コンテスト結果


    8日正午からの "Closing Cerimony" (終了式典)の中で "Awarding of Prizes" (授賞式)が行なわれました。実際には、式典の幕が上がるとステージには万国旗が飾りつけられ、"jury" (審査員団)がずらりと居並んだ状態であり、すぐに受賞者が発表されていきました。

    客席の最前列はコンテストチャレンジャーの専用席ということでしたが、実際には会場の後ろの方にいたチャレンジャーも多く、名前を呼ばれてもすぐにステージに上がってくる方ばかりではありませんでした。また、ばっちり正装してアシスタントの女性も舞台化粧までして、名前を呼ばれるのを待っているコンテスタントがとうとう最後まで名前をよばれなかったりということもあり、それこそ悲喜こもごもといった趣でした。

    いずれにしても受賞者本人への事前の通知のようなものはなかったのではなかったか、というのが率直な印象でした。受賞者には11人の審査員が交代で賞状とガラスの楯を贈り、盛大な賞賛の拍手と声援が場を最高潮に盛り上げました。

    尚、審査員は以下の11人です。Jorge Teixeira (審査員長・ポルトガル)、Ali Bongo (イギリス)、Domenico Dante (イタリア)、Eberhard Riese (ドイツ)、Egelo (ノルウェー)、Gerritt Brengmann (ベルギー)、Hank Moorehouse (アメリカ)、Jean Garance (スイス)、瀬島順一郎(日本)、Ted Winkel (オランダ)、Vicente Rafales (スペイン)。尚、それぞれの審査員の略歴はFISMのパンフレットの76〜77ページに紹介されています。

    また、プログラムは製作の準備もあるのでしょう、かなり前もって印刷されたようで、相当数のコンペティターの名前が記載されておりません。(次回以降のコンテストでプログラムに名前を出したければ早めのエントリーが必要ですね。)また、4日に分けて行なわれたコンテストのプログラムも毎回進行の遅れが生じ、その都度プログラムの変更があり、混乱がみられました。このような事情もあり、コンテスタントの名前を掌握するのもなかなか困難な状況でした。

    さらに、授賞式でも会場が盛り上がり、受賞者の名前が十分聞き取れず、それをあとから確認しようにも、プログラムにそれらしき名前がない、という問題もありました。



 総合優勝 (Grand Prize)   Scott the Magicien & Muriel (オランダ)


カードマジック部門 1位 Henry Evans (アルゼンチン)
2位 Mago Migue (スペイン)
3位 Thomas Fraps (ドイツ)
3位 Gregory Wilson (アメリカ))
クロースアップマジック部門 1位 Simo Aalto (フィンランド)
2位 Manuel Muerte (ドイツ)
3位 Gery (オーストリア)
発明部門 1位 Michael Ross (フランス)
2位 Ariston (アルゼンチン)
3位 Kalle Hakkarainen (フィンランド)
メンタルマジック部門 1位 該当者なし
2位 Luice Boyano e lsabella (スペイン)
3位 Nicola Friedrich (ドイツ)
コメディーマジック部門 1位 該当者なし
2位 Zauderer (ドイツ)
3位 The Maestro (アメリカ)
マニュピレーション部門 1位 峯村健二 (日本)
2位 Nobert Ferre (フランス)
3位 Eduardo (ブラジル)
ゼネラルマジック部門 1位 Mask (フランス)
2位 YUMI(中島由美) (日本)
3位 Roxanne (ドイツ)
3位
 George Saterial (アメリカ)
イリュージョン部門 1位 der "Hexer" (ドイツ)
2位 Yunke (スペイン))
3位 Zauberteam Flick-Flack (ドイツ)



    演技そのものについてのコメントは別途表したいと思います。グランプリをとった2人組ですが、やはりプログラムに名前は見えません。コメディーマジック部門からのチャレンジでした。コメディーマジック部門の1位は「該当者なし」なのに、この部門からグランプリがでるというのも皮肉なことです。コメディーマジック部門の受賞者が発表される段階では、グランプリは発表されていないので、1位が「該当者なし」と発表されるや場内は大ブーイングが起こりました。オランダ出身のマジシャンですが、次回のFISMは実にオランダで開催されることになりました。偶然の一致なのでしょうが、なかなかうまい顛末となりました。

