こんな夜には約4万件の不倫が進行中です


『昼下がりの情事』(1953年・アメリカ)より
監督 ビリー・ワイルダー  主演 オードリー・ヘップバーン、ゲーリー・クーパー


 不倫の現場に 寝取られ亭主が乗り込み、相手の男・フラナガン(G・クーパー)を撃ち殺そうとしていることを、事前に知ったアリアーヌ(A・ヘップバーン)。彼女は大慌てで警察へ通報します。そのときの警察との電話のやりとり・・・・・・


アリアーヌ
  「ご主人が大きな銃を持って、10時に侵入して撃つの!」
警官
  「まあ、落ち着いて。まだ10時前です。10時に侵入して命中したら 電話なさい。」
アリアーヌ
  「その前にお巡りさんを遣ってとめてよ」
警官
  「パリにはホテルが7000、部屋数は22万あります。
   こんな夜には約4万件の不倫が進行中です。
   1件に1名警官を派遣するとしたら、パリ中の警官を動員しても到底足りない。
   消防署、清掃局・・・ボーイスカウトまで必要です。
   半ズボンの少年を不倫の現場に遣れますか?」


 ビリー・ワイルダーとI・A・L・ダイヤモンドのコンビによる脚本はさえわたり、こうした洒落たやりとりが楽しめます。
特に、『昼下がりの情事』はルビッチ喜劇を彷彿とさせる見事な脚本。

配役も面白い。
かつてルビッチ映画で、プレイボーイを演じてで陽気な笑顔をふりまいた モーリス・シュバリエが、なんの因果か 他人の不倫を探る私立探偵。
『善人サム』に代表される“いい人”ぶりが はまり役のG・クーパーに、プレイボーイのフラナガン役。

この映画に限らず、ワイルダー映画には 映画ファンを喜ばせる配役がいろいろありますね。
 『サンセット大通り』のG・スワンソンとE・V・シュトロハイム。二人は往年のサイレント期の大スターと監督です。
 『麗しのサブリナ』のハフリー・ボガード。彼のラストのステッキさばきは 「らしくない」感じでよかったなあ。
 『アパートの鍵貸します』で、部下に手を出す上司役のフレッド・マクマレー。彼はマイホームパパを演じたら右に出る者なしの俳優。
 『お熱いのがお好き』で女装したトニー・カーチスは、当時 同性愛者かとの噂があり、それをダシにしちゃってるそうですね。

リアルタイムでみたら、当時のスタアの固定イメージとのギャップで楽しめたのでしょうが、
ワイルダー作品は、そうした事情を知らない今の人が見ても十分楽しめます。そこがワイルダーの手腕の見事さですね。
 「私、『カサブランカ』のボギー像が崩れるから、『麗しのサブリナ』はいただけないな……」
なんていう人は、ちょっと余裕がないなァ〜 ワイルダーのいたずらぶりをユーモアのセンスで笑いたいところです。

『昼下がりの情事』は、僕の大好きな映画のひとつ。
パリを舞台にウィーン情緒が香る、とでもいいましょうか、ルビッチの後継者の面目躍如ですね。
「魅惑のワルツ」の音楽の調べの美しさ(古いウィーンのワルツ曲です)、流麗な物語の展開、珠玉の台詞の数々。
どれをとっても堪能できる作品です。

それにしても、パリ警察の云う 「4万件」 の根拠はどこにあるのかしらん・・・・?


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