別 れ の ワ ル ツ

『 哀 愁 』 (1940)

 「蛍の光」でお馴染みの曲。原曲はスコットランド民謡(作詞・ロバート・バーンズ 作曲・ジョージ・サムソン)です。

 本来は4拍子の曲ですが、『哀愁』では、それこそ“哀愁”を帯びたロマンティックなワルツとして使われました。
『哀愁』といえば、キャンドル・クラブのシーンを挙げる方が多いように、映画の中で特にきわだって美しく甘いシーンでした。“別れのワルツ”にあわせて踊る美男美女。時計の針が夜12時を指す頃、楽師たちが燭台の蝋燭(ローソク)を一本ずつ消していきます。小さなカップを蝋燭に被せて消していくごとに、場内は次第に闇に包まれていく・・・・
 これ以上の甘美な場面があろうか、というくらい甘い、甘いとろけるような美しいシーンでしたね。

 日本では『哀愁』は1949年に封切られ、この“別れのワルツ”が映画とともに大ヒットしました。
レコード発売にあたって、レコード会社・コロムビアの洋楽部は、音源を捜しましたが、残念ながら契約先の海外のレーベルにはありませんでした。
 それでは、と作曲家・古関裕而(私と同じユウジですねぇ)に採譜・編曲を依頼し、ユージン・コスマン楽団演奏で発売したところ大当たり。街の至るところで流れるようになりました。
駅のプラットホームで流れ、デパートの閉店時間に流れ、果てはパチンコ店、ナイトクラブ、キャバレーにも流れ・・・と、現在に至るまで古典的BGMとして使われています。
 「ユージン・コスマン楽団」なる謎の楽団ですが、作曲者の「コセキ・ユウジ」をもじって名づけた いわば幻の楽団です。
外国の楽団の演奏ときくと「ウーム、やっぱり一味違うな」などと訳知り顔にうなづく人が多かったのかな?

(この部分については、CD作曲家研究名作選「古関裕而」の清水英雄氏の解説を引用・参考にさせていただきました)


 「蛍の光」自体は、戦前から卒業式などで日本人に馴染みの深い歌曲でした。
余談ですが、実は4番まで歌詞があり、例えば3〜4番は

   ♪筑紫のきわみ みちのおく 海山とおく へだつとも
     その真心は へだてなく ひとつに尽くせ 国のため
   ♪千島の奥も 沖縄も 八洲(やしま)のうちの 守りなり
     至らん国に いさおしく つとめよ わがせ つつがなく

という、“帝国日本”意識が露な内容でした。「沖縄は本土の守りである」とは沖縄の人にとってみれば穏やかではいられないのではないでしょうか。
戦後、戦争の悲劇を扱ったアメリカ映画がきっかけで、ワルツ調に様相を変えたメロディーが 復興期の街に流れたというのは、なんとも歴史の皮肉を感じます。


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