数ある映画音楽・主題歌の中で、これほど印象的にあたたかく、かつ効果的に使われた曲はそうないでしょう。
アルベール・プレジャンの味のある歌声から、彼を取り巻く通行人の歌声へ歌の輪が広がっていく、冒頭の展開の楽しさは最高です。
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懐かしの思い出に さしぐむ涙
懐かしの思い出に あふるる涙
マロニエ 花は咲けど 恋しの君いずこ
巴里の屋根の下に住みて 楽しかりし昔
燃ゆる瞳 愛のことば 優しかりし君よ
鐘が鳴る 鐘が鳴る マロニエの並木道
巴里の空は青く晴れて 遠き夢をゆする
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アコーディオンが奏でる哀切あるメロディーに、西條八十の手によるこの訳詞をのせて口ずさむと、楽しくもあり、哀しくもあり、また 陽気でもあり、けだるくもあり……というわけで、いろんな思いがよぎります。
モーリス・シュバリエほか、多くのシャンソン歌手がこの歌を歌っていますが、オリジナルのサウンドトラックでのプレジャンの歌にはどれも適いません。きっと映像と音楽がピッタリあっていたからでしょう。
プレジャンの歌は、歌唱力というより歌の味わいを感じさせる巧さがあります。『商船テナシチー』で、彼が歌っていると、酒場の客に「オメエ、プレジャンよりうまいよ」と声をかけられる、なんていうシーンがありました。下町や港町の似合う俳優さんですね。
わたしが『巴里の屋根の下』を深夜の放映で初めてみたときは、映画の“FIN”マークの後で、画面が真っ暗になり、タテ書きの手書きの歌詞が黒地に白く現れ、伴奏だけが一曲分流れました。(たしか先年放映したときは最後の伴奏部分がカットされていました)
この映画はカセットテープに全編録音して、幾度も幾度も繰り返し聴いたものです。今はあやしいですが、しばらく前までは『巴里の屋根の下』は音楽とストーリーをそらんじて口ずさめるほどでした。私の大好きな曲のひとつです。
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