一人になって、もうどれくらいの時間が流れたのだろうか。
あいつがいない日常。それをあたりまえと思うくらいの時は過ぎたけれど。何気ない日々の出来事のなかで、あいつを思い出すことがしばしばある。
その後心を掠めるのは少しの痛みと、それを上回る寂寥感。
どれだけ自分があいつに依存していたか思い知らされる一瞬。「生きてゆくだけだろ?」
なんの話をしていたときだったか。たしか恋人に死なれた兵士の話をしていたときだったか。
残されたのが自分だったらどうするという問いかけに、あいつはそっけなくそう答えた。
ほかのヤツらの答えが「後を追う」だの「もうほかの人は愛さない」だの、なかには「彼女に捧げる詩をつくって暮らす」なんていうロマンティックなんだかそうでないんだかわからないようなものもあったけど、概ねそんな感じだったから、あいつの言葉はひどく冷たく響いて聞こえた。
一緒にいたヤツらからはブーイングの嵐だったけれど、あいつらしい答えに妙に納得できた。
「じゃあ、おまえは自分の恋人が死んだらさっさと忘れるんだな?」
中の一人が意地悪く聞くと、
「なんで忘れるんだ?」
きょとんとして答えた。なんでそんなことを言われるのか、まったくわかっていない表情だった。
「忘れなくたって生きてけるだろ」
「そうかぁ? 恋人のことを思い出すたびに寂しいとか哀しいって思うんだぞ。生きていくのが辛くなるじゃないか」
「そーそー、だから生きていくために忘れる。自然な感情の流れだよ」
みんなによってたかって言われてあいつはちょっと考え込んでいたけど
「自分が痛いからって、好きな奴のこと簡単に忘れようなんて思わないぞ」
きっぱりと言った。忘れてしまえばいい。思い出さなければ、こんな辛い気持ちになんかならない。
けれど。
「忘れなくたって生きてける」
そう言ったあいつは、それがどんなに苦しいことか知っていたんだろうか。「それに、辛くても想い出があるから生きていけるっていうのもあるだろう」
話の最後に紡ぎ出された言葉。それは多分あいつが知っていた真実。目を閉じる。深呼吸してから、上を見上げる。
飛びこんできたのは、真っ青に晴れ渡る「ソラ」忘れられない。忘れたくない。
痛みが心を支配しても、このまま生きてゆこう。
あいつが言った言葉のまま、すべてを覚えたままで。
SHINE3 終