」
「大丈夫。痛くしねえように、やさしくやるからよ。」
もう充分痛いのだが・・・という私の声は、すでに人外のものと化している飛虎の耳には、届かなかったらしい。


「わりい、わりい。ケガ人にはちょっときつかったかな?」
器用な手つきで、包帯を巻き直しながら、
本当にすまなそうな声で、飛虎が言う。
「だから・・・やめろと・・・言ったろうが。」
抵抗する気力も失せた私は、ぐったりと横たわり
やつにされるがままになっていた。
「いやあ、俺は人より冷静な方だと思ってるんだが、おめえのことになると、どうも調子が狂っちまって・・・。」
それは、私が言いたいセリフだ。
すべてのステータスが衰えているときに、
こんな二重人格者のところに、のこのこと自分から出向くなど、自殺行為だというのに。
「シーツを・・・汚したな。」
「心配するなって。いまどきの洗剤は性能がいいから、血液その他の汚れなんて、あっという間にきれいになるさ。」
皮肉の通じないやつめ!
「聞仲・・・」
突然、声が真剣になった。
全く通じなかったわけでもないらしい。
「今こうしていられるのも、おめえのおかげだ。
 天祥だけじゃ、あの場はどうにもできなかっただろう。
 感謝してる。」
「私の方こそ・・・結果的にはおまえに助けられた。
 ・・・ありがとう。」
素直に応じてしまう自分が、半ば情けなく、半ば嬉しい。
飛虎が、やさしく微笑む。
「やっぱり、その身体で帰るのは無理だ。ここに泊まっていけよ。」
もしや、やつはこれが目的の確信犯だったのか?
私は、無理に身体を起こした。
「そうも、言っていられん。夜が明ける前に帰る。」
「じゃ、せめて、封神台まで送らせてくれ。」
「送り狼に付いて来られては、治るものも治らん。」
「ずいぶんと信用をなくしたものだな。」
微笑みが苦笑いに変わって、消えた。
「俺たち、また会えるよな。」
「・・・・」
「俺はおめえの身体の傷を治すことはできねえが、心の傷は癒してやりてえ。必ず封神台まで迎えに行くから、待っててくれ。」
「飛虎・・・。」
「また、会おう。」
「・・・・」
「そうやって、すねてるおめえもかわいいんだよなあ。
 俺・・・また理性をなくしそうだぜ。」
「ば、ばっかも〜〜ん!!!」

私が、持てる限りの意地とプライドと強がりを総動員して、封神台に向かった頃には、すでに空は白み始めていた。



仙界伝弐のハイライトシーンを素敵に小説化していただきました。
読んでいる間中、つい頬がゆるんでしまいましたよ。飛虎はやっぱり飛虎だった。
羅夢さま、ありがとうございました。


飛虎side

凄まじい衝撃と共に、堅固な檻が砕け散る。
土煙でかすむ視界のなか、俺はゆっくり倒れこむ聞仲の影目指して、猛然とダッ
シュした。
ナイスキャッチ!!
思わず口の端に浮かびかけた笑みが、途中で氷りつく。
こいつの人間離れした丈夫さは承知のうえだが、
いくらなんでも、こりゃちょっとヤバくねえか?
主を守りきれなかった甲冑は、粉々に砕けて跡形もなく、
肩から腰にかけて上半身を縦断する無残な傷口・・・。
いや、何より俺を震撼させたのは、
仙界大戦で、あれだけのダメージに耐えたこいつが、
蒼白な顔で、この腕に身を委ねているという事実だ。
半分開いた虚ろな目には、俺の姿が映っているのだろうか。
もの言いたげに僅かに開いた唇から、新たな血がこぼれ出た。
「ばかやろう!しゃべるんじゃねえ!!」
俺のために、こんな姿になりやがって・・・。
今度は、何があっても俺がおめえを助け出してやる。
力のぬけた身体を抱え直して、俺は立ち上がった。
「聞仲、しっかりつかまってろよ!」
長身の身体は、軽いとは言い難いが、
このぐらい重みがある方が、抱き甲斐があるってもんだ。
カ氏なんざ、軽すぎるもんだから、
うっかり抱いてるのを忘れて、そのまま出仕しそうになったっけ。へへ。
「とうさん、こっちだ!」
「お、おう!」
天祥は、妙なバネつき靴で、崩れる階段を駆け上っていく。
なかなか、便利なものらしいな。
すっかり逞しくなった息子に続いて走りながら、俺は考える。
それにしても、あいつのかっこう、ありゃなんだ?
縦ロールおっ立て頭といい、ぶっとんだ服装といい、
いったい誰のセンスに似たんだか・・・。
「お父さんとおそろい♪」なんてはしゃいでた頃が懐かしいぜ。
やっぱ多感な時期に親がいなかったのが、まずかったのかな。
ちょっと悶々・・・
それにしても、腕の中がいやに静かだ。
心配になって、走りながら聞仲の顔を覗き込んだ。
口を固く結び、きゅっと寄せた眉根が震えている。
よし、とりあえず生きてるな・・・が、
こいつ、もしかして声出すの我慢してんのか?
ま〜〜〜ったく、
感情コントロールのできない声を出すのが嫌いなのは、昔っからだが、
これじゃ、生きてるんだか、死んでるんだかもわかりゃしねえ。
減るもんじゃあるめえし、我慢も大概にしろってんだ!!

