会  議  は  踊  る

DER KONGRESS TANZT

1931年 ドイツ ウーファ 白黒 90分
監督 エリック・シャレル   脚本 ロベルト・ソープマン ノルベルト・ファルク   音楽 ヴェルナ・R・ハイマン
主演 リリアン・ハーヴェイ  ヴィリー・フリッチェ  コンラート・ファイト


 『会議は踊る』の映像・音楽の楽しさに勝るものなし!
 シネ・オペレッタの最高傑作といわれる映画で、その愉しさ、その嬉しさは例えようもないくらい。

 ときは、1814年。ナポレオン敗北後の欧州秩序を話し合うため、90の王国・53の公国の代表がウィーンに集い、ウィーン会議が開催されます。
この映画はウィーン会議を舞台に 恋愛、政治・外交の駆け引きが楽しく描かれています。

 題名の『会議は踊る』は、オーストリアの将軍・リーニュ公の「会議は踊る、されど進まず」という、会議を評した有名な言葉にちなんでいます。
 史実としても、この会議は主要国のみでリードされ、各国代表は晩餐会、舞踏会に明け暮れました。会議自体が社交的雰囲気のなかで展開され、宮廷外交の駆け引きで内容が詰められていく…というテンポの遅いものだったそうです。フランスのタレイランは「一日の四分の三はダンスと宴会だった」とメモしています。

 そんな歴史絵巻を ロマンスと音楽とダンスで彩りながら、ウィーン風に仕上げた映画が この『会議は踊る』なのです。
 会議のためにウィーンにやってきたロシア皇帝・アレキサンダー1世が、手袋店のウィーン娘・クリステルと 仲むつまじくワインを傾け、唄い、ワルツを踊る・・・しかし、それもつかの間 ナポレオンのエルバ島脱出の報を受け、皇帝は馬上の人となる・・・。

 この映画の魅力は音楽であり、流麗なキャメラワークであり、そしてそれらがもたらす全編に流れる愉しい空気であります。
“ただ一度だけ”の楽しさ、嬉しさは 言葉での形容をこえた境地にあります。クリステルが ロシア皇帝が用意してくれた別荘に招かれ、馬車で向かう場面は、移動撮影で高揚感あふれる映像でした。本によっては“出発〜到着をワンショットで撮影”という説明を見かけますが、私が見たNHKの放映フィルムでは6回程度画面が切り替わっていました。しかし、そんなことを感じさせない憎い演出でした。

 クリステルを演じたリリアン・ハーヴェイは、語学に堪能な女優としてトーキー初期のドイツ映画界で重宝がられ、人気も絶大だった女優。正直いって『会議は踊る』の彼女の演技は学芸会じみたところがありますが、あのサイレント時代風の大仰な演技と笑顔が映画の夢物語と奇妙にマッチしているのかもしれませんね。彼女に限らず、出てくる人々の笑顔が印象的な映画でもあります。

 「軍隊行進曲」、「これぞ天来の楽しみ/新酒の歌」(我が人生は愛と喜び)、「だったん人の踊り」、数々の音楽に彩られ、映画は飽きることなく流れるように展開します。特に、舞踏会の慈善キスの場面から、皇帝とクリステルのダンス〜伝令到着〜ナポレオンのシルエット〜引潮のカット〜独りホールに立ちすくむメッテルニヒ・・・・の描写は、実に華麗で見るたびにうなります。

 加えて、ホイリゲ(ウィーン郊外の酒場)の場面で憂いを帯びた味のある歌声を披露する 艶歌師もよかったですね。ウィーン情緒たっぷりでした。
彼はパウル・ヘルビガーというオーストリアの名優で、『第三の男』でのハリーのアパート管理人役、『野ばら』の校長先生役、といえば思い出す方も多いでしょう。ウィーン歌謡の魅力を満喫させてくれた名唱でした。

 『会議は踊る』には、アメリカ産ミュージカルにない味わいがあります。
オペレッタやレヴューの伝統をもつドイツ・オーストリアの力量が見事に発揮され、さらに移動撮影や群舞によって映画的にまとめた技量に感服するばかりです。
この映画の公開の2年後、ヒトラーが政権をとり、『会議は踊る』は上映禁止になります。本作ゆかりの映画人たちも次々とドイツを去り、急速にドイツ映画の黄金時代は幕を閉じることになるのです。戦中、戦後、そして現在に至るまで、ドイツ映画がウーファ時代・ワイマール時代の輝きを取り戻すことはかなっていません。“ただ一度だけ”のはかない夢だったのでしょうか・・・

『会議は踊る』は僕の大好きな映画のひとつ。
今後も出演者や挿入歌などについてUPしたいと思っています
お楽しみに〜!


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