    ただ、オランダはFISMに大変強いことは、強い。すなわち、過去22回のFISMでグランプリをとったマジシャンのうち、オランダ出身のマジシャンは、Nic Niberco (1947) 、Fred Kaps (1950, 1955, 1961) 、Tonny Van Dommelen (1958) 、Di Sato (Harry Theiry) (1967)、Richard Ross (1970, 1973) 、Ger Copper (1979)、ののべ9名存在します。(今回が第21回大会なのに、過去に22回あるというのは不思議ですが、プログラムには1946年のアムステルダム大会から確かに22回のコンテストの記録が記載されています。尚、最後にオランダでFISMが開催されたのは1970年のことですから、次回は33年ぶりの開催ということになります。)

    グランプリの演技は、間違えなく会場を最も沸かせた演技でした。笑いと涙と熱狂がその演技にあったことは明白です。ただ、それだけではなく、マジックとはなんだろうかという命題を観客の私たち全員に提示してくれたようにも思えます。「これは21世紀までの宿題だよ。その答えをもって次回はオランダにおいで!」とでもいわんばかりの、心憎いメッセージが彼らの去ったステージにはイリュージョンのようにぽつんと残されてそれがいつまでも消えることがありませんでした。そうして、もしかしたらそれが、かれらのやりたかった本当のマジックなのかもしれません。

    また、ドイツの健闘が光りました。受賞者24名中7名がドイツ勢で、占有率は約30%でした。フランス、スペイン、アメリカが受賞者3名を出し、日本、アルゼンチン、フィンランドが2名の受賞者を出しました。日本は世界で最も多くのコンテスタントを送り出したのですが、受賞者は2名という結果となり、いささか寂しく思われます。特にステージ部門では、コンテスタント間の実力の差があまりにも大きかったことは問題でした。コンテスタント紹介の時には氏名、出身国に加えて所属団体とプレジデント(コンテスト参加許可を与えた代表者)も公表されます。参加許可は慎重に下されなければならないと思いました。これは、コンテスト参加者が今回は140名を越え、今後収拾がつかなくなるおそれもあるので、是非検討されねばならない問題だと思われます。

    ステージ部門では、自前の背景(セット)を用意したり特殊効果を多用する演者が目立ち、マニュピレーションでも大道具が使われる例もありました。その是非はともかく、大仕掛けな演出の方が迫力があることは否めません。ただ、日本人受賞者のお2人はそのような道具立てにたよることなく、手品そのもので勝負したことが審査員に高く評価されたとも考えられます。また、衣装変えを行なう演者がきわめて多かったのも印象的でした。コメディー部門の方がグランプリということにはなりましたが、コメディー部門全体としては感心できる演技がほとんどなく、これも今後の課題であるように思われました。

    クロースアップ部門でもそうですし、グランプリの演技もそうですが、マジックそのものを全面に押し出すということよりも、「マジックという手段で」お客さんを楽しませる、という姿勢が観客に大いに受け入れられたということが、全体を通しての傾向だと思いました。これは、稿を改めて議論したいと思いますが、少しだけ考えを述べておきます。こういった傾向が見られる背景には手品そのものの(特にイフェクト(効果)に関する)「行き詰まり」があるのだろうと思うのです。そこをブレイクスルー(突破)していくための方法論の一つが、今回のような「傾向」となって現われたのだろうと思います。(コメディーマジックがもはやコメディーにならなくなったことにも象徴されます。)

    ここで、今回の演技で高く評価された一連の方法論はあくまで多くの方法論のなかの一つに過ぎないという点に注意しなければならないでしょう。たとえば、マジックそのものの見せ方を工夫することでエンタテイメント性を高めていくという方法論もあるわけで、マニュピレーション部門で一位を受賞した峯村健二さんの演技などがその例であると思われます。今回のコンテストアクトの多くは、来る21世紀のマジックのあり方を模索する上での、ケーススタディの役割を果すものであったといえるでしょう。