「父さん!崑崙だ!」
「よしっ!」
俺は大声で叫んだ。
「こいつ俺のために無茶しやがったんだ!早く医者を!!」
「医者は私だよ。」
やっ!こいつは・・・、愛弟子さえも実験材料にして、
羽だの牙だの生やしたうえに、果ては足をコンクリート詰めにしちまったという
、あの色物仙人じゃねえか!
「天祥・・・、他に医者はいないのか?」
「お父さん、失礼だよ。雲中子さんは、僕たちを無料で回復してくれる、ありが
たい先生なんだから。」
「私が気に入らないのなら、あとは太乙がいるけどね。もっとも彼の得意は機械
系だけど・・・。」
うっ!この際背に腹は代えられねえ。
「雲中子殿、よろしく頼む!」

治療(か?)は、何時間にも及び、
俺たちはひたすら待つしかなかった。
天祥によれば、医者としての腕は確からしいが、
何しろ、珍しいもの好きのやつの前に無抵抗で横たわるのは、
自前の仙人骨という特異体質の金ゴウ最強道士。
しかも美形・・・。
ううう、美味し過ぎるシチュエーションだ。
羽が生えたり、目が増えたりしてねえだろうな。
いや、それより、あんなことや、こんなことや・・・、
だは〜〜っ!もうたまんねえ!
「父さんが唸ってどうすんだよ。手術は終わったよ。」
天祥の声で我にかえる。
「ど、どうなんだ、具合は!?」
「うーん、あとは本人次第ってとこだね。」
「会ってもいいか?」
「とんでもない。今は安静第一だよ。」
というわけで、俺たちはさっさと自室に追い返されてしまった。

天祥たちと積もる話もしたいところだが、
今は、あいつの身が心配でそれどころじゃねえ。
とりあえず、何もすることがないからベッドに入ったが、眠れない。
まあ、生きてることは確からしいが、本人次第ってどういう意味だ?
あいつ独りでおいとくと、ろくなこと考えねえからな。
いっそ、医務室に忍んでいくか。
いや、無抵抗で横たわるあいつを前にしたら
それこそ俺の理性が危ないかも。
何しろ、俺は「飛虎」だからな・・・。
おまけに、ここはまだ不案内だし、事の最中に誰かに踏み込まれたら、
天祥のオヤジとして、面目がたたねえ。
ううっ!何考えてるんだ!俺ってばもう・・・。(殴!)
あれやこれや、頭の中で不毛な悩みを繰り返すうちに、
俺はいつしか浅い眠りに入っていったらしい。

[翌日の父の証言]

おっ、天祥。
夕べはよく眠れたか?
何してるかって?
見りゃわかるだろ。洗濯だよ。
どうした、目が赤いぜ。
え?俺もか?・・・親子だなあ。ハッハッハ
聞仲?
ああ、俺んとこにも来たぜ。
ちょっと話をして、封神台に帰ったよ。
確かに、あの身体で帰すのは心配だったが、止めて聞くやつじゃねえしな。
いや、ほんとに5分ぐらい話しただけだって。
いや10分ぐらいかもな。
とにかく会話した時間はそんなもんだろ。
あとは、まあ、言葉なしでも、その通じ合っちまうわけだ。
何しろ、俺たちは親友だからな。
さあ、これでよしっと。
ひどい汚れは手洗いに限るぜ。
ん?なんでシーツなんか洗ってたのかって?
そりゃ、前からこれが俺の役目だからさ。
こんなこと部下にやらせるわけにもいかんし、
聞仲はいつも疲れ果て・・・げほっげほっ
まあ、いいじゃねえか。
と、とにかく、これでおまえと一緒に戦えるってわけだ。
神界を元の姿に戻すために、頑張ろうぜ!
ダハハハハッ!

