
−目 次−
はじめに −変化を迫られる雇用・労働の情勢とビジョン確立の必要性−
1.急速に変化するわが国の雇用・労働の情勢
1-1 経済、社会の動向と雇用・労働への影響
1-2 雇用や賃金の厳しい実態と悪化の傾向
1-3 変化を迫られる春季生活闘争と賃金体系の見直し
2.JRの雇用・労働の情勢と展望
2-1 JR各社の雇用・労働の動向と展望
2-2 JRの賃金の推移と比較
第U部 JR連合が目指す雇用・労働のあり方
−安心と働きがいの持てる新時代のJRの雇用・労働を目指して−
1.JRにふさわしい持続可能な雇用・業務体制を目指して
≪JR連合の主張≫
≪具体的な提言≫
1-1 長期雇用の堅持と人材育成の推進
1-2 業務体制の変化、雇用の多様化への対策指針の確立
1-3 技術、技能の継承と安全性向上への環境整備
1-4 安心と働きがいの持てる高齢者雇用の実現にむけて
2.今後の賃金・生活改善と公正な賃金・処遇制度のあり方
≪JR連合の主張≫
≪具体的な提言≫
2-1 春季生活闘争の今後の基本方向
2-2 新たな要求設定の考え方
2-3 働きがいの持てる公正な賃金・処遇制度のあり方
3.仕事と家庭を両立できる先進産業を目指して
≪JR連合の主張≫
≪具体的な提言≫
3-1 仕事と家庭の両立支援と男女共同参画の推進を
3-2 労働時間短縮の中期目標とその実現にむけて
4.JRグループ全体での雇用・労働の充実にむけて
≪JR連合の主張≫
≪具体的な提言≫
4-1 JRグループの共栄と雇用・労働の充実を求める意識づくり
4-2 JRグループの賃金・労働条件改善にむけた具体的展開
4-3 雇用・労働の充実にむけてグループ労組の組織・運動の強化を
わが国の企業経営や雇用、労働をめぐる情勢は急速に変化している。
製造業を中心に生産拠点の海外移転と国際分業が進み、国際競争の激化で人件費抑制の圧力が高まっている。企業は生き残りを賭けて、組織や従業員のリストラを進めている。この結果、業績は回復基調にあるものの、パート・契約社員が増加するなど雇用は多様化しているほか、年齢給廃止や業績給・成果給導入など、賃金体系も大きく変化し、賃金水準は1997年度以降は低下傾向にある。「日本的経営」の中心要素である終身雇用が大きく揺らぎ、年功序列賃金は否定されてきている。企業規模や雇用形態による賃金格差も年々拡大し、様々な矛盾や問題点が派生している実態にある。
こうした中で、少子高齢化がますます進み、将来の労働力確保、技術継承、そして老後の年金、生活不安など、今後の日本の雇用、労働には多くの課題が山積しているといえる。
こうした社会の変化は、JRにとっても決して無縁ではない。むしろ、公益産業として大きな影響を受ける可能性が高い。人口減少や経済成長の鈍化で、鉄道業の大幅な業績拡大は難しい。そして、国鉄改革の経緯からJRの社員の年齢構成は高年者に偏っており、各社ともに大量退職が続き、雇用や業務体制の大幅な変革が求められている。こうした中で、技術、技能を継承し、将来ともに、社会に信頼される安全とサービスを提供していかなければならない。
3年連続でベアゼロとなった春季生活闘争も転機を迎えている。JR連合の目標である全産業平均(1千名以上)の賃金水準に、平均ではほぼ到達したとみることができる。一方、JR内の賃金格差は拡大し、JR三島・貨物会社は全産業平均よりも依然低位に置かれている。総合的な生活改善にむけて、新たな求心力の持てる戦略、目標を構築しなければならない。
また、立ち遅れるJRグループ労組の賃金、労働条件の改善も早急に進めなければならない最重要課題である。
このような情勢下で、経営環境の変化や会社提案に単に追随するのみで、対症療法を繰り返すのでは、JR労働者の展望をひらくことはできない。JR連合はJRの代表産別として、私たちが求める雇用、労働のあり方に関するビジョンを主体的に提起し、これに基づき、労使交渉をはじめとする活動を積極的に展開していくことが必要だと考える。
JR連合は、こうした問題意識に基づき、新時代の雇用、労働への提言と目標を示した「中期労働政策ビジョン」を策定した。今後は、ビジョンを指針に具体的な運動を展開していくが、急速な環境変化を踏まえ、3年後の2006年度末に到達水準などについて検証のうえ、必要な補強、修正を行うこととする。
グループを含めたすべての単組が課題認識を共有化し、働きがいと安心の持てるJRの新時代の雇用・労働を目指し、ビジョンの実現にむけ、各級機関で具体的な運動に反映し力強く取り組むことを要請したい。
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1.新たな賃金、労働条件改善の運動指針を明示 従来の目標であるJR連合平均と全産業平均(1千名)以上との賃金格差の是正を確認したうえで、JR連合のポイント年齢別目標値の確立を含め、新たな賃金引き上げの目標設定の考え方を明示した。 2.JR産業のあるべき雇用姿勢と人材育成の強化を提起 JRでは社員は正規雇用を基本とし、長期雇用を通じて人材を育成すべきであるとの姿勢を示した。具体的には、長期雇用の堅持、「人」を重視した人材育成や能力開発の必要性、社員が担うべき業務と責任の範囲に関する「指針」の確立、技術、技能の継承と安全性向上の重要性などについて提言している。 3.仕事と家庭の両立支援の強化を提起 JRは仕事と家庭を両立を実現できる先進企業を目指すべき、との方向を提起し、労使の意識の共有化と男女共同参画などに関する条件整備を提言した。JR連合は、「仕事と家庭の両立支援」を今後の雇用、労働の充実への運動の柱に位置付けて取り組むこととする。 4.JRグループ全体での雇用・労働の充実を提起 JRグループ全体での発展と、JRグループにふさわしい賃金・労働条件改善の重要性を強く主張し指針を明示した。具体的には、定昇をはじめとする賃金制度の確立や目標水準への到達、最低限の労働時間短縮の条件整備、時間管理適正化と不払残業撲滅の徹底などを提言した。また、労組役員の育成強化と労使協議の充実、新規の組合結成とパート等の組織化など、グループ労組の組織・運動強化も提起している。 |
1-1 経済、社会の動向と雇用・労働への影響
(1) 経済の低成長とデフレの進展
1990年代以降、日本経済はバブルの崩壊、デフレの進展の中で低成長が続いてきた。近年は企業業績の回復により、2003年度の実質国内総生産(GDP)成長率も2年連続でプラス成長(前年度比3.2%増)となるなど、景気の回復がみられるようになったが、これは企業のリストラ効果や輸出拡大によるものである。
人件費の削減が企業業績回復を支える中心的な柱となっており、正規社員数の削減、雇用の多様化とパート労働者の活用、給与体系の見直しなどの動きがいっそう加速している。こうした中で失業率が高止まりしているほか、個人消費は低迷し、自律的な経済回復の見通しは立っていない。勤労者の生活は、可処分所得が5年連続で減少するなど厳しさを増している。また、消費者物価指数も4年連続でマイナス傾向にあり、今なおデフレ傾向に歯止めが掛からない状況にある。深刻なデフレは、企業の人件費削減姿勢につながっており、将来の所得不安から消費も伸びない、という悪循環を引き起こしている。
(2) 国際競争の激化と雇用・労働への影響
1990年代前半以降は、製造コスト削減を目的にアジアむけの投資が拡大し、製造業の生産拠点の海外進出が進んでいる。中でも中国への比重が高まっている。2000年度の製造業における現地法人従業員数は281万人であり、10年間で156万人増加した。各企業は海外拠点における技術水準が今後高まるとみており、海外進出はさらに進むと想定される。この動きと連動して製造業の国内雇用は減少している。
一方、国内では高付加価値製品の開発、生産を強化する傾向にある。国内の「ものづくり産業」の重要性が改めて見直され、国内生産の基盤強化の必要性も認識される動きがあることも特徴的である。
こうした国際競争の激化、製造業の海外進出、国際分業化の動向は、国内産業を含め、日本の雇用と労働、中でも賃金水準の抑制に厳しい影響をもたらしてきている。
(3) 少子高齢化と求められる雇用・労働の変化
わが国は急速に少子化、高齢化が進んでおり、15〜65歳の労働力人口はすでに減少傾向にあるほか、総人口も2006年度より減少に転じる見通しである。2030年の人口は2000年比で7.4%減少し、65歳以上の老齢人口の割合も29.6%(2000年度=17.4%)になると想定されている。地方でのスピードはとくに速く、少子高齢化の最進地域である秋田県では、2030年の人口は23.2%減少し、老齢人口の割合は実に36.2%となる見通しである。ただし、これは出生率が一定回復するとみる「中位推計」によるもので、少子高齢化が想定以上に進む可能性も高い。
少子高齢化は労働力人口の減少を招き、労働集約型産業を中心に大きな影響が及ぶと想定される。また、少子化への対策や女性の職場進出の促進のためにも、「仕事と家庭の両立」の重要度がますます高まる。さらに、年金財政の悪化が深刻化し、政局の混乱とあいまって、将来不安が高まっている。私たちは年金制度の責任ある抜本改正を強く求めるものである。また同時に、高齢者の雇用と働きがいの向上も大きな課題となる。
国も「次世代育成支援対策推進法」の制定や高齢者雇用の義務化の検討など、少子高齢化を踏まえた将来への対策を講じようとしているが、企業の意識や対応には温度差が大きい。こうした動きの実効性を高めるためには、労使レベルでの取り組みが非常に重要であり、労働組合に求められる役割は大きい。
1-2 雇用や賃金の厳しい実態と悪化の傾向
(1) 正社員の減少と経営や家計への悪影響
正社員の雇用者数は5年連続で減少傾向にある。この背景には、デフレ経済下での企業のコスト削減、将来の厳しい経営見通しに基づく採用抑制、従業員の高齢化や高学歴化の中での人件費抑制などの企業の意図があると考えられる。
正社員についても、残業規制、配転、出向、早期退職などの雇用調整策が多く講じられており、企業倒産を含めて、労働者の意思によらない「非自発的失業者」の数が中高年層を中心に増加している。
企業の人員削減は、短期的な業績回復には寄与しているものの、士気の低下や優秀な人材の低下などマイナス影響を与えているほか、消費の抑制などにもつながっていると分析されており、非常に問題が大きいと考える。
(2) 急速に進む雇用形態の多様化
2002年の平均では、わが国の労働力をみると、役員を含む正規雇用者3,886万人に対してパート、アルバイトなど非正規雇用者*は1,451万人であり、そのうち女性が1,021万人(70%)を占めている(総務省「労働力調査」)。就業者全体での非正規雇用者の割合は、1987年は12.2%であったが、2002年には23.0%へ2倍近くに増加した。その中心であるパート・アルバイトの内訳をみると、若年層の増加が顕著であるほか、男性の割合も増加傾向にある。
