香水みたいに思い出を瓶に詰めたいわ


『 レベッカ 』  1940年  アメリカ
監督 アルフレッド・ヒッチコック   主演 ジョーン・フォンテーン  ローレンス・オリヴィエ


 ヒッチコック監督のロマンチック・ミステリー、『レベッカ』。
僕はなぜか『レベッカ』というと、美しい映像美とともに この台詞を思い出します。

この作品の冒頭は、キャロライン(フォンテーン)が、マキシム(オリヴィエ)と出会い、その妻となるまでのいきさつが語られています。
マキシムの突発的な言動やホッパー夫人の怖い嫌味など、ハラハラしながら物語にひきこまれていくのですが、キャロラインがシンデレラの如く幸運に包まれていくさまは、見る者にとって、夢物語を楽しむ嬉しさがあります。
二人がデートを重ねるなかで、ドライヴ中に彼女が至福のうちに吐露する思いがこの台詞。
 
 キャロライン  「香水みたいに思い出を瓶に詰めたいわ
           薄れずに…… 開けるとその思い出がそっくり現れるの」
 マキシム     「どんな思い出かい?」
 キャロライン  「あなたとの日々……思い出の瓶で棚をいっぱいにするわ」」
 マキシム    「悪魔が入ることもある……忘れたいのに飛び出してくる……」
 
 香水の瓶に思い出を詰めたいなんて、なんて素敵な表現だろう〜
初めてこの映画をみたのが中学時代。僕が女性だったら、国語の作文できっと盗用したかもしれません。
ヒッチコックは乗り物の使い方のうまい監督ですが、本作でもオープンカーを正面からとらえたこの場面は、フォンテーンの高揚感やオリヴィエの不安定な感情がうまくあらわれていました。

 『レベッカ』の魅力は、“ゴシック・サスペンス”、“ロマンチック・ミステリー”と評される、緻密な演出がかもしだす雰囲気にもあります。
(家政婦のジュディス・アンダーソンのコワイこと! フランドル絵画から抜け出てきたような雰囲気をもつ冷たい怖さでした)
苦悶するハンサムなオリヴィエと、可憐・清新ながらおびえるフォンテーン。この映画では女性が男性の心の闇に立ち入っていくのですが、『めまい』ではJ・ステュアートが、美女キム・ノヴァクの謎を解いていくお話でしたね……。いずれにせよ、ミステリアスで謎を秘める配役は美男・美女でないといけませんね。
 ただし、『レベッカ』ではフォンテーンよりも美人だという女性が登場します。決して姿をみせない先妻“レベッカ”。その存在感はハンカチのイニシャルなど小道具を駆使して見事に示されていした。
ヒッチコックは見せて怖がらせるのも巧いですが、見せずに怖がらせるのも巧いですね。「姿が現れない」という点では、『北北西に進路をとれ』の“ジョージ・キャプラン”なる人物も謎めいていました。

 
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