[息子のコメント]

まだまだ、父さんには敵わないな。
こんなことで、敵いたくもないけど。ふわあ・・・(眠い)


今度は飛虎の視点での蓬莱島脱出シーンです。
いそいそ洗濯する飛虎がなんだかすごくらしいので喜んでいました。
今回もありがとうございました。


黄父子を乗せた魔列車は、ゆっくりと聞仲駅のホームから走り出した。
次第にスピードをあげる列車の中で、
飛虎は、押し黙ったまま、じっと掌中の「殷王家の紋章」を見つめている。
封神台に戻った聞仲は、まだかっての敵崑崙にその身を委ねる決心をつけていなかった。
そして、何かをふっきるかのように、それを殷王家の墓に供えてきてくれるよう、彼らに託したのだった。
珍しく寡黙な父に遠慮してか、天化も天祥も、車窓を過ぎていく幾つもの駅を所在なげに眺めている。
ようやく封神台の出口が近づいてきたとき、初めて飛虎が、口を開いた。
「なあ、おめえたち。聞仲はどうして、自分でこいつを返しに行かなかったんだろう。」
父の唐突な質問に、思わず顔を見合わせる息子たち。
「う〜ん。やっぱり、国を守りきれなかった負い目があるのかなあ。 聞太師が殷を何より大切に思っていたことは、子供だった俺にもわかったもんね。」
「だが、事の是非はともかく、国を裏切ることになった俺に対してやつは最後まで、文字通り身体をはって殷を守った。
 そんな聞仲を差し置いて、俺が先に墓参りってえのは、筋が通らないと思わねえか。」
「おやじに罪はねえさ!それに国を出たことが悪いんなら、俺っちたちも同罪さ!」
勢い込む天化を、飛虎は苦笑いしながら押しとどめた。
「いや、おめえらは、家長の俺に従っただけだ。だから、今回は2人だけで、こいつを返しに行ってくれねえかなあ。」

「それはいけません。黄飛虎さま」
どこからともなく現れて、口をはさんだのは、柏鑑である。
「あなたは、このイベントで新しい技を覚えることになっております。このあと、息子さんの助けになりたいのなら、是非ご自身で王墓にお参りください。それにミッションをしっかりこなさないと、聞仲さまはお仲間にはなりません
よ。」
「そのことなら、心配ねえ。さっきはお供がいたんで失敗したが、俺がふたりっきりで口説けば、聞仲なんざイチコロよ。」
「飛虎さま、そのセリフはキャラが違います。」
「いちいちうるせえカメだなあ。
 まあ、新技には惹かれるもんがあるが・・・、
 おう、そうだ!天化、天祥、使える技は多いに越したこたあねえ。
 おめえらがそいつを覚えてきて、あとで俺に教えてくれ。」
「父さん、それはゲームのお約束に反するんじゃ・・・。」
「お約束なんざ、気合で何とかなるのが世の常よ!
 ほらほら、そうこうしているうちに列車が出口に着いたじゃねえか。」
飛虎は、紋章を天祥に押し付け、2人の背中をドンと押した。
「じゃ、俺の分も墓参り頼んだぜ! 俺は、聞仲のとこで待ってるからな。
 歴代の王様には、俺たちも近いうちに2人で伺うからと伝えておいてくれよ。
 おいカメ!着いた早々わりいが、やつの駅まで引き返してくれ!」
怒った大男に、設備を破壊される危険を冒すよりはと、おとなしく、列車を出発させる柏鑑であった。

唖然としたまま、ホームに残された息子たち。
「兄さん・・・、父さんはこのために、列車の中でずっと考え事をしていたのかなあ。
 俺、このごろ父さんのこと、よくわかんない・・・。」
「天祥・・・、俺っち、封神台でおやじとしばらく暮らしてみてわかったんだけど、こと聞太師に関しては、おやじの好きにさせておいた方が、世の中平和ってことらしいさ。
 さあ、こんなとこはさくさくクリアして、次にいくさ!」