この背景としては、人件費削減や雇用の柔軟性の確保などを目的に、企業が非正規雇用を拡大していることがある。価値観が多様化し、非正規雇用を求める者も増加しているものの、正規雇用の募集がなく、やむなくパートなど非正規で就労している労働者の割合が高まっている。とくに新規学卒者の就職難は、人生設計や人格形成などの面で、経済的、社会的にも深刻な問題となっている。
また、パート労働者の中で、役職に就いて基幹的役割を持つ者も増加している。従来正社員が行っていた役割の一部を担う傾向にあることも特徴的である。
なお、パート労働者と正規雇用労働者との賃金格差は1990年代を通じて拡大傾向にある。正規雇用者を100とすると、パート労働者の1時間あたりの所定内賃金の指数は女性で65.3、男性で49.9、一時金を含めた年間賃金ではそれぞれ54.3、41.2となっており、非常に大きな較差があることがわかる(厚労省「賃金構造基本統計調査」、2001年度)。
* 厚生労働省調査などは「パート」について、正社員以外労働者で、名称に関わらず1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者のほか、所定労働時間が同じでも雇用期間の定めのある労働者も含めるケースが一般的。JRの「契約社員」もこれに含まれる。

(3) 失業率の高止まりと深刻な問題点
2004年4月の失業率は4.7%で、5%台が続いた2003年度より若干の改善がみられるが、依然として高い水準にあるほか、失業期間の長期化や若年層の高失業率などの問題が深刻化している。失業期間が1年以上の割合は、1999年度の22.5%から2003年度は33.8%にまで増加した。15〜24歳の若年の失業率は10%を超え、新規学卒者の就職先がなくフリーターとなる若者が増加し、深刻な問題となっている。国や社会をあげた早急な対策が求められている。
なお、北海道、東北、近畿で失業率が6%を超える(2004年1-3月)など、地域ごとの格差が大きくなっている。
また、産業別の就業者数の動向にもバラツキがあり、IT関連を除く製造業や建設業での減少と、サービス業での増加が特徴的である。
(4) 賃金水準の低下と勤労者世帯の家計の悪化
連合が厚労省「賃金構造基本統計調査」をパーシェ比較(性別、年齢、勤続、学歴の労働力構成を鉄道業と同一条件に当てはめた場合の賃金比較)を用いて分析したところ、勤労者の賃金水準は1997年度から減少していることがわかった。1997年度を100とすると、2002年度の指数は、全産業平均で所定内賃金は97.2、一時金は84.5、年間賃金は94.1となっている。中でも10〜99人規模の中小企業では、それぞれ95.6、74.4、91.7で、5年間で年収が約1割低下している実態にあることがわかる。
こうした中で企業規模間の賃金格差は年々拡大している。連合加盟組合の調査では、1000名以上と300名未満の格差指数は、2003年度で所定内賃金14.0、一時金35.8、年間賃金19.3となっている。中小企業は業績が厳しいうえに、賃金制度や賃金カーブが確立していない会社が多く、厳しい経済情勢の中で賃金がいっそう抑制され、格差が拡大する危険性が高い。
また、総務省「家計調査」によると、勤労者世帯の家計収入は5年連続で減少しているうえに、低所得世帯が増加して上下の格差が拡大している。貯蓄ゼロの世帯の割合は年々増加し、2003年度では2割を超えている。
1-3 変化を迫られる春季生活闘争と賃金体系の見直し
(1) 経営側の賃上げ否定と総合的な生活改善
財務省「法人企業統計調査」によると、2003年10-12月の法人企業(金融・保険業を除く、資本金1000万円以上)の売上高は前年同期を3.1%(9.7兆円)、経常利益は16.9%(1.5兆円)それぞれ上回り、好業績が続いているといえる。しかし前述の通り、企業業績の回復は、人件費抑制などコスト削減による効果が大きく、デフレ経済からの脱却と自律的な景気回復のためには、雇用拡大や賃金改善による個人消費の拡大が欠かせない。
一方、日本経団連は「経営労働政策委員会報告」(2003年12月)などで、デフレ経済、国際競争力の激化、企業利益の圧迫などを理由に、「ベアは論外」「定昇の廃止・縮小」など賃金抑制論を唱えた。企業の業績とは別に、賃金水準の引き上げ自体を否定する動きが強まっている。また、年功型賃金を改めて、能力・成果・貢献度に応じた賃金制度に切り替えるよう主張し、現に、こうした見直しの動きも加速している。
2004春季生活闘争では、残念ながら、連合のほとんどの産別や主要組合がベア要求を見送ることとなり、ベア否定の社会的な流れはさらに拡大している。一方、定昇を確保し賃金カーブ維持を確認できた組合は拡大傾向にあるほか、一時金の妥結水準が向上するなどの一定の成果もみられる。また、先進産別では、賃上げ以外にも議論の幅を広げ、仕事と家庭の両立支援、労働時間管理、次世代法に基づく対応などを進めたほか、連合は年金改革の運動に力を入れ、総合的な生活改善を指向した取り組みが進む傾向にある。
(2) 中小・地場組合やパート労働者の底上げ運動の強化
連合は中小・地場組合の賃金底上げを春季生活闘争の中心課題に置き、共闘体制を強化して取り組んでいる。2004春季生活闘争では、賃金カーブ算定困難な組合に5,200円の要求目安を示し、交渉の集中化と妥結の早期化に取り組んだ結果、賃上げ額は前年度より200〜300円改善されるなど、一定の結果を収めた。しかし、賃金カーブ維持や格差是正が本当に進んだのかなど検証すべき課題も多く、さらなる運動強化が求められる。
また、もうひとつの大きな課題であるパート労働者の均等待遇の実現については、連合方針に基づき要求を提出し成果を得た組合もあるが、取り組みが限定的である。企業内最賃の協定化を含め、まだまだ課題は大きいと総括している。
(3) 成果主義、能力主義中心の賃金体系への見直しと問題点
わが国の賃金制度は、高度経済成長期は「年功給」が中心であったが、処遇ルールの明確化や中高年の増加への対策などを目的に、年功的要素を残して公正処遇を目指す「職能給」が一般的になった。最近では、多くの企業が賃金制度について、年功的要素を縮小して成果主義、能力主義を指向する改革を進めている。
「日本労働研究機構」(JIL、現「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」)の2003年「企業の人事戦略と労働者の就業意識に関する調査(企業調査)」によると、72.7%の企業が賃金制度の変更を考えていると回答した。年功的要素に関してみると、5年後の賃金体系について、57.9%の企業が「年功的賃金体系はある程度残す」、12.6%が「年功的賃金体系をすべて廃止する」と回答するなど、年功賃金の改革を進める意向を示している。また、変更を考えている具体的内容については、「昇級・昇格を能力主義的に運用する」(67.9%)、「個人業績をボーナスに反映させる」(54.6%)、「基本給の職能的要素を増やす」(44.5%)など、能力主義、成果主義を指向するものが上位を占める。
しかし、同調査(就業者調査)によれば、労働者からは「上司や人事管理者が正しく成果や能力を評価するかわからない」など、不安を指摘する回答の割合も高く、実際にそうした賃金制度を導入した企業でも、必ずしもうまく運用されているとは言い難い面もある。職種によっても制度の適否がある。能力給、成果給がうまく機能するためには、適切な目標の設定や評価の透明性や公正性の確保などが必要であると指摘される。コスト削減のための賃金制度の見直しでは、労働者の納得は得られないだろう。

2-1 JR各社の雇用・労働の動向と展望
(1) JR各社の経営動向と展望
JR発足から17年が経過した今日、JR各社は比較的堅調な経営を続けてきているが、各社毎の経営格差も拡大する傾向にある。
JR東日本、東海、西日本の本州三社は完全民営化を果たし、経営面では着実に前進している。鉄道運輸収入は伸び悩んでいるが、関連事業の拡大などで連結ベースでは売上高を増やしており、コスト削減や長期債務の返済と支払金利の削減などで利益を拡大している。コスト削減の中では、大量退職に伴う人件費縮減の効果が大きい。今後も運輸収入の拡大は難しいが、連結ベースでは堅調な経営が期待される。
自立経営の展望がみえないJR三島、貨物会社
一方、JR北海道、四国、九州の三島会社は、懸命な経営努力で営業収支を改善し、経営安定基金の運用益の減少の中でも、辛うじて黒字を確保するという厳しい経営が続いている。ただし、JR九州は新幹線開業の効果もあり、減少が続いた運輸収入が増加に転じたほか、福岡など大都市を基盤とする関連事業の強化などで、将来の経営に明るい展望が見えつつある。JR北海道は輸送密度のきわめて低い線区が多いほか、経営安定基金に頼るウェイトも高く、金利が低下する中で経営の見通しは厳しい。JR四国は高速道路の急速な延伸に押されて運輸収入の減少が顕著であり、経営安定の見通しが立たない状況にある。
JR貨物は、国の環境対策の強化などモーダルシフト促進の動きを背景に収入が伸び、黒字体質への転換が図られたが、経営基盤が脆弱で自立経営を確保するには到底至っていない。トラック業界は規制緩和で労働条件が低下しており、民間物流事業者と競合する中で、雇用、労働を取り巻く情勢はとくに厳しいとみなければならない。
今後は、各社の経営体力の違いが浮き彫りになり、労働条件の格差がさらに拡大する可能性がある。「21世紀鉄道ビジョン」を基軸とする産業政策の取り組みと並行し、JR労働者の雇用、労働のあり方をしっかりと提起して取り組む必要性が高まっている。
(2) 公益企業としての社会的評価
近年は企業の社会的責任(CSR)や法令遵守(コンプライアンス)の重要性が高まっているが、厳しい経済、社会情勢の中で、公益企業であるJR各社に対しては、経営面はもちろん、従業員の業務や労働条件に対する注目度も高いことを認識する必要がある。中でもJR本州三社は完全民営化を果たし、私たちの要求と株主が求める利益との間には相反する面があることも否定できない。こうした環境下で、働く者の雇用、労働条件を充実させていくためには、社会的に評価される事業運営を持続することがきわめて重要である。
(3) 大量退職と雇用・労働に求められる変革
JR各社は、国鉄改革の経過から年齢構成が大きく偏っており、大量退職時代に突入している。ベテラン社員の退職で社員数が大幅に減少している。一方、現在の30歳台の社員数が極端に少なく、従来の労働集約型での業務体制は変革を迫られている。
程度の差はあるが、各社は毎年、労使協議に基づき機械化、効率化を進めているほか、グループ企業などへの外注化や契約社員の導入なども行っており、職場環境は大きく変化しつつある。反面、こうした効率化とベテラン社員の減少は、技術、技能の継承、向上や安全確保の面で少なからず影響を及ぼしており、実効ある対策の強化が求められる。また、契約社員の処遇改善やモラルの維持、向上なども重要な課題となる。
