第一回投句結果

第一回の兼題(あからじめ出しておく季語)は夏の季語です。締め切りは6月10日(火)でした。
夏の川  夏の川 犬友達の軽き声(一穂)
 カンツォーネ 水面にはじけ 夏の川(翡翠) 
 夏の川 水面の木陰 毛ばり翔ね(勢) 
 野球部の かけ声渡る 夏の川(純宅)
花菖蒲  転職を 決めて身震い 花菖蒲(一穂) 
 花菖蒲 つま先立ちして 背いくらべ(翡翠) 
 花菖蒲 心の色も 白桃紫(勢)
 行きなれた 道行くふたり 花菖蒲(純宅)
雨蛙  雨蛙 休んでいるのか 寝てるのか(一穂)
 合わせた手 そっとのぞいて 雨蛙(翡翠)  
 ベランダで 娘ジョウロの 雨蛙(勢)
 それぞれに 生きる夢あり 雨蛙(純宅) 
  批評

純宅
◎カンツォーネ 水面にはじけ 夏の川(翡翠) 
ベネチアの水路を渡るゴンドラか、野外コンサートか、はたまた荒川の土手で練習する高校の合唱部か・・・。
いずれにしても、パーンとした歌音、きらめく水面がさわやか。

◎転職を 決めて身震い 花菖蒲(一穂) 
花菖蒲の格調、重量感は20代・30代の転職とは合いませんね。50代で新しい仕事に挑戦するからこその緊張感と清々しさ。花菖蒲の凛として瑞々しい佇まいと見事にマッチしていると思います。

◎ベランダで 娘ジョウロの 雨蛙(勢)
近郊のマンション群。一軒一軒それぞれに営まれている家庭生活の幸せなひとコマ。ジョウロは赤かな。緑の雨蛙とのコントラストがかわいらしく。「合わせた手 そっとのぞいて 雨蛙」(翡翠)も、一緒に手のひらを覗き込む母親の顔が浮かんでほほえましかった。

翡翠
◎野球部の かけ声渡る 夏の川
(純宅)
一番素直な句だったのと、私が最初に詠んだ「ペダル踏む・・・・」というのに似 ていたのでイメージが湧き易かったのが理由です。自分の句の反省としては、水面と 川が近すぎるので、「カンツォーネ 夜風に踊る 夏の川」などの方が奥行きがあっ たのではないかと思いました。

◎転職を 決めて身震い 花菖蒲
菖蒲の凛とした感じが目に浮かぶようなので。新学期や入社など、環境が変わる人 がようやく落ち着いてくるころ咲く花ですものね。

◎それぞれに 生きる夢あり 雨蛙(純宅)
今回の投句の中ではこれが一番好きです。ピカ一ですね。

というわけですが、何となく誰が詠んだものがわかると選句しにくいですね。一人の 人の句ばかり選んでしまうとバランスが悪いかなと考えてしまったり、意外性がない というか・・・・選句まで誰が詠んだかわからないようにしてみるというのは難しい のでしょうか? 


※みないい句なので、◎と○にしました。1句のときは◎です。
 カンツォーネ 水面はじけ 夏の川(翡翠)
○ 野球部の かけ声渡る 夏の川(純宅)
  ・「カンツォーネ」のカタカナの表現が新鮮。力強い声で水面がはじける情景が浮かぶよう。
  ・青春のひとコマを思い出します。
 転職を 決めて身震い 花菖蒲(一穂)
○ 行くなれた 道行くふたり 花菖蒲(純宅)
  ・花にかけた決断のときの思いが伝わるようです。「菖蒲」と「勝負」をうまくひっかけています。
  ・純宅の得意句。老夫婦の情景。純宅の憧れの晩年のようですが、さて…
 それぞれに 生きる夢あり 雨蛙(純宅)
○ 雨蛙 休んでいるのか 寝てるのか(一穂)
  ・今回の最高傑作だと思います。締め切り破りの常習犯ですが、ときどきはっとするような句を詠んでくる。説明は要らないよね。合わせた手 そっとのぞいて 雨蛙(翡翠)との連句のようです。そっとのぞいた雨蛙の表情はこんなものですよね、多分。

一穂
◎それぞれに 生きる夢あり 雨蛙(純宅)
この句が今回の作品の中で僕が最も気に入った句です。
雨蛙と上の五七の関係が微妙な距離を保っています。でも見方によっては若干、離れすぎのきらいがあります。これは、鑑賞する人の感性によって差が出てきます。
 逆に僕の句、転職を 決めて身震い 花菖蒲 は「つき過ぎ」と言われてもおかしくない距離感です。勢の批評にもあるように菖蒲と勝負をかけていると思われるからでもあります。このように、季語と絶妙の距離感を創造するのが俳句の醍醐味でもあります。他の季語を入れてもなんとなく成立してしまう句と、その季語でなければ成立しない句との差が俳句の難しさのようです。