2.非合法児
湾内に浮かぶ小さな島。その後ろに沈みかけている夕陽は湾内を朱にそめて輝きを放っていた。
 高野は船を止めるよう言うと、ゴムボートを降ろす準備を始めた。
 同僚の舘は拳銃のフォルダーを締め付けていた。
 日本には六千八百を超える島がある。が、そのうち人が住んでいるのは一割にも満たない。あとは無人島である。これから高野たちが向かおうとしている島も無人島である。いや、であったという方が正確だ。無人島であるはずの島に人が住んでいるという情報を入手した人口警察の内偵チームが空から人家を確認した。人工衛星からの映像では女とその子供1人、すなわち「非合法児」の存在が確認された。
 高野たちの任務は「非合法児」の確保、処置である。
 「日没まであと30分です」
 舘の緊張した声が高野の心を躍らせた。
 貝殻島と命名された島は森で覆われ、砂浜と岩礁帯が交互に配置された小さな島である。
 高野と舘はゴムボートに乗り移ると、オールを使い静かにボートを島の砂浜へと進めた。
 海は夕凪でボートは滑るように砂浜に吸い込まれた。
 高野はボートを舘に木陰に隠すよう指示しながら、拳銃の所在を手で確認した。
 小さな砂浜から常緑樹でおおわれた島の森へと足を踏み入れる。すでに、陽はは落ち、あたりは闇に包まれていた。二人は赤外線スコープを装着、なだらかな坂を静かに登って行った。ほどなく歩くと登り坂が下り坂へと変わった。顔にぶつかる木々の小枝を手で払いながらすすむと、木立に隠れるようにして小屋が見えた。灯りがともっている。発電器らしい音もしないので高性能燃料電池だろう。
 二人はさらに足を忍ばせ、小屋の入り口に近づいた。
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