鉄道業の最大の使命は、言うまでもなく安全・安定輸送の確保であり、社会的に高い信頼が得られる業務体制を構築することの重要性を忘れてはならない。企業内の事情や言い訳は通用しないことを認識しなければならない。
一方、退職者が大幅に増加するとともに、満額年金の支給年齢の引き上げへの対応などの社会的な要請もあり、高齢者雇用問題も大きな課題となっている。各社ともに一定の制度を設けるなどの対策を進めているが、問題点が大きく対策の強化が必要である。
このほか、各職場において女性の活躍の場が拡大しているほか、仕事と家庭の両立支援の重要性が高まる中で、人事制度や職場環境の面などでの課題も山積している。何より、労使ともに家庭の重要性を認識し、意識を改革することが求められている。
JR世代の若手も増加する中、新時代に適合したJRの雇用、労働を創造すべき転機にあるといっても過言ではない。
(4) グループ経営の重要性の高まりと労働条件のあり方
今日は連結経営の時代であり、JRもグループ全体での経営が評価され、その重要性はますます高まる。すでに、鉄道の多くの業務をグループ企業が担当し、会社によっては出向を通じて人材育成が行われている実態もある。しかし、グループ企業に働く者の賃金をはじめとする処遇は低位にあり、JR各社の認識も低いと言わざるを得ない。グループ企業の労働者の条件改善は、JRの雇用、労働面での最大の課題のひとつに位置付けられる。また、そのための労働運動の強化も求められる。具体的には関連する提言(U部)で述べる。
2-2 JRの賃金の推移と比較
(1) 全産業平均(1千名以上)との格差是正
とくに、1997年度をピークに勤労者の賃金水準が低下した一方、JR各労組は2001年度までベアを確保し、今日まで定昇を確実に実施してきたことで、格差是正の速度が速まった。1997年と2002年の企業規模計で各産業の賃金の上昇(下降)率を比較すると、鉄道業は所定内賃金101.2(全産業97.2)、年間賃金99.9(同94.1)で、調査上の産業分類でみて最も高い上昇率を示している。
2002年度には「賃金問題専門委員会」を設置し、全産業平均(1千名以上)とJR連合平均との賃金格差を、組合員ベースで2.2%(平均8千円、35歳ポイント7千円)と分析し、この格差を3年間で解消する中期目標を立てて春季生活闘争に臨んだ結果、2003年度の分析では、この格差が0.6%に縮小した。2004春季生活闘争では、JR各労組はベアを見送る結果となったが、定昇を確保したことで、全産業平均の賃金低下の傾向からみて、格差是正がほぼ実現したとみてよい。

(2) JR各社間の賃金比較
2002年度の全組合員を対象としたJR連合「賃金実態調査」のデータを、組合員ベースでラスパイレス比較(性別、年齢、勤続、学歴の労働力構成を鉄道業と同一条件に当てはめた場合の賃金比較)により分析すると、全産業平均(1千名以上)との比較で、JR東海ユニオン、JR西労組は2002年度にはすでに上位にあると分析される。JR東日本では適正なデータの収集が不可能だが、同様の傾向にあると想定される。一方、企業体力、業績の差を反映し、JR三島、貨物の各組合では、全産業平均との格差は依然として存在する。ただし、地域事情を考慮して分析する必要がある。
これらの数値を比較すると、JR各社間の賃金は、所定内賃金で上下約20%程度の格差があると推計される。

なお、JR各社での賃金制度、昇進制度見直しの動向や、労働時間、休日、福利厚生などの労働条件の諸制度の内容については、それぞれ関連する提言(U部)の中で言及する。
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JRは長期雇用を堅持すべき JRの雇用は正社員を基本とし役割と責任を明確化すべき 「人」と人材育成を重視し技術継承の対策強化を 労使がJRの長期雇用の必要性を共有化し維持するために努力すべき 安心と働きがいの持てる高齢者雇用の実現にむけて |
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1-1 長期雇用の堅持と人材育成の推進
(1) 安定した長期雇用を通じた健全な鉄道経営
JRは、人命を預かり、日々の生活を支える基幹産業であり、国民、利用者からの高い信頼を常に維持しなければならない。働く社員には、職責や安全に対する高いレベルでのモラルを持ち続け、経験、技術、技能、知識を蓄積、向上させることが求められる。JRに必要な人材を確保、育成し、適正な業務運営を行うために、将来ともに、若年者を正社員として採用し、長期雇用を維持する制度を堅持すべきである。
(2) 「人」を重視した人材育成、能力開発の強化
職業能力や社会人としての人格は、継続した職業経験を通じて形成される。企業の社会責任としても重要な要素である。また、社員数が減少する環境の下、ひとり一人の社員の責任や役割が大きく高まり、人材育成の重要性は増している。JR各社は、中長期的な視点に立ち、「人」の重要性を再認識した雇用、処遇と人材育成のシステムを確立すべきである。
社員の能力や意欲を引き伸ばし、活力ある会社や職場をつくらなければならない。業務に精通する意欲ある社員が上位職を目指し、適正な職場管理を行うとともに、地道に経験、知識、技術、技能を磨き、職能を高め、「鉄道のプロ」として安全とサービスを守り発展させることのできる職場づくりを目指す。
OFF−JTを重視した教育制度の充実を
人材育成のために、経験、知識、技術、技能など、鉄道の業務に関わる能力開発を可能とする教育制度の充実を求める。効率化が進む厳しい環境の下で、OJTの実施は非常に厳しい情勢にある。人材育成や安全や技術向上に着目したOFF−JTの充実を改めて検討すべきである。このために必要な施設などの整備も重要な課題である。また、経験、知識、技術、技能を備えたベテラン、高齢者の能力を生かした機会づくりも積極的に検討すべきである。
人材育成に配慮した人事運用と職業人生設計ができる環境づくりを
人材育成、職業能力の開発のためには、戦略的、効果的な人事運用が不可欠である。社員の能力やキャリアに十分配慮した対応を求める。
また、各職務の段階で求められる職能や職責の基準を明確化するとともに、系統毎の人事運用のコースと処遇を確立のうえ社員に明示することなどにより、社員が、将来的な職業人生を設計できる環境をつくるべきである。
私たち働く者も、職務の確実な遂行を前提に、各人の自己実現のためにも、職業人生を自ら設計していく姿勢が求められる。公正なワークルールの下で意欲を持って職業能力の開発や上位職の追求に取り組める環境をつくらなければならない。
人材育成につながる公正で意欲の湧く人事考課・評価制度の確立を
JR各社は、社員の能力や意欲を、昇格、昇進などの評価、処遇に公正に反映するほか、能力開発や意欲向上につながる人事運用に努めなければならない。能力の向上がキャリアアップや処遇制度に適正に反映されるしくみを確立すべきである。「鉄道のプロ」を育成するためのしくみや制度づくりが求められる。
会社は人材の経験、能力、希望を的確に把握し、人材育成を進めるとともに、納得性の高い、意欲の湧く職業人生を実現できるよう最大限の努力を行うべきである。日常からの個人面談や適性把握など、基本的な職場管理が重要であることは言うまでもない。
鉄道業は、安全運行があたりまえの職場であり、減点主義に陥りやすい。職場の地道な努力と能力の向上を適正に評価し、まじめに働く社員の意欲を引き出す環境づくりにとくに留意しなければならない。
活力ある社員育成と自立支援への取り組み
自ら職業人生を設計できる社員の自立を支援するとともに、業務に直結した能力開発以外でも、一般教養や経営能力などについて自己啓発の機会を提供するなど、幅広い人材を育成し、社員の職業人生を充実させる環境整備も有用である。こうした取り組みは、社員の意欲、モチベーション、自立意識の向上につながり、企業の活性化にも大きく貢献すると考える。
福利厚生面での自立支援の分野には、職業人生上と人生設計上の支援がある。自ら職業人生の設計を行い、自己実現をはかるための支援として、人事運用、社内・社外教育制度、人事考課制度、資格取得支援、IT教育、自己啓発など、キャリア形成・人材育成システムの充実が求められる。また、人生設計支援のために、労使が協力して、ライフプランやマネープランの教育機会を設けたり、部外制度も活用して、組合員の住宅取得、財産形成、老後の生活充実にむけた資産形成などの努力を支援するしくみを充実させることも重要である。
中途採用や大卒者の現業活用などへの対応
中途採用や、大卒者の現業活用などの学歴別の運用の見直しについては、採用時の条件を明示するほか、入社後も人材育成の機会を確保し、本人の希望や能力に応じた透明性、納得性の高い処遇や人事運用の制度を設けるべきである。
(3) 長期雇用を持続するための労使双方の努力
長期雇用を持続するためには、労使双方の立場から、JRにおける長期雇用のメリットを有効に機能させる環境づくりに努めるべきである。
会社は、長期雇用を通じた経験、知識、技術、技能などの能力向上を進めるとともに、これを業務に適切に生かす環境づくりに努めなければならない。一方、働く者の側からも、長期雇用を通じて、自らの能力を高める姿勢が求められる。これにより、長期雇用、年功賃金に説得力を持たせることも必要である。
(4) 仕事の充実感を得られるJRを目指して
生計の維持はもちろんであるが、組合員が充実した職業生活を営める環境をつくることも重要であり、そのことが、企業の活力と発展につながる。
雇用、労働を考えるにあたり、職業生活の三要素、つまり@生活の安定と安心をつくること(生計の維持)、A個人の能力を発揮し、意欲を持って仕事ができ、職業を通じて自己実現をはかること(個性の発揮)、B仕事を通じて社会的な役割を果たし、働くことに喜びを感じられること(連帯の実現)、の実現について十分に留意する必要がある。
とくにJRでは、社員が鉄道業の社会的な役割、重要性を誇りに感じ、「鉄道のプロ」としての高い意識や働きがいを醸成できる環境づくりが非常に重要である。
1-2 業務体制の変化、雇用の多様化への対策指針の確立
(1) 正社員を基本に据え、役割と責任の明確化を
JRの特性を踏まえた長期雇用の必要性などから、社員は正規雇用を基本とし、長期雇用を通じて社業の健全な運営に資する人材を育成するとともに、生活の安定や自己実現を果たしていくことが望ましい。
鉄道の核となる業務は正社員が従事すべき
JRの安全やサービスに対する社会的な信頼性を得るとの観点から、職場の責任者としての業務、安全に関わる重要業務など、少なくとも鉄道業の核となる業務は、将来ともにJRの正社員が責任を持って従事する体制を堅持すべきである。
正社員と契約社員との責任、役割の区分の明確化を
