夏の日の恋


『避暑地の出来事』(1959年)より

作曲 マックス・スタイナー  演奏 パーシー・フェイス楽団

 

 小さい頃、よく商店街に行くとこの曲や“波路遥かに”が流れていて、なぜかちょっと贅沢な気分になったものです。一般にはムード音楽、BGMとして有名かもしれませんが、れっきとした映画音楽の名曲です。

 作曲はマックス・スタイナー(1888年ウィーン生まれ)。彼は“コンチネンタル”、“タラのテーマ”、“カサブランカ”、“進め竜騎兵”、“汚れた顔の天使”、“三つ数えろ”、“恋愛専科”などなど、1930年代から60年代までの長きに渡り、多くの映画音楽を手がけました(作曲を担当していないものもあります)。
 「ドラマ部分と連動する音楽こそが自分の仕事であり、映画音楽の真髄だと考え終始その路線を歩みつづけた人といえないだろうか」……とは、音楽評論家の宮本啓氏の評です。
スタイナーは、ドラマを音楽面から見事に演出した、代表的アメリカ映画音楽家といえます。

『避暑地の出来事』 サンドラ・デイ&トロイ・ドナヒュー
 

 さて、“夏の日の恋”です。“タラのテーマ”とならぶスタイナーの代表的主題曲のひとつで、ロマンティックなそのメロディーは一度聴いたら忘れられない魅力に富んでいます。
 デルマー・デイビス監督の『避暑地の出来事』は、トロイ・ドナヒューの人気を不動のものにしたラヴ・ロマンス映画です。映画音楽の魅力にひかれて一度見ましたが、ニューシネマ台頭前の若者像を垣間見た気がします。さすがにドナヒューは完璧に美しい容貌で、若さが眩しいほどでした。映画で描かれる青春の過渡期の作品なのかもしれません。

 しかし、この映画が記憶されるゆえんは、なんといっても映画音楽の素晴らしさにあります。
当時登場していたロックン・ロールのリズムの影響が、スロー・ロックリズムで巧みに使われています(宮本氏による)。その意味でも、映画(音楽)史的には過渡期の映画といえましょう。
 パーシ・フェイス楽団のスローなリズムと甘美なメロディーは、うっとりと夢見心地で楽しめます。最近の分類で“イージー・リスニング”なるものがありますが、この曲はリズムとメロディーに身を任せて、呼吸をするように楽に聴けますね。公開当時、大ヒットし、今なお 街のどこかで流れているのもうなづけます。
 

参考文献; 宮本啓 『映画音楽への招待』
 

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