ゲストノベル

空をとべたらいいのになあ
 そうすれば、ぼくの服はきれいな水色
 絵の具をといたんじゃなくて
 もっと、もっと透明な水色に染まるのに

 海の中を泳げたらいいのになあ
 魚みたいに自由に、ゴーグルなんてしなくても
 そうすれば、ぼくの服はきれいな青色
 絵の具をといたんじゃなくて、
 もっともっと透明な青色に染まるのに・・・

 もしも、ぼくが月になったら、
 明るい黄色にそまるのかな
 ウサギが遊びに来てくれるかな
 やっぱりお餅をつくのかな

 子供の頃、僕は一人ぼっちだった。周りは大人ばかり。誰も遊んではく

れなかった。寂しいときもあったけど、そのうち僕は一人で遊ぶようにな

った。大人が遊んでくれなくても、もう遊び相手を見つけたから。

外へ出れば、遊び相手はどこにでもいた。草木は僕の話を聞いてくれるし、

風は旅の物語をかたってくれた。鳥や虫たちも、いろんなことを教えてく

れる先生だった。

僕には何故か大人達が教えてくれることよりも、こっちのほうがずっと大

切なことのように思えた。

いつの頃だろう、この大事な友達が僕の周りからいなくなったのは。

 

 それは、時の彼方への忘却。

 

 白の残像

  原案:つかさ 晃 様/構成&文:JIN


 僕がその駅に降り立ったのは、十二月初めの膚を刺すような冷たい雨が

降る寒い日のことだった。大学3年生の冬休み、春からは就職活動が待っ

ている。

取り立てて学生生活も将来の夢もない。少しグレーな気持ちを変えたくて、

ただそれだけで。

 なぜその町を選んだのか、今となってははっきりとしないが、たぶん列

車の窓から見える町並みが、どことなく生まれ故郷に似ていたからだと思

う。

 外に出た僕を待っていたのものは、一面に広がった鉛色の空と、それに

包まれた灰色の町。

 鉛色の空は冬の海そっくりに見えた。子供の頃の記憶が蘇る。僕の生ま

れ育った場所のその海は、やはり鉛色の空に覆われており、空気と水が触

れ合う所で一つになっていた。

それでも、海は空までも支配しようとすかのように、幾度となくその白い

牙を天に穿とうとした。風が強かった。波が防波堤に当たって砕け散るた

びに、風にのった怒りのかけらが頬を打ち、自分がいかに小さな存在かと

いうことを思い知らせてくれた。その恐怖と畏敬の情景は、幼心の奥底に

深く刻み込まれたのだった。恐れと寒さのために足の先まで震えていたの

を思い出す。

 太陽の一片も見えない分厚い雲に包まれ死んだように見える町は、僕の

沈んだ心のように感じられた。そんなとりとめのない事を考えながら、灰

色の町に足を踏み入れた時、僕は視界の隅に一人の少女の姿を捉えていた。


 ほんの一瞬のことっであったが、その姿は目の奥に焼きついた。しかし

少女は、別段目立っていたわけではない。違うとすれば、雪のように白い

セーターと、夜の空のような濃紺のスカートという、十二月にしては少し

寒すぎる格好をしていたことぐらいだ。多分、気になったのは僕だけだっ

たのだろう。町を行く人々は普段と変わることなく、黙々と歩いている。

今にして思えば、それは僕にしか見えていなかったのかもしれない。

 静かに、そしてゆっくりと時が僕の目の前を流れていった。我にかえ

ると、再び身にしみる冷気と陰鬱な町並みが僕を包んだ。

 とりあえず、今日の宿を探そう…。


 高台にある古びた旅館の二階に部屋を求めたのは訳がある。少しでも高

い所へ行って、この町を眺めてみたかったのだ。その部屋は、最初の予定

通り、町を一望することができた。

 時が経つにつれ、僕はその町を好きになっていった。初め、頑なに旅人

を拒んでいた空気も、今は自らの身体の一部になったかのように僕を包み

込んでくれる。町外れの森の中にある別荘群によって、夏の間は小さな避

暑地になっていることがわかった。

 高原の中にある町だが、スキ〜場が近くにないため、冬の間は誰も訪れ

たりしないのだろう。駅から途中にあった別荘地は、しんと静まり返って

いた。今は夏のざわめきを取り戻すまでには時間がありすぎる。

 僕を迎えた冷えた雨も、目の前を一色に染めた空も、今となっては何故

か懐かしいものに感じられた。闇に目が慣れるように心が落ち着いてくる。

なぜ、あれほど疎外感を受けていた町が馴染むように? 何か記憶が欠け

ているのだろうか。思い出そうとしても思い出せない、そんなもどかしさ

がこみ上げてくる。

 その夜、早々に夕食を済まし外に出た。もっと町の雰囲気を楽しみたか

ったのだ。その頃になってようやく、この旅が正しかったのだと考え始め

ていた。

 そんな時だった。僕が昼間見た少女を、もう一度見とめたのは…。

この町唯一である繁華街をぶらついていた時、いきなり彼女は僕の視線の

前に現れた。

僕は驚いて足を止めた。今度は彼女も僕に気が付いているらしく、口元か

ら白い歯を覗かせている。その笑みは、僕を時の彼方へと誘った。

 会いに行こう。幼いときから欠けていたものを、今の喪失感を埋めるな

にかをあの人は知っている。

 

時が雪と溶けてしまわないうちに。

 

<未完>


 



 悪友が書いた小説です。文は・・・もとの原稿は紛失、写したデータは、
ぶっ壊れたSDカードの中にあったと思う・・・許せ(^^;
もちろんこれで終わりではないのですが、絵やデータが消失しかなり
古いもと原稿と打ち直しておいた文だけしかいので、改編になるかも
しれず、あるだけをアップして終えようと思います。

最後にウェブのお友達、rioさんが書いてくれたオマージュを掲載させて
頂きます。素敵なアンサーになっています。ありがとうございました。

                          06/06/18

――幼い時に欠け落ちてしまった心のピースは

いつまでたっても塞がる事はなく

いくら現実の思い出が降り積もっても

そこだけ床が抜け落ちたように裂け目となっていて

大切なものが喪失感とともにこぼれ落ちていく。

現実(うつつ)のもので塞げぬ穴を、

きっと覆ってくれるのは、過去の幻影。

あのころ夢見た“願い”を

きっと抱きしめていてくれるはずの少女――


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