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2003年5月某日 (2)

  • 猟盤生活では、探していた盤、狙っていた盤が見つけた時の「やったぁ」感が何とも言えません。でも、何となくゲットして、家に帰っておもむろに聴いてみて、「へェ、そうだったんだぁ」という発見をするということもあります。先日経験したChet Baker/ Charlie Hadenがらみのことも、そういうことのようでした。
  • Nelsonは、Chet Bakerが好きで数十枚持っていますが、いわゆるリリカルな面のほかに、結構激しい吹奏をする面も気に入っています。この人の若い頃の演奏を集めた右掲の盤、「Young Chet」というコンピ盤は、中々良い演奏が入っており愛聴しています。そのCD2の10曲目に「Everything Happens to Me」という曲があります。1955年のパリ録音で、現地のRaymond Fol、Benoit QuersinそしてJean-Louis Vialeが付き合ったもので、訪欧に同行していたRichard (Dick) Twardzikは参加していません。この時期の録音では「Live in Paris Vol.1/2」がBarclayレーベルで入手可能ですが、この演奏、というかヴォーカルしかやっていないので歌唱ですが、それだけは多分、この「Young Chet」2枚組にしか入っていない筈です。この人らしい「瑞々(みずみず)しい色気」が際立つ、ゆったりとしたテンポでの歌唱です。
  • それはさておいて、この4月のことですが、「In Europe, 1955/ Chet Baker」 (Philology 42)という盤を手に入れました。これは、訪欧楽旅中のMainz、Copenhagenにおけるライブのラジオ音源で、まぁ、普通の方なら手を出さない辺鄙な盤です。その盤にそのRichard Twardzikのことが触れてあり、「パリで24歳で夭折」との記述がありました。そうか、上記の「Everything Happens to Me」を録音した時期頃のことなんだ、と気付きました。
  • そしてついこの間、それとはまったく無関係に、「Always Say Goodbye/ Charlie Haden」 (Gitanes/ Verve 521501)という盤を手に入れました。いわゆる「Quartet West」の盤ですから、Alan Broadbent、Ernie WattsそしてLarance Marableというメンバーです。これは、Charlie Hadenが自分の好きな映画や音楽に自分の演奏を重ねるという趣向の盤でした。そこにナント、Chet Bakerの「Everything Happens to Me」が、一部ですがそのままに挿入されていたのです。聞けば、Charlie HadenもChet Bakerが好きで、自分のお気に入りとして、この名唱を採り上げたようです。そして自筆のライナー・ノートに、次のように記していました。「Richard Twardzikの24歳での客死に打ちのめされた直後の、数日も経たない時期の演奏ですが、実に素晴らしい。」、と。このCharlie Haden盤での「Everything Happens to Me」のトラックは、元のChet Bakerの演奏とまったく同じ、ゆったりとしたテンポでの弦入りの演奏です。共演のErnie Wattsのテナーがむせび泣いています。そういうほぼ40年後の演奏があった後、そのまま続いて、Chet Bakerの元演奏(1955年録音)のヴォーカルが挿入されて来るという展開です。いやぁ、実に「来てる」展開で、「ウーーン、こりゃ参ったな」と唸らずには居れません、、、ということで、「そうか、Richard Twardzikは、この直前にパリで客死していたのか。それで、当然、この「Everything Happens to Me」の録音には付き合ってないんだ。だから、地元ジャズメンとのセッションになったんだ」と判りました。この3枚の盤の演奏と、その関連情報から、こんな実情が判ったことになります。なるほどねぇ、、、
  • 「しっかし、こういう偶然があるんだなぁ」と感じ入りました。手持ち盤と、猟盤中にたまたま目に付いてゲットした2枚の盤という、言ってみれば何の脈絡も無い取り合わせでしかありません。でも、手持ち盤に好きな演奏があったことに端を発し、それに結果的には関連の深い2枚の盤を、一月も間隔を置かずに、連続して手にしていたことになります。つまり、「Everything Happens to Meつながり」だったことになります。
  • 最初の話に戻りますが、狙いを付けての収穫も嬉しいンですが、こういう思いもかけない偶然の収穫も、なかなか乙なものです。「なんや、細かい話やなぁ」と言うなかれ。好きなChet Bakerを巡って、些細なこととは言え、新しい発見をしたのは、嬉しい出来事でした。寡聞にして、Charlie HadenもChet Bakerが好きとは知りませんでした。そして単に「好きなんだ」に止まらず、こういうカヴァーまがいのことをしてしまう程の大ファンであったとは、、、こういう面白いことに出くわすのも、ジャズを長ーーく聴き続けて来た御蔭さんです。
  • 、、、ということで、これらの盤をじっくりと聴き返している、何とも至福の一日があったということであります。

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