●税効果会計講座(Q11〜Q12)


Q11. 繰延税金資産を計上するための条件があると聞いたのですが、どのようなものですか?

1.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、税金の前払いであり、将来において所得を減算させる効果を持っています。このことは逆に、将来において、繰延税金資産に見合うだけの所得が発生する可能性(繰延税金資産の回収可能性といいます)がないのであれば、繰延税金資産を計上できないことになります。

2.繰延税金資産を計上するための条件
「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針(日本公認会計士協会、平成10年12月)」(以下、「実務指針」)では、繰延税金資産を計上するためには以下のいずれかの条件を満たしていなければならないとしています(実務指針21)。

(1)収益力に基づく課税所得の十分性
将来減算一時差異の解消年度または繰越欠損金の繰越期間内に、将来減算一時差異  を上回る課税所得が発生する可能性が高いと見込まれることをいいます。

(2)タックスプランニングの存在
将来減算一時差異の解消年度または繰越欠損金の繰越期間内に、含み益のある固定資産または有価証券を売却する等、課税所得を発生させて将来減算一時差異や繰越欠損金を有効に活用する計画(タックスプランニング)が存在することをいいます。

(3)将来加算一時差異の十分性
将来減算一時差異の解消年度または繰越欠損金の繰越期間内に、将来加算一時差異の解消が見込まれることをいいます。

3.繰延税金資産の回収可能性の判断基準
■この繰延税金資産の回収可能性の判断にあたっては、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い(公開草案)(平成11年9月、日本公認会計士協会)」(以下、「取扱い」)において、その判断基準が示されています。

■その主なものは以下の通りです。
(1)繰延税金資産の回収可能性を検討するにあたり、将来年度の課税所得の見積可能期間は、おおむね5年以内とする。

(2)過去の業績等に基づいて、将来年度の課税所得の見積もりを行う場合、以下のような会社については、通常、将来の課税所得の発生を合理的に見積もることができない(繰延税金資産の回収可能性がない)と判断され、繰延税金資産の計上はできない(取扱い5.(1))。

@過去(おおむね3年以上)連続して重要な税務上の欠損金を計上していて、かつ、当期も重要な税務上の欠損金を計上している会社
A債務超過の状況にある会社
B資本の欠損の状況が長期に渡っている会社

(3)事業計画、経営計画等により、収益力に基づいて将来年度の課税所得の見積もりを行う場合は、その計画について取締役会等の承認を得る必要がある(取扱い5.(3))。

(4)タックスプランニングにより、繰延税金資産の回収可能性を判断する場合は、資産の売却等に係る意思決定が取締役会等で承認された事業計画等で明らかとなっていることや、売却される資産の含み益等に係る金額が、契約により確定していたり、または時価によっているなど妥当性があることが必要である
(取扱い6.(2))

(5)将来年度の課税所得の見積額の合理性や、タックスプランニングの実現可能性等については、経営者による確認書により確かめること(取扱い8)。

Q12.税効果会計を適用した場合の法人税等の計算について教えてください。

(1)税効果会計と法人税の課税所得
■税効果会計を適用した場合には、一時差異等に係る法人税等相当額が貸借対照表の「繰延税金資産」または「繰延税金負債」に計上され、「繰延税金資産」と「繰延税金負債」との差額が「法人税等調整額」として損益計算書に計上されます。この法人税等調整額は、「法人税、住民税及び事業税」とともに税引前当期利益から差し引きまたは加算されます。

■このため、税効果会計を適用しない場合に比べて、「当期純利益」は「法人税等調整額」の分だけ増減します。

■しかし、当期の課税所得計算においては、この損益計算書に計上される「法人税等調整額」は法人税法上の益金または損金に該当しないため、別表四で申告調整を要することとなります。この申告調整により、課税所得は、税効果会計を適用した場合でも、適用しない場合でも同額となります。

■つまり、税効果会計を適用したからといって、税額が増減したりするわけではありません。

(2)届出等の要否について
税効果会計を適用する場合、その適用に際して、所轄税務署に申請や届出等を行う必要はありません。

(3)利益処分方式による諸準備金等の種類別の明細票の作成
■利益処分方式により、諸準備金を資本の部に計上した場合、繰延税金負債に計上した税効果相当額を控除後の純額を資本の部に計上することになります。そのため、資本の部に計上された諸準備金等の積立額と、課税所得の計算上損金導入される額が、繰延税金負債に計上した額の分だけ一致しません。

■その場合には、税務上の諸準備金等の積立額を明らかにするために、当該諸準備金等の額とこれに関連する繰延税金負債の額の種類別の明細表を作成し、財務所表とともに法人税申告書に添付することが必要となります(実務指針50)。

■なお「税効果会計の適用と税務上の取扱い(平成11年8月、国税庁)」の「問4(将来加算一時差異がある場合の申告調整(発生時))」においても、「法人税申告書に税務上の準備金積立額を明らかにするための明細表を添付しているときには、税務上は、利益処分による積立額とこれに対応する税効果相当額との合計額を特別償却準備金として積み立てたものとして取り扱われます。」となっています。

■この明細表には、税務上の諸準備金等の種類別の増減が明らかになるよう当該諸準備金等の繰入額及び取崩高ならびにこれらにかかる繰延税金負債の額を記載します。



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