●事業税の外形標準課税制度講座


1.事業税の外形標準課税の概要

■事業税の外形標準課税とは、従来の事業税のように「所得金額」ではなく、「付加価値額」及び「資本等の金額」に対して課税するものです。
■従来の事業税は、赤字法人には課税されませんでしたが、事業税の外形標準課税は、赤字法人であっても課税される場合があります。
■事業税の外形標準課税は、「付加価値額」と「資本割」の2種類から構成されます。
@付加価値割
「単年度損益(欠損金等の控除前の所得金額)」に、「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」を加算した「付加価値額」に対して課税されます。
A資本割
「資本の金額(または出資金額)」に「資本積立額」を加算した「資本等の金額」に対して課税されます。

■これらに対し、「所得金額」に課税される従来の事業税は「所得割」といいます。
■事業税の種類と課税標準との関係は、次の取扱となります。

●所得割→所得金額
●付加価値割→付加価値額(単年度損益+報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料)
●資本割→資本等の金額(資本の金額+資本積立金額)

2.事業税の外形標準課税の課税対象法人

(1)事業税の外形標準課税の課税対象法人
 事業税の外形標準課税(付加価値割・資本割)は、資本の金額または出資金額が1億円超である法人が課税対象となります(地方72の2@―イ)

(2)「資本の金額または出資金額が1億円超」であるかどうかの判断
「資本の金額または出資金額が1億円超」であるかどうかの判断は、事業年度の終了時点で判断します。そのため、期中に減資を行い、期末における資本の金額が1億円以下となった場合は、事業税の外形標準課税(付加価値割・資本割)の課税対象とはなりません。
なお、平成16年の商法改正により、新株引受人が株主となる時期が「払込期日の翌日」から「払込期日の当日」に改められています。そのため、事業年度の末日を払込期日として新株発行による増資を行なう場合は注意が必要です。

(3)事業税の外形標準課税の課税対象外の法人
一方、次に掲げる法人は、資本の金額または出資金額が1億円超であっても、事業税の外形標準課税(付加価値割・資本割)の課税対象とはなりません。
@電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業(収入金額課税事業)を行なう法人
A公益法人、協同組合、医療法人、独立行政法人、地方独立行政法人等

3 「付加価値額」とは

■付加価値額は、以下の計算式により計算されます。

 付加価値額=報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料±単年度損益−(雇用安定控除額)

■なお、報酬給与額、純支払利息、純支払賃借料の合計を「収益配分額」といいます。

@報酬給与額(地方72の15の@)
報酬給与額は以下の2つから構成されます。
・法人が役員または使用人に対して支出した報酬、給料、賃金、賞与、退職手当その他これらの性質を有する給与として支出する金額の合計額
・法人が確定給付企業年金に係る規定に基づいて加入者のために支出する掛金等の金額の合計額

A純支払利子(地方72の16の@)
「支払利子」から「受取利子」を控除した金額です。「受取利子」が「支払利子」よりい多い場合はゼロとなります。

B純支払賃借料(地方72の17の@)
「支払賃借料」から「受取賃借料」を控除した金額です。「受取賃借料」が「支払賃借料」よりも多い場合はゼロとなります。

C単年度損益(地方72の18)
法人税の課税標準である所得の計算の例によって計算された所得金額(連結法人税の場合は個別所得金額)です。ただし、欠損金・連結欠損金個別帰属額の控除がある場合は控除前の金額となります。
なお、単年度損益がマイナスの場合は、付加価値額を構成する報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料から控除します。ただし、単年度損益を控除したことにより付加価値額がマイナスとなった場合は、付加価値額はゼロとなります。

D雇用安定控除額(地方72の20の@A)
収益配分額(報酬給与額+純支払利子+純支払賃借料)に占める報酬給与額の割合が70%を超える場合は、付加価値額から以下の計算式で計算した「雇用安定控除額」を控除することができます。

雇用安定控除額=報酬給与額−(収益配分額×70%)