*


 魔列車の近づく気配に、聞仲は顔を上げた。
再びホームに滑り込んだ列車から降りてきたのは、できた息子に恵まれた幸運な父親である。
「飛虎、どうした。忘れ物か?」
「いや、そうじゃねえ。」
足早に近づくと、隣にどっかりと腰を下ろす。
「実は息子共が、お使いは俺たちだけで大丈夫だって言うもんだからさあ。
 試しに任せてみることにしたわけよ。まったく、あいつらも何時の間にか、一人前になったもんだぜ。」
かなり訝しげな表情で、喋り続ける飛虎を見つめていた聞仲だったが、禁鞭に手が伸びないところを見ると、嫌ではないらしい。
『へっ、第一関門通過!』と内心ほくそえんだ飛虎は、次の段階に移ることにした。

「ところで、聞仲・・・」と、突然真顔になる。
「蓬莱島まで俺を助けに来てくれたってことは、おめえ別にここに閉じ込められているわけじゃあねえんだな?」
「そうだ。封神台はすでに開放されている。ここにいるのは・・・私の意志だ。」
「じゃ、なんで自分で紋章を返しに行かなかったんだ?」
澄んだ水を思わせる青い目が、ふっと空を彷徨った。
「私は・・・殷の太師としての務めを果たすことができなかった。自分の成すべき事を全うするよう教えてきた歴代の王達に合わせる顔がない。」
「それなら、武成王の務めを途中で投げ打った俺の罪は、もっと重いってことになるじゃねえか。」
「私とおまえとでは、国に対する責任の度合いが違う。」

「ふんっ!そう言うだろうと思ったぜ!! いいか、太師さま。よっく聴けよ!」

飛虎は、驚く聞仲のマントを掴んでぐいと引き寄せた。
「おめえが殷を守ってきた300年に比べれば、確かに俺が仕えたン十年なんざ、物の数に入らないかもしれねえ。
 だが、俺だって自分が生まれ育った国を守りてえ気持ちは同じだ。
 俺だけじゃねえぞ。歴代の武成王、宰相、家臣、一兵卒に至るまで、みんな自分の責任を自分なりのやり方で果たしてきたんだ。
 だから、殷はあれだけ長いこと栄えてきたんじゃねえのか?」
力説しながら、飛虎の手は、的確にマントを外していく。
「それを、自分ひとりだけで責任背負い込んできたような顔しやがって、それって、責任感が強いのを通り越して、不遜の域ってもんだぜ。」
「飛虎・・・ひとつ聞きたいことがある。」
「言ってみろ」
「この手は何だ?」

「話題をそらしてるんじゃねえ!!!」

聞仲の身体が、ビクッと震えた。
『よしっ、俺のペース・・・』
危うく口元が緩みそうになるのを押さえて、飛虎は声のトーンを落とす。
「聞仲、頼むから聴いてくれ・・・。」

どういうわけか、飛虎の誠心誠意語りかけるバリトンは、
聞仲にとって、催眠効果があるらしい。
もちろん、飛虎は長年の試行錯誤によって、それを熟知している。
前回は、あまりに久しぶりだったので、つい暴走してしまったようだが。
「おめえが殷のための精一杯頑張ったのは、みんな知っている。陛下も、歴代の王族も民も・・・朱姉さんだって、感謝こそすれ、恨んでるはずはねえ。おめえが、こんなところで、うだうだと自分を責め続けたところで、喜ぶやつは、誰もいねえぜ。」
口に併せて無駄なく動いている飛虎の手は、すでにマントを外し終わり、抵抗がそれ程強くないことを承諾と解釈して、甲冑のつなぎ目を探っている。
彼が自分の馬鹿力を都合よく忘れていることは、言うまでもない。
『(あちこちの裏サイトさまでの)修行のお蔭で、今は片手でも楽勝だが、最初は、こいつの服がどうなってんだかわけわかんなくて、往生したもんだぜ。
 なにしろ、黄家の男子の服装は、着脱しやすくがモットーだからな。なのに、天祥のやつときたら、まったく・・・。』
と心の中でつぶやきながら、表面上は極めて真剣に、飛虎の説得は続く。

