7.ヤモリの恩返し
 3階の物置部屋を整理してパソコンルームを作ったときの話です。
 かたづけていた家族が悲鳴をあげました。見ると、ゴキブリ捕獲用のマットにヤモリが痩せこけて張り付いていました。てっきり死んでいるのかと思って持ち上げると、目がかすかに瞬きました。「生きている!」
 これは何とかして助けてあげなければと思いましたが、トリモチのようなネバネバした粘着材は容易に取れません。無理に剥がすと、ヤモリが引きちぎられてしまいます。で、僕はとっさに食用油を持ってくるように言いました。そして、油で丁寧に指先、脚、頭、胴体と粘着材から剥がしていきました。ヤモリの細い指先は油をこすりつけるとかすかに爪が僕の指先に引っかかりました。丁寧にゆっくりと・・・。やがて、ヤモリはマットから脱出させることができましたが、体は油まみれ。皮膚呼吸をしているのだったら、すぐに死んでしまいます。そこで、考えついたのは、屋上の植木鉢の下に置いてあげることでした。砂と土の混ざった中に体をつけ、それを全身にまぶしてあげました。その方が、早く油が取れると判断したからです。またそこには、ヤモリの餌になる?ダンゴムシもたくさんいました。助かってくれればいいがと思いましたが、全身が油まみれで何日もマットの上でもがいて体もやせ細っているし、だめかもしれないと半ばあきらめていました。
 翌日、気になってその植木鉢を見に行こうと、屋上のドアを開けたとたん、なんとドアのすぐ下に、あのヤモリがいたのです。まるで僕が上ってくるのを待っていたかのように。しばらくすると、体を翻して、植え込みの方へ姿を消しました。
 僕が助けたヤモリと違う別の個体かもしれないと思いながら、昨日ヤモリを置いた植木鉢をもちあげると・・・。
 そこにはヤモリの影も形もありませんでした。やはり、さっきのヤモリが、そうだったんだと嬉しくなりました。
 ヤモリが僕にお礼を言おうと、待っていたんだ。ヤモリが恩返しに来たんだ。
 これで、我が家は安泰だと一人悦に入りました。昔から、ヤモリは家守といってその家を守ってくれると言うではありませんか。
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