責任の所在や指揮命令系統とその実態などについて職制を検証のうえ、正社員が担うべき役割と責任、契約社員が担うべき役割と責任の範囲に関し、業務実態を踏まえて労使協議を徹底し「指針」を確立すべきである。検討にあたっては、人件費削減の効果よりも、安全、サービス、社会的な信頼性の観点からの議論を基礎に置くべきことは言うまでもない。
(2) 契約社員の導入や業務の外注化への対応指針
一方で、社会動向や社員減などJRの経営環境が変化する中で、JR各社では、契約社員の導入をはじめとする雇用の多様化や業務の外注化などが進んでいる。すでに一部では、駅などで契約社員が多数導入され、窓口対応の中心として働いている会社もある。
こうした情勢を踏まえ、将来を見据えて、正社員と契約社員との適正な役割分担を求める立場からの真摯な議論が求められる。
単に人件費抑制だけを目的とする、契約社員の導入や業務の外注化などの安易な施策は認められない。とくに、安全、サービス、社会的信頼性の観点からの検証が必要である。
合理性、納得性の高い契約社員の処遇を目指して
また、正社員と契約社員との賃金格差が大きい一方で、役割や責任、業務内容の分担が明確でなく、職務や職責との矛盾も明らかになっているほか、契約社員の労働意欲の面でも問題が起こっている。
「同一価値労働・同一賃金」の視点から、納得できる賃金・処遇制度の確立、均等待遇の実現に取り組む必要がある。また、正社員化への道を確保して意欲を向上するとともに、不安定な非典型労働者の立場での安易な長期雇用をさせない取り組みも重要である。なお、将来的には、連合が目指す「ワークシェアリング」 *を指向した議論が必要である。
* 連合は、典型・非典型、正規・非正規といった区分けそのものがなくなる働き方、つまり、所定時間による差異だけがある働き方を基本とする、オランダをモデルとした「ワークシェアリング」の実現を求めている。そのためには、同一業務であれば、労働時間の長短や雇用・就労形態に関わらず、賃金の時間単価が同じである均等待遇(同一価値労働・同一賃金)の確立が前提となる。
(3) 効率化施策に対する交渉、検証の強化
すでにメンテナンス部門では正社員の業務は管理、発注が中心で、実務作業の多くが外注化されている。こうした中、会社によってはグループ企業などへの出向を通じて、JRの正社員の人材育成、技術向上が進められている実態も少なくない。
効率化での議論徹底と到達点の明確化
業務の効率化、委託化・外注化などの施策にあたっては、安全、サービス、雇用の観点から労使の議論を徹底する必要がある。とくに、安全面でのチェックが最も重要である。社会的な信頼を損なう施策は認められない。社員数の減少に伴う効率化が避けられないことは理解するが、人員削減ありきの施策であってはならない。
安全性やサービス、労働環境、業務内容の向上などについて、メリットを生み出し、労使双方が合意できる施策を目指すことを念頭に、施策を実施すべきである。
また、今後の要員や労務構成の展望を見通して、要員計画、業務・保安体制、サービス、職場環境などの中長期的な到達点を明らかにすることを求める。その議論に基づき、個別の施策の目的や効果、合理性について検証する必要がある。
出向者の役割や目的の明確化
また、社員の出向にあたっては、人材育成や技術、技能の継承などの観点から、出向者の役割、位置づけの明確化と、目的、計画を明らかにしたうえでの人事運用を求める。とくに、人材育成や技術、技能の継承、向上について、十分に配慮すべきである。
1-3 技術、技能の継承と安全性向上への環境整備
(1) 技術、技能の継承を最重要課題に位置付けた対策強化を
JR各社で急速に進むベテラン社員の大量退職と社員数の減少が職場での技術、技能の低下につながり、安全面などで看過できない実態にある。JR各社はこの問題について、より深刻な危機感を持たなければならない。技術、技能の継承と安全性の向上は、JRの経営における最重要課題として認識する必要がある。
技術、技能を確実に継承できる体制づくりを
ベテラン社員が退職する中で、技術、技能を確実に継承できる体制をつくる必要がある。各系統毎に、職場で求められる技術、技能を明確化し、それを習得するために必要な人事運用や教育などの実効ある具体策を確立するよう求める。労働組合の側からも、現場の実態や意見に基づき、積極的に提言し、徹底した検証議論を行うべきである。
また、日常業務でのOJTは最も重要だが、効率化が進む中で、それだけに任せることはできない。OFF−JTを重視した研修の充実と、真に技術向上に資する教材や環境の整備を強く求める。高齢者やベテランの能力を生かした技術向上の対策も有効である。
工務や車両などの技術、メンテナンス部門では、実務作業の外注化が相当進んでおり、グループ企業を含めた技術力向上の視点が求められる。グループ企業との人材交流や研修教育の充実などを通じて、中期的な人事運用と技術、技能の継承のための具体的な「指針」を確立し、戦略的、計画的な対応を進めることが必要である。
(2) 技術、技能の把握と評価、処遇への反映
実効ある技術、技能の継承のためには、職場や個人のレベルの実態に関する把握、検証を行うほか、それを公正に評価し、動機付ける処遇制度や人事運用なども重要である。資格取得や自己啓発の支援も充実させるべきである。
業務に精通した、意欲ある優秀な社員を育成するとともに、そうした者が上位職に就き、職場をマネジメントしていく人事運用や処遇などの制度と企業風土を築く必要がある。一方で、職場で地道に働き、経験、知識、技術、技能を積む社員の意欲向上を支援していくことも重要である。専門的な分野では、技術、技能を極めたエキスパートを育成する人事運用も検討すべきである。
1-4 安心と働きがいの持てる高齢者雇用の実現にむけて
(1) 高齢者雇用の基本的な考え方
高齢者雇用と積極的な活用は、少子高齢化が進展する中、大量退職が続くJRにとって今後の最重要課題のひとつである。2001年4月からの年金満額支給年齢の引き上げに伴い、JR各社では一定の高齢者雇用の制度を導入したが、内容は不十分であり、選考が不透明であるなど、運用上の問題点も多い。また、グループでの再雇用を制度化したことで、グループ企業の高齢者雇用に悪影響が及んでいる実態もある。
JR連合は、当面、希望者は65歳まで働くことができ、年金支給との空白のない雇用のしくみをつくること、高齢者の意欲や能力を生かした働きがいの持てる労働環境を整備することを求めて取り組むこととする。
なお、第159国会で「高年齢者雇用安定法改正案」が審議され、65歳までの雇用義務を求める動きが進んでいるが、抜け道が多く様々な点で実効性を疑う内容となっている。労使双方がメリットを享受できる持続可能な制度づくりと運用に努めていく必要があり、労働組合が果たすべき役割は大きいと考える。
(2) JR本体による65歳までの雇用確保の実現を
高齢者は、勤労意欲や経済的、体力的な事情に大きな差があり、第二の人生を求めて早期退職を希望する者も多い。一律の定年延長でなく、当面は、65歳までの再雇用を基本に、社員の希望や事情に応じて短時間勤務や業務負担の軽減などのコースも選択できるしくみが望ましい。個人の事情に応じた「緩やかな引退」を指向すべきである。希望者全員を採用できる、選考差別のない透明性あるしくみづくりを確立し、年金満額支給までの空白をつくらない制度を求める。在職老齢年金や高齢者雇用に関する助成金を活用し、生計費に見合った賃金水準を確保するための議論も必要である。
またJR社員だけでなく、グループ社員にも配慮した高齢者の雇用政策を確立する必要がある。再雇用先はJR本体を基本とし、グループと共存できる制度の確立を目指す。すでにJRとグループとの人事運用が混合しているメンテナンス部門などでは、実態を踏まえて慎重な検討を進める必要がある。
(3) 高齢者の意欲や能力を生かした働きがいの持てる環境整備を
現在のJRは、旧定年年齢(55歳)で大きな節目があり、それ以降は、処遇面からみて、社員にとって労働意欲の湧くしくみになっているとは言えない。労働意欲の低下は、労使ともにデメリットが大きい。また、シニア層、高齢者は経験、技術、技能、知識が豊富であり、積極的な活用がなされるべきであり、本人はもとより、会社にとってもメリットは大きい。高齢者が意欲や能力を発揮できる労働環境を整備すべきである。65歳までの再雇用制度の確立を含め、退職までの働きがいの持てる環境づくりを求める。
55歳以降の賃金改善と意欲を持って働ける環境整備を
そのためには、シニア層の賃金の改善、職務、職責のあり方、社内での地位や位置づけの見直しなどを進めるべきである。
55歳以降の賃金は、JR各社ともに徐々に改善が進んでいるものの、依然として賃金が減額される制度設計となっている。人事運用の上でも昇進、昇格が停止するなどの節目を迎え、社員にとって労働意欲の湧くしくみになっているとは言えない。労働意欲の低下は、労使ともにデメリットが大きい。55歳以降も、賃金の改善をはじめ、社員が意欲や能力を発揮できる労働環境を整備すべきである。すでに大量退職は概ね峠を越えつつあることから、事実上残っている55歳での役職定年のあり方や、昇格、昇職の実施などについても見直しを検討し、意欲の湧く賃金、雇用制度の確立にむけて取り組むべきである。
また、シニア層、高齢者の能力を仕事に積極的に生かす環境づくりを進めるべきである。中でも、技術、技能の継承、向上への高齢者の能力活用は非常に重要かつ有用である。中長期的な要員や業務体制を展望し、早急な対策が求められる。また、高齢者の経験や知識を活用して旅客サービスや収入拡大などの分野に生かしていくことも検討すべきである。
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「賃金は最大の労働条件」としてベア要求を堅持 求心力のある春季生活闘争戦略の組み立てと賃上げ目標値確立 新たな賃金・処遇制度の検討のあり方 |
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2-1 春季生活闘争の今後の基本方向
(1) 「賃金は最大の労働条件」としてベア要求堅持を
わが国では、経営側がベースアップや賃金水準引き上げを否定し、業績は一時金反映を主張しているほか、ほとんどの産別、単組がベア要求もできないという、きわめて厳しい環境下にある。しかし、JR各社が組合員の生産性向上で堅調に利益を確保する中、グループ労組への相乗効果も考慮すれば、中期的にはベア要求を放棄すべきではないと考える。「賃金は最大の労働条件」との認識が変わるものではなく、今後も公正な成果配分を求めていく。
(2) 全産業平均との格差是正の実現
