「お前はメトロの匂いがする。周りの景色まで巴里に変える……さっき夢見心地になってウトウトしかけたら、メトロの音が耳に響いてきた。メトロやカフェやパン菓子屋や……お前はそんな女だ。」
巴里への想い、自由への憧憬がなんともやるせなく伝わる名画中の名画、『望郷』。
“あの人はどこに”は、この作品の後段で、カスバの娼家のおかみタニア(フレール)が蓄音機にあわせて唄う曲です。
映画を観ただけでアメリカを語る奴がいる
「何て素晴らしい処だろう。巴里なんて比べものにならないよ」
巧い言葉は人を大胆にさせる
そんなこんなで或る日のこと
一人の男が空腹をかかえて紐育をさまようことになる
いかがわしい女、追われ者、移民たちに囲まれて
彼は巴里を懐かしむ
「あゝ 俺のタバコ屋、街角の酒場は何処にあるのか
毎日が日曜日だったものだ
友よ、仲間よ、いま何処に
懐かしいダンスホール、アコーディオン、何処に行ってしまったのか
不味くても安かったフライドポテト付きの食事よ
みんなどうなってしまったのか……」
若かりしころ、人気歌手時代の写真を前に、フレールは涙ながらに唄います。
なんて心のこもった歌だろう、なんてうまいんだろう、と思っていたら、それもそのはず、フレールはシャンソン歌手として有名な人でした。
蓄音機から流れるアコーディオンの音色が実に切なく、また、あたたかい。巴里への郷愁、望郷の念が痛いほど胸に迫る名曲です。
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