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Idle Moments/ Grant Green --演奏した側から見たRecording Date
  • 名盤「Idle Moments/ Grant Green」を演奏した側から見たメモを見つけた、というお話です。
    「Idle Moments/ Grant Green」
  • 「Idle Moments」は、右フレームをみれば判るとおり、Grant GreenのアルバムでもFeelin' the Spiritに次いで人気になった盤であり、特にジャズ喫茶では強く支持されていました。
    1963年11月4日
  • この盤の参加メンバーであるGrant Green、Joe Henderson、Bobby Hutcherson、Duke Pearson、Bob CranshawそしてAl Harewoodは、比較的順調にこの日の録音を済ませていき、JEAN DE FLEURを先ず仕上げて、次にDJANGOを演奏し始めた。このDjangoは、Greenが何年も前から録音したがっていた曲だった。素晴らしい演奏となったが、特にBob CranshawとAl Harewoodが繰り出す、磐石の、しかも揺ぎ無いリズムが、ソロイストのアドリブをがっちりと支えていた。更に、NOMADの録音に入った。このNomadでは、Hendersonが、何故Down Beat誌の「注目すべき新人」投票の最上位にあげられるか、を納得させる見事な演奏を聞かせた。Greenのアドリブは3番目だったが、彼が乗りの良いアドリブをしている最中から、皆が「これでこの曲のテイクは決まりだ」と確信した。Hendersonも演奏の後、「ギターからあんな音を聞いたのは初めてだ」と賞賛した。
    標題曲Idle Momentsに取りかかると、、、
  • 残るは、Idle Momentsだけとなった。もう真夜中も過ぎている。LPの収録時間からすると、演奏はほぼ7分に収める必要があり、全体の取りまとめをしていたDuke Pearsonは、ソロ順を決めて、各人のコーラス数の目安を指示した。Idle Momentsは16小節ものであり、テーマは繰り返さずに一回だけ、リーダーのGrant Greenのアドリブが2コーラス、他の人は1コーラスとすると、Pearsonの計算では6分半から7分以内で仕上がると思われた。調整室からテイク番号が告げられ、録音が始まった。しかし先ず、一回だけやる予定の16小節のテーマが繰り返されて、32小節となってしまった。そしてGreenがアドリブを始めたが、本来なら予定通りの2コーラスとなる32小節に差し掛かったので、Pearsonはピアノのアドリブに入る準備をした。しかし、Greenはそのままアドリブを続けている。仕方なく、Pearsonは3コーラスの終わりとなる48小節目まで待つこととし、Greenの締めのフレーズに係り受けをし始めた。でも、Greenは更に演奏を続けている。Pearsonは暫し考え込んで、「なーるほど、テーマを32小節でやったから、Greenは打ち合わせ通りに2コーラス、つまり64小節やろうとしてるんだ」ということに気付いた。ということで、ピアノの番になってPearsonも32小節のアドリブをすることにした。分担の終わりに近づいたので、Hendersonに「渡すよ」という合図をした。すると、Hendersonはマイクに2歩近付いて、眼を閉じて、自分のアドリブを始めた。Pearsonは適当にコンピングをしながら、調整室に居るAlfred Lionを見やったが、Lionは演奏を楽しんでいる風に見えた。しかし、その内にLionはストップウォッチに目をやり、ビックリした様子でPearsonの方を見たが、肩をすくめて微笑み、Hendersonの演奏に再び聞き入っている。次はHutchersonで、放って置けば32小節やるに違いない。Pearsonは、何とか食い止めるかと考えたが、それまでの演奏におかしなところは無かったし、6分をそれほど超えているという気はしなかった。Pearsonは、Lionに注意を払い続ける。Hutchersonが32小節を終えたので、Pearsonは皆に、テーマは一回だけだと合図した。それは皆に伝わった、と思ったらHendersonがそのまま続けようとした。それでもようやく気付いて、危うい所で巧く収めてくれたので、演奏はうまく終わった。その日は、これで無事に終わりそうだった。
    録り直しか