JR連合は2002年度に「賃金問題専門委員会」での討議を通じ、春季生活闘争改革の方針として、当時2.2ポイントと分析した賃金格差を3年間で是正するとの中期目標と、総合生活改善闘争の指向を提起した。JRはベアゼロ妥結が続いたが、定期昇給を確実に確保することができた。社会的な賃金水準の低下に伴い、目標としてきた全産業1千名以上平均との格差は、2003春季生活闘争後で0.6ポイントとなり、2004春季生活闘争で達成できたと推定される。
詳細は、今夏に発表される厚生労働省「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」で検証する。
(3) 実効ある総合生活改善を目指して
ベア要求や賃上げに対する認識は変わるものではないが、2002春季生活闘争以降、3年連続でベアゼロ妥結となり、目標である全産業平均(1千名以上)との格差是正が達成される中、総合的な生活改善闘争としての要求方式や交渉方法などの戦略を組み立てるとともに、賃金要求については、説得力のある産別の目標値を確立する必要がある。2002年度「賃金問題専門委員会報告」の中期方針に基づき、実効ある総合生活改善への取り組みを指向する。また、グループ労組への相乗効果も考慮し、わかりやすく、運動の求心力の持てる要求、運動となるよう配慮しなければならない。
今後の賃上げ要求に関する基本的な考え方
JR連合平均では、目標としてきた全産業平均(1千名以上)に到達したと想定されることから、これまでの格差是正の要求根拠については区切りをつけ、これに代わる、新たな説得力ある根拠を確立する。
JR連合独自のポイント年齢別の目標値を設定するが、JR三島、貨物の組合は、なお残る全産業や製造業平均(各1千名以上)との格差是正も根拠として取り組む。
賃上げ以外の要求の春季生活闘争時期への集中化
新たな春季生活闘争要求は、@柱となる賃金引き上げに加えて、A一時金、諸手当などの賃金関連の課題、B労働時間・休日、仕事と家庭の両立支援、福利厚生などの労働条件の課題、さらに、C契約社員の賃金、労働条件の改善の課題など、労働協約改訂関連の事項を含め、従来以上に要求の内容を春季生活闘争時期に集中化し、可能な限り、統一的な目標値を掲げて交渉を展開していくこととする。
「賃金問題専門委員会」の設置と検討
第13回大会後、速やかに「賃金問題専門委員会」を設置し、2005春季生活闘争以降の具体的な目標値と要求、交渉のあり方について議論のうえ、2004年11月までに結論を得ることとする。
2-2 新たな要求設定の考え方
(1) 賃金引き上げの目標設定と統一要求の考え方
定昇、定昇見合い分の確保は、賃金カーブを維持するための前提であり、必ず要求し確保する絶対条件として位置付ける。また、昇格数についても、賃金の重要な構成要素であることから労使の確認を行う。
賃金引き上げ(ベースアップ)については、他の同規模の産業や企業、JRと同種の職務や職責などの賃金水準と、JR連合の賃金水準との横断的な比較分析を通じ、年齢・勤続年数毎に合理性のある、JR連合独自のポイント別の到達目標値を設定し、要求根拠とする。電力、ガス業などの上位業種との格差是正を単純に目指す考え方は採用しない。なお、職種別の設定のあり方は、今後の検討課題とする。
全産業平均、製造業平均(1千名以上)の賃金水準に到達していないJR三島会社の各単組と貨物鉄産労は、引き続き、これらの水準への格差是正も要求根拠とする。
JR各単組が必ず到達すべき年齢別の賃金水準として「ミニマム目標値」の設定についても検討する。なお、ミニマム目標値は、「同一価値労働・同一賃金」の視点から、契約社員やグループ労組の目標水準の指標としても活用可能である。
JR連合の統一要求に基づく各単組の統一戦線の確立
JR連合は、到達目標値と要求根拠に基づき賃上げ統一要求を設定するとともに、各単組はこの要求を遵守し、統一戦線の確立に最大限努めることとする。なお、個別か平均かの賃上げ要求方式は、各単組が組織面や運動面の事情を考慮して検討することになるが、平均方式を採用した場合でも、ポイント賃金の到達目標を要求根拠として明示する必要がある。
(2) 賃金関連の条件改善
総合生活改善にむけ、春季生活闘争時に、賃金関連項目を可能な限り要求に盛り込んでいくべきである。
都市手当(地域手当、エリア手当)と扶養手当(家族手当)は、従来、配分交渉の中で対応してきたが、交渉の枠組みを見直し、春季生活闘争時に別個に要求、交渉することも検討する。都市手当では、級地範囲の見直しなどの矛盾点の是正と支給率引き上げを、扶養手当では、少子・高齢化対策から、子供や親の給付引き上げ要求などを中心に検討する。
春季生活闘争時期の要求の集中化
諸手当や労働時間・休日などの課題は、おもに労働協約改訂(JR東海、西日本、四国、九州は秋に交渉)で議論されてきたが、可能な限り、春季生活闘争時に要求、交渉を行うよう努める。JR連合は、JR各社の労働条件比較や他産業、他企業の動向の分析を行い、可能な課題については統一目標設定に取り組むこととする。
なお、一時金(年間臨給、夏季手当)については、各単組が経営状況やメリットを考慮して、同時要求も積極的に検討する。今日、JR各社は「一時金で業績を反映する」との傾向が強まっていることから、業績が比較的好調な企業では、同時期に交渉することで、賃上げ否定論と一時金改善との関係についても問題提起し、最大限の成果を引き出すために交渉を強化すべきである。
このほか、生活関連、仕事関連の諸手当の改善についても、可能な限り、要求のうえ交渉する。また、賃金引き上げが進まない一方で、税金や社会保険料など国民負担が増す厳しい環境の中、可処分所得を拡大することにも着目し、住宅、育児、教育、介護、年金、医療、財産形成などについて、福利厚生の視点も含め、幅広く議論することも重要である。
契約社員の処遇改善への取り組みの強化
年々社員数が増加する契約社員の賃金、労働条件改善の取り組みをさらに強化しなければならない。「同一価値労働・同一賃金」の考え方や、JR連合の「ミニマム目標値」も参考にし、中期的な視点から、納得性のある賃金、処遇の実現を目指して交渉を深める必要がある。併せて、契約社員の組織化を進めなければならないことは言うまでもない。
(3) 労働諸条件の要求と改善を
賃金以外の労働諸条件では、労働時間短縮と休日増、労働時間管理の適正化、仕事と家庭の両立支援、高齢者雇用、福利厚生などの課題について、統一要求の設定も含め、春季生活闘争時に要求、交渉を行っていくべきである。
具体的には後述「3.仕事と家庭を両立できる先進産業を目指して」の指針に基づき、目標設定を行い、要求化を進めることとする。
2-3 働きがいの持てる公正な賃金・処遇制度のあり方
(1) あるべき賃金・処遇制度についての基本的な考え方
社会環境、JRの経営環境や雇用、業務体制などの急速な変化の中で、現状の賃金、処遇制度は変革を迫られる可能性が高いほか、働く者の立場から主体的に改革すべき点も少なくない。
制度改正の議論の前提として雇用や処遇の認識共有化を
制度を論じる前提として、JR、鉄道業で守るべき雇用の基本理念と現行の長所と問題点について議論し、求められる雇用、働き方、処遇、人材育成のあり方などについて、労使で認識を共有化すべきである。どの賃金制度を採用するかは、企業の人材や処遇に対する考え方、文化、風土によって判断すべきである。さらに、制度のあり方以上に、適正な運用を確保することが重要である。
鉄道業には、社員の職責や安全に対するモラルの維持、年功による技術、技能、経験、知識、判断能力、指導力の向上などが求められ、そのためには、安定した長期雇用と、職能やライフステージに応じた一定の年功賃金が重要であると考える。このことを前提とした議論が必要である。
(2) 現行の賃金・処遇制度の問題点と改善の方向
JR各社の賃金・処遇制度は、2000年度より抜本改正したJR西日本を除き、等級表に基づく総合決定給、年功給型の賃金制度を柱とする処遇制度となっている。
従来型の制度には、適正な運用がなされない場合、とくに昇進制度、評価制度が不透明性で恣意的に実施される危険が大きい。これがJR東日本などでの極端な組合差別につながっている。また、職名ごとの業務内容が不明確であるなど職制が適正に運用されていない面があるほか、業務内容や職責と賃金との整合性も十分にとれておらず、職名が低くても上位職の仕事を行ったり、責任が高まる割には賃金が上がらないなどの問題がある。この結果、上位職への昇進意欲が湧きにくい処遇システムとなっている点は否定できない。これらの現状制度の問題点、および、新たな時代に求められる課題を中心に、改善の方向などについて討議を深め、努力が報われる公正な人事システムを確立すべく検討を進めなければならない。
ただし、これらには、制度上の問題点以外に、会社の問題意識の不足と運用上の課題から発生する問題点も少なくない。問題の所在を明らかにしたうえで、検討を進める必要がある。
なお、JR西日本の制度についても、私たちが求める雇用、労働の基本理念に基づき、実態を踏まえた検証と改善に取り組むこととする。
透明性のある評価制度の確立を
透明性、納得性の高い評価、査定制度の確立は、働きがいの向上、企業の活性化のためにきわめて重要な課題である。評価制度の具体的な制度設計には詳細な検討を要するが、少なくとも、評価項目の明示、評価内容の公表、本人へのフィードバックなどのルールを確立し、恣意的な運用を許さない公正な制度づくりに取り組む必要がある。
また、社員の意欲を増進させるとともに、仕事の職業能力やマネジメント能力を磨き、多くの社員が昇格や昇職を積極的に目指すような活力ある職場づくりも必要である。そのために、職制と職責を再整理のうえ、職名ごとの職務内容を明確化するなど、昇格、昇職のインセンティブを高める環境も整備していく必要がある。
(3) 新たな時代に対応を迫られる雇用、労働環境の変化
今後の職場の変化として、社員数の減少と機械化、効率化、外注化の進展、契約社員の拡大などが進み、正社員の役割や人材育成の重要性が高まると想定される。社員の能力や意欲を引き出し、努力が報われる適正な処遇システム確立の重要性がさらに高まると考えられる。
また、若手の生活観、勤労観が変化してきているほか、職業人生や生活を選択、設計できる、自立した組合員を育成することも重要な課題である。こうした観点から、職業能力の向上や自立した生活設計を考慮した賃金カーブ設計のあり方についても検討が必要である。
このほか、契約社員の導入など雇用の多様化、外注化の拡大とグループ経営の重要性の高まりに伴い、契約社員、グループ社員も含めた、合理性のある人事運用や賃金・処遇制度の確立が求められる。「同一価値労働・同一賃金」を指向する賃金体系づくりや、契約社員から正社員への登用なども検討しなければならない。
(4) 新たな賃金・処遇制度の討議ポイント
現行制度の問題点や、新たな時代に対応を迫られる環境変化などを考慮し、制度の改革を求める場合には、おもに以下のポイントについて労使が議論し、制度設計について徹底した協議を進めるべきである。