これは、付加価値割が報酬給与額に対して課税されることから、雇用に対する影響の懸念に配慮した措置として設けられています。

4 資本等の金額とは

資本割の課税標準となる「資本等の金額」は、各事業年度終了の日における資本の金額・出資金額と資本積立金額(連結納税を適用している会社は連結個別資本積立金額)との合計額となります。(地方72の21@)

@無償減資に関する平成16年度税制改正の特例(地方附則9C)
無償減資を行なった場合、資本の金額が減少する代わりに資本積立金額が同額増加するため、資本割の課税標準となる「資本等の金額」は変わりません。
ただし、平成16年度税制改正により、平成16年4月1日から平成18年3月31日までに開始する事業年度の事業税に限り、平成13年4月1日以降に行なった無償減資等の金額(欠損てん補に充てた金額)を資本等の金額から控除することとする措置が設けられました。
なお、資本準備金の減少による欠損てん補についても同様の特例が設けられています。

A特株会社の特例(地方72の21B)
特株会社(総資産の帳簿価額のうち、特株子会社(直接・間接の出資比率が50%を超える子会社)の株式の帳簿価額が占める割合が50%を超える内国法人)については、「資本等の金額」に関する特例が認められています。
具体的には、資本割の課税標準の算定上、資本の金額からその資本等の金額に総資産の帳簿価額のうちに占める子会社株式の帳簿価額の割合を乗じて得た金額を控除します。

B国外で事業を行なう法人の資本割の課税標準(地方72の22@)
国外で事業を行なう法人(特定内国法人)については、国外の資本等の金額に相当する金額を控除した後の資本等の金額を課税標準とします。

C資本等の金額が1,000億円を超える法人に係る特例(地方72の21CD)
資本等の金額(上記@〜Bの計算後の金額)が1,000億円を超える法人については、以下の表に掲げる区分に従って資本等の金額(資本等の金額が1兆円を超える場合は1兆円とする)を区分し、それぞれの区分に応ずる割合を乗じて計算した金額の合計額が課税標準である資本等の金額となります。

資本等の金額と割合の関係
1,000億円以下の金額 →100%
1,000億円超 5,000億円以下の金額→50%
5,000億円超 1兆円以下の金額→25%

5 適用開始事業年度

事業税の付加価値割・資本割は平成16年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

6 付加価値割・資本割の税率

■付加価値割・資本割の標準税率は、以下のとおりとなっています。(地方72の24の7@)
@付加価値割→0.48%
A資本割→0.2%

■また、付加価値割・資本割の導入に伴い、外形標準課税の課税対象となる法人の所得割の標準税率も以下の通り改正されました。

●所得区分と改正前と改正後

所得のうち年400万円以下の金額
改正前5.0 %改正後3.8%

所得のうち年400万円〜年800万円の金額
改正前7.3% 改正後5.5%

所得のうち年800万円超の金額及び清算所得
改正前9.6% 改正後7.2%


(注1)三以上の都道府県に事務所または事業所を設けて事業を行なう法人の所得割の標準税率は、一律に7.2%(改正前9.6%)となります。
(注2)事業年度が1年に満たない場合は、上記の「年400万円」「年800万円」は、それぞれ「400万円×当期の月数÷12」「年800万円×当期の月数÷12」となります。
なお、都道府県によっては、標準税率を超える税率(超過税率)を採用している場合があります。

7 付加価値割・資本割の会計処理

付加価値割・資本割は、損益計算書上、法人税や、住民税、事業税の所得割とは異なり、「販売費及び一般管理費」に計上します。
一方、決算時に未払計上する場合は、法人税や、住民税、事業税の所得割と同様に「未払法人税等」に計上します。


■税金の種類と損益計算書及び貸借対照表の関係

●法人税、住民税、事業税(所得割)
損益計算書→法人税、住民税及び事業税
貸借対照表→未払法人税等

●事業税(付加価値割・資本割)
損益計算書→販売費及び一般管理費(租税公課)
貸借対照表→未払法人税等


8 税効果会計における付加価値割・資本割の取扱い

@決算時に計上した付加価値割・資本割の未払額は、所得割と同様に「未払事業税」として一時差異(将来減算一時差異)となります。
A一方、法定実効税率は、付加価値割・資本割の税率を含めずに計算します。



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