「確かに、血縁のないおめえにとって、殷は血を分けた子供も同然だっただろう。だがな。国は滅びても殷の民は生きている。
 おめえが愛し育んだ子供たちは、確実に大地に根付いて生き、子孫を残していく。
 今その人界が、仙界や神界と共に危険にさらされているんだ。天祥たちは、懸命にその危機と戦っている。おめえも・・・力を貸してほしい。」
「ひ、飛虎・・・ちょっと・・・」
久々に見る白い肩の眩しさに、一瞬言葉が途切れる。
迷わず帯に手をやると、明らかに抵抗が強まった。
『ここで、ゴリ押しするのは得策じゃねえな。
 ・・・しゃあねえ、上からいくか!』
「まあ、仙界大戦ではいろいろあったが、
 お互い、自分が信じるもののために戦ったのは同じだ。
 おまけに、結果的にはおめえが封神した仙道たちは、みんなピンピンしてるじゃねえか。
 だから・・・?!」
飛虎の息が止まった。
露わにされた滑らかな白磁の上体の肩から胸、わき腹へと続く、更に白い細胞の隆起。
その周囲にも、消えかけてはいるが、無数の傷跡が目に痛い。
盛り上がった気分が、急速に冷え込んでいく。
「?」
動きの止まった飛虎の視線を追った聞仲は、苦笑いを浮かべた。
「治りかけたところを、誰かが無理にこじ開けてくれたからな。
 当分痕は残るだろう。」
さすがに、神妙に目を伏せる飛虎。
「いや・・・ほんとに悪かった・・・。」
「少しは、反省したか。」
「そりゃ、こんなもん見せられたら二度ともう・・・、それにしてもこれじゃ・
・・辛かったよな。」
飛虎の指が、傷跡を恐る恐る、そして限りなくやさしくなぞる。
「聞仲・・・」
「なんだ。」
「ここって、感じるか?」

間髪いれずに鉄拳が飛んだ。
「いっ、て〜な〜!!あにすんだよお!もう痛くないのかって聞いただけじゃねえか!」
「この大嘘つきめ!私の攻撃を予期してよけようとしたのが何よりの証拠だっ!!」
「そりゃ、俺の運動神経が良過ぎるから・・・いや、ほんとに反省してますって!」
「ふん、どうせおまえの反省など、脱がせるのは下からにすればよかったレベルのものだろう。」
「す、すげ〜〜!どうしてわかるんだ?
 って冗談に決まってるじゃねえかあ・・・うわっ!
 馬鹿野郎!こんなくだらねえことで額の眼なんか開けるんじゃねえ!!」
「くだらないことかどうかは、己の胸に聞いてみろっ!!!」

「ケッ!いいところでケンカかよ。まったく仲のよろしいことで・・・。」

突如割り込む第三者の声に、熱く燃え上がっていた2人は、いきなり寒氷陣に叩き込まれた。

先に復活したのは、勿論この手の修羅場慣れした飛虎である。
「お、おめえは、王天君!なんでこんなところにいやがるんだ!」
「ふん、勝手に侵入しやがったのはてめーの方だろ。
 ここは俺の定位置よ・・・ま、ホントはもうちっと奥の方なんだがな。」
王天君は意味ありげに、にやりと笑った。
「ところで、黄飛虎さんよ。
 俺はおめーに忠告してやろうと思って、わざわざ出てきてやったんだが。」
「おめえの忠告なんぞ、聞きたくもねえ!」
「ほ〜〜う、そんなこと言っていいのかなあ?
 それに、そんなでかい声出すと、次の駅まで聞こえるぜ。
 おっと、これはゲームクリアしてねえヤツには秘密なんだが、ククク・・・」
思わせぶりな声に、つい持ち前の好奇心が頭をもたげる飛虎である。
「次の駅?ここが終点じゃねえのか?
 おい、聞仲。この奥には誰の駅があるんだ?」
「知らん!」
見れば、開き直りという言葉を知らない太師さまは、
あまりの事態に思考回路が停止してしまったようで、
かろうじてマントを頭から被ったところで固まっている。
余程あせったらしく半分ずり落ちたマントから白い肩が覗いて、妙に色っぽいのだが、そんなことを指摘したら最後、
誇り高い彼は、墓穴を掘って潜ったまま二度と出てこなくなってしまうに違いない。
と判断した飛虎は、何気なく聞仲を背後にかばいながら、王天君に向き直った。
「で、その駅にいる誰かさんと俺と、いってえどういう関係があるんだ?」
「ククク、知りたいか?ま、それが賢明ってもんだぜ。耳貸しな。
 おい、突っ立ったまんまじゃとどかねえってばよ。」