なお、会社主導の検討と提案に委ねた議論では、働く者の意見反映が困難となり、組合員の理解と納得も得られにくい。制度改革を求める場合は、労働組合の側からの主体的な参画が必要である。
職制と処遇の明確な整理
議論すべきポイントとしては、まず、職制と処遇の整理がある。職名と職責、業務内容とを整理し、これに応じた賃金、昇進の制度設計を考えなければならない。指導担当や交番担当など乗務員の内勤や、工務関係の職場で重い責任を持つ者や工場の作業班を統括する者など、責任の割に処遇が低い主任クラスの対策など、具体的な職務や人事運用、人材育成を想定した議論も求められる。
賃金カーブの設計と賃金形態
次に、賃金カーブのあり方を考えなければならない。生計費を考慮した年功型カーブの維持、若年層での立ち上げの早期化、職制の整理と連動した上位職の魅力付けなどが課題であり、これを可能とする賃金形態を構築する必要がある。賃金の形態としては、「年齢給」と「職能・仕事給」とを分けた体系などが検討課題となると考えられる。なお、社会的に導入が拡大する「能力給」「成果給」、あるいは「年俸制」などの賃金体系は、社員の高いモラルを基礎とする安全、安定輸送が最重要であるJRにはなじまないと考える。
透明性、納得性の高い評価制度の確立
そして、前述した透明性、納得性の高い評価制度の確立も最重要課題である。賃金、処遇制度への信頼確保が、制度改革の成否を握る。とくに、きわめて恣意的な運用が横行するJR東日本では、評価制度の抜本見直しが最重要の緊急課題である。
移行措置の確保
新たな賃金・処遇制度の設計は、今後のJRでの就労期間の長い若手世代を意識した内容とならざるを得ない。従って、中堅層以降で新制度による生涯賃金ベースでの損失が発生することも想定される。新制度導入にあたっては、実質的な損害を生じさせないための移行措置を確保することも重要な課題となる。
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| 「仕事と家庭の両立」の意識改革と男女共同参画への取り組み強化を 家庭や個人生活の充実が仕事の活力の源泉である。子供を産み育てることは、人生最大の喜びとなるべきである。少子化が進む日本の将来にとってもきわめて重要な課題である。社員が健全な家庭を築くための支援は企業の責務といえる。JR労使ともに意識を改革し、仕事と家庭を両立できる先進産業を目指すべきである。 また、「男女共同参画」は、「仕事と家庭の両立」の延長にある。「次世代育成支援対策推進法」に基づく企業の行動計画策定と合わせ、労使をあげて実効ある対策を強化しなければならない。意識や理解の低さから制度が活用されていないケースもある。制度をわかりやすく社員や家族に周知する努力も必要である。また、女性の積極採用や職域や職場の拡大、出産、育児をしながら仕事を継続するための選択型の短時間勤務制度や、事情により、一旦退職した後の再雇用制度や導入などに取り組むべきである。 実効ある労働時間短縮と不払残業撲滅にむけて 時短を通じて仕事と家庭の両立を進めることも重要である。当面の制度改正は困難なことから、年休完全取得、時間外労働削減、割増単価引き上げに取り組み、3年間で地上職の年間総労働時間1800時間達成を目指す。労使の認識づくりや組合側からの運動、計画年休などの工夫、仕事のやり方の見直しと職場風土の改善などに取り組む必要がある。とくに長時間労働が恒常化するバス部門では、企業内での対応はもちろん、業界の体質改善にも取り組む必要がある。 不払残業撲滅は当然の運動であり、直ちに問題解決に取り組み、早期に検証を行うこととする。 |
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3-1 仕事と家庭の両立支援と男女共同参画の推進を
(1) 家庭や個人生活を尊重した雇用、労働環境づくり
JR各社は、家庭や個人の生活が、仕事の活力の源泉であることを忘れてはならない。また、子供を産み育てることは、人生最大の喜びとなるべきである。長期雇用の中で、人間性を尊重した雇用、労働環境を築き、将来ともに、家庭生活が重視、配慮されるJRの企業、職場の環境づくりが必要である。健全な家庭を築くことが仕事の前提であり、それを支援することは企業の責務である。出産、育児、教育、介護などの支援は、雇用にあたっての重要な要素のひとつとして捉えるべきである。
JR労使の意識を改革し仕事と家庭を両立できる先進企業を目指す
鉄道業は、これまで男性社会としての色彩が強く、家庭に対する配慮は決して高いとは言えない。「仕事と家庭の両立」に関する意識の低さや、家庭を犠牲にする仕事のやり方、風土を改めなければならない。そのために、労使双方の努力が必要である。
21世紀は家庭の充実に対する社会の認識が大きく高まる。JRはわが国の基幹産業として、仕事と家庭を両立できる先進企業を目指すべきである。JR連合としても、これを運動の最重要課題のひとつに位置づけ、各組合との連携の下、実現を強く求めて取り組むこととする。
(2) 男女が共同参画できる職場環境の確立へ
「男女共同参画」は、「仕事と家庭の両立」の延長にある。つまり、家庭や個人生活の重要性を労使が真に認識し、仕事との両立に十分な配慮を払うことが、男女共同参画を実現するための基礎となる。女性の職場進出を促進し、仕事をしながら出産、育児ができ、家庭との両立をはかれる環境を整備することは、日本の将来のためにもきわめて重要な課題である。
制度の周知と実効ある運用の充実を
「仕事と家庭の両立」を支援する各種制度が、職場や社員の意識や理解の低さから十分に活用されていないケースも少なくない。まず、勉強会、説明会の開催やハンドブックの作成、ホームページや電子メールの活用など、制度やしくみをわかりやすく社員や家族に周知したり、申請手続きを大幅に簡素化するなどの努力も必要である。制度の取得に対する職場の理解を深めたり、要員対策など業務運営上の配慮を行うことも求められる。
また、JRは現業労働が中心で、変形勤務が多く、要員数も決められているなどの事情から「仕事と家庭の両立」、とりわけ出産、育児への配慮についての課題が多い。法律で定められた育児時間などの制度が使用されにくい実態にある。乗務員が妊娠した場合の職場配置など、人事運用上の課題も議論すべきである。実態を十分に踏まえ、実効ある対応についての検討が求められる。
人事、勤務制度の新設や充実を
実効ある「仕事と家庭の両立」「男女共同参画」を進めるために、新たな制度の確立や充実を求めたい。
まず、女性の積極採用と職域、職場の拡大を進めるべきである。休憩室、更衣室、トイレなど職場環境の整備を積極的に進め、女性進出の障害を早期に取り除く必要がある。その前提として、労使ともに、女性の職域拡大への門戸を自ら制限する意識や風土を改めるべきことは言うまでもない。大量退職と少子化の急速な進展の中、JRの健全な発展のためにも、女性の活躍が不可欠である。
また、仕事を続けながら育児を両立できるよう、1日の勤務時間を短くする短時間勤務制度を導入し、それぞれの事情に応じて一定期間選択できるようなしくみも確立すべきである。さらに、出産、育児などで一旦退社した場合の再雇用制度も早期に導入すべきである。社員のみならず、JR各社にとっても、経験、知識、技能を生かすことは非常に有益であると考える。
このほか、育児休職期間の延長や有給化、子供の看護や親の介護に対する休暇制度の拡充、実効あるセクハラ対策なども重要な課題である。JR各社ではセクハラ対策の制度はあるが、事態が大きくなることを嫌い報告を避けるなど、必ずしも有効に機能しているとは言えない。真の実態の把握に努めるとともに実効ある対策を講じられるよう、きめ細かな対応が求められる。
「仕事と家庭の両立」支援へ福利厚生制度の充実を
時代の変化に伴い、福利厚生の制度再編が進んでいる。「仕事と家庭の両立支援」は、組合員の自立支援、健康増進などと並び、21世紀に充実強化が求められる福利厚生制度の重要な分野である。出産、育児、教育など、子育てに関連する支援制度、介護、看護の支援制度などについて、人事・勤務制度、雇用制度での支援のほか、経済的な側面からの支援も充実させていくべきである。社内の福利厚生諸制度の拡充のほか、互助会(共済会、福祉会)や健保組合での対応や部外制度の活用など、労使で広範な視点から中期的な検討を行い、充実を進めていく必要がある。
契約社員やグループ企業における対策への配慮
契約社員やグループ企業における「仕事と家庭の両立」や「男女共同参画」の環境づくりについても、正社員と同様の問題意識に基づき、労使をあげて取り組みを強化すべきである。グループ労組では、エリア連合と連携し、必要に応じて労使協議を支援する取り組みなどを検討する。
(3) JR労使をあげた取り組み強化を
2003年7月には「次世代育成支援対策推進法」が成立し、企業は、子供を産み育てる環境づくりのための「行動計画」を策定することが義務付けられたほか、育児休業期間延長などの法改正も進んでいる。JR東日本は2004年4月より、仕事と育児の両立を支援する「Fプログラム」をスタートさせ、女性社員の採用・活躍の場の拡大、再就職支援制度など制度の充実、職場風土の改善などの取り組みに着手した。
しかし、JR各社での女性の活用や、「仕事と家庭の両立」を支援する環境整備はまだまだ立ち遅れている。男女共同参画の重要性の認識を労使で、あるいは組合員の間で十分に共有化する必要がある。各労組が「次世代法」に基づく企業の行動計画策定の議論に積極的に参画し、労使をあげて実効ある対策づくりへ取り組みを強化しなければならない。
各単組は可能な限り具体的に「仕事と家庭の両立」支援の環境整備への目標を明らかにするとともに、JR連合は、各年度毎に検証を行い、2006年度末までにすべての会社で仕事と家庭、とりわけ育児との両立を支援する具体的なしくみを策定し、実効ある運用を確立することを目指して取り組みむこととする。
(4) JR連合運動への女性の積極参加の促進を
「仕事と家庭の両立」の議論の実効性を高めるためには、女性組合員のJR連合運動への積極参加が求められる。女性の立場から問題を提起し、建設的な活動を創造していかなければならない。現在、青年女性委員会の段階では、女性の参加がかなり進んできたが、今後はこの動きをさらに推進する必要がある。単組の機関役員の育成や、大会、各種集会、日常活動への参加を進め、女性の意見を運動に反映できる環境づくりに積極的に努めることとする。
(5) 予防医療の観点からの健康増進の対策強化を
このほか、福利厚生の面では、予防医療の観点からの、家族を含めた健康増進の対策も強化すべきである。万一の備えや医療制度の充実は重要であるが、心身ともに健やかに生活することが最も大切であることは言うまでもない。社員の予防医療に対する認識を強化し、自らが日頃から健康に留意する意識づけを行うとともに、職場での保健指導や健康診断項目の充実などの制度改善、人間ドックの受診率向上など現状の運用面での課題にも着目し、労使をあげたきめ細かな取り組みも行う必要がある。また、メンタルヘルスの重要性も高まっている。職場での日常の仕事の場を通じたケアや、プライバシーに配慮した外部の相談窓口の設置などについて検討を進めるべきである。
