SHINE

 


ときどき、ほんのときどき、胸のなかに押し込めた感情が暴れ出すことがある。
それはたいてい戦闘の後だったけど、たまになにもない夜に、不意に自分を襲うことがあった。
耐え切れずに助けをもとめて手を伸ばす。抱きしめた相手は一時的にそれを忘れさせてくれたけど、けっしてなくなることはなかった。
この暗くやっかいな感情。言葉にすれば、多分それは「寂しい」がいちばん近かった。

そして、今日もこの感情に支配された。

一人にはなりたくない。けれど相手が誰でもいいという気分ではなかった。こんなときに行く場所はひとつだけだ。
勝手にロックを外して、目的のフラットに入り込む。部屋の主はちょうどシャワーを浴びた後なのか、ガウン姿で冷蔵庫から缶ビールを取り出したところだった。
チラッとこっちを見てわずかに眉をひそめると、手にした缶を投げてよこした。受け止めてソファに腰をおろすと、相手も向かい側に座った。
多分相手は気づいている。自分の様子がいつもと違うことに。けれど、どうしたとはけっして聞いてこない。それはいつものことだった。
なにも言わない、なにも聞かない、そんな時間が過ぎる。ただ立体TVの音が静かに部屋に響いていた。
だんだんと気分が落ち着いてくる。なにをするでもなく、ただ相手が目の前にいるだけだというのに。自分のバカ正直な心の動きに、クスリと笑いがもれた。
それが聞こえたのか、相手がこちらを見る。紫に近い青い瞳。いちばん好きな印象的な色合い。そこに映るように空になった缶を振ってみた。
ため息ひとつついて、相手が立ちあがる。その後姿を目で追いながら、一言つぶやく。
「サンクス」

自分でも持て余す心の闇。忘れることも、癒されることもない傷跡。
けれど・・・。
こんな優しい時間がもてるのなら、この先何度この感情に脅かされても大丈夫だろう。
それは確信だった。