何とか身長差を克服した王天君が、耳元で何事かささやくと、
とたんに、飛虎の顔色が変わった。 
「な、なんだって?そ、そいつはまずい・・・。
 おい、聞仲!早く服着ろ!ここはもうやばい。場所を移さないと。」
状況の変化を把握しきれていない聞仲だが、
とにかくこの場を逃れたい気持ちは共通なので、大人しく飛虎の指示に従う。

「ほらな。俺って親切だろ?こいつは”貸し”だぜ。」
「あ、ああ、恩にきる。お〜〜いカメ!早く列車を寄越してくれ〜〜!」
すぐ近くで待機していたとしか考えられないスピードで、魔列車がホームに滑り込んだが、あせりまくる飛虎は、それにも気づかず、聞仲を押し込むようにして乗り込み去って行った。

後に残された王天君は、ちょっと残念そうに独りごちる。
「ケッ、俺の一生一度のシャレにも気づかねえで行っちまいやがった。ダセッ!」


のちに、空っぽの聞仲駅に降り立った天化と天祥は
殴り書きの置手紙を見つけることになる。
「天化、天祥
 説得成功!崑崙で待つ。父よりv」

「オヤジ・・・vってなにさ。」
「兄さん、俺たちって何のために真面目にミッションこなしてきたんだろうね。
 ま、久しぶりにお墓参りはできたけど、あの駆虎とかいう技だって難し過ぎて
ちっとも覚えられないし。」
「俺っちもさ。こうなったらオヤジを使うのはあきらめて、その分、聞太師に働いてもらうさ・・・。」

かくして、あちこち連れ歩かれるうちに、次第に旅の楽しさに目覚めていく聞仲であった。

おわり


そして、20,000ヒットのお祝いに更に封神台で聞仲さまが仲間になってくれるイベント部分をいただきました。強引だけど豪快な飛虎。いいですねえ。理解のある息子だし。
ちなみに旅の楽しさを覚えた聞仲さまのセリフは「旅は…してみるものだな…」です。

こんなにたくさんいただけて幸せです。サイトを開設した喜びを噛み締めています。羅夢さま、ありがとうございました。



崑崙2に、さわやかな朝がきた。
青空をバックに、洗剤のCMの如くひるがえる純白のシーツ。
それを、伸びをしながら満足そうに眺めているのは、
夜通しの運動のあと、さらに一仕事終えた飛虎である。
「あ〜〜あ、我ながらいい仕事をした後は気分がいいなあ。
 やっぱり、汚れはついたらすぐ落とすに限るぜ。
 さ、まだ早いし、これから一眠りすっか。」

機嫌よく戻ってきた飛虎は、自室の前に意外な人影を見つけた。
「聞仲?おめえ、さっきまで自分の部屋で余韻に浸って寝込んでたんじゃ・・・」
「飛虎、話がある。とにかく部屋に入れ。」
「なんだよ、あれじゃ不足か?いてっ!」
無理やり部屋に押し込まれ不審顔の飛虎の耳に、聞仲の怒声が響いた。
「おまえはいったい何を考えているんだ!
 あんな目立つ場所にシーツなんぞ干しおって!!
 あれでは、昨晩おまえがなにをしたか崑崙中に知らせているようなものではな
いかっ!!!」
「おまえって俺だけじゃなくておめえも、だろ?」
「だから、問題なんだっ!」
「まあまあ、子供のおねしょじゃあるめえし・・・って
 へへっ、もしかして、おめえも経験者だな。」
「そ、そんな何百年も昔の話は忘れたわっ!
 確かに今まで気づかなかった私も迂闊だが、
 おまえの朝の洗濯は、崑崙中で有名らしいぞ。
 聞けば、仙人共の中には、 おまえが洗濯モノを干すかどうか、
 賭けている不埒な輩までおるそうではないか!」
「そうか・・・ってことは俺が隠れて胴元をやれば、大儲けってわけだ!」
「ばっかもん!!!
 とにかく、あんな目立つ真似は即刻やめろ!」
「そんじゃあ、洗濯したシーツはどうすりゃいいんだ?
 おめえは自分がやってねえから、人の苦労がわかんねえだろうが、
 まったく、世の新婚さんたちはどうしてんだか。」
「普通の新婚さんは、他にも洗濯モノがあるだろう。
 おまえはこれ見よがしにシーツだけ干すから目立つんだ!」
「なら、おめえの下着も一緒に洗ってやろうか?
 お、おい・・・禁鞭は勘弁してくれ!
 じゃ、汚れたシーツはそのままにしとけっていうのかよ!!」
「そんなことは言っておらん!」
聞仲が禁鞭の代わりに取り出したのは、乾燥機のカタログだった。
「見ろ。世の中にはこんな便利なものがあるらしい。
 これなら、もう外に干す必要はなかろう。」
「え?でも室内に湿気がたまるし・・・
 やっぱり気持ちよく乾かすには、お天道様でないと・・・。」
「嫌か?ならば最初から寝具を汚さなければすむ話だ。
 私は、今日から部屋に鍵をかけて休むことにする。」
「そ、そんな極端な・・・、ひでえじゃねえか!」
「ならば、人間界に降りて、これを調達してくるのだな。」
「う〜〜っ、足元見やがって・・・。
 みてろ、そのあとは心置きなく汚してやるからな・・・」