3-2 労働時間短縮の中期目標とその実現にむけて
(1) 3年間で「地上職の年間総労働時間1800時間の実現」を
労働時間短縮を通じて「仕事と家庭の両立」を実現し人生を充実させることも、生活改善のきわめて重要な要素である。
JR発足後、社会の流れもあり、労働時間、休日の改善が着実に進んできたが、厳しい社会、経済情勢の中で、近年は労働時間の短縮や休日数の拡大が社会的に進みにくい環境にある。JR各社の労働時間、休日数は、一定の水準を確保しており、とくに、他産業と比較して時間外労働が短く、平均でみれば、年休取得率が比較的高いことが特徴である(「資料編」p.42参照)。交通運輸産業の中では、先進的な位置付けにある。乗務員では、すでに年間総労働時間1800時間が達成されているほか、地上職でも、一部の組合では、実現まであと一歩のところにきている。
こうした情勢を踏まえ、JR連合は2006年度末までの3年間で、「地上職の年間総労働時間1800時間の実現」を目指すこととする。
当面は年休完全取得と時間外労働削減で目標達成を
大量退職が続き厳しい要員状況にある今日のJRの情勢で、当面は、労働時間制度の改正は困難とみなければならない。今後も、休日数の拡大を柱とする所定内労働時間の短縮へ労使協議を進める一方で、当面は、年休の完全取得、時間外・休日労働のさらなる削減、さらに時間外・休日労働の割増単価引き上げに取り組むことで、「地上職の年間総労働時間1800時間の実現」を目指すこととする。
年休は、JR連合平均で8割近い取得率となっているが、職場ごとにばらつきがあるほか、退職時の大量取得などで取得が制限されるなどの問題もある。厳しい要員情勢で取得率を高めることは難しいが、職場の実態を踏まえたきめ細かな対策により、100%取得を目指すこととする。計画年休などの工夫も検討すべきである。
時間外労働は、JR連合平均で11時間となっており、連合や交通運輸産業の中では短いが、職場による格差が大きいなどの問題がある。割増単価の引き上げ要求などとともに、実態を踏まえた議論を通じて、さらなる縮減や問題解決に取り組むこととする。
なお、年休完全取得や時間外労働削減のためには、労使協議だけでなく、単組の指導により職場運動として完全取得を進める取り組みも進める必要がある。
(2) 時短の必要性を労使で共有化し業務見直しなどの協議推進を
労働時間制度の見直しはもちろん、年休完全取得や時間外労働削減などの対策には、要員や業務体制の議論と結合した検討が必要である。仕事のやり方の見直し、高齢者活用のあり方、契約社員や外注化のあり方など、広範な検討が求められる。
労働時間短縮、休日増を通じた「仕事と家庭との両立」を実現し、社員の生活改善を進めることの重要性や、そもそも仕事は所定労働時間内に終わるべきで時間外労働はあくまでも例外であること、年休はすべて取得することが前提であることなどの基本認識を労使で共有化し、労使で労働時間短縮の目標達成にむけて真摯に議論することを強く求める。また、合わせて職場や組合員の風土や意識を改めることも大切である。家庭や個人生活の重視と時短を求める意識を醸成し、とくに非現業部門など、仕事が非定型で時間管理があいまいな部署では、仕事のやり方の見直しや、職場をあげた時短を進めるしくみづくりなどに取り組む必要がある。
なお、労働基準法の改正や社会の動向から、裁量労働制の非現業部門などへの拡大も想定されるが、現在でも時間管理が不適正でサービス残業が目立つ実態を踏まえ、JR連合は、研究色など特殊な職種を除き、当面は制度拡大を認めない姿勢で対処することとする。
「仕事と家庭の両立」にむけた時間短縮の推進
労働時間短縮や休日増の協議にあたっては、「仕事と家庭の両立」の支援に最大の配慮を払うべきである。配偶者出産休暇、子供の看護休暇、育児休業期間、育児短時間勤務、介護休業の充実など、「仕事と家庭の両立」の支援に有効な有給休暇、休業制度、短時間時間制度の新設、充実にも力を入れなければならない。
JRバス各社での長時間労働への対策強化
バス部門では時間外労働、休日労働は当然のように行われ、長時間労働が恒常化している。社員の生活改善の視点はもちろん、安全面からも対策強化が求められる。
バス運転者などの乗務時間、休憩時間については、労働条件の改善や過労運転の防止の観点から、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)で基準を定めているが、法的拘束力を持たず事業者の違反が絶えない。規制緩和が進む中で、現状のままでは改善基準が形骸化し、バス運転者の労働条件や安全性の低下につながる危険がきわめて大きい。
JRバス各社での企業内で「改善基準」を守り、時間外労働を削減するための協議や運動を進めるとともに、業界の体質改善や告示の法制化などにむけても取り組むこととする。
(3) 不払残業の即時撲滅にむけた徹底した取り組みを
時間管理を適正化し、不払残業を撲滅することは企業の当然の責務である。残念ながら、大企業を含めて法律違反が横行し、摘発される事態が続いている。
JRも例外ではない。この間、JR内の各組合は労使交渉を通じて改善を進めてきたが、今後は、さらに職場の実態把握と問題点の洗い出し、とくに非現業部門など問題のある職場の監視を強化、労使交渉と職場での運動の強化を通じて、直ちに不払残業撲滅を実現しなければならない。JR連合は厳しい認識を持って取り組みを進めることとする。
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JRグループの雇用・労働に対する認識づくりと対策強化を 賃金・労働条件改善への具体的な取り組みを グループ労組の組織・運動の強化を |
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4-1 JRグループの共栄と雇用・労働の充実を求める意識づくり
(1) JRグループの雇用・労働への認識づくりと対策の強化を
今日のJRはグループ全体として運営されている。JR各社の社員数が減少し効率化が進む一方、鉄道の実務作業の多くをグループ企業が担っている。関連事業もグループ企業により運営されJRの経営に大きく貢献している。安全面、サービス面をはじめ、国民・利用者に信頼されるJRを築き、健全に発展させていくには、グループ企業に働くすべて者のモラルや安心、働きがいを高めていく必要がある。外部の目から見れば、JR本体の社員かJRグループ企業の社員かは、何ら関係のないことである。JRグループ企業全体としての問題認識と対策の実施が必要である。
社会的にグループでの連結経営が重視されており、JRにおいてもその傾向は年々強まっている。もはやグループ企業なしにJRの経営は成り立たない。
低位に置かれるグループ企業の賃金・労働条件
グループの役割が大きく高まる一方、働く者の雇用は不安定で、賃金をはじめとする労働条件は低位に置かれている。JR各社は、依然としてJRとグループとの関係を「主従関係」として捉えており、グループ企業に働く社員の労働環境の立ち遅れと整備の緊急性、重要性に対する認識が希薄であると言わざるを得ない。
JRグループとして社会的に誇りの持てる賃金や労働条件を確立することは、企業の責務である。JR各社を含め、企業は、定期昇給をはじめとする賃金制度の確立や、生計費に見合った賃金カーブの明示、労働時間管理の適正化など、最低限の働くルールづくりや運用すら十分にできていない現状を深刻に受け止めなければならない。不払残業など法違反を黙認してよいはずがない。
JRグループ社員の賃金・労働の認識づくりと対策の強化を
まず、JR各社に、グループ社員の雇用・労働に対する認識を高めることが必要である。グループ企業経営者の認識づくりと資質の向上も重要である。そして、JR各社、グループ企業は、グループ企業の社員の生活を安定させ、働く誇りを持てる環境整備を積極的に進めるよう強く求める。JR各社の指導も必要である。
JR連合は、エリア連合との連携の下、2003春季生活闘争より本格的なグループ労組支援の運動を開始し、賃金制度の確立など基礎的な取り組みに着手した。JR各単組も、JRグループ全体での雇用・労働の充実の重要性を改めて認識し、取り組みをさらに強化していくこととする。
(2) 雇用・労働の充実にむけた基本的な考え方
雇用・労働の充実にむけては、JRグループ企業の社員の生活安定と、JRグループに働く誇りを持てる賃金・労働条件の水準確保、環境整備に努めるべきである。
賃金面では、同規模企業の全産業平均の賃金水準への到達、ライフステージに応じた生計費確保を目指さなければならない。また、JRの正社員が行ってきた業務が、委託化、外注化されてきている実態を踏まえ、「同一価値労働・同一賃金」の視点から賃金水準の改善を進めることも必要である。JR連合グループ労組連絡会としての、年齢別最低賃金の確立にも検討を進めることとする。
また、人事運用、人材育成、技術、技能の継承、あるいは高齢者雇用の問題などについて、グループ企業とJR各社とは密接な関係にある。業務実態や将来展望を踏まえ、グループ全体としての検討を進める必要がある。労働組合の側からも積極的に問題提起し関与していくこととする。
このほか、立ち遅れる労働時間・休日制度や時間管理の適正化、家庭と仕事の両立支援などの課題などについても、実態を把握しながら、エリア連合との連携の下に、指針を示しながら環境整備に取り組む。グループ企業に働くパート・契約社員についても、同様の考え方に基づき、雇用、労働条件の整備に最大限取り組む必要がある。
3年間で最低限の条件整備へ取り組みを徹底
JR連合は、当面2006年度末までの3年間で、賃金、労働時間・休日制度と労働時間管理、労働条件部分を含めた労働協約の締結と適正な運用確保などの課題について、少なくとも最低限の条件整備を目指す。また、3年後に検証を行うこととする。
具体的には、エリア連合との連携の下、JRグループ労組対策プロジェクトや幹事会などで討議のうえ、可能な業種から具体的な目標値を設定し、取り組みの指針を確立する。目標値は2005春季生活闘争方針に反映する。
4-2 JRグループの賃金・労働条件改善にむけた具体的展開
(1) JRグループにふさわしい賃金制度の確立と水準確保
グループ労組の賃金制度は、毎年の定期昇給が確立した賃金制度がない、制度があっても昇給額が小さく、各年代ごとに生計費に見合った賃金カーブが描けない、運用があいまいであるなど、改善すべききわめて基礎的な問題点が多くある。まずは、すべての組合で、昇給制度の明確化と生計費に見合った賃金水準を確保できる賃金制度を確立しなければならない。春季生活闘争時だけでなく、通年の労使協議により取り組む必要がある。