  • 演奏が終わり、PearsonはLionと視線を交わした。「今のはもう一回取り直し」と言うかも知れないな、と覚悟した。LionはツカツカとPearsonの所に来て、「なぁ、今のが何分かかったか判るかい」と聞いた。Pearsonは、「8分か、9分ぐらいかな」と答える。Lionは、「いんや、15分と、、、45秒だった。でも、良い演奏だった。でも、これはもう一度やり直して、今度は7分以内でやって貰わないといけない」と応じた。更に何回か演奏が繰り返され、今度はどれも7分以内で仕上がった。しかし、初回ほどの出来ではなかった。初回にはGreenが冒頭のアドリブで、演奏の流れを決めてしまった。後に続いた面々は、Greenの素晴らしいアドリブに大きく影響を受けていた。演奏全体が良い寛ぎを伴っており、自然であった。リーダーのGrant Greenはそれに満足しており、Lionも同じだった。ということで、初回の、長いテイクをMaster Takeにする事で落ち着いた。これは、新しい問題をもたらした。この長いテイクを入れるとすると、他の演奏を短くして、7分以内にしないとならない。ということで、メンバーは次の機会にそれを試みる事となった。
    1963年11月15日
  • 上記したように、この日は先日の長すぎるが、しかし演奏自体は素晴らしかったIdle MomentsをMaster Takeとして入れるために、他の曲の短縮テイクを録らねばならないことになっている。そこで先ず、JEAN DE FLEURを短縮する事で皆が一致した。Pearsonが早速コーラス割りを決め、演奏が始まった。Greenがピッタリと綺麗な演奏を行い、HendersonとHutchersonが、短い時間しか割り当てられていないその時間枠の中で、凄く盛り上がるアドリブを纏めてくれた。こういう中で、ドラムスのAl Harewoodが見せてくれたフィル・インが素晴らしく決まっている。以前のDJANGOも良い演奏だったが、13分と長すぎたので、8分のテイクを取り直して、無事に録音は終了した。
    そして発売
  • ということで、Idle Momentsの良いテイクが一寸長すぎたので、JEAN DE FLEURとDJANGOが割りを食って、短いテイクを取り直し、それら4曲でオリジナル盤が発売されました。米国での売れ行きまでは知らないが、我が日本ではジャズ喫茶という妙なシステムがあり、そこに集まるジャズファンがこの盤を大いに気に入って、いわゆる「ジャズ喫茶ヒット盤」となりました。
    そしてCD化
  • その後、20年以上もの年月が経過し、最近になってこの盤もCD化される事となリました。手元にある88年の米国盤には、オリジナル盤の演奏の他に、2曲の追加テイクが入っています。つまり、上記の経緯の通りに別テイクがあったことを証明するように、昔は割りを食ったJEAN DE FLEURとDJANGOの最初のテイク、11月4日の録音分が「おまけ」として収録されて居ます。聴いてみるとこれも何故捨てたか理解できないほどの良い演奏です。つまり、LPの収録時間のなせる業ということになります。それでも、元の4曲だけでオマケ無しでも、良い演奏ばかりで人気が出たんですから、立派なものです。
    でも実は、、、
  • 別の面も指摘しておきます。上記したようにこの盤は、追加テイクも入れると大体60分程度なのですが、オリジナルは40分仕立てです。60分をLPに入れるのは無理だった、ということなのでしょうか。実は、そうではないのです。クラシック業界では、当時でも、LPにこの程度の長さを詰め込む事はよく行われていました。交響曲なんかの長いのには、一時間近いのがゴロゴロあります。一枚に収める事はやはり便利であり、売りやすいという面もあります。それもあったのでしょう、LP一枚にこの程度の長さを詰め込むのは、それなりに行われていました。無論、最内側の溝がしっかり幅を取れないので、技術的には必ずしも余りウマクはないことなのですが、行われてはいたのです。しかし、クラシック業界と違い、ポップス系では大体が40分、ジャズでもCadet、Chess等では30分位のは当たり前という「商慣行」がありました。ベスト盤の時に例外的に長時間録音を許容していましたが、普通はやらない、というのが一般のビジネスのやり方だったのです。従って上記したことは、「LPに入らない」のではなく、「そういう盤は売らない」という商慣行だったということが、事実としては正確なのだ、と思います。

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