その後、某家電売り場に現れた茶髪の大男が、
購入した乾燥機をかついで帰って、秋葉原電気街の話題になった
・・・かどうかは定かではない。

お洗濯飛虎さんリターン。毎日かいがいしく、あらゆる意味で張り切っているようです。
乾燥機を購入した後の聞仲さまの運命やいかに?
続きは羅夢さまにおねだりしてみましょう^^

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飛虎が引き返すところまでいただいた時点でMomoがおもいついたギャグオチです。
飛虎情けなさ100%




「ぶんちゅ〜〜〜〜っ」
「飛虎!?」
王墓に行ったはずの飛虎が独りであっという間に戻ってきたのに聞仲は目を剥いた。
封神台の中は時間の流れがめちゃくちゃとは言え、ついさっき消えた列車に飛虎が乗っているのはおかしい。
そうこうしているうちに、飛虎は列車から身を乗り出して、ホームに着くより早く飛び降りた。
魔列車ピーマス999が怒って汽笛を鳴らす。
<到着以前の飛び降りは大変危険ですのでご遠慮下さい。列車の運行に支障を来します>
「や、悪ぃ、悪ぃ」
と言いながらも、飛虎は聞仲めがけて走り出す。
がばっと腕を広げていざ熱き抱擁を!と、飛びついたところが、ひらりとかわされてしまった。勢いがついていたためそのまま前につんのめって、もろに顔を地面に打ち付けてしまった。
「〜〜〜〜っ ひでぇよ、聞仲」
愛しい恋人との感動的な再会を期待していた飛虎は半分涙声である。
聞仲はいっさいかまいつけず詰問した
「飛虎、紋章は?」
「へ?」
「私が頼んだ殷王家の紋章はどうしたのだ?」
「ああ、あれは天祥たちが供えてきてくれるって」
「この馬鹿者っ!!」
「聞仲?」
「おまえがきちんとイベントをクリアしないと、私は『諾』とは言えないのだ」
「そんなんいいじゃないか。もう返事なんて決まっているだろう?」
その確信に満ちた表情に、いささかむっときた聞仲はつい意固地になってしまった。
「ルールには従うべきだ」
「なんでだよ〜、固いこと言うなよ、俺はいつだっておまえに会いたいんだから…」
といいながら、飛虎は聞仲を抱き寄せマントをはがそうとする。
こうなったら実力行使に限る!押し倒せばこっちのもん!
ところが、今回はそうは問屋がおろさなかった。
「よ…せっ」
渾身の力で突き飛ばされる。
息を荒げながら、乱された衣服を直して聞仲は言い放った。
「いつもいつも、私がそれで丸め込まれると思ってるな?もう、おまえなんか知らない。私は通天教主さまの所へ行っている。通天教主様は天祥が最後の霊穴を開放して、楊ぜんとの友好度200以上にならないと駅には出ていらっしゃらないからな。おまえともそれまでお別れだ」
言うなり、聞仲は足音も高く駅の中にあるワープゾーンへ姿を消してしまった。

残された飛虎は茫然とする。
確か…天祥と楊ぜんの友好度はまだ90。
100歩ごとに5ずつ友好度があがるけど、えっと…
そこで飛虎は計算を放棄した。

「ぶんちゅう〜〜。俺が悪かったからそんなこと言わないで戻ってくれよ〜〜。ちゃんとイベントこなしてくるから」

もはや家出する妻を引きとめようとする旦那そのものの飛虎であった。

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