3.逮捕

ドア越しに耳を澄ますと女が鼻歌を歌っているのが聞こえた。高野がドアのノブに手をやり静かに回すと鍵がかっかていない。我々のことは察知されていない。高野と舘は目配せをして、同時に部屋に飛び込んだ。
「PCP(人口警察)だ」
高野は叫んだ。その声に振り向いた女性の顔は恐怖にひきつっていた。
舘は、女性の背後にある育児用ベッドに生後1年足らずの子供を確認した。
「人口調整法違反で非合法児を保持します」
高野は舘に子供を捕獲するように指示した。
舘が、子供の腕に睡眠沈静剤の注射を打とうと近づくと女性が舘に飛びついた。
「お願いですから見逃してください。この子が初めての女の子なんです」
「どきなさい」
舘は女性を払いのけると、子供に処置を施した。同時に、女性の髪をつかむとハサミで数センチほど切り落とした。後で子供が本当に彼女の子供であることを確認するDNA鑑定に必要なのだ。
舘は子供を処置袋に入れると高野に合図をした。
高野は女性の国民番号を確認しようと尋ねたが、女性は泣き叫ぶばかりか、舘の抱えた処置袋を奪い取ろうと必死で食いさがった。
「私の産んだ子供です。助けて。お願いっ」
舘が女を無視をして運び去ろうとした瞬間、女性はキッチンへ走ると、包丁をつかみ舘に向かって背後から襲いかかろうとした。
高野は咄嗟に拳銃を取り出すと女性に向かって発射した。
電子銃は女性の胸に命中、女性はアッと小さな声を上げると床に倒れた。気絶しただけだからものの30分もすると目が覚める。
いつものことながら、母親が子供を守ろうとする気迫には圧倒される。
全てを捨て去り子供の命を守ろうとするからだ。動物の本能といえばそれまでだが、数多くの現場を経験した二人にもその瞬間は職務とはいえ、決して楽しいことではない。
高野と舘は捕獲した非合法児を抱えて部屋を出た。その子供の温もりを感じる余裕もなく、ボートに乗り込むとエンジンをかけ小さな島を後にした。
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