JRグループ企業にふさわしい賃金水準確保を目指して
賃金水準については、「同一価値労働・同一賃金」の視点からJR各単組の「ミニマム目標値」を参考とするほか、同規模企業の全産業平均、連合が示す到達目標水準などを踏まえ、グループ労組の賃金実態を基に、可能な限り業種毎にJRグループ企業にふさわしい到達賃金水準を検討、確立し、実現にむけた取り組みを行うこととする。
なお、現在は「定昇・ベア込み」の平均賃上げの要求方式で、要求額は中心金額を設定したうえで、連合方針に基づく到達目標を別に設定している。グループ労組の実態から、当面はこの方式を継続するが、分科会などでの検討を進めながら、可能な業種から、より具体的な要求設定や金額提示を行うよう取り組むこととする。
また、2003春季生活闘争より、JR連合は「グループ労組春季生活闘争の手引き」の作成、実態調査の実施と分析の提起、エリア連合と連携したグループ労組の勉強会の開催など、グループ労組の賃金改善のための具体的な支援を開始した。今後は、JR連合の到達賃金水準などきめ細かな指針を提示し、さらなる支援の強化を行う。
(2) 労働時間短縮と時間管理の適正化の取り組み
グループ労組の労働時間・休日制度は、中には休日数が70日台の会社もあるほか、時間外労働が非常に長く、年間総労働時間をみても立ち遅れた実態にある。一部ではサービス残業が常態化しているとの調査結果もあり、法違反が行われている可能性もある。JR連合は改めて実態把握に努めて問題を分析し、実効ある労働時間短縮への取り組みを強化する。
まず、休日数については、週休完全二日制、年間休日数104日の実現を目標に置き、JRグループにふさわしい労働時間、休日の環境整備を目指す。少なくとも、隔週週休二日(78日)に国民の祝日(15日)を加えた93日を、すべての組合が到達すべき最低目標とする。
年間総労働時間については、所定内時間、時間外労働、年休取得の調査を行い、2006年度末までの3年間を展望し、実態を踏まえた段階的な目標を設定して改善に取り組む。とくに時間外労働については、36協定の内容や締結手続き、運用実態などの検証を行い、恒常的な長時間労働の是正にむけて取り組む。
JR各社との協議を通じた対応
労働時間短縮は、要員や業務の体制と密接に関わる問題であり、JR各社との協議も欠かせない。時短の推進の実効性を高めるため、エリア連合やJR各単組との連携を深め、JR各社との協議を進め、業務委託の体制、主管部の意識改革や指導強化などを求めていく。JRグループ企業として、恒常的な長時間労働を早急に是正し、社会に誇れる労働時間の制度、実態を築くことは重要な課題である。これらの実現のために、JR各社の自覚と責任に基づく強力な指導も求められる。
時間管理の適正化と不払残業の撲滅を徹底
各企業における労働時間管理、不払残業の実態把握に努め、不払残業の撲滅にむけた運動を強化する。労働時間管理のルールを適正に守ることは、企業の当然の責務であり、不払残業は明らかな法律違反である。JRグループ企業として到底許されるものではない。各グループ労組での労使協議を基本に、問題解決に取り組むこととするが、企業の悪意や怠慢などで目に余る場合、指摘にも関わらず改善がみられない場合に対しては、JR各社などへの告発や協議の徹底を行うなど、厳しい姿勢で臨むこととする。
(3) JRグループ全体での福利厚生の充実を
JRグループの社会的信頼とスケールメリットを生かし、JRグループ全体での福利厚生を充実することも重要な課題である。これにより、JRグループ企業の社員の求心力を高めることもできる。
具体的には、グループ内のホテル、レストラン、商業施設などの相互の割引利用、部外のホテル、レジャー・スポーツなどの施設のグループ全体での会員利用、各種共済保険の充実などが考えられる。各施設の利用促進につながる例や、スケールメリットを生かして原資を掛けずに特典を受けられるサービスなども多いはずである。グループ全体視点から、知恵を絞った積極的な検討を求める。JR各単組の労使協議を通じ、実現にむけ積極的に取り組むこととする。
4-3 雇用・労働の充実にむけてグループ労組の組織・運動の強化を
(1) グループ労組役員の育成強化と労使協議の充実
賃金、労働条件の改善を実現するためには、グループ労組の組織と運動の強化や、労使協議の充実が求められる。
JR連合の「手引き」の作成、勉強会の実施、交渉指導などのグループ労組支援については、従来の賃金制度の確立や水準引き上げの課題に加え、労働協約の締結や改訂、労働時間短縮と時間管理の適正化の課題などについても「マニュアル」を作成のうえ、エリア連合と連携して、グループ労組の具体的な指導に取り組むこととする。
グループ労組役員育成の取り組み
グループ労組の役員には、専従役員がほとんどおらず、大部分のリーダーは、組合経験が浅く、会社と対峙するための労働条件や労使関係などの専門的な知識や交渉能力は決して十分ではない。労使協議の実効を上げ、賃金、労働条件の改善を実現するためには、マニュアルや資料の整備に加え、組合役員の能力向上と組織運営の充実が不可欠である。
JR連合は、こうした問題認識に基づき、労働法、労働協約、賃金実務、労働条件の取り扱い、組織運営、職場での組合活動、安全衛生委員会の運営などの課題について、エリア連合と連携して、グループ労組役員のきめ細かな教育、指導を充実させていくこととする。
JRグループ全体での安全対策の取り組みの強化
グループ企業を含めてJRの鉄道業が運営されている実態の中で、JRグループ全体としての安全確保はきわめて重要な課題である。安全に関する労使協議の充実や安全衛生委員会の活用などを通じ、各グループ労組が取り組みを強化することとする。また、JR各単組は、エリア連合に加盟するグループ労組の意見や実態把握に努め、JR各社との協議に反映するなど、JRグループ全体での安全確保へ積極的に取り組む必要がある。
(2) 労働協約の整備と運用の適正化を求めて
グループ労組の労働協約は、大半の組合で「労使間の取り扱い」に限定され、賃金をはじめとする労働条件についての協定化は進んでいない。賃金などの労働条件は、交渉を通じて実現した労使の確認事項であり、労使協定で書面化のうえ、常に適正な運用がなされているか監視しなければならない。会社の恣意的な理解や運用を許してはならない。また、改訂交渉を通じて内容の充実をはかっていくことも必要である。
JR連合は、実態を踏まえて「マニュアル」を整備するとともに、エリア連合と連携し、グループ労組への具体的な支援を通じて労働条件を含めた労働協約の適正な締結にむけた取り組みを進める。当面2006年度末までの3年間で賃金制度に関する部分についての協定化を必ず行うこととし、このための取り組みを徹底する。
(3) グループ企業の組織づくりとパート・契約社員の組織化
JRグループ全体の雇用、労働条件を充実させるためには、可能な限り多くの企業でJR連合グループ労組を結成し、労使関係を構築することが重要である。現状では、JR連合のグループ労組は65組合に止まり、JR連合の組合が主力のJR東海、西日本、四国、九州の各社グループでも、残念ながら、組合が結成されている企業は少数である。
また、グループ労組でもパート、契約社員の導入が進み、正社員よりも非典型の労働者が多数となっている企業も少なくない。一方、パート、契約社員を組合員として組織化している組合はまだまだ少数であり、グループ労組が過半数を確保できない事業場も多い。正社員の賃金、労働条件も低位にある状況下で、パート、契約社員の条件改善に手が回らないとの意見もあるが、組合が労働者を真に代表し、賃金、労働条件の改善を進めるためには、非典型労働者を組織することも重要な課題である。
今後は、エリア連合と連携し、組合結成が可能な企業のリストアップや、JR各社への働き掛けなど、組織づくりにむけた取り組みを具体化することとする。また、グループ労組でのパート・契約社員の組織化については、エリア連合、グループ労組との連携の下、可能な組合から、実態を十分に踏まえながら、組合範囲の拡大への検討を進める。
単組の運動強化と労使関係の充実を通じた方針実現を
JR連合の方針や要求の実現には、単組の運動の強化が前提となる。職場を中心とする運動の充実を背景に、労使関係を強化することで、協議や交渉を通じて、私たちの考え方を会社施策に反映することができる。
労使対等の関係の構築には、労働協約のルールの整備、文言の改訂など形式面を充実させるとともに、組合の力量を強化することが非常に重要である。組織の原点である職場では、36協定に関連した職場の時間外労働や仕事の進め方などの問題点に関する協議や、安全衛生委員会での議論など、労使が実質的に協議できるしくみも多くある。これらが真に活用され、実効をあげているかも検証し、取り組みを充実させなければならない。
中でも、グループ労組の賃金、労働条件の底上げについては、エリア連合と連携した組織、運動の強化が欠かせない。また、グループ労組がまだまだ未成熟な実態にあることから、組合役員教育などの組織支援も重要である。
「中期労働政策ビジョン」をJR内単組、エリア連合とグループ労組の実態に即して具体化し、要求や労使の協議、交渉に反映するとともに、運動の強化によってこれを実現し、JR連合組合員と家族の雇用安定、働きがい向上、生活の改善につなげることを強く要請しておきたい。
国政への積極的な働き掛け
私たちの雇用、労働条件、生活を守り、充実を進めるためには、税制、雇用、年金、医療、育児を中心とする家庭と仕事の両立支援、介護など、労使間では解決できない問題が山積しているうえ、社会情勢の変化に伴い問題が深刻化し、課題の早期解決の重要性は増している。第159国会では年金改正法案が議論されたが、残念ながら、抜本改革とは程遠い改正で終結した。また、私たちの緊急課題として「JR被保険者の厚生年金保険料率の格差是正」の問題も残っている。「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の法制化も大きな課題である。また、最近は労働基準法、育児休業法、高年齢者雇用安定法の改正など、勤労者の雇用や生活に密接に関わる課題の議論が目白押しとなっている。
私たちは勤労者の立場から、問題を看過することなく、連合を通じた取り組みを主体に、JR連合の国会議員懇談会との連携も深めながら、積極的に国政に働き掛けることとする。また、中小企業の多い交通・運輸産業では、賃金水準の低下や長時間労働の恒常化など、労働条件の悪化が深刻な課題となっている。上述の自動車運転者の改善基準の問題をはじめ、業界の秩序形成と条件改善が急務である。JR連合は交通・運輸産業全体での雇用、労働の改善も視野に入れ、運動を展開していくこととしたい。
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